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「会社に親がやってくる」困った"モンスター社員"に人事のプロがとる神対応

プレジデントオンライン / 2022年1月9日 8時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Blue_Cutler

いつの時代も「困った社員」はいるもの。しかし、そんな社員を野放しにできるほど余裕のある会社はそうそうありません。人事は「痛い社員」をどうやって封じるのでしょうか。人事コンサルタントの西尾太さんが解説してくれます――。

※本稿は、西尾太『人事はあなたのココを見ている!』(アルファポリス)の一部を再編集したものです。

■優秀な社員が次々に退社……、モンスター社員に気をつけろ!

会社に不利益を与える社員=「モンスター社員」が、多くの会社で問題になっています。私たち人事の間では「困った人」「困ったちゃん」などと呼ばれているのですが、ここではこうした困った社員の代表的なタイプをまとめてみました。

問題のある社員には、どう接したらいいのか、また気づかないうちに自分もそうなっていないか、あなたもチェックしてみてください。

■合意のうえでも大問題! 社内恋愛型モンスター

恋愛は自由です。プライベートな問題に会社は口を出すことはできません。それでも「ええ加減にせえや!」と言いたくなるのが社内恋愛型モンスターです。これは社内の複数の人と関係を持ってしまう社員のこと。社内での優位な立場を利用して個人的関係を強要する、デートに誘うといった行為は、相手が不快に感じればセクハラに当たります。

本人が訴えてきた場合は、会社も然るべき対処を取ることができますが、合意のうえで関係が成立している場合は、なかなかセクハラにはできません。

ある会社では、優秀な女性が突然会社を辞めてしまったり、異動を申し出る女性社員が続出し、ある男性社員がその原因であることが判明しました。

要は、その男性社員が社内で複数の女性と関係を持っていたのです。この男性には妻子がいたので、関係を持った女性社員の一人がセクハラだと訴えたことで事態が発覚。懲戒処分と転勤させるといった対応をして、結局は退職になりました。

たとえ不倫であっても、本人が訴えてこない限り会社がとやかく言うことはできませんが、関係が破綻するとセクハラとして訴えられる場合があります。

不倫相手の夫や妻が会社に怒鳴りこんでくることもあり、こうした場合は「会社に迷惑をかけた」ということで一定の懲戒処分を行います。社内恋愛は個人の自由ですが、やはり節度を持って行うことが必要でしょう。

また、社内恋愛や不倫は周囲に知られていないと考えているのは本人たちだけで、周囲はだいたい知っているものです。

それが業務に悪影響を与えるようであれば、人事としてはしかるべき対応をします。

■「また親が来た!」家族介入型モンスターは職場の大迷惑

これは、会社の問題に親が出てくる、若手に多いケースです。

「うちの子は残業が多いんじゃないですか」「うちの子の評価はどうなっているんですか」など、クレームの内容はさまざまですが、通常は「家族にはお話しできないこともありますので、本人と話をします。本人から話を聞いてください」と対応しています。

家族の介入を禁じる法律や就業規則はありませんが、本人が「親が来るのを止められなかった」時点で、会社としては「仕事のできない社員」だと判断せざるを得ません。あまりにも親が何度も来て業務に支障をきたすようであれば、人事が注意を促し、場合によっては退職勧奨することもあります。

また、家族を理由に仕事をしない社員もいます。「妻が早く帰ってこいと言っているので残業はできません」「家族が出張しちゃいけないと言っています」といって上司の指示に従わないタイプのモンスター社員です。

上司には自らの職位・職能に応じて権限を発揮し、業務上の指揮監督や教育指導を行う権利と義務があります。業務の適正な範囲で指示された残業や出張を拒むことは、就業規則に違反する行為です。節度を持った理由ならともかく、家族を理由に仕事しないことが常態化している社員には「あなたは会社の指示に従いませんでしたね」と言って「服務規律違反」で懲戒処分をすることもあり得ます。

彼女にメガホンで叫んで怒ってる人
写真=iStock.com/SIphotography
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/SIphotography

■「老害」とは、ひたすら「逃げ切り」を狙っている社員

「老害社員」も困った社員の一つです。

「人事は『老害社員』と『経験値が高い社員』をどのように判断しているのか」ここでは、そんなテーマについて掘り下げたいと思います。

中高年の会社員の処遇は、日本企業が直面している大きな問題のひとつです。私自身も、さまざまな会社から以下のような相談を受けることが増えてきました。

「仕事をしない年上の部下に困っています。注意しても聞いてくれないし、行動も変わらない。何を言っても響かないので、言うだけ無駄。暖簾に腕押し、馬の耳に念仏なので疲れました。50代半ばを過ぎたら、定年まであとわずか。ひたすら逃げ切りを待っているだけです。こういう社員にはどう接したらいいのでしょうか?」

2019年11月、朝日新聞に掲載された「朝の妖精さん知ってますか」という記事も大きな反響を呼びました。妖精さんといっても、みんなから愛される可愛らしい存在ではありません。朝はきっちり出社するけれど、いつの間にか姿が見えなくなっている。こうした定年間近のシニア社員を揶揄して呼んだもの。要は「働かない中高年」です。

これ以上頑張っても、もう出世はしないし、頑張ったところでさして変わりない。毎月給料をもらって、とにかく逃げ切って、まあまあ平和に暮らしていければいい。私はこうした、ひたすら「逃げ切り」を狙っている中高年の社員が、まさに「老害」だと考えています。

■人事もなかなか抜本的な手を打てないのが現状

一方で、団塊ジュニア世代のベテラン社員がいなくなることによって、スキルの継承がなされなくなり、組織の中でスキルが空洞化してしまう問題も起こっています。

「老害」と呼ばれるやる気のない人たちもいれば、現在なお成果を出し、かつ伝承すべきスキルを持った中高年の社員もいる。後者のように、自分の強みを自覚し、技能や経験、人脈などの継承を積極的に行っている人が「老害」ではない「経験値が高い社員」です。

