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「三菱商事と丸紅の風力発電参入」は日本が"ものづくり大国"に返り咲く大チャンスである

プレジデントオンライン / 2022年1月24日 10時15分

中西勝也 三菱商事次期代表取締役社長(2022年4月1日付)(記者会見。東京都千代田区) - 写真=時事通信フォト

■電気代が値上げしないためにも風力発電は欠かせない

国内外で、わが国企業が洋上風力発電事業への取り組みを強化している。今のところ、洋上風力発電はわが国にとって再生可能エネルギーの切り札的な存在だ。洋上風力発電事業分野での成果が、中長期的なわが国のエネルギー政策に与える影響は大きい。

最近の動きの中で特に注目したいのは、三菱商事と丸紅の取り組みだ。三菱商事は国内外の企業との関係を強化してコスト面で優位性が高い洋上風力発電事業を急ピッチで強化している。また、欧州では丸紅が浮体式の洋上風力発電事業に取り組む。それ以外の企業も洋上風力発電への関与を強めている。

2021年5月に経済産業省が公表した試算では、一つのシナリオとして、2050年にカーボンニュートラルを実現するため発電のコストが上昇すると、わが国の電気代は2倍程度に上昇する可能性がある。電力料金が上昇すると、国内の生産や消費にはマイナスの影響が及ぶことは避けられない。総合商社が内外企業の知見、技術、発想の新しい結合を目指し、洋上風力発電事業の効率性向上に集中する展開を期待したい。それがわが国にもたらすメリットは大きい。

■コンペで“圧勝”した三菱商事の強み

近年、大手総合商社が洋上風力発電など再生可能エネルギー事業を強化している。足許で注目を集めているのが三菱商事と丸紅のプロジェクトだ。

昨年12月に経済産業省と国土交通省が発表した洋上風力発電事業者の公募(コンペ)の結果、“秋田県能代市、三種町及び男鹿市沖”、“秋田県由利本荘市沖”、および“千葉県銚子市沖”での洋上風力発電事業運営者として、三菱商事が中心となって組んだコンソーシアムが選ばれた。3つのプロジェクトのいずれも、海底に風車の土台を固定する“着床式”の洋上風力発電事業だ。事実上、コンペは三菱商事の圧勝だったとみられる。

ポイントは、三菱商事が洋上風力用の大型風車メーカー(米GE)、建設事業者(中部電力と三菱商事が共同で買収したオランダのエネコ)、潜在的な顧客(アマゾンなど)と連携し、価格競争力と成長期待の高い事業計画を立案したことにある。ある意味では、オープンイノベーションの重要性を確認する良いケースといえる。

■日本の地形に有利な「浮体式技術」が進む

丸紅は、スコットランド沖の“浮体式”の洋上風力発電事業の運営者に選定された。丸紅は英国とデンマークの企業と共同して事業を運営する。当該案件で最も重要なポイントは、浮体式技術の確立が目指されることだ。わが国には水深の深い海域が多い。そのため、海上に風車を浮かべて発電を行う浮体式の洋上発電技術の確立は、再生可能エネルギーの利用増加に欠かせないといわれている。

問題は、海上に浮かべた土台の上に風車を設置して安定的に発電を行う技術がいまだに確立されていないことだ。そのため着床式に比べると浮体式の洋上風力発電のコストは高い。

今回、丸紅が選ばれた浮体式の洋上風力発電事業は世界最大級といわれ、多くの欧米の大手エネルギー企業などが権利を手に入れようと競合した。その結果として丸紅が事業者として選定されたことは、わが国の洋上風力発電の増加に追い風となるだろう。

■遅れていたエネルギー政策転換の切り札に

三菱商事と丸紅などの洋上風力発電事業が、化石燃料依存から脱却し再生可能エネルギー利用を増やすというわが国のエネルギー政策の転換に与える影響は大きい。現在、わが国の電力供給は化石燃料を用いた火力発電に頼っている。資源エネルギー庁が公表する総合エネルギー統計によると2020年度の電源構成(発電量)のうち、石炭が31.0%、天然ガスは39.0%を占める。再生可能エネルギーの利用に関しては、水力が7.8%、太陽光が7.9%、風力は0.9%にとどまる。

