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ビジネスで本当に必要なスキルは「小学生レベルの算数」…仕事のできない人が勘違いしていること

プレジデントオンライン / 2022年5月9日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/zoff-photo

ビジネスで本当に必要なスキルとはどんなものか。ワンキャリア取締役の北野唯我さんは「特別なスキルは必要なく、小学生レベルの四則演算ができればいい。なぜなら、『複雑そうに見える問題を、いかにシンプルな問題に置き換えて、だれでも解ける状態にできるのか』にこそ価値があるからだ」という――。(第3回)

※本稿は、北野唯我『仕事の教科書』(日本図書センター)の一部を再編集したものです。

■相手から百発百中で「Yes」を引き出す「問いの立て方」

相手から「Yes」を引き出す提案をするために、まずやるべきことはなんだろう? それは、「問いの立て方」を身につけることだ。なぜなら、提案とは問うことだからだ。

結論から言うと、3つのフローが必要になる。百発百中で通るような価値ある提案をするには、以下のフローで考えるのがベストだ。これは、「どうやって問う力を鍛えていけばいいのか?」の答えでもある。

問いの立て方3つのフロー
①ペインを探す
②最大の問いを設定する
③問いを分解する

まず、①の「ペインを探す」ということだ。なにかの提案をするとき、「提案のテーマやコンセプトはどう設定すべきなのか?」「その着想はどこから得るのか?」「その根本的な発想のスタート地点は、どこに置くべきか?」といった、そもそもの疑問を解消する必要がある。結論から言うと、その答えは、「ペイン」にある。ペインとは、悩み・痛み・不満・不安・非効率などの苦痛の総称である。

■目標と現状のギャップであるペインを探る

すべてのペインは、「目標と現状のギャップ(=差)」から生まれている。「幸せになりたいのに、不幸せである(=悩み)」「仕事で評価されたいのに、評価されない(=不満)」「受験で合格したいのに、合格できそうにない(=不安)」といったギャップだ。このギャップから生まれる、悩み・不満・不安などの苦痛こそが、「ペイン」なのである。

そして、そのペインが、問いのスタート地点になっていることが多い。たとえば、健康食品なら「体調不良」がペインであるし、インスタント食品なら「空腹」。旅行なら「日常からの脱却」などである。これらはすべて「ペイン」と呼ばれる。つまり、解くべき問いの設定は、ペインから発想するべきなのだ。

ビジネスでの具体的な例を挙げておこう。あなたはいま営業で、見込み客に自社のサービスの説明をすることになった。このとき、あなたがまずやるべきことは、見込み客が「どんな目標をもっているか」と「どんな現状なのか」を把握することだ。つまり、「ペイン」を明らかにすることである。

そのうえで、そのペインを解消するための答えが得られる問いを立てるべきなのだ。別の言い方をすれば、自社のサービスを利用することで、見込み客の目標と現状との差分を、どのように埋められるのかを提案するということだ。

少し混乱するかもしれない。だとしたら、これだけ覚えてほしい。

・相手の「目標」と「現状」との間のギャップ=ペイン
・そのペインを解消するための答えが得られる問い=提案

■相手より上の視点を持った問いを設定する

「ペイン」を探す方法はわかった。ここからは、あなたが見つけた「ペイン」を、具体的にどうやって育て、問いをつくるのかを学んでいこう。先で紹介した、

問いの立て方3つのフロー
①ペインを探す
②最大の問いを設定する
③問いを分解する

の②である。この問いが解けたら、「不安がなくなった!」「悩みが解決した!」「満足できる!」というような最終的なゴールを設定する、ということだ。あなたが最終的に解くべき、大きな問いを設定するのだ。このとき役に立つのが【上位一貫性の法則】と呼ばれるものである。定義すると、「相手の1つ上、または2つ上の視点まで一貫して考慮した問いを立てること」となる。

これは具体例があったほうがいいだろう。

以前、100年近く続くある企業と、業務をともにした際の話をしよう。その企業は、既存のやり方にこだわり、直近の業績が悪化していた。私が対峙(たいじ)する担当者は、とてもやる気があり、一緒にデジタル化の推進をしようとしたが、老舗大企業の風土もあり、「新しいことになかなか挑戦できていない」というペインを抱えていた。では、どうすべきか?

