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「ビル・ゲイツも30年以上やっている」一流経営者がこっそり続けている"情報断食"の効能

プレジデントオンライン / 2022年1月20日 10時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Julia_Sudnitskaya

いいアイデアを練るにはどうすればいいのか。「思考の整理家」を名乗るコンサルタントの鈴木進介さんは「無数にある情報の中には、余分で価値のない『ノイズ』も含まれる。一流の人はノイズに振り回されないよう、一人きりになって良質な思考をする習慣を大切にしている」という――。

※本稿は、鈴木進介『ノイズに振り回されない情報活用力』(明日香出版社)の一部を再編集したものです。

■ビル・ゲイツがノイズを完全に断ち切る1週間

クライアントで突出した成果を出す人も、偉業を成し遂げた世界中の一流の人も、共通することは「ノイズに振り回されない環境」を自らつくっているということでした。

私が「ノイズのない環境」の大切さに気づいたのは10年ほど前のことです。

ある人物のライフスタイルに驚愕(きょうがく)したことがキッカケでした。マイクロソフト創業者の、ビル・ゲイツ氏です。彼は何年も連続して長者番付で1位の富豪というだけではなく、パソコンを世界中に行き渡らせるキッカケをソフトウェアを通じてつくり、今は慈善家として貧困や感染症の問題に向き合っています。

そんな彼が1980年代から今でも習慣にしているのは、「Think week(考える週)」といって、半年に1回ペースで1週間まるまる普段の業務からも離れて山にこもり、ノイズを完全に断ち切った状態で考えごとをするそうです。

側近や家族まで連絡を取りにくくし、普段読めない本、論文を読んでは思考を深め、思考を深めては整理して、新たな展開の発想源にされているとのこと。

■一流の人は一人きりの世界にこだわる

これは休暇とは別物で、あくまでもノイズを断ち切って良質なインプットと、今後のアウトプットのための仮説づくりや思考の整理を行う「戦略的な時間の使い方」なのです。

「Think week(考える週)」の時間や機会を確保できる人はそれほど多くないかもしれません。それでも、強い意識をもってノイズを断ち切るからこそ、世界を変えるアウトプットができるのでしょう。

一流の人は、ビル・ゲイツ氏以外にも、ノイズのない世界で良質なインプットや整理、アウトプットの準備をすることにこだわっているようです。しかも、一人きりになって。

■日本のビジネスパーソンに圧倒的に足りないもの

経営学博士のピーター・ドラッカー氏は「スケジュール帳を埋めるのではなく、空欄をいかにつくるか。1日のうち自分と向き合い考えるための2時間枠を確保すること」という言葉を残しています。

また、元ソニー会長の出井伸之さんは、著書で「日本のビジネスパーソンに圧倒的に足りないもの。それは、一人になってじっくり考える時間である。会社と家庭以外の第三の時間を強制的に作るべきである」(出井伸之『変わり続ける』ダイヤモンド社、2015年)と話し、コピーライターで「ほぼ日」社長の糸井重里さんは、かつて「ひとり時間の足し算が自分をつくる。ほぼ日手帳はアポ管理ではなく、自分と向き合うメモ帳である。一人になれる時間が僕を決めている時間で、生きている時間です」とインタビューで話されています。

いかに、家族からも離れて一人になってまでノイズを断ち切る習慣を大切にしているかがうかがい知れます。

デスクでリラックスして座っている男
写真=iStock.com/FangXiaNuo
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/FangXiaNuo

■ニュートンの偉業につながった“創造的休暇”

コロナ禍になってから、メディアからは情報ノイズがあふれ出る一方、密状態からは離れて物理的・空間的にノイズとは距離を置けた人がいるかもしれませんね。

実は、1600年代にも世界を動かした人物が同じ状況になっていました。万有引力の法則などを発見したアイザック・ニュートン氏です。リンゴが木から落ちる様子を見て着想したという有名なエピソードがある人です。

ニュートンが研究者人生を送っていたのは、ペストが大流行した時代でした(今でいうコロナ禍のようなパンデミック)。当時のヨーロッパの人口の3分の1が死亡したとも言われる大変厳しい状況だったようです。この影響でニュートンが研究生活を送っていたケンブリッジ大学も閉鎖されることになり、1665年から1666年にかけて2度、カレッジでの雑事から解放され、故郷のウールスソープへと戻っていきました。

