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「部下のモチベーションが低くて…」そんな相談をする人を絶句させる本質的すぎる"ある質問"

プレジデントオンライン / 2022年4月26日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/PonyWang

チームのモチベーションを高めるにはどうすればいいのか。トーチリレー代表の神保拓也さんは「モチベーションが低いのは、具体的にチームのだれなのか。『チーム』や『部下』と捉えているままでは、その悩みは解決できない」という――。

※本稿は、神保拓也『部下・同僚・チーム、あなたの心に火を灯す新常識 悩みは欲しがれ』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

■人の悩みに向き合う際の3つの基本姿勢

上司をはじめとした「悩み相談に乗る人」はどうしたらいいのでしょうか?

ここからはその疑問に答える形で、普段私が人の悩みに向き合う際に意識している「3つの基本姿勢」について述べていきます。

悩みに向き合う時の基本姿勢①一人ひとりに寄り添う

まず1つ目は「一人ひとりに寄り添う」ということです。

部下育成やマネジメントに悩んでいる方の多くが、「『部下たち』のモチベーションが低くて、悩んでいます」「『部下』とどうコミュニケーションをとればいいのでしょうか」といった悩みを抱えていらっしゃいます。

ただ、ここで考えていただきたいのです。「部下」という名前の部下はいません。

人に寄り添い、本気で悩みに向き合う時の単位は、「全体」ではなく、目の前にいる○○さんという「個」であるべきです。それなのに多くの方が、向き合う単位を「部下」などと一括りにしています。しかし、実在しない「部下」という存在に寄り添うことなどできません。

「部下育成に悩んでいる」「チームメンバーのモチベーションが低くて困っている」と私に相談にいらっしゃる方には、少し意地悪く思われるかもしれませんが、必ず次のような質問をするようにしています。

「あなたが育てたいと思っているその部下の方のお名前は、何さんとおっしゃるのですか?」
「チームメンバーのモチベーションが低いというのは、全員がそうなのですか?」
「チームメンバーは全員で何名いて、その中でモチベーションが低い方は何名いるのでしょうか?」
「その方たちのモチベーションが低い理由を、一人ひとり個別に教えていただけませんか?」

するとほとんどの方が、

「部下育成全般について悩んでいるので、特に誰というわけじゃないのですが……」
「彼らのモチベーションが低い理由ですか? さすがに一人ひとりまでは把握していません……」などと口ごもってしまいます。

そして二言目には「もっと私も『部下』の悩みに向き合わなければと思ってはいるのですが……」とおっしゃるのですが(苦笑)、「部下」に向き合おうとし続けていても、本気で人の悩みに向き合うことはできません。

■「個」をほったらかして「全体」を良くすることはできない

「部下」や「若手」や「ベテラン」といった総称ではなく、あなたの目の前にいる「山田さん」「大塚さん」といった「個」に興味や関心を持たなければ、その人の悩みに本当の意味で向き合うことなどできないのです。

対して、本気で人の悩みに向き合おうとしている人は、一人ひとりの「個」に寄り添い、「個」の悩みに向き合おうと努力しています。そういう方が私のもとへ相談にいらっしゃると、たとえば次のような話をされます。その人の部下の方の名前を、仮に「宮川さん」としてご紹介しましょう。

「私の部下に宮川さんという人がいます。宮川さんは○○な人で△△なところがあり、□□な状況では能力を発揮してくれるのですが、××な状況に陥ると、あるべき論に固執してしまい、本来の力を発揮できなくなってしまいます」
「そんな宮川さんに対し、先日、◎◎とアドバイスをしたところ、●●との反応が返ってきてしまい、少し関係がこじれてしまいました」
「こういった場合、私はどのようなアドバイスをするべきだったのでしょうか? また、一度こじれてしまった宮川さんとの関係を回復するために、まず私は何をするべきでしょうか?」

このように、一人ひとりの「個」に向き合っている人は、相談内容がとても具体的で、相談の仕方もまるで違うのです。

しかしリーダーという立場にいる方々の中には、「個」をほったらかしにして、「全体」をなんとか効率的に動かすやり方はないかと、小手先のテクニックばかり探している方が多いのが実情です。

議論する日本のビジネスマングループ
写真=iStock.com/Drazen_
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Drazen_

