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「株で資産3.6億円を築いたサラリーマン」が純資産を減らす企業に大注目するワケ

プレジデントオンライン / 2022年1月4日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/peshkov

どうすれば株式投資で儲けられるのか。株式投資で3億円超の資産を築いたはっしゃんさんは「株価に大きな影響を与えているのは外国人投資家。彼らが好む指標はチェックしたほうがいい」という――。(第3回/全3回)

※本稿は、はっしゃん『株で資産3.6億円を築いたサラリーマン投資家が教える決算書「3分速読」からの“10倍株”の探し方』(KADOKAWA)を一部抜粋・再構成したものです。

■日本株の売買高7割を占める外国人機関投資家

成長株にとってPER(株価収益率)と同等または、それ以上に重要な指標となるのがROE(株主資本利益率)です。

PERは株価とEPS(1株純利益)を比較する指標なのに対して、ROEはBPS(1株純資産)とEPSを比較する指標です。

まず、ROEの計算式を紹介すると、

ROE=純利益÷純資産(%)

となり、純資産(≒自己資本)が生み出す利益の割合を表します。

日本株の売買高の6~7割は外国人機関投資家によるものです。特に大型株が集まる東証1部では、その傾向がより顕著になります。外国人投資家が日本株の影の主役である以上、彼らがどんなポイントで投資する企業を決めるのかは、知っておくべきでしょう。それがROEだと言われています。

■日本人と外国人では好みの経営スタイルが異なる

日本人投資家は、自己資本比率が高くリスクの低い経営スタイルを好み、外国人投資家は、高ROEでリスクをとった資本効率の高い経営スタイルを好みます。

例えば、ソフトバンクグループ(9984)のような極端なレバレッジ(ROE)経営をしている場合は、リスク度も高くなりますが、高ROEを指向している成長株は、外国人投資家の嗜好に近い経営スタイルを取っていると言えるでしょう。

では、なぜROEが重要なのでしょうか? それは、ROEの高い企業ほど成長力が高いからです。

町のお弁当屋さんを例に説明しましょう。

ある町に店を構えるA店とB店の2つのお弁当屋さんは、それぞれ200円の弁当を仕入れて400円で売っているとします。

A店は20万円の資本金を元手に、1000個の弁当を仕入れて販売しています。一つ200円ですから1000個だと元手いっぱいまで使って仕入れることになります。全部売れると、売上は40万円で利益は20万円です(単純化するため経費などは除きます)。

一方、B店もA店と同様に20万円の資本金を元手に、こちらはA店の2倍、2000個の弁当を仕入れて販売しています。資本金の2倍の仕入れ金額になるので、仕入れに際しては、借金や後払いで行っています。こちらは全部売れると売上は80万円で利益は40万円です。

A店とB店は、どちらも元手は同じ20万円ですが、弁当がすべて売れれば、B店の利益はA店の2倍になります。

弁当屋
写真=iStock.com/Astalor
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Astalor

■ROEが高い企業はハイリスクハイリターン

B店は借金や売れ残りのリスクは大きいですが、その分、ビジネスとしての儲けは大きいわけです。

これを、ROEを使って説明すると、

●A店は元手20万円、利益20万円でROE100%
●B店は元手20万円、利益40万円でROE200%

となります。もちろん、実際のROEは諸経費を引き算するのでもっと低くなります。

では、あなたが投資家だったとしたら、A店、B店どちらの弁当屋さんに投資したいですか?

B店のほうが利益やROEが高くなりますが、元手以上の仕入れをしていて、新型コロナショックのような想定外の出来事に弱いというリスクも考えないといけません。

■ROEが高いと成長スピードも速い

次にA店とB店がともにチェーン店を出した場合を考えてみましょう。どちらの店がどのくらい成長スピードが速いか、比較して考えます。最初の20万円で得られた利益は、すべて資本金に回して元手を増やすとします。