人事もそれはわかっていますから、経験値が高い社員には、専門職制度を設けたり、マイスターという称号を与えるなど、プロフェッショナルとして重用していく施策を行っています。ですが「働かない中高年」に関しては、なかなか抜本的な手を打てないのが現状です。

なぜなら給料を多少下げても、そういう人たちは会社を辞めません。再就職するのは厳しいうえに、たとえできても給料が下がる。だったら「妖精さん」になって居座るしかない。

そのうえ、企業には定年後の再雇用が義務づけられています。現在50代の社員が定年になる頃には希望者全員が65歳まで働けるようになります。政府は「人生100年時代」「1億総活躍」を提唱しており、2021年に「70歳までの就業確保に関する努力義務」が企業に課せられました。いずれは70歳定年が義務化されるでしょう。

働く当事者にとっては必ずしも悪い話ではありませんが、企業にとっては深刻な問題です。高齢化した社員みんなに高額な給与を払い続けていったら、経営は破綻します。

給料を下げればやる気も下がり、さらに老害化が進みます。それでも20代の社員より給料が高いことが多いため、若手のモチベーションも下がります。社員全体の士気が下がれば、当然業績も悪化します。こうした負の連鎖がずっと続いていく可能性があるのです。

■必要なのは「外に出ても通用する力」

中高年の問題は、20~30代の社員にとっても決して無関係ではありません。業績が悪化すれば、会社は人員削減に踏み切ります。さらに特に大手企業において、業績がよくても45歳以上の希望退職・早期退職を募る企業も増えてきました。

評価の低い社員に対しては、年齢に関係なく、退職勧奨を行う場合もあります。会社が求めているのは、どんな企業でも通用する人材です。中高年の会社員は、今の会社で必要とされ続けるためにも、また転職という可能性のためにも、そして将来「老害」と呼ばれないためにも、「外に出ても通用する力」を身につけるしかないのです。

■自分が老害にならないためにできること

そして、そのために大事なことが2つあります。

ひとつは、普遍的なコンピテンシー(成果につながる行動)を獲得すること。30代であれば、目標が設定できて、計画立案ができて、進捗管理ができるようになること。そういう汎用的な力があれば、仕事が変わっても会社が変わっても、生きていけます。もっといえば、会社に頼らなくても生きていけるようになります。

私が2015年に上梓した、あらゆる企業に共通する45種類のコンピテンシーを紹介した『人事の超プロが明かす評価基準』(三笠書房)という書籍は、発売から6年以上が経った現在でも重版され続けており、人事の本としては異例のロングセラーになっています。

これは、こうした危機感を持ち、自身を成長させたいと願うビジネスパーソンがたくさんいることの証なのでしょう。

会社が求めることは、年齢とともに変化していきます。現在の自分が求められていること、これから求められることを認識するのは非常に大切です。

■「今」をどう生きるかが、今後を大きく左右する

もうひとつは、自分は「何屋」なのかを見極めていくこと。自身の強みや専門性を明確にすることは、30代以降の会社員には特に重要になります。

営業なのか、経理なのか、もしくはマネジメントという汎用性の高いスキルに特化するのか……。自分は「何屋」なのか、自身の仕事を要素分解して考えてみましょう。

その際に重要なのは、「他社でも通用するのか」を基準にして自身を客観的に顧みることです。社外の人と交流を深めて他社の話を参考にする、副業を試してみる、他社の面接に応募してみるなど、自身の力を客観的に判断する方法はいくらでもあります。そういった行動をすることが大切なのです。

他社でも通用する力があるなら、そのスキルをさらに磨いていく。通用しないと思ったら、今の会社で不足しているスキルを身につける。そうして今後の選択肢を増やしていくのです。

■始めるのに「遅すぎる」ということはない

今の会社で上を目指す、転職する、起業する。どのような道を選ぶにせよ「今」をどう生きるかが、あなたの今後の人生を大きく左右します。

西尾太『人事はあなたのココを見ている!』(アルファポリス)
西尾太『人事はあなたのココを見ている!』(アルファポリス)

もちろん何かを始めるのに、遅すぎるということはありません。40代、50代でも、決して遅くはないのです。

私たちは70代まで働くことになるのかもしれません。この年代に学んだことは、たとえ50代になってゼロから何かを始めたとしても、その後の20年間を生きる術になります。

「老害」と呼ばれている人たちは誤解しています。私たちは働くことから逃げ切るなんてできないのです。自分の将来について改めて考え、生きる力を身につけていきましょう。

中高年の会社員は、こうして会社の外に向けた「行動」がとても大切です。行動を起こすか起こさないか、それがあなたの将来を大きく左右します。

そして未来の選択肢も、自ずと変化してくるのです。

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西尾 太(にしお・ふとし)
人事コンサルタント、フォー・ノーツ代表取締役社長
「人事の学校」「人事プロデューサークラブ」主宰。1965年、東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。いすゞ自動車労務部門、リクルート人材総合サービス部門を経て、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)にて人事部長、クリエイターエージェンシー業務を行なうクリーク・アンド・リバー社にて人事・総務部長を歴任。これまで1万人超の採用、昇進面接、管理職研修、階層別研修を行なう。パーソナリティとキャリア形成を可視化する適性検査「B-CAV test」を開発し、統計学に基づいた科学的なフィードバック体制を確立する。著書に『人事担当者が知っておきたい、10の基礎知識。8つの心構え。』(労務行政研究所)などがある。

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(人事コンサルタント、フォー・ノーツ代表取締役社長 西尾 太)

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