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「ゼロコロナ政策のせいで大混乱」習近平政権が直面しはじめた"成長鈍化"という代償

プレジデントオンライン / 2022年1月11日 12時15分

習近平共産党総書記・国家主席・中央軍事委主席は2021年10月22日午後、山東省の省都・済南市で黄河流域の生態保護と質の高い発展を深く推進することに関する座談会を開き、重要演説を行った。〔新華社=中国通信〕 - 写真=中国通信/時事通信フォト

■個人消費、物流、生産、設備投資が回復しない

ここへきて、中国経済の安定成長期への転換が鮮明化している。これまでの中国経済を振り返ると、1978年に始まった“改革開放”から2010年代の半ばまで、中国経済はトレンドとして2ケタ実質GDP(国内総生産)成長率を維持した。

特に、リーマンショック前まで中国経済は“世界の工場”としての存在感を発揮し、輸出主導で高い成長を遂げた。民間IT先端企業の成長も高成長を支えた。不動産開発を中心とする投資によって共産党政権は経済成長率をかさ上げし、10%前後の実質GDP成長率を維持した。改革開放以降の約30年間、中国経済は高度経済成長期にあった。

しかし、2014年ごろから中国経済の成長率トレンドは低下している。過剰投資が重なった結果として資本の効率性は低下し、不動産投資による高い成長率の実現が難しくなっている。それに加えて、コロナショックが発生し足許では感染が再拡大している。経済運営に不可欠な動線が寸断され、中国の個人消費、物流、生産、設備投資などはなかなか立ち直れない。世界第2位の経済規模を誇る中国経済の減速傾向は、世界経済に重要なマイナスの影響を与えることが考えられる。

■中国の経済成長は曲がり角を曲がった

コロナショックをきっかけに、中国経済は高度経済成長期から中程度の経済成長期へ曲がり角を曲がった可能性がある。それは、中国の実質GDP成長率の趨勢(トレンド)の変化から確認できる。具体的な確認方法として、国際通貨基金(IMF)の『世界経済見通し』に収録された1980年以降の年間実質GDP成長率の5年間の移動平均値を計算する。

計算された値を時系列に並べて確認すると、2013年まで実質GDP成長率のトレンドは10%前後の高い水準を維持した。リーマンショック後は共産党政権が4兆元(当時の邦貨換算額で約57兆円)の経済対策を実施して不動産投資などを積み増したことが高い経済成長を支えた。

2014年に実質GDP成長率のトレンドは8%台に低下した。2014年は習近平国家主席が、中国経済が“新常態”に入りGDP成長率はいくぶんか低下するだろうとの認識を示しはじめた年だ。8%の実質GDP成長率の維持は、中国が完全雇用を達成するために不可欠な成長率のレベルと考えられている。つまり、新常態の本質は不動産投資やインフラ投資、さらには“中国製造2025”や“21世紀のシルクロード経済圏構想(一帯一路)”などの政策を総動員することによって共産党政権が雇用を生み出し、悠久の経済成長を目指すという意思表明だったと考えられる。

■中国の高度経済成長期は終焉を迎えたか

しかし、8%の実質GDP成長率の維持は難しい。2015年以降は年を追うごとに実質GDP成長率のトレンドが低下している。つまり、中国経済の減速傾向が明らかになり始めた。その主たる要因に生産年齢人口の減少や、不動産やインフラの過剰投資がある。コロナ禍によって2020年単年の実質GDP成長率は2.3%に低下した。2021年の実質GDP成長率は前年の落ち込みの反動によっていくぶんか上振れたのち、2022年の成長率は5%前後に低下するだろう。

2021年12月に開催された中央経済工作会議では2022年の実質GDP成長率の目標値を、国務院発展研究センターが5.5%前後、政府系シンクタンクの中国社会科学院は5%以上と提言したと報じられている。2020年から2021年にかけて中国の高度経済成長期は終焉を迎え、5%程度の成長期(巡航速度の経済成長環境)に移行した可能性が高い。

■経済回復を遅らせている不動産市況の悪化

足許では中国経済の減速傾向がより鮮明だ。その要因は大きく2つある。最も深刻な問題は不動産市況の悪化だ。住宅需要や投機熱の高まりで不動産価格が上昇しているのであれば、地方政府は中国恒大集団などの民間不動産業者に土地を売却して財政資金を確保することができた。その資金を用いて地方政府はインフラ投資などを行い、雇用を生み出した。

