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カネのない結婚は不幸になるだけ…「年収400万円」を最低条件にする婚活女性を笑えない理由

プレジデントオンライン / 2022年7月26日 10時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Csondy

■結婚に必要なのは愛、それともお金?

結婚生活において重要なのは「愛なのか? 金なのか?」という質問に、あなたならどう回答するでしょうか? 当然、ご自身が未婚なのか既婚なのか、さらには性別や世代によっても回答は変わるかと思います。

実際、私のラボで調査した結果は以下の通りとなります。

まず、既婚男女で見ると、20~30代までは男女とも愛が金を上回りますが、40代以降は逆転して、「愛より金が重要」になります。特に、40代既婚女性の「金が重要」割合は高く、4割近くになります。(男性は3割)。「愛が重要」とする派は男女とも2割なので、特に40歳以上の既婚女性だけ「金が重要」派が多いことになります。

【図表1】結婚生活「愛か?お金か?」

一方で、未婚男女の結果をみると、未婚男性は既婚男性とほぼ一緒ですが、未婚女性だけは年齢問わず20~50代まで一貫して「金が重要」派が圧倒的多数を占めます。

こうした未婚女性の意識が、婚活の現場では「年収いくら以上」という足切り条件として表出するのでしょう。しかし、その意識が強ければ強いほど50代まで未婚という状況になっているのも残念ながら事実です。

■婚活現場に「年収400万円以上」はほぼ存在しない

結論からいえば、結婚している男女はほぼ結婚時点では「金より愛」で結婚しています。男女とも2020年でさえ、初婚年齢の中央値は20代後半です。半数以上が29歳までに結婚しています。20代後半でそれほど年収を稼ぐ人もマレでしょう。2017年就業構造基本調査によれば、25~29歳未婚男性で年収400万円以上はたった23%に過ぎません。それどころか年収300万円未満の層が49%を占めます。

これらの年収分布と初婚年齢中央値を勘案すれば、実際に20代後半で結婚している男性の年収は300万円台が最頻値であり、決して年収400万円以上なければ結婚できないなんてことはないわけです。

逆に言えば、婚活女性たちが条件として提示している「年収400万円以上」の20代後半の未婚男性は2割強しかいないわけで、身も蓋もない話をすれば、そもそもそうした高年収層は婚活の現場にはいません。来る前に成約済みになっていることでしょう。

■「同じ年代、近い年収、似た学歴」としか出会えない

こうしたデータを提示するたびに「ウソでしょ? そんなにみんな年収低いの?」と驚かれる東京のキラキラ女性たちがいるのですが、もちろんこれは全国平均なので東京だともう少し高くはなります。しかし、彼女たちがそう思ってしまうのも無理はありません。

社会とは同類縁でできているからです。知り合う人間というものは大体自分や自分の友人と近しい者同士に偏ります。そのため知り合うことのない「異類」の人たちの存在は透明化されてしまいます。とにかく、知り合う縁において「経済環境が同じ」であることはとても重要です。

同じ経済環境にあるからこそ価値観も通じる部分がある。そうして知り合った経済的同類同士が、恋愛や結婚に発展する場合が多いのです。事実、最近の婚姻は同類婚が増えています。同い年くらい、同じような年収、同じような学歴などで結婚するというものですが、それは結果であり、そもそも出会いの環境が同類縁でつくられているからです。

イタリア料理屋でディナーを食べるカップル
写真=iStock.com/kokouu
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kokouu

■恋人のいる未婚男女は「200万~500万円」に集中している

実際に、2018年内閣府「少子化社会対策に関する意識調査」の中で、20~40代の未婚男女を対象に、現在恋人がいる男女の自分の年収とパートナーの年収を聞いている項目があります。この調査は貴重で、一般的に未婚男女一括りで年収分布を聞いていることが多く、そうすると恋愛相手のいない未婚男女と混同されてしまい実態が把握できないからです。こうして恋人がいるという、ある意味「恋愛強者」の年収分布が明らかになることはとても重要です。

さて、この分布を見る限り、恋人のいる未婚男女とは、大体200万~500万円の層に集中していて、全体の約半数を占めています。全体のバラつきを見ても男女でそれほど大きな違いはありません。恋人関係にある男女同士がほぼ経済的同類縁で結び付いていることが分かります。そして、案外100万円未満の男性も恋愛をしている層が多いことからも、「金があろうとなかろうと恋愛する強者は恋愛をする」のであることも分かります。

【図表2】恋人がいる未婚男女の年収分布

■「夫婦二馬力なら問題ない」と考えるかもしれないが…

恋人のいる未婚男女の年収分布を見れば、「たとえ個人の年収が300万円でも同じ年収同士が夫婦になれば、2人合わせて世帯年収が600万円になる。それでなくても現代は夫婦共働きが1177万世帯に対し、専業主婦世帯は458万世帯と圧倒的に多いのだから問題はないだろう」という人がいるかもしれません。