そこで行動の自粛生活に入ったのです。

ところが、“災い転じて福となす”とはこのことで、結果的にあらゆるノイズから解放されたことで、自由に思考する時間を手にし、この時の時間が後の数々の偉業につながっていきました。後にニュートンは、この期間のことを“創造的休暇”と名付けたそうです。

仕事で成果をあげるためには、普段より、情報を含めあらゆるノイズを断ち切る時間や場所をつくることが重要な鍵を握っているということです。

■ノイズから逃れるイタリア発の時間管理術

時間ができるとついスマホを手にしていたという経験がありませんか?

しかも、仕事とは関係がない情報が一度でも表示されたら最後。広告、関連リンク、おすすめサイトなど次々にネットからの情報があなたを追いかけてきます。そうこうしているうちに時間は過ぎ、頭の中もノイズまみれに。

実はこれ、“ノイズ断ち”が習慣化する前の私の姿です。

強い意識を持ち、ノイズを「予防する」方法を持たなければ、あなたもかつての私のようになってしまいます。ここでは、ノイズから逃れる予防策についてお話をしていきます。

ノイズをどう取り除くかの前に、はじめから「予防」ができないものか。

問題意識を持った私は1つの方法に行き着きました。それは、「ポモドーロ法」を応用した方法です。

これは、1980年代にフランシスコ・チリッロ氏が開発した方法で、ポモドーロはイタリア語でトマトを意味し、「トマト型のキッチンタイマーを使った時間管理術」が名前の元です。

「25分作業+5分間休憩」を1サイクルとして1日のうちに複数回まわしていく方法。この組み合わせが最も集中でき成果が上がるというのです。

【図表1】ノイズを入り込ませない情報活用サイクル
筆者がノイズを防ぐために実践している時間管理術(出所=『ノイズに振り回されない情報活用力』)

私は、ポモドーロ法を応用して「インプット⇒整理⇒アウトプット」の順で仕事を高速回転させます。

休憩を除けば、1つのテーマについて「正味75分間」が「情報活用時間」というわけです。

■1つの作業時間を25分に制限するワケ

「1つの作業にたった25分しか使えないの?」と思ったかもしれませんね。たしかに、25分という時間はとても短いですし、インプットをやりきれないことも多いです。

ただ、あえてそこでいったん打ち切ることでノイズが入り込むのを防ぎ、手元にある情報から最大限アウトプットにつなげるにはどうすればよいか考えます。もしどうしても時間が足りない場合は、2サイクル目に不足箇所をやる算段です。

そうでなければ、インプットからアウトプットまでのどこかで過剰に時間を費やしてしまい、ノイズが入り込む隙を与えてしまいます。

ノイズを予防するために「時間に制限」を設けるという考え方です。

時間制限を設けるメリットは3つあります。

「①集中力が発揮される、②重要なことに的を絞れる、③効率が上がる」ことです。

1958年、英国の歴史学者・政治学者シリル・ノースコート・パーキンソン氏は「人はどれだけたくさん時間が与えられたとしても、あればあるだけ使ってしまう」という「パーキンソンの法則」を提唱しました。

つまり、意図的に制限をつけなければ、ダラダラと時間を膨張させてしまい、ノイズが入り込む隙間ができてしまうというわけです。

■頭の中にたまるノイズを定期的に「抜く」

ノイズを予防しようという強い意識を持って環境をつくっても、これだけ情報過多の時代には限界があることも現実です。スマホやテレビの画面、果ては電車の中の車内ディスプレイからだってあらゆる情報が染み出してくるからです。

いま抱えている案件とは全く関連もなく、使えそうにもない「どうでもよい情報」が自然と頭にはインプットされてきます。

さらに、シンプルにロジックが完成したのにノイズが頭にたくさん残っていて、「やっぱり他の情報ももっと入れた方がいいかな」とアウトプットの際に盛り込みすぎて中心軸がボケてしまう。

このような状況に陥らないようにするには、どうすればよいでしょうか?