■最初から「万能薬」のようなアドバイスはできない

もしかしたら、これまでの話を読んで「こっちも忙しいんだから、そこまで真面目に一人ひとりに寄り添う時間なんて取れないよ」「もっと皆のモチベーションを一気に上げることができるようなアドバイスをくれないかな」と思われた人もいるかもしれません。

はっきり申し上げましょう。そんなアドバイスなどありません。

「万人の心に火を灯す方法」や「万人に通用するモチベーションアップ法」など存在しないのです。そのような、最大公約数的に万人に刺さるテクニックを探しているうちは、人の悩みに向き合うことなどできません。

あなたも誰かに悩みを相談する時は、万人ではなく、「あなた」に寄り添い、「あなた」の悩みに全力で向き合ってほしいと思うはずです。

もちろん、一人ひとりと本気で向き合い続けていると、時としてそれぞれの悩みに共通項が見えてきたり、「これって多くの人が悩んでいることなんだな」などと発見できたりすることもあります。

ただし、最初から全員に響くような「万能薬」に見えるテクニックを実践してみても、毒にも薬にもなりません。あくまで「一人ひとりに寄り添った先に、多くの人の共感を呼ぶアドバイスが見つかる」というのが正しい順番です。

どんなに人数が多い組織でも、一人ひとりに寄り添うことからすべてが始まります。

「全体」をどうにかしようと思っても、「個」は変わりません。しかし一人ひとりの「個」に寄り添い、悩みに向き合い続ければ、やがて「全体」が変わっていくのです。

■悩み相談の場は「自分の過去の栄光を披露する場」ではない

基本姿勢②自分の言葉ではなく、相手の悩みを主役にする

続いて2つ目の基本姿勢は、「自分の言葉ではなく、相手の悩みを主役にする」ということです。悩んでいる人を前にすると、多くの方は「自分はどんな接し方をすればいいのか」「自分はどんな言葉をかけてあげればいいのか」と考えてしまいがちです。

しかしそれを考える前に、「相手が何に困っているのか」「○○さんが悩んでいる理由は何か」に興味を持つことのほうが、はるかに重要です。

人の悩みに向き合う際は、何よりもまず「相手の悩みを主役にして考えること」が大切なのです。ですが、悩み相談の現場において、残念ながら多くの方が自分の言葉や話を主役にしてしまっています。

少し厳しい言い方になりますが……悩み相談の場を「自分の過去の栄光を披露する場」だと勘違いしている人も多いのではないでしょうか。

男性と女性のシルエット
写真=iStock.com/kazuma seki
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kazuma seki

■主役はあくまでも「相手の悩み」

もちろん、相手の悩みを主役にした上であれば、自分の過去の体験談を話すことを否定しません。それが相手の助けになることもたくさんあります。

でも相手の悩みに興味や関心を持たず、相手の悩みを深掘りすることもなく、すぐに「俺がお前と同じような状況だった時にはこのように乗り越えた」といった過去の自慢話をしてくる……。そんな厄介な「悩み相談に乗ると見せかけて、自分の自慢話をしてくる人」があなたの周りにもいませんか?

悩み相談に乗っている人が、相手の悩みよりも、自分の言葉を考え始めた瞬間、主役はその人になってしまいます。人の悩み相談の場を横取りして、自分の過去の栄光話に酔いしれる。居酒屋などでよく見る光景ではないでしょうか(笑)。

しかし、悩み相談の場における主役はあくまでも相手の悩みであるべきです。

仮に同じような悩みで苦しんだ経験があなたにあったとしても、あなたと相手はまったく別の人間。価値観も考え方も違えば、生きてきた環境も現在置かれている状況も異なります。あなたが経験した成功や失敗は、目の前の相談者とはまったく違う世界の話なのです。

相手にとって良き相談相手になりたいと思われる方は、「自分の言葉ではなく、相手の悩みを主役にする」という基本姿勢をぜひとも肝に銘じていただければと思います。

■部下に答えを教えず、考えさせる指導は「放置」になり得る

2つ目の基本姿勢として「自分の言葉ではなく、相手の悩みを主役にする」とお伝えしましたが、悩みに向き合う時は、ただ相手の悩みに耳を傾ければいいということではありません。それだけでは、相手の悩みの本質をつかむことはできないからです。