しかし、結婚生活後も未婚時代の年収をそのまま継続する夫婦ばかりかというとそうはなりません。実際、共働き世帯が増えているといっても、増えているのはパートタイム共働き夫婦世帯であり、実はフルタイム共働き世帯の数は1985年から35年以上もほぼ変わっていません。つまり、共働き夫婦が激増したといってもそれはほぼパート共働きの増加によるものです。

【図表3】共働き世帯の推移(妻が64歳以下の世帯)
出所=男女共同参画局「『令和3年度 人生100年時代における結婚・仕事・収入に関する調査』(内閣府男女共同参画局委託調査)」より引用

■結婚した女性は年収300万円台から「100万円未満」に

結婚後妊娠、出産して子どもが幼いうちはどうしても妻が家に入ることが多くなることは紛れもない事実です。

同じ内閣府の調査で、3年以内に結婚した子無し夫婦の自分と配偶者の年収分布をみると、男性はボリュームゾーンが300万~400万円から400万~500万円へと移行し、女性は300万~400万円から100万円未満へと移行しています。結婚に伴い、退職や離職によって妻のほうが専業主婦やパートへと変化したと解釈できます。

【図表4】子無し既婚夫婦の年収分布

結婚する前の恋愛はほぼ経済同類縁で、ほぼ同じ年収同士の若者が結婚したとしても、結婚さらにはその後の妊娠出産子育てに移行するにあたって、どうしても夫の一馬力にならざるを得ない、そんな夫婦の実情が見えてきます。一馬力でも夫が600万円以上稼いでいるのであればなんとかなるのかもしれませんが、夫婦とも300万円同士で結婚した夫婦の場合は世帯収入は半減の300万円となってしまいます。

■愛を誓って結婚しても金がないと続かない

だからといってすべての夫婦に共働きを強制できるものではありません。個々の事情はさまざまです。物理的にできない夫婦もいることでしょう。大企業のように育休や復職制度が充実している会社ばかりではないし、誰もが仕事をしたいという人ばかりではない。妻本人が希望して育児に専念したいという人だっているでしょう。夫婦が合意納得の上で夫婦役割分業を決めたのであれば、それは尊重すべきもので、「全員共働きせよ」などと強制できるものではありません。

大事なのは、現状日本の若者の多くが「結婚は金ではなく愛である」と思って結婚しているにもかかわらず、望むと望まないとに関係なく結婚後片働きになる夫婦が多いこと、さらには、子が生まれ、いろいろな費用がかさんでいく中で、冒頭の40代以上で既婚女性が「結婚は金」という割合が高まるように「愛だけじゃ生きていけない」と思うようになる夫婦が多いという現実の把握です。

「結婚には金が重要」であることが裏付けられる事実として、離婚のデータもあります。20年前と比べて最近の離婚事情を見てみると、妻側の理由では「夫の経済的理由」が、長年トップだった「性格の不一致」を抜いて1位になっていますし、夫側の理由でも「経済的理由」が3位です。つまり、離婚においても「金がなければ結婚が継続できない」という問題が顕在化しつつあるようです。もっといえば「金がなければ愛も壊れる」のです(<この20年で「離婚したい理由ベスト3」が激変…男たちが夫婦関係で悩んでいること>参照)。

■日本人にとって「結婚はぜいたくな消費」となっている

かつて結婚は「一人口は食えねど二人口は食える」などと言われたように、1人で暮らすより2人で夫婦となったほうが食費や住居費、光熱費などの面で合理的であり、貧乏だからこそ結婚したほうがいいと言われた時代もありました。

しかし、今や、結婚するにも、結婚を続けるにも金がなければどうにもならない状態に追い込まれているともいえます。婚活現場にいる未婚男女が結婚の機会を逸するのは「結婚は金だ」という意識が強いからによるのですが、愛で結婚した夫婦でさえ40代以降は「結婚は金だ」という現実を痛感することになります。

女性が家計の計算をしている手元。隣から夫が数字を指し、コメントしている
写真=iStock.com/megaflopp
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/megaflopp

夫婦共にフルタイムでそれぞれ年収700万円以上のパワーカップルが増えているなどという報道もあるようですが、しょせん全体の2%にも満たない人だけの話です。「金がないなら夫婦共働きすればいいじゃない」というせりふは、「パンがなければケーキを食べればいいじゃない」という逸話と同じ「恵まれた立場」だから言えることかもしれません。もはや「結婚はぜいたくな消費」となっているといえるでしょう。

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荒川 和久(あらかわ・かずひさ)
コラムニスト・独身研究家
ソロ社会論及び非婚化する独身生活者研究の第一人者として、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・Webメディアなどに多数出演。海外からも注目を集めている。著書に『結婚滅亡』(あさ出版)、『ソロエコノミーの襲来』(ワニブックスPLUS新書)、『超ソロ社会―「独身大国・日本」の衝撃』(PHP新書)、『結婚しない男たち―増え続ける未婚男性「ソロ男」のリアル』(ディスカヴァー携書)など。韓国、台湾などでも翻訳本が出版されている。新著に荒川和久・中野信子『「一人で生きる」が当たり前になる社会』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)がある。

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(コラムニスト・独身研究家 荒川 和久)

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