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「20代で年収1000万円」も十分可能だが…「ハウスメーカーの営業マン」が高給の代わりに失うもの

プレジデントオンライン / 2022年5月17日 10時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/venuestock

ハウスメーカーの営業とはどんな仕事なのか。住宅会社で15年間営業として勤務した藤吉郎さんは「20代で年収1000万を稼ぐ人がいる。だが、家族との時間を犠牲にせざるを得ず、営業所の半数がバツイチということもざらにある」という――。

※本稿は、藤吉郎『注文住宅は担当者が9割』(文芸社)の一部を再編集したものです。

■ハウスメーカーの多くはブラック企業

聞いたことがあるかもしれませんが、住宅業界はブラックです。

もちろん会社によりますが、ブラックが多いです。新入社員を育てる教育制度がある会社は珍しく、大手ハウスメーカーぐらいのものです。

ほとんどの会社は営業所の所長、店長の人格次第です。

教育に興味がない店長であれば雑用に使われますし、運良く教育に興味がある店長の下についたとしても、一人前になるのは並の苦労ではありません。

私も新入社員の頃はダイレクトメールを何百枚と出したり、上司とのお酒に付き合って、その後、また22時くらいに会社に戻って夜中まで仕事したりしていました。

■3人の上司の都合に振り回される日々

今でも忘れませんが、私が入社2年目にいた店舗では、「朝6時から仕事する朝型タイプの先輩」と、「夜中の3時まで残業する夜型タイプの先輩」と、「18時ピッタリに退社して毎日飲みに行く店長」の3人がいました。

朝型の先輩
「いいか? わからないことがあれば朝早く出社して俺に聞け」
「通常の業務時間中は邪魔だから質問しないように」
「新人だから朝早く来るのは当然じゃないか?」

夜型の先輩
「いいか? わからないことがあれば仕事の落ち着いた22時以降に聞け」
「通常の業務時間中は邪魔だから質問するな」
「まさか先輩より早く家に帰りたいとか言うなよ」

店長
「仕事を教えてほしい? その前に飲みに行くぞ!」
「仕事ばっかりじゃなくて、気分転換も大事だぞ!」

■毎日朝6時に出社し、夜中3時に会社を出る

朝型の先輩は昔ながらの職人かたぎの方でしたので、決して悪気はなく、当然のように朝方の出社を勧められました。人格者でしたし、私のためを思って言っていただいていることがわかっていたので、断り切れませんでした。

夜型の先輩は仕事が大好きな方で、面倒見が良いところはあるのですが、かなりネチネチした人でした。仕事で困った時に聞く相手がいないので断り切れませんでした。

店長はお酒が好きで、頭の回転が速く、気が短い方でした。しかし、男気があり、サッパリした性格で成績優秀でしたので、魅力的な方でした。厳しい方でしたが、お客さまとの商談に同席してくださる優しい面もある方でした。そしてお酒のお誘いを断ると本気でスネるので断り切れませんでした。

ということで毎日朝6時から出社し、夜19時にお酒に付き合い、その後、22時に会社に戻り、夜中3時に会社を出るというルーティンを半年続けました。

案の定、居眠り運転で事故を起こしました。その後は命を守るため、朝は普通の時間に出社し、残業を断り、時々お酒に付き合うという形に変えました。

しんどい毎日でしたが、同期よりもはるかに成長速度が上がりました。ちなみに、その営業所は全国一位の契約数でした。しかし退職者が後を絶たない営業所でした。

原因は先ほどの3人です。あまりに過酷な環境でしたので、私はその3人のことを「魔のトライアングル」と呼んでいました。もう戻りたくはありませんが、今となっては良い思い出です。

15年近く前の話ですので、今はここまで過酷な環境ではないと思いますが、長時間労働は住宅営業の中では普通のことでした。

大切なのは「仕事にやりがいと目標を持つこと」「心が折れないようにすること」です。

私は夜型のネチネチ男には負けないことを目標にしていました。(ネチ男さんとは今でも仲良くしています)「こんなネチネチしたおっさんには絶対負けない」と誓っていました。

何でも良いので「心を燃やす」ことが成長する秘訣(ひけつ)だと感じます。

■休みの日でも一日中電話が鳴りやまない

毎日ではありませんが、明け方まで仕事が終わらないことや、休みの日も出勤せざるを得ないことはめずらしくありませんでした。

私は住宅営業の仕事が好きでしたので、そこまで苦痛ではありませんでしたが、家族を犠牲にしていました。

イチ営業マンであれば契約数を意識して制限すれば、ある程度の時間に帰宅できるのですが、店長になるとそうはいきません。

私が勤めていた会社は経営不振でしたので、お店を黒字にしないと店舗閉鎖になる危険性もありました。従業員の雇用を守るためでもありましたし、自分の限界に挑戦したい気持ちもありましたので、毎日夜遅くまで残業していました。

契約がたくさん取れて、お客さまが多くなると休みの日も電話が一日中鳴ります。お客さま、協力業者さま、上司、部下から電話が止まりませんでした。

つらそうな表情で携帯電話で対応するビジネスマン
写真=iStock.com/NicolasMcComber
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/NicolasMcComber

