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「仕事のわりに給料が高い」そう思われていることに気づかない50代社員の末路

プレジデントオンライン / 2022年4月20日 9時15分

『人事の超プロが教える 会社員 50歳からの生き残り戦略』(PHPビジネス新書)より

これからリストラされるのはどんな人たちか。人事コンサルタントの西尾太氏は「自分の給与が低いと不満を抱えている50代社員は多い。そうした人ほど『黒字リストラ』の対象になる危険性が高い」という――。

※本稿は、西尾太『人事の超プロが教える 会社員 50歳からの生き残り戦略』(PHPビジネス新書)の一部を再編集したものです。

■「50代社員は今すぐやめてほしい」は1割未満

僕ら50代は、いったい何歳まで働くのでしょう?

20~40代のオフィスワーカー各世代100名、計300名に「あなたの職場にいる身近な50代の社員に、何歳まで働いてほしいですか」と聞いてみました。

結果は、図表1の通りです。最も多かったのは「65歳」の32.3%、次に多かったのは「働ける限り」の32.0%。「すぐにでも辞めてほしい」は、わずか8.4%で、9割以上の人が50代社員に長く働くことを望んでくれていました。これは嬉しいことではないですか?

一方、50代のオフィスワーカー100名にも「あなたは何歳まで働きたいですか」と聞いてみました。最も多かったのは、やはり「65歳」の28.0%。「60歳」の26.0%、「働ける限り」の17.0%と続きます。

しかし、次に多かったのは「70歳」ではなく、「すぐにでも辞めたい」の16.0%でした。辞めてどうするんでしょう?

これは50歳からの働き方を考えるうえで、まず考えておきたいテーマです。

■70歳定年制になる未来はすぐそこまで来ている

僕たち50代が社会人になった1980年代の中頃から1990年代の中頃にかけては、定年は55歳でした。僕は56歳ですから、当時なら定年退職している年齢です。

しかし今でも働いていますし、少なくとも65歳ぐらいまでは働くかなあと思っています。場合によっては、70歳になっても、さらにその先も働き続けるかもしれません(当社の社員からは、「きっと80歳になってもあいつは来るよ」と言われているようです)。

定年制度は、1998年に60歳まで延びました。2000年には「65歳にしよう」という動きが始まり、2006年に65歳までの雇用確保措置が義務化。2013年には希望者全員に対して65歳までの継続雇用が義務化(2025年まで経過措置中)。

2021年4月には、70歳までの就業機会の確保が企業の努力義務になりました。これまでの流れを考えると、あと数年で義務化されるのではないでしょうか。

僕たちが70歳になる頃には、定年自体が70歳になっているかもしれません。社会人になった頃は、55歳が定年だったのに、途中で60歳になり、さらに65歳に延び、もうすぐ定年だなと思ったら70歳になる。我々50代は、なかなか定年になれない世代なのです。

■あと20年働く前提でビジョンを考える

そして、65歳や70歳まで働くことができたとしても、一般的には給与が下がります。

現在の65歳までの雇用確保措置の方法としては、「継続雇用制度の導入」「定年を65歳にする」「定年制の廃止」のいずれかを雇用者側が選択することになっています。

多くの企業が選択しているのが「継続雇用制度」です。これは60歳で定年とし、その後、本人が希望すれば、引き続いて雇用する「再雇用制度」のことを言います。

継続雇用になったとしても、再雇用として給料は下げられます。7割程度になる会社が多いですが、5割という会社もあります。

定年延長にともない、年金がもらえる年齢も延びています。現在は64歳ですが、2025年には65歳になります。今後もさらに延びていくことが予想されます。

定年後は働かなくても十分暮らせるだけの蓄えがある人はともかく、「すぐにでも辞めたい」と思っていても、働かざるを得ない場合もあるかもしれません。

僕たち50代は、あと15年、20年、あるいはもっと働き続けることになるかもしれません。それを踏まえたうえで、今後の働き方、キャリアビジョン、ライフビジョンを考えていくことが、50代における重要なテーマとなります。

■「自分の給料は低い」と不満を感じている50代は危険だ

次に、20~40代の人たちに「あなたの職場における50代の社員の給料は、仕事の成果と比べて、適正だと思いますか。」と聞いてみました。また、50代の社員100名にも、同じ質問をしてみました。

【図表2】あなたの職場における50代の社員の給料は、仕事の成果と比べて、適正だと思いますか。[単]
『人事の超プロが教える 会社員 50歳からの生き残り戦略』(PHPビジネス新書)より

50代社員の給料は、仕事の成果と比べて「低いと思う」と答えた20~40代の回答は、10.3%。一方、50代は38.0%。仕事の成果と比べて「自分の給料は低い」と考えている50代が約4倍もいることになります。これは危険ですよ。