答えは、1つ上、または2つ上の視点をもつことだ。具体的には、担当者が所属している「チーム」、その上の「事業部」、さらに上の「会社」のペインまで、一貫して考慮した問いを立てることだ。

■施策のインパクトの大きさよりも視点の広さ

上の視点で見ると、担当者の上長のペインは、デジタル化の推進そのものではなく、はじめての取り組みであるデジタル化に伴う失敗リスクだったのだ。これでは、どれだけ担当者がデジタル化の重要性を説いても、うまくいかない。

そこで私は、「他社の事例で、すでにうまくいっている外部パートナーに協力を仰ぐことで、安心感をもってもらう」という提案をした。その結果、上長も納得し、担当者と上長ともに念願だったデジタル化を成し遂げ、担当者は年間の社長賞を受賞した。

まさに、担当者目線で見た施策のインパクトの大きさではなく、1つ上、または2つ上の視点まで一貫して考慮した結果であった。

さて、これは割とむずかしい話をしたかもしれない。もしそう感じたなら、つぎの2点のみ、覚えて実践してほしい。

・「相手のペインはなにか?」だけでなく、「その相手の上にいる人のペインはなにか?」も考える
・両者のペインを一貫して考慮した問いを立てる

これが、【上位一貫性の法則】と呼ばれるものである。

ちなみに、これはすぐれた営業、コンサルタント、プランナーであれば、あまりに当然にやっていることだが、感覚的にやっていることも多い。したがって、こうやって言語化することで、再現性を上げられるのだ。

■「最大の問い」はそのままでは大きすぎて解きにくい

私が思うに、ビジネスとは知的格闘技だ。いろんな技術を使い、1つずつ問題を倒していく。では、知的格闘技において、勝つための方法論はなにか? それは、大きな問題を小さく分解して1つずつ答えを出していくことだ。大きな問題を意識しながら、まず小さな問題に分解して、解く。そうすると、大きな問題が解けるのだ。

ボクシンググローブを持つビジネスマン
写真=iStock.com/_jure
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/_jure

これは、提案においても、基本となる考えだ。どうやって「目標」と「現状」のギャップを埋めるのか、という問題も、分解して考えればいい。つまり、先に紹介した

問いの立て方3つのフロー
①ペインを探す
②最大の問いを設定する
③問いを分解する

の③である。つまり、「問いを分解する」のだ。

どのように分解するかというと、②で設定した「最大の問い」を、小さく分解し、解きやすい粒度まで細かくするのだ。たとえば、「人はどうやって幸せに生きていけばいいのか?」という問いは、大きすぎて解くことがむずかしい。

一方で、この問いを、「今日1日ご機嫌に生きるには、どうすればいいのか?」「明日もそれを続けるには、どうすればいいか?」という粒度に分解すれば、解ける可能性はぐっと上がる。こういうことだ。このとき役に立つのが、【セントラル・サブの法則】だ。

【セントラル・サブの法則】は、「セントラルクエスチョンを立てる→サブクエスチョンに分解する」の2段階で進める。

「また新しい法則か……」と思うかもしれない。そして、いまから私が話す内容は、かなり上級者向けである。だが、だからこそ、得られるリターンは大きい。がんばろう。

■「最大の問い」の道しるべとなる問いを設定する

具体例で話していきたい。

たとえば、いま、あなたは専門学校を出たばかりの見習いシェフだとしよう。あなたは世界一のシェフになりたいと思っている。このとき、目標と現状は、明確である。目標は「世界一のシェフになる」で、現状は「見習いシェフ」だ。そして、あなたが問うべきは、「どうやったら世界一のシェフになれるのか?」である。これをセントラルクエスチョン(=CQ)と呼ぶ。最終的なゴールであり、その名前のとおり、「ど真ん中の問い」であり、「本質的な問い」を指す。

○セントラルクエスチョン(=CQ)の例
・どうやったら、世界一のシェフになれるのか?

一方で、サブクエスチョン(=SQ)というものがある。これは、その名前のとおり、「サブ」となる問いである。重要なのは、セントラルクエスチョンとサブクエスチョンの関係性にある。小さな問い(=SQ)は、大きな問い(=CQ)の道しるべになっていなければならない。言い換えれば、あなたが「サブクエスチョン」を解いていったら、自然と「セントラルクエスチョン」の問題が解けているべきなのだ。

先のシェフの例であれば、こうなる。

○サブクエスチョン(=SQ)の例
・前提として、世界一のシェフの「定義」はなにか?
・いまの世界一のシェフはどんな人で、若い頃、どんなことをしてきたか?
・これを踏まえて、私は明日からどう時間を過ごせばいいか?

