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人間が病気になる原因は"2つ"だけ…名医が「自律神経・血管・腸」を重視する理由

プレジデントオンライン / 2022年7月28日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/west

自律神経研究の第一人者である小林弘幸・順天堂大学医学部教授は「免疫力を高めるためには、『自律神経』『血管・血液』『腸』のトライアングルが重要です」という。人体が「健康」という状態を作り出すために24時間365日途切れることなく果たしている、その驚くべき機能について、セブン‐イレブン限定書籍『自律神経を整える』から紹介する──。(第2回/全3回)

※本稿は、小林弘幸『自律神経を整える』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

■細胞に必要な“栄養”と“酸素”を運ぶ「血液」

私たちが心身ともに健康でいるためには、いったい何が必要なのでしょうか。これについて少し考えてみましょう。

私たち人間の体は、約37兆~60兆個もの細胞が集まってできています。この細胞1つひとつが、それぞれの役割を果たして機能してこそ、健康を維持し元気な日々を送ることができます。

細胞1つひとつが機能するためには、十分な栄養と酸素が必要です。そして、全身の細胞に栄養と酸素を行き渡らせるために機能しているのが血液であり、血管です。

■血液は免疫細胞も運んでいる

私たちは栄養と酸素を、食事と呼吸によって体内に取り込み、さらに栄養は腸で、酸素は肺で吸収し、それらを血液にのせて各細胞に運んでいます。新型コロナウイルスなどの病原体やがん細胞を退治する「免疫細胞」を運んでくれるのも血液です。

細胞の隅々まで質のよいきれいな血液が流れれば、十分な栄養と酸素が届けられ、すべての臓器が適切かつ十分に働き、免疫力も高まります。

また、体内に溜まった不要な老廃物を体外に送り出すのも血液の働きです。細胞を常にきれいな状態に整え、栄養や酸素を取り入れやすくするためになくてはならない重要な役割を担っています。

それにより、肌や髪の毛、爪なども美しく、見た目の若々しさも維持できます。

■自律神経の乱れは血液の状態の悪化を招く

私たち人間は、血液がなければ生きていくことができません。そして、健康維持のためには、きれいな質のよい血液とスムーズな血流がとても重要です。

その重要な「血流」をコントロールしているのが自律神経です。

交感神経は血管を収縮させ、副交感神経は血管を拡張させます。両者がバランスよく交互に働くと、血管の収縮と拡張がリズミカルに繰り返され、血液はスムーズに流れて全身に行き渡ります。

ところが、両者のバランスが崩れてどちらか一方が過剰になると、血流の状態が悪くなります。

とくに交感神経が過剰に優位になると、呼吸が浅くなって心拍数が上がり、血管が収縮して血流が滞ります。その結果、血液がドロドロになって血管がダメージを受け、脳梗塞や心筋梗塞を引き起こす血栓が生じやすくなっていきます。

■体内にもさまざまな悪影響が

体にも、さまざまな不調が起こります。全身に栄養と酸素が行き届かないだけでなく、体内に不要な老廃物が溜まってしまうからです。

たとえば、臓器がダメージを受けてしまえば、免疫力や体力、脳の働きも低下して、頭痛などの不調が現れやすくなります。また、いざというときに体調が崩れる、ここぞというときにやる気が出ないなどといった心(=メンタル)の不調にもつながります。

加えて、代謝が落ちて太りやすくなったり、生活習慣病の発症リスクが高まったりします。

それだけではありません。がんやうつ病、年齢を重ねることで発症リスクが高まる認知症や骨粗鬆症(こつそしょうしょう)、フレイル(健康な状態と要介護状態との中間)やサルコペニア(筋肉量が減少し、筋力や身体機能が低下している状態)なども、自律神経の乱れから生じていることが少なくないと私は考えています。

■自律神経と血管・血液、腸は互いに影響し合う

さらにもう1つ、自律神経がコントロールしている重要なものがあります。それは「腸」です。

小林弘幸『自律神経を整える』(プレジデント社)
小林弘幸『自律神経を整える』(プレジデント社)

自律神経と血管・血液、そして腸は、互いに影響し合う関係にあります。

自律神経は血流と腸の働きをコントロールし、腸は自律神経のバランスをコントロールすると同時に血液の質(十分な栄養と酸素をのせ、老廃物を回収できているか)を左右しています。血管・血液は自律神経からは血流、腸からは質の影響を受けていることになります。

交感神経は日中、アクセル役として体を活発な状態に導いてくれますが、胃腸の働きについては、夜の間に副交感神経がアクセルの働きをして蠕動(ぜんどう)運動を活発にします。

■免疫機能を左右する「トライアングル」

朝の排便が理想的なのは、夜中のうちに副交感神経の影響で腸が活発に働いて、翌朝の排便の準備をしてくれているからです。朝、自然とトイレに行きたくなるのは、夜の間に副交感神経がしっかりと働いてくれた証拠です。

つまり、自律神経のバランスが崩れて副交感神経の働きが衰えると、血流が悪くなると同時に、腸の機能も低下して便秘になったり、腸内環境が悪化したりして(腸内に有害な細菌が増えます)、さまざまな不調や病気の原因になるということです。