また、50代社員の給料は仕事の成果と比べて「高いと思う」と答えた20~40代の回答が22.7%なのに対して、50代で「高い」と答えた割合は半分以下の9.0%。

50代の給与を仕事の成果と比べて「高い」と考えている20~40代と、「低い」と考えている50代の認識のズレが浮き彫りとなる結果になりました。

自分の年収は適切かどうか。これは50代以降の働き方を考えるうえで、非常に重要なポイントです。なぜなら、周囲から「給与が高い」と思われている人ほど、「黒字リストラ」の対象になる危険性が高いからです。

■45歳以上の中高年をターゲットにする“黒字リストラ”

コロナ禍前の2018年頃から大手企業が「黒字リストラ」と言われる施策を導入し始めました。2019年には、キリンビール、コカ・コーラ、富士通、朝日新聞、エーザイ、協和キリンなどが、黒字経営にもかかわらず「早期退職の募集」を実施しました。

2020年はコロナ禍も相まってリストラは2倍に増え、2021年はさらに前年の1.7倍に増加。日本たばこ産業、KNT-CTホールディングス、LIXIL、オリンパス、アステラス製薬、藤田観光などでも実施され、大手に限らず「早期退職」または「希望退職」と呼ばれる制度によって、1万人以上が退職しています。

黒字リストラとは、僕たちの世代を狙い撃ちにしたリストラです。コロナ禍によって経営が悪化した企業は別として、ほとんどの企業で「45歳以上の中高年」をターゲットにしていることが共通しています。

なぜ「45歳以上の中高年」が対象なのかというと、ずばり年収が高いからです。

日本企業は、ほとんどが年功序列を導入しています。年齢・勤続年数とともに給与が上がり、55歳から60歳ぐらいが最も高くなります。この世代は人数も多く、さらに定年も延長されようとしています。

■「使えないのに給料だけ高い」中高年が生まれる構造

今後も10年、20年と多数の中高年に高い給与を払い続けていったら、企業は立ちゆかなくなります。だから「45歳以上」に絞って、黒字で余裕があるうちに中高年を減らそうとしているのです。中高年が減れば、その分、若手の給与を上げられますよね。

西尾太『人事の超プロが教える 会社員 50歳からの生き残り戦略』(PHPビジネス新書)
西尾太『人事の超プロが教える 会社員 50歳からの生き残り戦略』(PHPビジネス新書)

もちろん45歳以上だからといって、誰でもリストラされるわけではありません。黒字リストラの対象となっているのは、「パフォーマンスより年収が高い人」です。

自分では、仕事の成果と比べて「給与が低い」と思っていても、給与に見合った価値を出していなければ、「パフォーマンスより年収が高い人」と判断されます。

年功序列の企業は、成果や行動ではなく、年齢や勤続年数によって給与が上がるため、年収とパフォーマンスにギャップが生まれやすくなっています。

要は、「使えないのに給料だけ高い」中高年が生まれやすい構造になっているのです。

■20代社員の2倍以上の価値を出しているのか

パフォーマンスに対して本当に適正な年収をもらっている人は、リストラの心配をする必要はないでしょう。しかし、そうでない場合はリストラの最有力候補となります。

会社の若年層に比べて高い給与をもらっているにもかかわらず、「給与が低い」と不満を持っている人は、改めて冷静に考えてみてください。あなたは本当に「あなたの年収の半分しかもらっていない20代社員の2倍以上の価値を出している」のでしょうか?

会社は社員の働きをシビアに見ています。会社とのギブ&テイクの関係性をはき違えている人や自身の成長を止めてしまっている人は、現在の給料に見合う価値を発揮できていない可能性が高く、真っ先に早期退職や黒字リストラの対象になります。

「定年まで逃げ切ろう」とか「今さら頑張っても」と思っている人は、特に注意してください。おそらく逃げ切れませんし、今から頑張らないと定年まで会社に残れません。

「給料が高い」と思われていることは、相当気にしないとまずいのです。

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西尾 太(にしお・ふとし)
人事コンサルタント、フォー・ノーツ代表
「人事の学校」「人事プロデューサークラブ」主宰。1965年、東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。いすゞ自動車労務部門、リクルート人材総合サービス部門を経て、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)にて人事部長、クリエイターエージェンシー業務を行なうクリーク・アンド・リバー社にて人事・総務部長を歴任。著書に『人事の超プロが明かす評価基準』(三笠書房)、『超ジョブ型人事革命』(日経BP)などがある。

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(人事コンサルタント、フォー・ノーツ代表 西尾 太)

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