老化を招く「テストステロンの減少」を食い止められる…いつも明るく元気な人が摂取している"ある食材"
プレジデントオンライン / 2022年7月16日 9時15分
※本稿は、和田秀樹『なぜか人生がうまくいく「明るい人」の科学』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。
■若さを保つために最も大事な“たった1つのこと”
本稿では、精神科医の立場から見た「老い」や「加齢」、「アンチエイジング」との向き合い方についてお伝えします。
いつまでも若々しい気持ちを維持して、明るく楽しい人生を過ごすためには、どんなことを意識すればいいのか……というポイントに焦点を絞ってお伝えします。
若さを保つために、最も大事なのは、「意欲を保つ」ということです。
意欲さえあれば、どんな意欲でも問題はありません。
「アンチエイジング」(老化予防)であれ、認知症の予防であれ、カギを握るのは「意欲」を持続させることです。
・いつまでも若くいたい
・ずっと活動的でいたい
・いくつになっても異性にモテたい
人は歳を取れば取るほど、歩かないと、歩けなくなります。
アタマを使っていないと、次第にボケたようになります。
このふたつに関しては、意外と多くの人が理解していますが、「意欲を保つ」ということを意識している人は、それほど多くはないと思います。
それはまだ、あなたが元気だからです。
人は年齢を重ねるうちに、徐々に意欲が低下してきて、あらゆることが「面倒くさい」と感じるようになります。
そうなると、一気に「老化」が加速して、見た目や体が老け込むことになり、場合によっては認知症になることもあります。
認知症の症状で、長年それを診てきた私が最も問題にするのは「意欲の低下」です。
認知症の人の約8割は、何もしなくなって、近所を徘徊(はいかい)してケガをするどころか、家からまったく出なくなってしまうのです。
意欲の低下は、脳の老化現象によって起こります。
意欲というのは、放っておくとドンドン落ちてしまいますから、できるだけ早く対策を講じる必要があります。
■日常のルーティーンを少し変えてみる
意欲を持ち続けるためには、どうすればいいのでしょうか?
そのポイントは、「前頭葉」と「男性ホルモン」にあります。
人間の意欲低下には、前頭葉と男性ホルモンが深く関係しています。
このふたつを活性化させることで、意欲低下の進行を遅らせることができます。
「前頭葉」とは、大脳の前方部分のことで、意欲だけでなく、思考や創造などの機能を司(つかさど)っています。
前頭葉の機能が低下すると、人は頑固になり、柔軟な思考が難しくなります。
前頭葉は40代から萎縮が始まり、60~70代になると本格的に萎縮が進行します。
萎縮が進むと、感情の動きが低下して意欲が湧かなくなり、外の世界に対しても無関心になってしまうのです。
・何もやる気が起こらない
・何をしても楽しくない
こんな気持ちになると、家から外に出る気がしなくなります。
外に出なくなると、身体も弱り始め、前頭葉の機能はさらに低下して、「負のスパイラル」に陥ってしまうのです。
前頭葉というのは、不測の事態に「対処」する時に活性化しますから、日常のルーティーンを少し変えるだけでも、萎縮を遅らせる効果が期待できます。
・行きつけのレストランや居酒屋ではなく、新しい店に入ってみる
・普段とは違うジャンルの映画やビデオを観る
・お気に入りの作家以外の本を読んでみる
これまでとは違う「物の見方」や新たな「刺激」に出会うことで、前頭葉の働きを活性化することができるのです。
■肉を食べると明るくなる
もうひとつ大事なのが、「男性ホルモン」の減少を抑えることです。
男性ホルモンは数種類がありますが、その中で意欲に大きく関わっているのが「テストステロン」です。
テストステロンは、次のようなことに深く関わっています。
・好奇心
・興味
・集中力
・判断力
・性機能
女性は加齢によって女性ホルモンが減少すると、自然と男性ホルモンが増えてきますから、それほど心配する必要はありません。
男性の場合は、年齢とともにテストステロンが減ってくるので、その維持を心がけることが必要になります。
その対策として有効なのが、「肉を食べる」ことです。
男性ホルモンの原料は「コレステロール」ですから、積極的に肉を食べることがテストステロンの維持につながります。
コレステロールには「悪玉」というイメージがありますが、肉を食べて、少し太り気味くらいの方が、じつは長生きできる……ということは、世界中の調査結果のほぼ一致した結論です。
アメリカ人は一日に300gの肉を食べていますが、日本人の平均はわずか80gです。高齢者であれば、その量はさらに少ないと考えられます。
意欲の低下を抑えるためには、意識して肉を食べることが重要です。
■若返りの手段を「反則技」と考えない
その他にも、「牡蠣」や「ニンニク」を食べることによって「亜鉛」を摂ることも効果があります。
ただし、食事からのアプローチには時間がかかります。
肉や牡蠣が苦手な人もいるかもしれません。
最も手っ取り早い方法は、テストステロンを注射したり塗ったりして体内に取り入れる「男性ホルモン補充療法」です。