資源エネルギー庁が公表した「2030年度におけるエネルギー需給の見通し」によると、政府は2030年度の電源構成の36~38%を再生可能エネルギーでカバーすることを目指している。そのうち太陽光が最大16%、風力が5%の電力供給を担うことが目指されている。2030年度に政府は電源構成に占める石炭の割合を19%程度、天然ガスを20%程度に低下させることを目指している。原子力の利用増加が難しいため、中長期的に化石燃料への依存は続く可能性がある。

■総合商社の動きが日本に与えるインパクト

2030年度の電源構成全体に占める風力の割合が低い背景の一つには、洋上風力発電の技術的な課題があるだろう。洋上風力発電の技術開発を急ぎコスト低下を実現することは、わが国が2030年度に温室効果ガスの排出量の46%削減(2013年度比)、および2050年のカーボンニュートラル実現を目指すために決定的に重要だ。そのために、わが国の総合商社などが洋上風力発電により積極的に、より大規模に取り組むことがどうしても必要になる。

洋上風力発電
写真=iStock.com/PARETO
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/PARETO

このように考えると、総合商社各社の再生可能エネルギー事業の強化がわが国のエネルギー政策に与えるインパクトはより大きくなるだろう。三菱商事と丸紅以外では伊藤忠商事がドイツ最大級の洋上風力発電事業であるブーテンディーク洋上風力発電所の権益を取得した。三井物産は洋上風力発電事業に加えて設備の点検やメンテナンス事業に進出し、住友商事も国内外で洋上風力発電事業に取り組んでいる。その上で総合商社各社が電力会社や事業会社との提携を増やして洋上風力由来の電力供給網を整備することがわが国のエネルギー政策の転換に欠かせない。

■新たな市場創出が大チャンスとなる

今後の展開として期待が高まるのが、総合商社による電力市場の創造だ。わが国の総合商社は、国内外のヒト、モノ、カネの新しい結合を実現することによって付加価値を生み出してきた。その強みの発揮によって、海外の洋上風力発電装置メーカーと国内の事業会社が合弁事業を行う機会を増やしたり、洋上風力を用いて発電された電力の送電や蓄電のシステムを生み出したりすることは可能だろう。

その上で、総合商社が電力需要者により安定的、かつ効率的に再生可能エネルギー由来の電力を供給するシステムを確立することは、わが国に大きなメリットをもたらす。それは、総合商社による国内外での新しい電力市場の創造にほかならない。

足許では、欧州委員会が持続可能な経済活動の分類(タクソノミー)において、天然ガスと原子力を一定の条件の下でグリーンな投資対象とみなす方針をEU加盟国に示した。洋上風力など再生可能エネルギー由来の電力供給の増加を目指す欧州各国にとっても、技術的なハードルや風況変化などの影響は大きいようだ。その状況はわが国にとってチャンスだ。

■政府は電力インフラ輸出実現を急ぐべき

政府は総合商社が主導する洋上風力発電事業やインフラ運営システムの開発を支援し、国際ルール策定を主導しようとする欧州や、世界のサプライチェーンで役割が高まるアジア新興国地域向けの再生可能エネルギーを用いた電力インフラの輸出実現を急ぐべきだ。それは、わが国企業が世界の洋上風力発電分野のビジネスチャンスをより多く獲得するために欠かせない。

反対に、政府の取り組みが遅れれば、洋上風力の利用は進まず電力料金が上昇して企業のコストが増えるだろう。長めの目線で考えると、国内で電力消費の大きいアルミ関連や二酸化炭素排出量の多い製鉄などの産業活動を続けることが難しくなる恐れがある。脱炭素がわが国経済に与える影響は大きい。総合商社が国内外の製造技術やシステムを積極的に結合して早期に洋上風力発電を用いた電力供給の増加を目指すことは、わが国のエネルギー政策の転換と持続可能な経済運営に大きく貢献するだろう。

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真壁 昭夫(まかべ・あきお)
法政大学大学院 教授
1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員、信州大学経済学部教授などを経て、2017年4月から現職。

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(法政大学大学院 教授 真壁 昭夫)

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