かと言って売れない営業マンは、周りからばかにされた扱いを受けます。50代のベテラン社員でも、売れなくなれば軽く扱われるようになります。

売れすぎると家にいる時間が短くなり、売れないと会社にいる時間が苦痛です。

■長男に言われた一言で目が覚めた

私は仕事が好きでしたので、忙しくても苦痛ではなかったのですが、妻と子供を犠牲にしたことを痛感する出来事がありました。

長男が小学校の作文で「親の仕事について」書く宿題があったのですが、なんと長男は妻のパートのことを作文に書いて発表したそうです。

長男に理由を聞いたところ、「だってお父さんはいつも家にいないじゃん」と言われてハッとしました。

お客さまにとっては一生に一度の家ですが、自分の人生も一度です。

年間契約数の目安を自分の中で考えるべきだと思いました。目安はお客さまと自分の家族を両方大事にできるボーダーラインの棟数です。

個人の能力差や住宅会社によって業務の範囲が異なりますので、適正な契約件数は一概には言えませんが、まず自分の家族を大切にすることを見失わないようにするべきだったと、長男に言われたその時に初めて気がつきました。

■20代でも年収1000万は可能だけれど

住宅営業マンは驚くほど離婚歴のある方が多いです。一つの営業所のメンバーの半分がバツイチでも普通のことです。バツ2、バツ3の方も何人かいました。

もちろん人それぞれ事情がありますので、理由もまちまちですが、やはり家族で過ごす時間を大切にすることを意識していないと、本当にすれ違いばかりになります。

離婚届とボールペン
写真=iStock.com/yuruphoto
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/yuruphoto
〈私が考える離婚が住宅営業に多い理由〉
・長時間労働なので夫婦で過ごす時間が少ない
・平日休みなので子供と過ごす時間が少ない
・年収が高くなり、遊びだす
・年収が高くなり、態度が大きくなる
・休みの日も仕事で家族と過ごしていない

会社によりますが、20代でも1000万稼ぐことが可能です。そこで感覚や価値観、人間性がおかしくなる方も少なからずいるのかなと思います。

私も1000万を目標にしておりましたが、目標を達成したとたんに、何も意味がない目標だったと感じてむなしくなりました。

家族と過ごす時間はお金よりも大切であることに気がつくまで、10年かかりました。

当たり前のことが見えるまで時間がかかりましたが、お家とは「家族で過ごす時間を大切にする」ことを目的に建てるのです。そんな住まいづくりのお手伝いをする営業マンが、それを心から理解していなかったのは恥ずかしい限りです。

■3年以内に転職する営業マンはザラ

担当の営業が退職するとお客さまにとっては大変です。

【お客さま】前任の担当はこう言っていました
【後任担当】引き継ぎの時には聞いていません

後任の担当者がいかに優秀でも全てを引き継ぐことは難しいです。

担当の営業さんを気に入って契約する場合は、その営業さんに転職の予定がないか確認したいところですが、聞いても本当のことはなかなか言えないので難しいです。

その営業さんに会社で成し遂げたい目標を聞いてみたり、愛社精神を測る質問をしてみたりするのも良いかもしれません。

また、人間関係が良い営業所では離職率は低いと思いますので、事務所の雰囲気等も重要だと思います。

「転職しませんよね?」とストレートに聞いてみましょう。

■顧客目線に欠けた設計士、現場監督

どこの会社でも職種間での溝があると思いますが、住宅業界もそれは同じです。

藤吉郎『注文住宅は担当者が9割』(文芸社)
藤吉郎『注文住宅は担当者が9割』(文芸社)

営業が必死に夜遅くまで頑張って契約を取ってきても、設計士は良い間取りを考えることに非協力的であったり、受注に興味がない様子を隠さない方もいたり、現場監督は職人さんの事情を優先してしまい、お客さま目線がなかったり等、いろいろ納得いかないことがありました。

もちろん、それは一部の人たちですので、全体の話ではありませんし、職種が違えば価値観や視点が異なるので、衝突するのは当然のことだと思います。

私が特に納得いかなかったのは「お客さま目線」がない設計士や現場監督です。「誰からお金をもらっているのか?」それを認識していない一部の人に腹を立てたことが何度かあります。

誰のために? 何のために? これがお客さまのためであることが明確であれば、意見が衝突しても人間関係は悪くなりません。

■住宅会社を選ぶときのポイント

住宅会社を選ぶ際のポイントとしては「スタッフの仲が良いこと」です。お互いの職種を尊重しながら意見交換ができる職場は少ないですが、少なからずあります。

スタッフ全員がお客さまを満足させることに喜びを感じている会社であれば、良いお家を建ててくれます。

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藤吉郎(とうきちろう)
元住宅会社営業マン
某ハウスメーカー・工務店で住宅営業として15年間勤務、150件の引き渡しを経験。現在も住宅業界の仕事に従事。著書に『注文住宅は担当者が9割』(文芸社)。

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(元住宅会社営業マン 藤吉郎)

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