1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ライフ総合

「ためしてガッテン」も大注目…がん死亡率が日本でもっとも低い掛川市で飲まれている"特殊なお茶"

プレジデントオンライン / 2022年6月28日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kuppa_rock

がん死亡率の低い地域で共通して飲まれているものがある。十文字学園女子大学客員教授の辨野義己さんは「がんによる死亡率が低い市区町村ランキングを見ると、上位15位のうち、7つの市区が緑茶の産地になっている。とりわけがん死亡率がもっとも低い掛川市では『深蒸し製法』という特殊なお茶が愛飲されている」という――。(第2回/全2回)

※本稿は、辨野義己『長寿菌まで育てる最高の腸活』(宝島社)の一部を再編集したものです。

■納豆は腸内環境を整えるだけでなく、生活習慣病にも効果がある

「腸年齢を若くしたいなら、毎日、ヨーグルトと納豆を食べましょう」

これは私がよく皆さんに言っていることです。私は、納豆は日本の味覚の代表だと思っています。外国人を自宅に泊めるときは、「納豆は食べられますか」と、必ず聞くほどです。

納豆は、日本で食べられるようになってから400年を超す長い歴史の中で、ほとんど姿を変えずに生き残っている伝統的な発酵食品です。これまでも、一度も事故がなかった食べ物なので、人体にとって安全であることは間違いなしです。その証拠に、「納豆で食中毒が起きた」という話は聞いたことがありませんよね?

納豆は、納豆菌で大豆を発酵させた食品です。納豆菌のメカニズムはまだ完全には明らかにされていませんが、大豆に含まれるオリゴ糖はビフィズス菌のエサになるので、納豆を食べると腸内でビフィズス菌が増えていきます。しかも、食べてから2~3日は「芽胞(がほう)(胞子)」という形で腸内にとどまるため、腸内環境を整えるうえでは大いに役立ちます。

さらに、煮た豆を発酵させて作られている納豆は、原料である大豆そのものと比べても、ビタミンB2が6倍もあり、ビタミンB6も多く含まれています。納豆に含まれる「ナットウキナーゼ」という酵素には、血栓を溶かす働きがあり、納豆菌自体にも血圧の上昇を抑える効果があります。つまり、納豆には、生活習慣病のリスクを下げる効果も期待できるということです。

■骨粗しょう症の予防にも効果が期待できる

他にも、納豆菌が作るビタミンKはカルシウムの吸収を促進するので、骨粗しょう症の予防にも効果的です。大豆のイソフラボンの効果もあります。味噌のように、塩分が多いというリスクもなく、これだけのメリットを兼ねそなえている納豆の他に、日本人の腸内環境を古くから守り続けてきた食べ物はないと言いたくなります。

納豆
写真=iStock.com/yankane
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/yankane

納豆菌は悪玉菌の増殖を防ぐ作用もありますが、腸内で3~7日しか生存できません。そのため週に1~2回以上は補充の意味で食べたほうがいいと思います。ちなみに私は、納豆を毎日2パック食べます。買い物に行ったら納豆を買うのを習慣にして、常に余裕を持って冷蔵庫にストックしています。

芸術家や食通として知られる北大路魯山人(きたおおじろさんじん)は納豆を食べる前に100回混ぜて粘り気を出したそうです。私は納豆をそのままでいただくのが好きですが、うどんのつけ汁に入れてからかき混ぜて泡立て、これに冷やしたうどんをつけながら食べるのも好きです。

つゆが少なくなったら、さらにかき混ぜると泡がまた立ちます。この食べ方は、納豆をよく食べる福島県の方から聞きました。粘り気や糸を引くのが嫌いな人は、大根おろしを加えると食べやすくなりますよ。

■快便を促す奄美大島の“発酵飲料”

漬物を漬けたことがある人はわかると思いますが、漬けるときにはわざわざ乳酸菌を入れません。それでも漬物が出来上がるのは、野菜自体に乳酸菌が付着しているからです。野菜に塩をして漬け込むことで、熟成と乳酸菌による発酵が促進し、発酵食品独特の酸味やうまみ、食欲をそそる香りが生まれます。

また、ぬか漬けはまず乳酸発酵が起き、そのあと酵母が発酵の過程を受け継ぎます。食べる前に水でぬかを洗い落とすと、ほとんどの菌が失われてしまうので、ペーパータオルなどでぬかを軽く拭き取る程度にしてください。

白菜漬けや野沢菜漬けは、洗わずそのまま食べられるので、効率よく乳酸菌を摂取できそうですが、塩分が心配です。長野県には塩を使わず乳酸発酵させる「すんき漬け」がありますが、これなら塩分も気にせずたくさん食べられそうです。

