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「稼げる人は観察眼が違う」年収1000万円超のタクシー運転手が上客を見つける意外な方法

プレジデントオンライン / 2022年1月19日 19時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kazunoriokazaki

人より多く稼ぐ人は何が違うのか。『人は見た目が9割』の著者で非言語コミュニケーションに詳しい竹内一郎氏は「知人のタクシー運転手は、ある方法で1万円以上の長距離を乗る客を見つけ、常連にしていった。稼ぐ人は、そうした『見抜く力』を持っている」という――。

※本稿は、竹内一郎『見抜く力 結果を出す人はどこを見ているか』(河出書房新社)の一部を再編集したものです。

■洗濯物で単身赴任者の家を割り出せるように

私は川崎市の住宅街に住んでいる。私がたまに使うタクシーの運転手・Hは、年収千数百万の高収入者である。金持ちなのだから、悠々自適な生活でもすればよさそうなものだが、タクシーの運転手が天職だという。やっていて楽しいそうだ。

Hは、羽田空港にタクシーで行く乗客をたくさん抱えている。私の家の近くは住宅地で一戸建ても多い。Hは、物干し台に干してある洗濯物を見ているうちに、単身赴任者の家がわかるようになったという。物干し台を見るために特別なことをしているのではない。

タクシーを流しているうちに、「あれっ」と気づいたのである。

割に大きな一戸建ての家に、平日だけ男物の洗濯物が一人分だけ干してある。土日に洗濯物が干してあることはない。ということは、男の一人暮らしで、週末は人が住んでいない家だということになる。

■羽田空港に向かう優良企業の重役たち

会社に入ってくる「タクシー、1台お願いします」の電話は、無線で各タクシーに飛ぶ。

Hは会社経由のタクシー無線で、そういう家に客を迎えに行くことがあった。行き先はどれも羽田空港だった。私の家の付近から羽田までは、約1万5000円の距離である。タクシー用語で「ロングの客」という。上客の意味である。

羽田までの道中、客に話を聞いてみると、客は地方に本社のある優良企業の重役で、東京支社に単身赴任で来ていることがわかる。東京の支社長のような立場の人である。

優良企業の重役だから、単身赴任用の宿舎も一戸建てで、羽田への往復も会社の経費でタクシーが使える。それで、平日だけ男物一人分の洗濯物が干してある一戸建ての理由がわかった。平日はヘルパーさんが家事をやっているのである。

■移動スケジュールを記憶し、上客を常連に

Hはタクシーを流しながら、そういう洗濯物の干してある家がいくつもあることを経験的に知っていた。会社にもよるが、そんな重役は、基本的に日曜の夜から月曜の夜にかけて上京する。そして、木曜の夜から土曜の朝にかけて羽田に向かう。週のうち1日は、地元の会社の会議に出るため、金曜か月曜のどちらかは東京の家が不在になる。

そういう人たちは、秘書が飛行機の切符を予約するので、毎週同じ時間に出発する同じ便で東京─地元を往復する。Hは会社に入ってくる無線をチェックしながら、どの家の住人が、何曜日の何時にタクシー会社に電話を入れるのかを覚えていった。Hは会社に電話が入る時間に、ロングの客の家のそばにいればよい。自動的に、会社はHを迎車に向かわせる。

片道1時間の行程である。客と話しているうちに、羽田には翌週・何曜日の何時の飛行機で上京するのかがわかってくる。

タクシーは本来、羽田では「タクシーの付け場」で待機しなくてはならない。客とHは違法かもしれないが、「送り客」のタクシーの付け場付近で待ち合わせをする。客のほうは自宅がわかっている運転手が迎えに来てくれれば、自宅を説明する手間が要らないし、何より気安い。Hはロングの客が拾える。

タクシーに乗った若い女性
写真=iStock.com/ablokhin
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/ablokhin

■前の事業で大失敗した彼は“天職”を見つけた

Hはそうやって、ロングの客を増やしていった。流しだと嫌な思いをする客も拾わなければならないが、もうそんな必要はない。飲んでへべれけになっている客も相手にしない。かくして、タクシーの運転手はHの“天職”になっていったのである。

私は普段、高速バスで羽田に行くが、背に腹は代えられない時にタクシーに乗る。それでHと知り合った。彼は事業に失敗して大きな借金をつくり、タクシーの運転手になったという。前の仕事はHに合っていなかったのだろう。何をやっても成功する素質はないのである。

彼と話しながら、生まれ持った素質と仕事が合っているということは、こういうことなのだなあ、と思う。

Hの素質は観察眼、つまり「見抜く力」である。物干しにある洗濯物の違和感に「あれっ」と気づき、洗濯物と優良企業の重役を結び付ける目を、Hは持っていたということになる。