また、自律神経と血管・血液、腸のトライアングルは、体の「免疫機能」にも深く関わっています

■自律神経が整うと免疫細胞のバランスも整う

人が病気になるのには、大きく分けて2つの原因があります。「血管系」のトラブルと、「免疫系」のトラブルです。この2つのトラブルは、どちらも自律神経の働きと大きく関わっています。

「血管系」のトラブル、自律神経の乱れから起こる血管・血液のダメージによる心身への影響については前述しました。ここでは「免疫系」のトラブルと自律神経の関係について説明しましょう。

私たちの体には、「免疫」という病気から体を守るシステムが備わっています。

新型コロナウイルスのようなウイルスや病原菌に感染することによって発症してしまう「感染症」から体を守ってくれるのが「免疫機能」で、コロナ禍でもっとも耳にした用語のひとつかもしれません。

同じ環境で同じように仕事をしていても、よく風邪を引く人と引きにくい人がいます。こうした相違こそ、「免疫力」の違いがもたらすものにほかなりません。

■自律神経が整うと免疫力が高まる

免疫力が高ければ、体内に侵入したウイルスや病原菌をしっかり排除できるため発症しませんが、免疫力が低いと、体内に入ったウイルスや病原菌を排除しきることができずに発症してしまうのです。

免疫機能は、外部から侵入してくる異物に対して働くだけでなく、体の中で生じる異物に対しても働きます。

体内の異物の代表ががんです。がんは、私たちの体をつくっている細胞が、遺伝子の突然変異によってがん化、増殖してしまう病気です。

がんというと特別な病気と思われがちですが、実は健康な人でも体の中では毎日何千個ものがん細胞が生まれています。そして、がんが発症するかしないかを決めているのは免疫力です。免疫力が高ければ体内にがん細胞が生まれても、それらをしっかりと排除することができます。

免疫力の低い人は風邪を引きやすいだけでなく、がんにもなりやすいということです。免疫力の高さこそ、病気に対する抵抗力の強さです。

そして、自律神経が整うと免疫力が高まって、風邪を引きにくくなると同時に、がんにもなりにくくなる。まずは、このことを覚えておいてください。

■免疫機能の中心を担う白血球

少々専門的になりますが、もう少し詳しく説明しましょう。

免疫機能の中心を担っているのは、血液中の「白血球」です。白血球はいくつかの「免疫細胞」で構成されますが、それは次の3つに大別されます。

1つが病原菌など比較的大きめの異物を処理する「顆粒(かりゅう)球」、もうひとつがウイルスなどの小さな異物を処理する「リンパ球」、そして感染に対する防御の開始に重要な役割を果たす「単球」です。

近年の研究で、交感神経が優位になると顆粒球が増え、副交感神経が優位になるとリンパ球が増えることがわかってきました。

交感神経が働くと顆粒球が増えて病原菌に対する免疫力は高まりますが、過剰に優位な状態が続くと、体内に異物(病原菌)がいないときでも顆粒球が過剰反応して、健康維持に必要な「常在菌」を殺してしまうことがあります。

顆粒球は、自らが持つ「分解酵素」と「活性酸素」によって異物を処理します。ところが、増えすぎた顆粒球が体内に余ってしまうと、細胞としての寿命を終えたときに、持っている活性酸素を体内にばらまいて、健康な細胞を傷つけてしまうのです。

運動する女性
写真=iStock.com/Taras Grebinets
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Taras Grebinets

■日々のリカバリーが大切

一方、副交感神経が働くと、リンパ球が増えてウイルスに対する免疫力が高まります。しかし、過剰に優位になってリンパ球が増えすぎれば、異物(抗原)に敏感になりすぎて、アレルギーを起こしやすくなります。

つまり、免疫力は高ければ高いほどいいというわけではなく、高すぎることにも弊害があるのです。

交感神経と副交感神経のバランスが整うことによって、顆粒球とリンパ球がともに増え、免疫細胞のバランスがよくなることで、免疫機能が適度に効果的に働くというわけです。

もちろん、自律神経の乱れがすぐに免疫力の低下に反映されるわけではありません。一時的に交感神経優位の状態になったとしても、顆粒球がすぐに増えるわけではないのです。交感神経優位の状態が続くことを放置せずに、日々リカバリーをすることが大切です。

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小林 弘幸(こばやし・ひろゆき)
順天堂大学医学部教授
1960年、埼玉県生まれ。スポーツ庁参与。順天堂大学医学部卒業後、同大学大学院医学研究科修了。ロンドン大学付属英国王立小児病院外科、トリニティ大学付属小児研究センター、アイルランド国立小児病院外科での勤務を経て、順天堂大学医学部小児外科講師・助教授などを歴任。自律神経研究の第一人者として、トップアスリートやアーティスト、文化人のコンディショニング、パフォーマンス向上指導にも携わる。順天堂大学に日本初の便秘外来を開設した“腸のスペシャリスト”としても有名。近著に『結局、自律神経がすべて解決してくれる』(アスコム)、『名医が実践! 心と体の免疫力を高める最強習慣』『腸内環境と自律神経を整えれば病気知らず 免疫力が10割』(ともにプレジデント社)『眠れなくなるほど面白い 図解 自律神経の話』(日本文芸社)。新型コロナウイルス感染症への適切な対応をサポートするために、感染・重症化リスクを判定する検査をエムスリー社と開発。

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(順天堂大学医学部教授 小林 弘幸)

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