すべての商売の本質がここに…「儲かっている」会社を探すための5つの情報チャネル
プレジデントオンライン / 2022年4月25日 12時15分
※本稿は、武田所長『スモールビジネスの教科書』(実業之日本社)の一部を抜粋・再編集したものです。
■類似ビジネスに取り組む企業の営業利益を見る
スモールビジネスのアイデアを考えるために、前回の記事で探査領域の選定が終わったら次は戦略構築ステップ2として、探査領域において儲かっている企業を発見し儲かる手法を知ることだ。
前提としての注意だが、ここでの「儲かっている」とは営業利益である。
儲け方にはベンチャー業界ではよく見られるように営業利益ではなく株を売却する方法もある。この場合ARR(年間経常収益)、売上総利益、ベンチマーク上場企業のコンプス(同業他社の比較分析)などである。
この場合、営業利益は重要でなくなるのだが、初心者がスモールビジネスから金を得るために最も確実な手法が営業利益から金を受け取る方法である。
株を売却する方法で儲けたくなったとしても営業利益さえあれば売却先は見つかる。
単純に考えれば営業利益が、自分が目指したくなる規模以上に出ている会社を発見すればよい。目安として、自分の目標営業利益の10倍以上儲けている会社が容易に多数発見出来る領域を最低基準とするとよいだろう。
自分が対象とするものと類似したビジネスで儲かっている会社が発見出来ない領域、ないしD2Cなどが代表格であるが、参入企業数に対して儲かっている割合があまりに少ない領域は危険領域であると考えよう。
何故そうなのかを深く考える必要はない。他人がやって無理なものは自分にも無理なのだ。
■業界内の上場企業のIR資料は宝の山
「儲かっている」会社を探すための情報チャネル
私が企業情報を得るために常に使っている情報チャネルをいくつか紹介する。ここで紹介する情報チャネルを活用し、自分が対象とする事業領域で儲かっている会社を調べ尽くそう。
ここで儲かっている会社を探すことが出来なければその事業領域は基本的に駄目である。他人が出来ないことは自分も出来ない。「自分は他人とは違うから儲けられる」なんて考えるのはやめよう。
人間としての基本性能が特異であり、他人をアウトパフォーム出来る人間なんて私を含めほぼいないし、成功者を見渡しても人間としての基本性能が成功要因であったと考えられる人間は見当たらない。
情報チャネル1.IR
上場企業は投資家用に財務情報の詳細から今後の方針までを開示する義務を負っている。これは宝の山である。ビジネスの検討対象領域を定めたら、業界内の上場企業のIR資料は全て見よう。
さらに、常に新しいトレンドをキャッチするために新規上場企業についての情報は検討対象領域でなくとも目を通す習慣を身につけるとよいだろう。
決算説明資料からは財務情報でどの程度儲かっているのかを素早く把握出来、変動要因に対する説明からは市場内部のトレンドを把握することが出来る。儲かっている企業が何故売れているのか、何故高い利益率を上げることが出来ているのかを調べよう。
企業によっては詳細に説明しているが、IRには財務数値だけしか掲載されず、競争力を十分に探れない場合も多い。その場合は後述する営業資料やLPという実際の顧客向け情報を見よう。そこには必ず何故他社ではなく自社を選ぶべきかの記述がある。
セグメント別の売上や営業利益だけでなく結局、何がいくらで誰に何故売れているのか、ということを知る必要がある。これに対して自分はパンチを浴びせるのだ。
調査段階から「この商品を買っているのはこのような理由だと思いますが、私の提案のほうがいいですよ。なぜなら……」などと、どう語るかを意識して調査を進めるべきである。
また他にも、IRで注目をするべきポイントがいくつかある。まず注目したいのは売上規模・利益率およびその額、コスト構造である。コスト構造とは何にコストがかかっているかの分析である。これを見ると、そのビジネスをコピーするには何が必要か把握出来る。
次に変動要因である。IRには変動があった項目に対して要因の説明がなされている。売上が大きく進捗したのであればなぜ進捗したのか。販管費が上がっているなら何故上がっているのか。これらについての記載がある。
売上進捗要因を見ると、何をすれば成功するか教えてくれるわけだ。販管費が上がっているなら、その市場では競争が過熱しており顧客獲得が厳しくなっているという市場環境を示しているのかもしれない。
さらにIRには今後の方針も出ている。その企業は少なくともその方針をとると儲かると思っているということだ。これが完全に正しいとは言えないが、自分がとるべき方針に対する大きなヒントになるだろう。
■投資家向け・採用広報向けに出される情報は守られている
情報チャネル2.非上場企業の決算
非上場企業の場合はどの程度儲かっているのか、外部からの把握が難しい。ただこの場合でも、決算情報を官報に掲載された情報から入手出来る場合がある。
入手出来る情報は上場企業よりも少なくなるが、検討対象領域の企業業績は可能な限り調べよう。儲かっていないことが分かったら、その理由についても把握し同じ失敗をしないようにするべきだ。
官報から入手可能な決算情報はかなり断片的である場合が多く、単体では結論を出すことが難しい。私が主に注目しているのは純利益・利益剰余金あたりで、他の項目は単体で意味を持ちづらい。
