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物価急上昇も給料上がらず…固定費削減を徹底するマネーのプロが「絶対手をつけない節約項目」

プレジデントオンライン / 2022年7月29日 13時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

物価急上昇の局面で、どのように資産防衛を図ればいいのか。米国公認会計士の午堂登紀雄さんは「私は数年前から円安やインフレを見越して資産防衛策を講じてきた。とくに固定費の削減は徹底しているが、流動費の節約で絶対やらないと決めていることがある」という――。

■悪いインフレが進行中

コロナ禍による物流の混乱、ロシアのウクライナ侵攻による資源高、金利差による急速な円安により、物価が急上昇しています。

一方で給料など所得は上がっておらず、現状はスタグフレーションの様相を呈しています。

スタグフレーションとは「Stagnation(景気停滞)」と「Inflation(物価上昇)」を組み合わせた造語ですが、景気が停滞しているのにもかかわらず、物価が上昇し続ける現象のことで、「悪いインフレ」とも呼ばれています。

コロナで物流の混乱、工場の停止などによる資材や部品の不足などで、もともと資源高の傾向にありましたが、ロシアによるウクライナ侵攻を受けて食料品までも全般的に値上がりしています。

さらに世界は利上げに舵を切っていますが、それとは真逆の低金利政策を維持する日本円はほぼ全ての通貨に対し売られまくっています。

そのため急激に円安に振れており、輸入物価に跳ね返るのは時間の問題です。

原油価格が上がれば、電気代やガソリン代はもちろん、原油由来のプラスチックや樹脂製品などの値段も上がります。私が契約していた新電力小売企業は事業停止を発表し、電力会社の変更手続きを余儀なくされました。

外食チェーンも続々と値上げしています。

ロシア産木材も経済制裁で入って来ず、その前からコロナで起きていたウッドショック(コロナによる住居ニーズが戸建てに移り木材不足)に拍車がかかって戸建てはもちろん、部材価格上昇でマンション価格も値上がりしています。

■住宅ローンの固定金利が上がり始めた

日銀は大量に保有する国債の利払いが気になるのか、あるいは企業活動への影響を考慮してなのか、なかなか利上げには踏み切れないようですが、ローンの固定金利はすでに上昇を始めています。

現日銀総裁の任期は2023年春までで、次の総裁がどのような金融政策を取るかわかりませんが、このままインフレが続けば多少なりとも引き締めに走らざるを得ない可能性もあります。

すると住宅ローン金利も上がると予想されます。変動金利型を選ぶ人が8割を超えたといわれていますから、その影響は小さくないでしょう(一般社団法人不動産流通経営協会『不動産流通業に関する消費者動向調査(2021年度)』。

金利上昇でマイホームの買い控えで家が売れなくなったり、企業の設備投資意欲が減退すれば、様々な方面にマイナスの影響を及ぼします。

ロシアが戦争をどのように終わらせるのかはわかりませんが、終戦後も経済制裁は続くと思われますし、インフレを抑えるために各国の中央銀行は利上げしますから、日本も影響は受けることになる。

一方、賃上げは一部の大手企業や好業績企業(グローバル企業や輸出型企業)に限定され、多くの企業は一般家庭と同様に資源高と円安の影響を受けており、業績に先行き不安があります。

■無策でいれば生活は苦しくなるばかり

私たち個人がこのまま無策でいれば、ただ生活が苦しくなるばかりなのは誰の目にも明らかでしょう。

そこでどんな対策を打つべきかということで、私がやっていることをご紹介します。

ただし私は数年前から円安やインフレを見越して対応してきているので、いまから始めるべきかどうかの判断はなんとも言えません。

■1.固定費の削減に取り組む

固定費の削減は、一度の手続きで効果が長期間続き、能力や意志にも依存しないため、食費の節約などよりも優先度が高いと考えています。以前の記事で書いたように、わが家ではこの部分は徹底しています。

資料を見ながら電卓で計算する人
写真=iStock.com/Khaosai Wongnatthakan
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Khaosai Wongnatthakan

