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「おもちゃがほしい」とわが子にねだられたとき、大富豪の親が聞き返す2つの質問

プレジデントオンライン / 2022年6月24日 10時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/FotoDuets

「自分の子どもはお金に困らないように育ってほしい」とは、世の親に共通する願いだろう。お金、株式、不動産など多くの継ぐべき資産を持つ大富豪は、どのようにお金のしつけを行っているのだろうか。執事として大富豪に仕え、富裕層事情に詳しい新井直之氏が語る「名家の金銭教育」の実態とは──。「プレジデント」(2022年7月15日号)の特集「『金持ち思考』入門」より、記事の一部をお届けします。

■一般家庭と同じこと、違うこと

大富豪の子育てとは、一体どんなものか想像がつきますか? 昔の大富豪を描いたドラマや映画では、子育ては乳母がおこない親は関与しないように見えますが、現代では子育てのメインは親で、ベビーシッターやホームヘルパー、執事などがサポートするケースがほとんどです。一般的な家庭に比べると親による教育の比重は小さいですが、生き方や考え方など心を育てる教育は親が中心です。知育や音楽、体操などは専門家に委託します。

執事を雇うクラスの大富豪は、中堅企業から世界的大企業の創業家一族や、有名クリエーターやプロスポーツ選手などが主で、年収は最低でも5億円、資産は最低50億円はある人々です。年収数百億円、資産数兆円という人や、フォーブスの長者番付ランキングTOP10に入る人もいます。

私が見てきた先祖代々からの大富豪についてお話しします。2歳ごろから「お金の豊かな使い方」を教えられ、子に継承します。お金は労働の対価であること、お金をなぜ使うか、お金の使用で得られる価値などを、生活の中で教えています。例えば、子どもが「おもちゃが欲しい」と言った場合、なぜ欲しいか、手に入れたらどんな気持ちになるかを確認します。「友達が持っているから」では自分が欲しい理由にはなりません。「このおもちゃがあれば友達と遊べるから」であれば、子どもなりに人間関係の育成という価値を見出していることになります。

こうして、お金で買えない心の豊かさや、手に入れることで得られる価値を考える心のベースを、幼少期から持たせます。

■「人のために使いなさい」と教える

本人が一代で財を築いた家庭と、代々の大富豪では子育ての熟練度が異なります。前者は“お金持ち”の初代となりますから、継承していくための子育てはこれから実践していくことになります。一方で、代々の大富豪は先代からの学びが子に継承されており、子は次の世代へ継承する立場を理解して育つため、さらにブラッシュアップして自身の子育てに臨みます。

大富豪の子どもはお小遣いもさぞ大金だろうと思われがちですが、先祖代々の大富豪ファミリーでは、子どもの小遣いは一般的で、小学生なら月1000円程度です。使い方は本人に任せつつ、「人のために使いなさい」と教える点が共通しています。

親子で貯蓄
写真=iStock.com/Hispanolistic
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Hispanolistic

なぜ「人のため」か。財産を代々受け継いでいく立場の人間は、いかなる財力や経営手腕よりも人格者であることが第一条件だと、親が痛感しているからです。例えば、子どもが後発開発途上国の子どもの学用品サポートなどにお小遣いを使うと、サポートを受けた海外の子どもとオンラインでコミュニケーションが始まるなど、お金では買えない心の豊かさや人とのつながりを得ることができます。と同時に「人のためにお金を使う」ことが気持ちいいことだと実感できます。

小学生になると、子どもに「利益の仕組み」を学ばせるために親が子に投資をします。月に1000円を渡し、1カ月後には元本を返済してもらう、というようなものです。子どもは元本の1000円をどう増やすか、頭を使うことになります。例えば、ファミリーパックのお菓子を仕入れ、小分けにして家族に売り、利益を得るなどの家庭内での商売を考えます。執事である私も、お菓子を買わされたことがあります(笑)。仕入れの際にA店とB店の価格を比較し、より利益が出る店を選ぶなどの知恵をつける経験もします。

中学生、高校生になると、親の口座を活用し、お年玉の貯金などを元とした子どものお金で投資をさせることもあります。株式、金やプラチナ、仮想通貨、NFTなど、子どもが将来性を感じるものに投資させます。自分のお小遣いですから、子どもは真剣です。

■スマホや電子マネー、子どもにどう与える?

大富豪の家庭では、早くから子どもにデジタル環境を提供します。幼少期から親のタブレットで遊ばせ、スマホは小学校入学と同時に与えられます。これからの社会はスマホが生きるすべになるからです。自宅から離れた私立小学校やインターナショナルスクールなどに通う子が多く、送迎時間などのやりとりが必要だったり、防犯上の理由などを鑑み、小学校入学のタイミングでスマホを持ち始める子が多いです。ただし、ここでも大富豪の「お金の使い方」教育は徹底していて、無制限には使わせません。どんなに裕福でも、子どもが利用するスマホは時間を制限したり、インターネットの利用制限をきちんとかけています。

電子マネーも積極的に使わせます。例えばSuicaなどのICカードには、月初に定額をチャージして、あとの使用は子どもに任せます。月末には一緒に使用履歴データを確認し、フィードバックを行います。用途不明な項目はきちんと理由を聞きます。使用履歴は、昔でいうお小遣い帳の役割になります。

「ジュースを買った」と子どもが言ったら、勝手にジュースを買ったことを叱るのではなく、なぜ買ったかを尋ねます。「友達と仲良くなる時間を過ごすために買った」のであれば、お金に換えられない心の豊かさを得たことになり、使う価値があったとみなします。このように、大富豪のお金の教育は、金銭ではなく心の豊かさを得るための使い方を教えているのです。よく「金持ちはケチ」と言われますが、実際は「真に必要なことだけにお金を使っている」のです。「金は命の親、命の敵」ですから。

大富豪がボランティアや寄付に積極的なのも教育の一環です。人のためにお金を使うことで得られる心の豊かさや人とのつながり、自分の存在意義を感じるために、子どもにも寄付活動をさせます。使用済み切手を集めてコレクターに渡すことで国際医療に協力できるボランティア活動に参加したり、使い切れないカレンダーを施設の子どもに渡しに行ったりしています。誰かのために役立つことで初めて仕事が意味を成すという基本原則を教えているのです。

多くの大富豪に共通するポリシーがあります。それは「燃えるものには投資しない」です。株や不動産、特許権などの資産は多額でも、火をつければ燃えてしまう現金・預貯金はあまり多く持っていません。現金は国の経済で価値が左右されますので、資産を動かすツールとして位置づけています。例えば、1億円のマンションと(土地付)戸建て住宅なら戸建て住宅を選びます。火事で燃えても、戸建てには土地という資産が残るからです。

■「自己投資」もまた、無形への投資

また、有形より無形への投資を重視する傾向があります。財布に10万円の現金を入れたままにするよりも、10万円で友人と旅行して新たな発見や人との出会いを求める。自分を成長させる「自己投資」もまた、無形への投資のひとつですから。

こうして大富豪の家庭で育った子どもは、物怖じせず社交的で、礼儀正しく、人に優しい性格になります。幼いころから常に大人に囲まれて育つため大人びてもいます。人のためにお金を使うよう教わり、いずれは自分が財産や事業を継承することを認識していきます。周りの大人が付き合ってはいけない人を徹底的に排除し、人格者と交流させるため、子どもは人物の良し悪しへ鼻が利くようになります。人格者だけが富や事業を継承できることを、親が教え、自らも実践しているからなのです。

名家が伝承するお金のカリキュラム
2歳ごろ~
・2歳になったらお金の教育をスタートさせる
・お金は労働の対価であること、お金で得られる価値を、生活の中で伝えていく
小学校~
・お小遣いは「人のため」に使うことを体験させる
・家庭内での商売で「利益の仕組み」を体験させる
・電子マネーのお小遣いは、月末に使用状況をフィードバックさせる
・積極的に寄付やボランティアを体験させる
中学校・高校~
・これまで貯めたお年玉やお小遣いで投資をさせる
・子どもに将来性を感じる投資先を自ら選ばせる

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新井 直之(あらい・なおゆき)
執事、日本バトラー&コンシェルジュ代表取締役
自ら執事として大富豪の顧客を担当する傍ら、企業向けに富裕層ビジネス、顧客満足度向上に関するコンサルティング、講演、研修を行う。著書に『執事だけが知っている世界の大富豪53のお金の哲学』ほか。

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(執事、日本バトラー&コンシェルジュ代表取締役 新井 直之 構成=力武亜矢)

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