奄美には「魚味噌」の他にも独特の発酵文化が根付いています。私の興味を引いたのは「ミキ」という発酵飲料。見た目は飲むヨーグルトのような白濁色の液体で、作り方はいたってシンプル。

粥状にした米を50度ほどに冷まし、すりおろした生のさつまいもを加えるだけです。現在は市販品を買うことも多いようですが、かつては家庭ごとに作っていたといいます。ミキを研究室に持ち帰って解析したところ、1ミリリットルあたり1億個近くもの乳酸菌が見つかりました。まるでお米のヨーグルトです。おそらくいもに含まれるロイコノストックという乳酸菌が米を発酵させると考えられます。

これを飲んでいる、おばあさん、お母さん、娘さんの3世代のウンチには、ミキを飲んで摂取したと思われる乳酸菌も多くいました。もちろん皆さん、快便です。

■がん死亡率がもっとも低い掛川市で飲まれている“特殊なお茶”

『ためしてガッテン』というNHKの生活情報番組に出演したときに、緑茶によって腸内細菌がどう変化するかという実験を行いました。

緑茶を飲む習慣のない10人に、緑茶を10日間飲み続けてもらい、飲む前と飲んだあとの腸内細菌を調べました。すると、10人とも割合は緑茶を飲んだあとにビフィズス菌が優位に増えたのです。

ところが緑茶を飲むのを1週間やめてもらったところ、ビフィズス菌は飲み始める前とほぼ同じ割合に戻りました。緑茶でなぜビフィズス菌が増えたのか。それは、優れた抗菌作用のある成分「カテキン」によって、腸内の悪玉菌が抑制されて、結果的にビフィズス菌が増えることに寄与したのでしょう。ビフィズス菌は強いので、カテキンの抗菌力には負けず、むしろ悪玉菌が抑制されたことに勢いを得て急増したのだと考えています。

がんによる死亡率が低い市区町村ランキングを見ると、上位15位のうち、7つの市区が緑茶の産地でした。特に掛川市は人口10万人以上の市区町村の中で、がんによる死亡率が日本でもっとも低く、高齢者の医療費も全国平均と比べて20%以上も低いのです。同じく『ためしてガッテン』で、掛川茶の健康効果について探りました。

掛川茶は、深蒸し製法という昔ながらの製法で作られています。茶葉ごと飲むお茶のため色が濃く、たくさんの浮遊物が含まれているのが特徴的。この浮遊物からは抗酸化作用があるβカロチン、免疫機能改善効果があるビタミンE、腸内環境を整えるクロロフィルが検出されました。これらの成分は普通の緑茶にはほとんど含まれていませんが、一般的な緑茶でも、すり鉢で粉砕すると掛川茶と同じような成分をとることが可能。緑茶を飲む習慣は手軽にできる腸活と言えそうです。

■お茶にも発酵食品が存在している

お茶の中にも発酵食品があるのはご存じでしょうか。

辨野義己『長寿菌まで育てる最高の腸活』(宝島社)
辨野義己『長寿菌まで育てる最高の腸活』(宝島社)

高知県特産の「碁石茶」と徳島県特産の「阿波番茶」は、日本固有の発酵茶で、通販などでも入手可能です。碁石茶も阿波番茶も、乳酸発酵させたお茶です。緑茶は、カテキンの腸内環境改善効果がありますが、碁石茶や阿波番茶のように乳酸菌はとれません。

お茶といえば、緑や茶色のイメージですが、これらのお茶は真っ黒。しかも、碁石茶は黒い茶葉が四角く固まり、まるで碁石のよう。パッと見るとのりのようでもあります。肝心の味は、酸味があり酸っぱいのが特徴で、乳酸発酵しているのがよくわかります。風変わりと言えますが、慣れるとクセになる味です。

市販のペットボトルのお茶には着色料や香料、防腐剤といった添加物も多いので、腸内環境によいお茶を自分で煎じて飲む習慣を持ちたいものです。

----------

辨野 義己(べんの・よしみ)
一般財団法人辨野腸内フローラ研究所理事長
1948年、大阪生まれ。酪農学園大学酪農学部獣医学科卒業。東京農工大学大学院獣医学専攻を経て理化学研究所研究員。1982年東京大学農学博士授与。2009年同所辨野特別研究室特別招聘研究員、2021年退職後、現在、国立研究開発法人理化学研究所名誉研究員、十文字学園女子大学客員教授。およそ半世紀にわたって腸内細菌の分類と生態を研究し続けている。著書に『「腸内細菌」が健康寿命を決める』、『長寿菌まで育てる最高の腸活』(宝島社)など。

----------

(一般財団法人辨野腸内フローラ研究所理事長 辨野 義己)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください