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「頭のいい女子は医学部を蹴れ」現役女医が激推しする、稼ぎも恋も叶える"大学のある学部"

プレジデントオンライン / 2022年6月13日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/maruco

日本の理工学部の女子学生率は世界的に見ても極端に少ない。医師の筒井冨美さんは「頭のいい女子高生は医学部を選択することが多い。大学側は理工系学部には、将来家庭を持ちつつ安定収入を得たり、恋愛・結婚といったプライベートを充実させたりする可能性があることをもっとアピールすべきだ」という――。

■国立女子大に相次ぐ、工学部新設

2022年4月、国立奈良女子大に工学部が新設された。また、国立お茶の水女子大にはすでにある理学部情報科学科とは別に、共創工学部を準備(2024年度開設予定)している。

日本はかねてより、女性の理工系人材育成の遅れが指摘されている。経済協力開発機構(OECD)の調査によると、2019年に大学などの高等教育機関に入学した学生のうち、日本は「自然科学/工学」分野での女性率が「27%・16%」と、加盟国平均の「52%・26%」を大きく下回り、「比較可能な36カ国中で最低の割合」と報告されている。そうした中、冒頭の国立女子大2校の取り組みは、遅れを取り戻すものとして期待されている。

また6月1日に、岸田文雄総理は衆院予算委員会で、「理工系分野の学問を専攻する女性の割合を男子学生と同等の3割程度に引き上げることを目指す」と明言している。

■日本再興の要は、STEM人材育成だが…

2020年からのコロナ禍対策としてデジタル化を急ぐよう叫ばれたが、わが国では今もって「紙と印鑑とファックス」の使用率はそれほど下がっていない。他の先進国に比べ日本行政のIT化の遅れは明白であり、STEM(ステム※)人材育成も急を要している。

※STEM=science, technology, engineering and mathematicsの頭文字。科学・技術・工学・数学分野を総称する用語。

そうした流れの中、2021年に日本政府はようやくデジタル庁を創設した。平井卓也デジタル改革相(当時)の「初代長官には民間出身の女性が就いてほしい」という発言もあり、事務次官に相当する初代デジタル監として一橋大学名誉教授の石倉洋子氏(当時72歳)の就任が発表された。そこまではよかった。

ところが、発表直後に石倉氏の公式ホームページでPIXTA(有料画像販売サイト)の画像無断使用が指摘され、はやくも「IT常識の欠如」を疑われる事態に。石井氏は謝罪し、ホームページを修正してデジタル監に就任したものの、2022年4月に辞任した。その理由として一部ニュースは「デジタルの知見不足」と報じた。「事務次官が知見不足で早期辞職」とは前代未聞だろう。

日本の理工系に女性が少ないのは事実だが、「STEM素養があまり感じられない人材を、女性というだけで安易に理工系要職に抜擢しても逆効果になる」と見る向きもいるかもしれない。結果的に「女にSTEMはムリ」「女は使えない」などのイメージが残るおそれがあり、かえって次世代の女性STEM人材の育成を阻害してしまうかもしれない。

■リケジョ争奪戦、東工大のライバルは医学部

筆者が思うに、日本の工学部に女性が少ない最大の理由は、「理系女子高生の医学部(および、歯薬など医療系)一極集中」である。

各種メディアで特集される「医大合格者の多い高校ランキング」には桜蔭高校などのバリキャリ志向の女子進学高のみならず、白百合学園や雙葉高校のような伝統ある私立女子高が目立つ。

近年、女医の中には雑誌やウェブメディアなどで「医師夫とタワマンでホームパーティー」といった優雅なライフスタイルを公開する者もいる。その影響なのか、昭和時代から存在したバリキャリ系のみならず、「同じ医師の夫と結婚して、自分はパート程度(非常勤などで)に働く」という、医師業界でいうところの「ゆるふわ女医」を目指す女子高生も増えている。