スマホは格安SIMに替えたり、クレジットカードもさらに高還元のカードに切り替えたり、固定電話もあまり使っていなければ解約、テレビも見ないならNHK受信契約の解除、新聞もネットニュースに切り替え購読の停止、ほかにもあまり利用していない年会費や月会費があれば解約、公共料金や税金の前納割引や口座振替割引などなど、まだ手を付けていないものがあれば、検討に値すると思います。

大きな固定費は住居費だと思いますが、賃貸の人なら家主に減額交渉をしたり、家賃の安い物件に引っ越すという方法もあります。

また、戸建てに住んでいる人なら屋根に太陽光発電システムを設置し、リフォームでオール電化にする方法も考えられます。これでガス代(少なくとも基本料金分)が不要になり電気代も削減できます。

屋根の方角やシステム容量などにもよりますが、日中の電気代の多くが賄えますし、蓄電池を導入すれば災害対策にもなります。

私の自宅屋根の太陽光は全量売電ですが、20年のFIT期間が終われば給電設備を設置し電気自動車に買い替えようと思っています。ガソリン代が不要になるので燃料代が大幅に削減されると期待しています。

もちろん初期投資は大きいですが、オイルやフィルター交換も不要で維持費は安いですし、スタンドに寄らないというのは楽だと思います。

■2.電気代高騰に備えて家電製品の買い替えを検討する

今後モノの値段が上がるなら、値上がりする前に「いずれ買い替えようと思っているモノ」、たとえば家電製品を省エネタイプに買い替える方法もあります。

エアコンや冷蔵庫などはグレードの高い高級モデルから最新省エネ技術が搭載されますから、古くてそろそろ買い替えかなと思うものがあれば、そういうものを選んで将来の電気代高騰に備えるという考えです。

電気料金の明細
写真=iStock.com/Yusuke Ide
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Yusuke Ide

私も5年前、いまの住まいに引っ越すときに最新の冷蔵庫に買い替えましたが、容量が1.5倍になっても電気代はむしろ安くなりました。

エアコンも最上級グレードの30畳タイプを選んだところ、1台で自宅全部屋の冷房ができています。それでも引っ越し前に住んでいた賃貸マンションの頃と電気代はほぼ変わりません。

部屋の広さギリギリの容量のエアコンをフルパワーで動かすより、余裕のある大容量エアコンを自動運転モードで常時稼働させたほうが低速運転となり電気代が安いと販売員が言っていました。初期投資は大きいですが。

また、電灯はLEDが圧倒的に電気代が安いです。わが家も新築時に100%LEDにしました。

また最新のユニットバスは保温効果に優れており追い炊きの頻度が激減。トイレは超節水タイプです。設備の古い賃貸マンションから戸建てに引っ越してきて、最新住宅設備の快適さ・省エネレベルの高さに驚いています。

■3.本業の収入アップか副業への取り組みを始める

言うまでもなく、最強の防衛手段のひとつは本業での収入を上げることです。

会社員なら自分が勤務している企業の業界内での立ち位置、自分の社内での立ち位置、そして実力が正当に評価される報酬体系かどうかを分析し、収入が増える見込みがなく危機感があるなら転職も視野に入るかもしれません。

同時に、副業が解禁されている会社であれば、副業に取り組むという方法もあります。副業禁止の会社でも、法人を作って工夫することで会社に秘密にしておくことができます。合同会社なら登録免許税6万円から設立可能です(毎年住民税と決算申告が必要ですが)。

■4.やれるだけの節税対策をする

節税は運や能力と関係なく、手続きだけで効用を得られます。

私の場合、節税と運用を両立できる手段として、iDeCo(個人型確定拠出年金)、倒産防止共済、小規模企業共済に掛金上限まで加入しています。

私自身は所有する法人で社会保険に入っていますが、自営業者なら国民年金基金や付加年金などに加入してもよいでしょう。

これらは掛金全額が所得控除の対象となるため、税金という支出を減らしつつ貯蓄することができます。

「節税」という文字が表示されている電卓
写真=iStock.com/BBuilder
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/BBuilder