A店、B店がそれぞれ最初の販売で得られた利益は、

●A店:20万円
●B店:40万円

でした。その利益を次回の元手に組み入れると、

●「A店:20万円+利益20万円」で2倍の40万円
●「B店:20万円+利益40万円」で3倍の60万円

にそれぞれの元手が増えることになります。

そして、これまで同様にA店は資本金と同額、B店は資本金の2倍の弁当を仕入れて販売するので、チェーン店全体の仕入れ金額は、

●A店が元手の40万円
●B店は元手の2倍の120万円

と、3倍の差がつき、利益も同様に3倍の差になりました。

 【図表1】お弁当屋さんの比較でみるROE(株主資本利益率)と企業成長
【図表1】お弁当屋さんの比較でみるROE(株主資本利益率)と企業成長

もし弁当の販売がともに順調なら、B店のほうが成長スピードが速いため、両店の差はどんどん開いていくことになります。

このように、業績が黒字で成長段階の場合、ROEが高いほど、成長スピードが速くなります。そして、高ROE企業であるほど、将来の成長期待が高くなり、株価も高くなる傾向があります。

■ROEの低下は成長鈍化のシグナル

ここまで分かれば、人気だった成長株が増収増益にもかかわらず、ROEの低下で株価が売られる理由も分かります(ROEを知らない人にとってはまったく訳が分からないことでしょう)。

それは、企業の成長が鈍化しているシグナルなのです。

高成長を遂げていたお弁当屋さんB店が成長の踊り場を迎えて、A店並みになってしまうと、A店の3倍速で成長する前提でB店に投資した投資家はどうしますか、という話ですね。

企業の成長ステージとROEの関係は、

成長期:ROEが上昇
安定期:ROEが横ばい
減速期:ROEが低下

というようになります。

ROEが低下するということは、利益成長率が純資産の増加率よりも低下することを意味します。ROEが減少に転じた成長企業は、いかに増収増益が続いても市場評価を得られにくくなり、実際の株価もそれにつれて頭打ちになる傾向があります。

■新規投資やM&Aに積極的なのは成長企業

逆に、成長し続けている企業は、純資産の増加を上回る利益成長が続きますので、ROEの増加が続くことになります。

 はっしゃん『株で資産3.6億円を築いたサラリーマン投資家が教える決算書「3分速読」からの“10倍株”の探し方』(KADOKAWA)
はっしゃん『株で資産3.6億円を築いたサラリーマン投資家が教える決算書「3分速読」からの“10倍株”の探し方』(KADOKAWA)

単純にROEが高いか低いかは、業種や企業の特性で差がありますので、ROEが時系列で見て増加しているか減少しているかを見るとよいでしょう。

なお、成長企業では、先行投資によって一時的に利益が減少し、ROEも低下するケースがあるので、このような場合は例外と捉える必要があります。

同様に、減価償却費やのれん代もROEに影響します。潜在的な収益力を重視する場合は、EBITDA(利払い前、税引前、減価償却前利益)でROEを見るのも一つの方法です。

では、ROEを上昇させるには、どうすればよいでしょうか?

ROEは「純利益÷純資産」でも計算できますから、ROEを上昇させるには、分子の利益を増やすだけでなく、分母の純資産を減らすことでも可能です。

企業が利益を増やすのは当然として、分母の純資産を減らし、資本効率を高めるには、

●内向き:自社株買い、配当還元
●外向き:新規投資、M&A

などの施策が有効となります。

多くの成長企業が、新規投資やM&Aを通じて成長を試みる理由も分かりますね。高ROEであることは、調達資金をうまく使って利益を生み出している証明ですから、そのような企業の株価や企業価値は高くなり、次の資金調達もしやすくなる好循環になります。

逆に自社株買いや配当など内向きの施策で純資産を減らすのは、成長ピークを過ぎた企業に多いようです。企業規模が大きいところは、M&Aで少しくらいの利益を加えても業績インパクトは小さく、大きな案件は失敗すると経営責任が問われますので、動きづらいという側面もあります。

内向きと外向きで方向性は違いますが、どちらもROEを上昇させる効果があり、これらの施策が発表されると、その効果への期待が企業価値に向かいPER(株価収益率)や株価に織り込まれるというわけです。

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はっしゃん 投資家、VTuber
サラリーマン時代に従業員持株会から投資を始め、投資歴は25年。決算分析・理論株価・四季報・月次情報などを武器に30代で資産1億円を達成。2019年、資産3億円を突破したあと、サラリーマンを卒業し、独立起業。「株ブログはっしゃんのスロートレード」や「成長株Watch」「月次Web」「理論株価Web」といった監修サイトは、数多くの個人投資家から愛用され累計PVは1億以上。また、近年ではTwitterやYouTubeなどのSNSでも投資に役立つ情報を発信中。

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(投資家、VTuber はっしゃん)

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