基本姿勢③相手の悩みを自分事として捉え、相手以上に相手の悩みに向き合う

そこで、最後の3つ目の基本姿勢「相手の悩みを自分事として捉え、相手以上に相手の悩みに向き合う」ことが必要になります。おそらくこれが3つの基本姿勢の中で、最もユニークなものでしょう。

この3つ目の基本姿勢は、「どうすれば部下が自分の頭で考え、自律自走してくれるようになるのでしょうか……」と考えがちな上司へのアンチテーゼでもあります。

もちろん、ひたすら上司からの指示を待っているだけの部下に、この基本姿勢で向き合うのは難しいと思います。

ただ、心底悩んでいる部下が感じているのは、「『答えを教えず、考えさせる指導』もありがたいのですが、それを大義名分に、実際はただ放置されているだけのような気がします……」ということです。

心理学には、「自分は自分、相手は相手。相手の課題には踏み込まない」といった「課題の分離」という考え方があります。「相手の課題を抱え込んでしまうことは、自分の人生を重く苦しいものにしてしまう」。そのような想いが背景にあるのだと思います。

実際に私も、相手の悩みを自分事として悩むことで、どっと疲れてしまうことがよくあります。しかしそれ以上に、相手の悩みに向き合うことで得られるものがたくさんあることを知っているので、私は「悩みを欲しがる」のです。

オフィススペースの外で会話するビジネスマン
写真=iStock.com/Masafumi_Nakanishi
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Masafumi_Nakanishi

■悩みはリアルな一次情報があふれる宝庫

もちろん、それで自分の身を滅ぼしては元も子もありませんが、悩みは情報の宝庫です。

組織マネジメントにおいては、「一人ひとり」の悩みに向き合えば、「チーム全体」の課題が見えてきます。またその課題を乗り越えるためのヒントも、個々人の悩みの中にあります。

また、少し大げさに聞こえるかもしれませんが、私のように老若男女問わず、あらゆる人の悩みに日々向き合っていると、社会全体の課題が見えてきます。

難病のお子さんを持つ親御さんの悩み。介護と終活についての悩み。性的マイノリティの方の悩み。こういった悩みの現場は、本やテレビなどでは決して知ることのできない「リアル」な一次情報が溢れています。

また、事業をやっている人間にとって、課題発見はビジネスチャンスとイコールです。ビジネスとは、誰かの、何かの課題を解決することだからです。誰かの悩みに向き合うことで、商売の種に頻度高く触れながら、事業家としても成長することができるのです。

■「同じ悩みを味わう」がベスト

そして何よりも、人の悩みに全身全霊で向き合うと、相手から深く感謝され、「あなたがいてくれて本当によかった」と言っていただけることが多々あります。

神保拓也『部下・同僚・チーム、あなたの心に火を灯す新常識 悩みは欲しがれ』(KADOKAWA)
神保拓也『部下・同僚・チーム、あなたの心に火を灯す新常識 悩みは欲しがれ』(KADOKAWA)

これは生きる活力となる「自己肯定感」をとても高めてくれます。

「どうすれば自己肯定感を高めることができるのでしょうか?」とのご相談も多く寄せられますが、誰かの悩みに向き合えば、その答えもわかるはずです。

だからこそ私は、自分が相談者と同じ悩みを抱えていたら、どんな気持ちになり、どんなことを考えるのか。自分がその状況にいたらどう行動するのか。それを、相談者と一緒に全力で考えることを心からおすすめしているのです。

「同じ釜の飯を食う」という言葉がありますが、まさに「同じ悩みを味わう」。これが、人の悩みに向き合う時の大切な要素だと、私は思っています。

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神保 拓也(じんぼ・たくや)
トーチリレー代表
1981年生まれ。大学卒業後、三菱UFJ銀行、外資系コンサルティング会社を経て、ファーストリテイリングに入社。グローバル人材の採用や、社内経営者育成機関の立ち上げの実績を評価され、35歳で史上最年少の執行役員に抜擢される。課題山積みだった物流の構造改革を、業務未経験ながら、わずか2年で実現。その後、2020年に「人に寄り添い、悩みに向き合う」をコンセプトとした人材サービス会社・トーチリレーを設立。悩める個人や企業に対し、講演会や、心に火を灯す「トーチング」という面談サービスを展開している。

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(トーチリレー代表 神保 拓也)

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