問題を抱えた人の頭のシルエット
写真=iStock.com/tadamichi
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/tadamichi

究極的な私の結論はシンプルです。

最後は、定期的にノイズを自分の中から「抜く」ための“解毒”時間を持つことです。

情報を断ち切り、その代わりに一人になって「自分の頭の中を整え、自分の内側と向き合う時間」を持つのです。先ほどお話ししたビル・ゲイツ氏の「Think week(考える週)」と発想は同じですね。

■週1回、8時間はスマホもPCも見ない

私が習慣にしていることは、「週に1日だけ情報に触れない長めの時間を持つこと」と「毎日10分だけ情報を断ち切りノートを開くこと」の2階建てです。

以前、『「空腹」こそ最強のクスリ』(アスコム・青木厚著)という本がベストセラーになりました。簡単に言うと、「食べ過ぎはよくないから半日断食すれば健康によい」といった内容の本です。

これを読んで実践してみたら身体が軽やかで毎日心地よく動けるので、「情報活用にも同じ『半日断食理論』を応用してみたらどうなるだろう?」という仮説のもとに試してみました。

起きている時間が16時間だとすれば、半日は8時間になります。週に1日だけ、朝9時から夕方5時までの間だけ、スマホ、テレビ、PCなど一切の情報を断ち切ります。

仕事は、可能な限り手書きのノートを使うなどデジタル情報を断ち切ります。アナログ情報だから良質というわけではありませんが、デジタル情報に比べて量は圧倒的に制限されます。

はじめは月曜日に情報断食の日を設定したのですが、月曜日はメールの返信他仕事量が多く、さすがに現実的ではありませんでした。

そこで、週末の休みに入る前の金曜日にリセットするつもりで時間設定をしました。

人によっては、ノー残業DAYが水曜日だからとそこに合わせて週半ばの水曜日に設定するなどもよいでしょう。

■頭の中にあることをノートに書き出す効果

半日間の情報断食で頭を休め、今度は毎日10分を目安にやはり情報を断ち切る時間を設けます。スマホも通知音はもとよりバイブレーション機能も切ります。電源OFFか機内モードにし、代わりにノートを開きます。

ノートを開いた後は、「今、関心があるテーマ」「求められている仕事のゴール」「構想中の仮説」「自身のフィールド(領域)」は何なのかという仕事のことから、自分の人生プラン、キャリア、プライベートに至るまで頭の中にあることをいったん書き出します。書き出すだけでも頭が整理され、心は整ってきます。これは、書くだけで神経が集中しノイズが頭と心から抜けていくことから、マインドフルネスの世界で「書く瞑想(ジャーナリング)」と呼ばれているほどです。

私は、たった一人で自分と向き合い、頭と心を整える時間のことを「じぶん会議」として提唱していますので、詳しくは『1日10分 「じぶん会議」のすすめ』(WAVE出版・鈴木進介著)もご覧ください。

■ノイズにまみれた状態では仕事はできない

普段の私は、PCとスマホ、脇にはノートを用意して三刀流で仕事をしていますので、強制的に情報の解毒作業をしなければノイズにまみれてしまい、仕事のパフォーマンスを落としてしまう危険性すら感じていたのです。

鈴木進介『ノイズに振り回されない情報活用力』(明日香出版社)
鈴木進介『ノイズに振り回されない情報活用力』(明日香出版社)

もちろん、仕事の状況によってどのように情報断食やじぶん会議をスケジュールに組み込むかは工夫する必要はありますが、事前にスケジュール化することで習慣に変えていくとよいでしょう。

ノイズを取り除き、自分の内面と向き合いながら「自分の頭でイメージすること」、「自分の頭でしっかりと考えること」。

ノイズに振り回されずに、「自分らしさを取り戻す」ことは情報活用のみならず、混迷するこれからの時代を生き抜く上で必須のスキルのような気がしてなりません。

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鈴木 進介(すずき・しんすけ)
コンサルタント
1974年生まれ。株式会社コンパス代表取締役。現在は「思考の整理術」を使った独自の手法で人材育成トレーナーおよびコンサルタントとして活動中。大学卒業後、IT系企業や商社を経て25歳で起業。著書に『1分で仕事を片づける技術』(あさ出版)など多数。 HP:http://www.suzukishinsuke.com/

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(コンサルタント 鈴木 進介)

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