テストステロンを2週間おきに筋肉注射することで、筋肉量や筋力だけでなく、気分や性欲の改善を図ることができます。私のクリニックでは、3カ月有効なデポ剤というのを使用しています。
日本人には、この「男性ホルモン補充療法」を、ある種の「反則技」のように思っている人がいて、かなりの人が抵抗を感じています。
「インスリン」というホルモンが減ってくると血糖値が高くなりますから、糖尿病が心配な人は、何の抵抗もなくインスリンの注射を受けます。
インスリンには抵抗がないのに、男性ホルモンには拒否反応を示すのです。
確かに、テストステロンは筋肉増強剤の一種と考えられていますから、スポーツ選手であれば「ドーピング」になりますが、私たちがテストステロンを注射しても、ドーピングを問われることなどありません。
男性ホルモンを注射すれば、筋肉が付いて、足腰が弱らなくて済みます。
「男性ホルモン補充療法」を色メガネでみるのではなく、スポーツジムに通うのと同じような感覚で、選択肢のひとつと考える必要があります。
ここで「男性ホルモン補充療法」の現状について、お伝えしておきます。
アメリカでは、男性ホルモンの補充療法を受けている人が、約800万人いるといわれています。
日本の場合は、はっきりとしたデータはわかりませんが、泌尿器科でLOH症候群(加齢男性性腺機能低下症候群)と診断されて、保険治療として受けている人が1~2万人いると考えられます。
しかし、日本では「元気を保つ」ために、自分の判断で「男性ホルモン補充療法」を受けている人はあまりいないのが現状です。
日本の医療というのは、検査データで何か異常があれば、それを「元に戻す」ことばかりに注力して、「もっと元気になる」という発想はできないのです。
■若くいたいと思っている人を揶揄するな
日本人には、人が「若くありたい」と思ってやっていることを、とかく「白い目」で見る傾向があります。
女性が少しでも若い髪型をしたり、若い格好をしていると、「若作り」とか「イタイおばさん」と揶揄(やゆ)します。
私たちの周りには、人が若さを保とうとしていることに対して、あざ笑うような言葉がたくさんあります。
・ボトックス疑惑
・整形疑惑
・ズラ疑惑
本人が若くありたいと思ってやっていることを、周囲の人たちは、「似合わない」とか「不自然だ」と嘲笑しているのです。
私は常々、「若くあろうとする人たちを、そんな形で揶揄していいの?」と思っています。
ボトックスというのは、「ボツリヌストキシン」を注射することで、神経伝達物質である「アセチルコリン」の放出を抑制して、加齢による顔の「シワ」の解消に使用されます。
男女に関係なく、顔が若返ることで、表情も若返り、気分も若返ります。
それのどこが悪くて、「疑惑」と考えるのでしょうか?
「ズラ疑惑」も同じことです。
有名な俳優さんやアナウンサーがカツラをしているからといって、誰かに迷惑をかけているわけではありません。
本人が若くいたいと思っているのに、周りがとやかく言う必要はないのです。
■ナチュラルが一番ではなく「タブー」を減らすこと
多くの日本人は、「ナチュラルが一番」と考えていますが、そう言いながら、毎日、不自然な化学物質を飲み続けて、血圧を下げたりしています。
ナチュラルではないと知りながら、少しでも長生きしたいとか、健康でいたいとか思うから、クスリを飲んでいるわけです。
不自然という意味では、どちらも同じということに気づいていないのです。
アンチエイジングに関して、日本人は勝手に「いけないことだ」と決めつけていることがたくさんありますが、年齢を重ねてくると、自分では「いけない」と思うことであっても、多少は手を染めないと若さは保てなくなります。
なぜなら、年齢よりも若くいようとすること自体が、そもそも不自然なことだからです。
若くありたいと思うならば、「タブー」を減らすことが大事です。タブーが多ければ多いほど、自分に枷(かせ)をかけることになります。
そうでなくても意欲が落ちているのですから、枷だらけになってしまうと、身動きが取れなくなってしまうのです。
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精神科医・国際医療福祉大学赤坂心理学科教授
1960年大阪市生まれ。1985年東京大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院精神神経科、老人科、神経内科にて研修、国立水戸病院神経内科および救命救急センターレジデント、東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米カール・メニンガー精神医学校国際フェロー、高齢者専門の総合病院・浴風会病院の精神科医師を経て、現在、国際医療福祉大学赤坂心理学科教授、川崎幸病院顧問、一橋大学・東京医科歯科大学非常勤講師、和田秀樹こころと体のクリニック院長。
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(精神科医・国際医療福祉大学赤坂心理学科教授 和田 秀樹)
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