ビジネスチャンスのヒントは「見た目」の情報にあったわけだ。そして、その情報はすべての人に平等に開かれている。

■勤務条件は同じでも観察眼が収入の決め手に

タクシーネタが続いて申し訳ないが、タクシー運転手は、稼ぐ人はサラリーマンより稼ぐし、稼げない人は収入も低い。そして毎月、成績上位者は変わらないという職種である。

純粋に平等な条件で働いて、結果(収入)は雲泥の差である。

その差は何が決めているのか。やはり観察眼なのである。この会社は毎週、このくらいの時間に会議が終わってロングの客が出る。この飲み屋は終電を気にしない客が飲む店で、深夜何時頃にロングの客が出る。最後は「勘」の勝負になってくる。

会社からの無線は、どの運転手にも平等に入る。後は、会社の外観から社風を推定し(時間に正確かどうかも含まれる)、飲み屋の外観や会社に入る無線から、客を帰す時間の目安を決めているか否かを割り出す。会議が終わる時間は日によって異なるし、飲み屋が店を閉める時間も客によってはまちまちになるから、けっこう難しい。

タクシーのハンドルを握る運転手の手
写真=iStock.com/laymul
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/laymul

■できる人が見るのはテレビプロデューサーの性格

それは道を流していても同じである。どのビルから出てくる人が、タクシーに乗るのか。

「見た目」から「中身」を見抜く力と言い換えてもいい。

私の自宅は、日本テレビの「生田スタジオ」(川崎市)とTBSの「緑山スタジオ」(横浜市)の間にある。当今は経費節約で、撮影も終バスの時間を超えることは少ない。役の小さな俳優や大勢のスタッフさんまでタクシー、というご時世ではなくなった。しかし、大物俳優で運転手付きの車を持っていない人はタクシーで帰宅する。ほとんどの人は山手線の近くに住んでいるので、1万5000円クラスのロングの客となる。

腕のよいタクシー運転手は、ロングをどれだけとるかが勝負の分かれ目となる。

撮影が終わる時間は、プロデューサー次第である。というより、プロデューサーの性格によると言ったほうが正確か。慎重なタイプか、イケイケどんどんなタイプなのか。

撮影終了後、俳優はメイクを落とし、着替えをしてからタクシーに乗る。タクシーの運転手は、プロデューサーの性格に合わせて、待機時間を調整する。

脇役の人やスタッフさんはバスで帰るから、考えなくてよい。大切なのは大物俳優だけの退出時間である。基本的に、プロデューサーが慎重な人なら、終バスの時間より30分早くなる。

■凄腕の運転手の勘は「大体、当たる」

加えて、近年はドラマが減り、バラエティやCMが増えてきた。後者の場合は、2本撮り、ひどい時は3本撮りというのもある。大物タレント(司会者、CMのメインであることが多い)を起用する場合は、1日で2回分、3回分を撮るのである。ゲストは、収録の切れ目で自分の出番が終わるから、タクシーに乗って自宅に帰ることになる(大物タレントは運転手付きの自家用車で来るからあまりタクシーは使わない)。

これもタクシー会社に入る電話を自分なりに分析して、無駄なくロングの客を取っている人が高額所得者である。

竹内一郎『見抜く力 結果を出す人はどこを見ているか』(河出書房新社)
竹内一郎『見抜く力 結果を出す人はどこを見ているか』(河出書房新社)

大物タレントが来る日は、ローテーションでわかる。後は、収録の切れ目の時間を運転手同士で読み合うのである。最後は勘だというが、ロングをたくさん取る人は毎月変わらない。凄腕の人に「勘は外れることも、ありますよ」と聞いた。「ことも、ある」という言い方から、自信がうかがえる。「大体、当たる」のである。

凄腕はスタジオを往復するタクシーの流れで、収録の動きを推測する。答えは誰も教えてくれない。自分で成功法則を編み出しているのだ。

もちろん、人には教えない。本に書かれるのもこれが初めてだろう。本当にいい情報は本にもインターネットにも書かれないものだ。それを知るものが、誰にも語らずに自分だけで使っている。

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竹内 一郎(たけうち・いちろう)
劇作家、演出家
1956(昭和31)年福岡県久留米市生まれ。横浜国大卒。さいふうめい名義で漫画『哲也 雀聖と呼ばれた男』の原案を担当。演劇集団ワンダーランド代表。著書に『手塚治虫=ストーリーマンガの起源』(サントリー学芸賞)、『人は見た目が9割』など。撮影=山岸伸

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(劇作家、演出家 竹内 一郎)

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