情報チャネル3.投資情報
どこかに投資がなされているのであれば、そこには何らかの根拠が存在していることを意味する。特に大規模な投資が実行される場合には根拠となる数値が必ず存在する。
ベンチャーに対する投資や非上場企業による投資活動の場合、数値自体は導入社数など部分的にしか確認出来ない場合が多いが、「何らか投資の根拠となる数値がある」と理解しておくとよいだろう。
ただしベンチャー投資の場合は注意が必要だ。ある程度規模のある調達がなされたとしても、ベンチャービジネスの成功率は高くないため、必ずしも儲かるチャンスがあると保証するものではないのである。
情報チャネル4.企業によるリリース
企業は営業・マーケティング、投資を集めるためなどの目的で自社の状況を部分的に開示する。例えばある企業の商品やサービスの単価を営業資料から把握し、導入社数をマーケティング用のWEBサイトなどから把握することが出来れば、おおよその売上が推定出来る。
ただマーケティング用のWEBサイトはほとんどの場合盛られているため、実態はかなり割り引いて評価する必要がある。「導入社数(デモを含む)」となっている場合も珍しくない。
これらの企業が出す情報の収集は出来る限りやるべきである。
営業資料のダウンロードやデモ利用は当然として、知人経由でもサービスの実態に関する情報を集めよう。全力で収集すれば相当多くの情報が入手出来ることに気づくだろう。
注意点であるが、投資家向け・採用広報向けに出される情報と実態の情報はかなり差がある。基本的にはやはり盛られているのだ。
■事業領域内の成功要因をコピーしミニバージョンを作る
情報チャネル5.業界紙
一般的な新聞や経済メディアに掲載されている情報は、事業を検討するために十分なものではない場合が多く、検討の契機を与える程度に留まることがほとんどだ。
しかし業界紙の場合は読者を業界内部の人間に限定しているため、詳細な情報を入手することが出来る。
外部から情報収集を進めづらいマニアックなビジネスを検討する場合、業界紙は安価な情報代だと考えぜひ活用して欲しい。私は新しい業界への参入を検討する際、関係がありそうな業界紙や業界本をひとまず10冊程は購入して検討を行う場合が多い。
コピーすべきエクセレントカンパニーの抽出
営業利益が上がっている会社を何社か見つけられただろうか。儲かっている会社調査はあと一歩である。
例えば家電に知見を持つあなたが「家電をOEM製造してAmazonで売る」というD2Cスモールビジネスアイデアを考えたとしよう。次にするのは、家電D2Cという事業領域で儲かっている会社の調査である。
その中でアイリスオーヤマを見つけたとしよう。取扱商品はマスクや家電など、表面的には大量に存在するその他の会社と変わらない。しかし何故アイリスオーヤマは頭1つ抜けて儲かっているのだろうか。その差分を比較する。
調べていくと、アイリスオーヤマは問屋と統合した垂直統合型のビジネスモデルのため情報・コスト・スピードの面で優位であり、その競争力を活用した迅速に新商品を売るという戦略を取っていることが分かる。
なるほど垂直統合が生む競争力をアイリスオーヤマが教えてくれた。
あなたはアイリスオーヤマが敢えて捨てている小さな市場で、可能な限り垂直統合を図ってミニアイリスオーヤマを作り、他の弱小メーカーを撃破するという戦略を考える。
このように対象とする領域を探査し、儲かっている会社を抽出するわけだが、同じ領域内でも儲かっている会社と儲かっていない会社は存在し、そこには必ず成功要因がある。その成功要因こそがあなたにその事業領域内で競争力を与えてくれるものなのだ。
その成功要因は事業領域によって異なるが、特定領域で儲かっている会社が核としている戦略を見れば、その領域での儲け方が分かるのである。
事業領域内の成功要因をコピーしその会社のミニバージョンを作りなさい!
ここまで調査を進めるば、目指すべきエクセレントカンパニーをいくつか抽出出来ていることだろう。それらの会社に絞り込み、沿革、経営者インタビュー、商材の活用事例、営業資料などを全て見よう。それほど数が多いわけではないので巨大企業を除けば1企業数時間で調査を終えられるだろう。
エクセレントカンパニーを徹底的に調査しなさい!
探査領域内で儲かっている会社を発見し成功要因を抽出しなさい!
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経営者
大学卒業後、戦略系コンサルティングファームに入社。退職後20以上のスモールビジネスを展開し、それぞれ売上年間数百万円〜10億円。トレンディ・ハイリスクなベンチャービジネスではなく「安定・着実」に売上100億円程度を目指すスモールビジネスを推奨する。スモールビジネスの事例や手法を解説・紹介し強い個人が活躍する時代を作るという狙いのもとに初の著書『スモールビジネスの教科書』(実業之日本社)を執筆。
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(経営者 武田所長)
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