それによってGDP成長率の目標を達成することが共産党政権の求心力の維持と地方の共産党幹部の出世を支えた。しかし、2020年夏場に不動産融資規制である“3つのレッドライン”が導入されて以降、不動産業者の資金繰りは急速に悪化し不動産投資による経済成長の実現が困難になった。それに加えて、中国国内の理財商品市場が下落して個人の金融資産が棄損する懸念も高まっている。1月4日には広州市の恒大集団ビルの前で理財商品の返済を求める個人投資家の抗議活動が起きた。不動産市況はさらに悪化する可能性が高い。

■“ゼロコロナ対策”の代償は大きい

もう一つは、新型コロナウイルスの感染再拡大による“ゼロコロナ対策”の徹底だ。それによって動線が寸断され個人の消費、固定資産投資、鉱工業生産が減少している。例えば西安市ではロックダウンの実施によって市内外の動線が寸断された。その結果として物流が停滞し食料不足が発生した。それは経済成長にマイナスだ。中国国内では散発的に感染が発生しており、北京冬季五輪や秋の党大会開催に向けてゼロコロナ対策は強化されるだろう。

その結果として想定されるのが、動線が寸断される都市が増えて物流の停滞など供給制約が深刻化する展開だ。供給制約は企業のコストを増価させ、卸売物価の上昇につながる。

それによって消費者物価が上昇する可能性も高まる。短期間で中国の不動産市況が落ち着き、感染再拡大が収束するとは考えづらい。物価がさらに上昇すれば中国の国内需要にはかなりの下押し圧力がかかるだろう。

夕暮れ時の中国・北京のビジネス街
写真=iStock.com/SeanPavonePhoto
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/SeanPavonePhoto

■地方政府の債務増加も懸念される

当面の間、中国経済は減速から抜け出せず、世界経済にマイナスの影響が波及するだろう。波及経路の一つは、債務問題を背景とする資金流出だ。不動産業界での債務問題に加えて、今後の中国では地方政府の債務増加も懸念される。昨年12月の中央経済工作会議で共産党指導部は経済の安定を実現するために、地方政府に前倒しで経済対策を実施するよう求めた。共産党政権の景気減速への危機感は強まっている。

その一方で、不動産市況の悪化によって歳入が減少し、インフラ投資の実行が難しくなる地方政府は増えていると考えられる。景気対策を打ち出そうにも、地方政府の対応余地は狭まっている。その状況下で景気の安定を目指すために、共産党政権は苦肉の策として地方債発行枠の追加的な引き上げを余儀なくされるだろう。

経済成長率が低下する中での債務残高の増加は中国の信用リスクを上昇させ、海外への資金流出圧力を強める要因となるだろう。そのタイミングで米国の利上げが実施されれば、中国の債務問題(灰色のサイ)の懸念が高まり、世界的にリスクオフが進んで株価は調整する可能性がある。

■世界経済は中国に足を引っ張られる1年に

次に、中国の石炭輸入が減少し、電力供給が不安定化するリスクも世界経済に悪影響を与えるだろう。世界最大の一般炭(発電燃料用の石炭)の輸出国であるインドネシアは1月中の石炭輸出の禁止を決めた。インドネシアの石炭産業は、感染再拡大による港湾稼働率低下や水害による石炭生産の停滞といったリスクにも直面している。いずれも、中国の石炭輸入を減少させる要因だ。

他方で、年明け以降の欧州ではウクライナ情勢の緊迫を背景に天然ガス価格が上昇している。脱炭素に対応するために中国が石炭生産を追加的に増やすことも難しいだろう。昨秋のように電力逼迫(ひっぱく)懸念を背景に中国など各国が石炭や天然ガスなどを争奪し、エネルギー資源価格が一段と上昇する可能性は高まっている。

それが現実のものとなれば、電力料金を統制されている中国の電力会社は発電を減らし、中国が世界第1位の生産量を誇るアルミなど基礎資材の生産が減少するだろう。それは世界経済のサプライチェーンの混乱を深刻化させる一因だ。2022年の世界経済は中国に足を引っ張られそうだ。

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真壁 昭夫(まかべ・あきお)
法政大学大学院 教授
1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員、信州大学経済学部教授などを経て、2017年4月から現職。

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(法政大学大学院 教授 真壁 昭夫)

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