一方、東京工業大学など理工系名門校のランキングでは、白百合学園や雙葉高校のような私立女子高を見ることはあまりない。また、そうした女子高生が「エンジニアと結婚したくて東工大を目指す」というのも聞いたことがない。

なぜなのか。

白衣でPCを使用している女性医師
写真=iStock.com/RRice1981
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/RRice1981

■STEM女性のロールモデル不在

女子高生の医学部人気の一因は、「テレビの医療ドラマ」やメディア露出している「タレント女医」のみならず、「近所のクリニックで働く女医」など身近なロールモデルが多く、本人も保護者も具体的な将来像をイメージしやすいからであろう。

一方、数学や物理が得意な女子高生が「東大か東工大で宇宙物理を学びたい」と志望しても、「宇宙で就職あるの!」「結婚どうするの!」「子育てと両立できるの!」と親や教師に迫られて、医大受験に半ば強制的に変更させられるケースも見聞きする。

リケジョ有名人と言えば、マルチタレントの楠田枝里子氏(東京理科大)、女優の菊川怜氏(東大建築)、元宇宙飛行士の山崎直子氏(東大工院)、AV女優の紗倉まな氏(国立高専)……といるにはいるが、あまたのタレント女医に比べれば少ない。よって、リケジョ女子高生が将来像をイメージしづらいのも事実である。

■真性リケジョにはつらい、医師という仕事

もちろん、女性が医師を目指すことは悪くない。だが、その道は甘くない。

理系最難関学部である医学部に晴れて合格した学生は、入学後も勉強漬けである。特に生物系講義で暗記を強いられる。医師国家試験に頻出の「筋肉名」「ウイルスの種類」「薬品の作用機序」など膨大な項目をコツコツ覚える必要があり、数学や物理が得意な“真性理系タイプ”にはつらいカリキュラムである。

さらに、現場の医師はありとあらゆる市井の人々への対処を求められる。「何か薬を飲みましたか?」と聞けば「白く丸い薬」と答える高齢認知症の患者。入院希望を断ると、時に「何かあったら責任取れるのか!」とすごむ家族もいる。さらに、診断書や保健所への届出など、いまだ紙と印鑑ベースの大量の書類作成業務も多い。非デジタル的な作業のオンパレードと言っていいだろう。

また、病院という職場は看護師・薬剤師・医療事務など数の上では圧倒的に女性が多く、女医率も増加している。中高年の男性医師に比べてソフトなイメージもあるが、筆者の経験からいえば、女性の人間関係に散見される、水面下のドロドロや抗争は後を絶たず、こちらもロジカルシンキングがモットーの真性リケジョにはつらい要素となるかもしれない。

窓の外を険しい表情で見つめる医療従事者の女性
写真=iStock.com/Plyushkin
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Plyushkin

■高学力リケジョには国際性アピール

冒頭で述べた通り、工学部の女子学生を増やすのは国の命題である。「医学部も狙える」レベルの高学力層に、工学部(特に情報系)にシフトしてもらうにはどうしたらいいのか。筆者はその魅力を「国際性・将来性」によってアピールするといいと考えている。

医師は国が与える医師免許を持ち、準公務員のような立場となる。現在のところ「日本で唯一、年収1000万円が保証されたライセンス」とも言われる。しかし、少子高齢化に伴い社会保障費の見直しが行われれば待遇低下は必至で、そうなった場合、国外での就労は困難だ。

コロナ渦中の2020年春、「不要不急の診療は中止」となり医師アルバイト相場は大きく値崩れして「時給2000円案件」も登場し、現在もコロナ前の水準には回復していない。近未来にAIが簡単な診療を担うようになれば、「ゆるふわ女医は時給2000円」は絵空事ではない。実は医師は今後も安泰とは限らないのだ。