まず、セントラルクエスチョンは、「どうやったら、世界一のシェフになれるのか?」という、抽象的で大きな問いだった。あなたの最終的なゴールだ。

一方で、サブクエスチョンは、そのゴールを達成するための具体的な問いだ。今回でいうと、「世界一のシェフの定義をしたうえで→その人物が若い頃やっていたことを考え→自分が明日からやるべきことを整理する」というふうに、具体的な項目に落ちている。つまり、こう整理できる。

・セントラルクエスチョン(=CQ):抽象的で、大きい問い。ゴールとなる。
・サブクエスチョン(=SQ):具体的で、小さな問い。プロセスとなる。

そして、この両者には、おおよそ1対3の法則がある。つまり、1つのセントラルクエスチョンは、3つのサブクエスチョンで補足するぐらいがちょうどいいのだ。サブクエスチョンを3つ解いたら、セントラルクエスチョンを1つ解けるようになっている。こういう構造にすべきなのだ。

■【セントラル・サブの法則】の使い方

では、実際に、【セントラル・サブの法則】を使ってみよう。

たとえば、あなたはいま、入社1年目だとしよう。マーケティング部署に配属されたあなたは、自社のウェブサービスの「有料会員数」を目標として追っている。サービスの種類は、なんでもいい。NetflixやSpotifyなどの月額コンテンツサービスをイメージしてもらってもいいだろう。

現状の有料会員数は100万人。目標は、3カ月以内に105万人にすること。5万人の差だ。まず、あなたが解くべき最終的な問い(=CQ)を設定しよう。ここでは、「どうすれば、3カ月で5万人の会員を獲得できるのか?」だ。シンプルだ。むずかしく考える必要はない。

自分の役割を、「5万人の差分を埋めること」だと理解したあなたは、広告予算を確認した。結果、ウェブ広告の予算が1000万円使えるとわかった。1000万円を使って、5万人の有料会員を獲得するわけだ。しかし、ここで問題が発覚する。これまでの過去実績を考慮すると、1000万円で獲得できる会員は、3万人程度になりそうなのだ。困った。どうすべきなのだろうか?

このとき、あなたが解くべき問いは、「1000万円を使っても、3万人しか獲得できない。でも目標は5万人だ。だとしたら、どうやって差分の2万人を埋めるべきなのか?」と、より具体的になる。

■小さな問いは最大の問いを補足する

さて、いま、まさにあなたが体感したプロセスが、「問いを分解する」という作業である。言い換えれば、「セントラルクエスチョン(=CQ)を、サブクエスチョン(=SQ)に分解している」ということなのだ。より具体的にメモに落とすと、こう書ける。

○問いの分解例(SQ2まで)
CQ:3カ月以内に5万人の会員を、予算内で獲得するには?(=目標と現状とのギャップから生まれた問い)
SQ1:現状の1000万円の予算で獲得できる見込み人数は?(=3万人)
SQ2:その差分(=2万人)を埋めるために必要な行動は?

どうだろうか? これが、セントラルクエスチョンを、サブクエスチョンに分解する技術なのだ。まず、セントラルクエスチョンは、目標と現状のギャップから生まれている。一方で、そのあとに生まれたサブクエスチョンは、セントラルクエスチョンを補足するかたちになっている。

■優先順位を決める問いをサブクエスチョンに加える

先ほどの「マーケティング例」のメモは、まだ完成していない。言い換えれば、問題を完璧に解ける状態ではないのだ。というのも、サブクエスチョン(=SQ)をすべて解いても、セントラルクエスチョン(=CQ)にしっかりと答えられないからだ。

そして、その理由は「優先順位」にある。優先順位がつけられていない問題を、ほとんどの人は解けないのだ。CQをSQに分解するとは、つまり、優先順位をつけることなのだ。

では、どうすればいいのか? 優先順位をつけるために、問いをさらに1つ足すのだ。たとえば、こうである。

○問いの分解例(SQ3を追加)
CQ:3カ月以内に5万人の会員を、予算内で獲得するには?(=目標と現状とのギャップから生まれた問い)
SQ1:現状の1000万円の予算で獲得できる見込み人数は?(=3万人)
SQ2:その差分(=2万人)を埋めるために必要な行動は?
SQ3:どういう優先順位で、どこから取り組むべきか?