それに対して、工学部などで学び確かなITスキルを身に付ければ、GAFAなどの外資系企業で国際的に活躍し、医師以上の収入を得ることも可能だ。高学力女子高生の多くは英語が得意で、国際的な職業に憧れる者もいる。また、ITフリーランスなど多様な働き方を選択できる。もし、定額長時間労働を強要されたら、さっさと会社を見切って転職して、ワークライフバランスも保持しやすい。今後、日本経済が没落しても、IT系ならば海外からリモートで仕事を請け負うことが可能だろう。

高偏差値の女子を工学部に誘導するために、大学側は例えば、ホームページや女子高生向けオープンキャンパスなどでGAFAやシリコンバレーで働く日本人女性ITエンジニアに(Zoomなどで)登場してもらうといいのではないか。医学部にはない国際的ネットワーキングや将来性をアピールすれば、「数学大好きだけど親教師の勧めで医学部志望」の女子の心が動くかもしれない。

■一般リケジョには資格取得と在宅勤務をアピールせよ

医学部を望めるほどには偏差値が高くない理系女子高生にも打つ手はある。例えば、工学部で情報系の資格取得をサポートできるカリキュラムは魅力的に映るだろうし、弁理士のような知的財産系の資格サポートカリキュラムも女子受験生を集めるのではないか。

経営工学系の学科で「経理系資格×IT資格」ダブル取得を応援すれば、就職には困らないだろう。かねてより理系学部の中でも建築学科・獣医学科・食品衛生学科など資格に直結する学科は女子学生率が比較的高い実績がある。

医師や教師などの古典的職業に比べて、テレワークが可能でパソコン一台あれば「自宅で子供の就眠後に仕事」のような働き方の自由度の高い仕事はコロナ禍によって浸透しつつあり、現代女子高生のニーズにも合致しているはずだ。

地方の家庭では「子供を都会の大学に出すと、そのまま就職して帰郷しないのでは」と不安を抱く保護者もいる。大学の工学部は、それを払拭(ふっしょく)すべく「東京のIT企業で職歴を積んだ後、地方でリモートワーク」のような事例をホームページなどで紹介するといいだろう。

■リケジョの婚活なら、工学部>医学部

工学部は恋愛や結婚などプライベートにも効果絶大だ。

昨今の女子高生医学部ブームの結果、東京近郊の私立医大では、「男女比1:2」のケースもある。医大に入学したら男性医師や医大生をゲットする」と意気込んだものの、周囲は似たような女子学生が多く計算通りにはいかない。

「卒業後の婚活」はさらに困難となるケースもある。前述のように、病院には女医のみならず看護師・薬剤師・事務職も女性率が高く、男性医師獲得への競争率は年々アップしている(もちろん女医全員が男性医師を狙っているわけではないが)。

一方、工学部の多くは女子学生率が2割以下で、工学部の就職先でも全般的に女性社員率は低い。社内結婚を選択する場合、婚活には絶対的に有利である。特に機械系のように女性率が極端に低い学科は“女性”というだけでお姫様扱いされる。医療界ではあり得ない好待遇を受けられる可能性を秘めている。

異性にモテたい、そして確実に結婚したい。そんな本音を持つリケジョにとって「これからの日本においては、医学部/医療系一択ではなく、工学部を中心としたSTEM進学も明るいよ」と伝えておきたい。

新婚カップルが小指つなぎ
写真=iStock.com/kyonntra
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kyonntra

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筒井 冨美(つつい・ふみ)
フリーランス麻酔科医、医学博士
地方の非医師家庭に生まれ、国立大学を卒業。米国留学、医大講師を経て、2007年より「特定の職場を持たないフリーランス医師」に転身。本業の傍ら、12年から「ドクターX~外科医・大門未知子~」など医療ドラマの制作協力や執筆活動も行う。近著に「フリーランス女医が教える「名医」と「迷医」の見分け方」(宝島社)、「フリーランス女医は見た 医者の稼ぎ方」(光文社新書)

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(フリーランス麻酔科医、医学博士 筒井 冨美)

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