このとき、あなたは、時間や予算という制約条件を踏まえて、「なにを優先的にすべきなのか?」の答えを得られる準備ができた。つまり、SQの3つめは、「優先順位を決める問い」を入れるべきなのだ。

これが、【セントラル・サブの法則】のじょうずな使い方である。まとめると、こうなる。

○【セントラル・サブの法則】を使った問いの立て方
CQ:あなたが最終的に解くべき問い
SQ1:あなたの「目標」をより具体化するための問い
SQ2:あなたの「現状」を踏まえて、やるべきことを明確にするための問い
SQ3:優先順位をつけて、「なにから取り組むべきなのか?」を明確にするための問い

少しむずかしく感じた人もいるかもしれない。でも、改めて伝えたいのは、本当はちっともむずかしくない、ということだ。なぜなら、このプロセスは、あなたも普段から自然にやっていることだからだ。じつは、シンプルな話なのである。そのことをあなたに知ってもらい、安心してもらうために、もう1つだけ例を挙げたい。あと少しだけ、ついてきてほしい。

■だれもが普段から自然に「問いを分解」している

この例は、まさに普段から私たちが自然にやっている「問いを分解する技術」そのものだ。心から腹落ちしてもらうために、ぜひイメージしてほしい。

いま、あなたは、40キロ離れた大型のショッピングモールに買いものに行こうとしている。最大で60キロまで出せる道路だが、安全を考慮し、普段は時速40キロで走っている。信号もほとんどないため、1時間で到着できる。往復だと2時間だ。もともとは、スケジュールに余裕があった。しかし、午後から急に天気が荒れるらしいと聞いたあなたは焦る。洗濯物を干していたため、予定を前倒しして、20分早く帰らないといけない。買いものは今日絶対にしたい。

車の中で時計を見るビジネスマン
写真=iStock.com/PixelsEffect
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/PixelsEffect

さて、あなたはどのような思考プロセスを経て、結論を出していくだろうか? ほとんどの人は、こう考えるのではないだろうか。時速40キロではなく、車の速度を上げよう。加えて、ショッピングモールでの買いものを急いで済まそうと。

このとき、私たちはじつは、前述のマーケティングの例と、まったく同じ脳の使い方をしている。具体的には、以下のように「問いを分割」しているのだ。

○問いの分解例
CQ:X時X分までに買いものから帰ってくるには、どうすればいいか?
SQ1:通常の速度(=40キロ)で走ると、何時に到着してしまうのか?
SQ2:差分の時間を埋めるために、できることはなにか?
SQ3:どういう優先順位で、どこから取り組むべきか?

このとき、まさに先ほど話したとおりの構造になっているのが、わかるのではないだろうか? つまり、こうなっている。

○【セントラル・サブの法則】の問いの立て方(再掲・追記)
CQ:あなたが最終的に解くべき問い(=買いものの完了)
SQ1:あなたの「目標」をより具体化するための問い(=到着予定時刻の予測)
SQ2:あなたの「現状」を踏まえて、やるべきことを明確化するための問い(=早く着くためにできることの明確化)
SQ3:優先順位をつけて、「なにから取り組むべきなのか?」を明確にするための問い(=まず速度をあげよう)

■必要なのは特別なスキルではなく小学生レベルの算数

結局のところ、実際のビジネスの世界で使う論理的思考は、それほどむずかしいことではないと、私は思う。あえて言い切るなら、必要なのは、小学生レベルの四則演算を「とてもじょうずに使いこなせる」ことだ。

北野唯我『仕事の教科書』(日本図書センター)
北野唯我『仕事の教科書』(日本図書センター)

この本は、ある意味で、私がこれまで積み重ねてきた思考の「じょうずな使い方」を伝えているようなものだ。そして、私が使っているのは、小学生レベルの四則演算でしかない。だからこそ、私がもっている技術を、あなたにもこうやって伝えられるわけである。もし、私がもっている技術が特殊技能であれば、あなたに伝えることはできない。

というのも、ビジネスの世界では、きわめて重要なルールがあるからだ。それは、「どれだけ複雑な計算問題が解けるのか?」よりも、「複雑そうに見える問題を、いかにシンプルな問題に置き換えて、だれでも解ける状態にできるのか?」のほうが、じつは数億倍も価値がある、ということだ。だからこそ、ぜひ使ってほしいのだ。応援している。

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北野 唯我(きたの・ゆいが)
ワンキャリア取締役
兵庫県出身、神戸大学経営学部卒。就職氷河期に博報堂へ入社。ボストンコンサルティンググループを経て、2016年、ワンキャリアに参画。現在取締役として人事領域・戦略領域・広報クリエイティブ領域を統括。またテレビ番組や新聞、ビジネス誌などで「職業人生の設計」「組織戦略」の専門家としてコメントを寄せる。著書に『転職の思考法』『オープネス』(ダイヤモンド社)、『天才を殺す凡人』(日本経済新聞出版社)、『分断を生むエジソン』(講談社)がある。

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(ワンキャリア取締役 北野 唯我)

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