あるいは所得控除の上限はありますが、最大の保険料控除を受けられる最小の金額だけ、貯蓄型の生命保険・医療保険・個人年金に加入する。

そして満期返戻のタイミングを、たとえば65歳、70歳、75歳などと分散させておく。

むろんこれら確定給付型の保険商品はインフレに弱いという弱点があるのですが、定期預金に預けていても金利は0.002%。ネット系銀行でも0.2%程度です。

しかし掛金全額所得控除の保険なら、所得税率10%の人でも住民税と合わせて20%の節税効果、つまり運用利回りになります。

控除の上限がある民間保険でも、生命・医療・個人年金をそれぞれ8万円、年間24万円の払込で、所得税控除年間12万円、住民税控除年間7万円ですから、同様に所得税1万2000円+住民税7000円で合計1万9000円の節税効果があります。

保険料はカードで払えば1%、2400円の還元なので、年利回り8%以上となります(ただし節税は単年度で決まるため複利効果は見込めません)。

将来戻って来る保険金や返戻金がインフレで目減りしたとしても、ハイパーインフレといった事態にならなければ、それなりの安心材料になると考えています。

■5.物価に連動しやすい資産の割合を増やす

冒頭の通りインフレ傾向が強くなることが予想されますから、対策としては株や不動産、あるいは金(ゴールド)や大豆、原油に代表されるコモディティなど、物価に連動しやすい資産の割合を増やすことです。

コモディティはハードルが高いですが、コモディティETFなどもあります。

またわかりやすいところでは、輸出や物流、資源やインフラ、生活必需品などに関連する企業への株式投資などが挙げられます。

逆に定期預金や貯蓄型保険商品の多くはインフレとともに目減りしますから、解約で損しないのであれば、こういったポジションを減らすという判断もありです。

さらなる円安に備えるなら日本円のポジションを減らし、外貨に替えることでしょうか。

■ほぼ全方位に投資している

私の個人的な運用を紹介すると、国内・海外の不動産、太陽光発電、個別株、投信積立(iDeCo口座、つみたてNISA口座、一般特定口座)、商品先物取引、金積立、日経225先物指数、NYダウ先物指数、FX、仮想通貨、仮想通貨のマイニングなどなど、ほぼ全方位に投資しています(トレードは毎日やっているわけではなく、チャンスが来たときだけです)。

インフレ時には借金による投資が有利となるのですが(金利は上昇しますが)、自己資金を抑えてレバレッジが効かせられるため、インフレ・デフレに関係なくローンを組んでの投資(不動産と太陽光)を継続しています。

昨今の資源高、円安を受けて資産が増えているのは、米国株式と米国ETF積立、金積立、米国不動産、FX、外貨預金です。

ただしこれらは数年前から仕込んでいるものが多く、私にはいまの為替レートや金価格で始める勇気はちょっとありませんが、積立なら始めやすいのではないでしょうか。

■暴落を期に米国株は積み増し

一方、ロシアのウクライナ侵攻で株式相場が暴落したのを期に積み増ししたのが米国株・米国ETFです。

個別株では長期連続増配している高配当銘柄に投資をしています。

なぜ米国かというと、米国は移民を受け入れており、人口が増加し続けています。人口が増えれば住まいも必要だし消費もします。さらに他の先進国と違い、少子化問題もあまりありません。彼らが大人になればやはり結婚して家や車を買ったり消費をするでしょう。つまり内需は右肩上がりであり、それは当然企業業績にも跳ね返り、株価も途中で乱高下はあったとしても、長い目で見れば右肩上がりではないかというのが私の推測です(あくまで私個人の予想ですから外れるかもしれません)。

次に、なぜ高配当かつ長期連続増配銘柄か。

高配当が好ましいのは言うまでもないと思います。株価が乱高下しても、あるいは下落して含み損が出ていても、保有し続ければ配当が得られるので、右往左往する必要がないからです。仮に暴落局面が来たらむしろラッキーで、買い増しすればいい。

ただし、暴落して業績も下がれば配当金も減る可能性があります。そこで長期連続増配銘柄です。長期的に増配を続けている企業は、業績が安定し事業構造も強靭(きょうじん)であると考えられ、配当金が減る減配のリスクが他銘柄よりも低いであろうという判断です。

実際調べてみると、一度も配当を減らすことなく、30年以上ずっと増配を続けている銘柄が複数あり、中には50年も60年も連続増配している銘柄もあります。そういう銘柄に投資を始めました。2022年2月末の話ですが。

特に米国株は日本株とは異なり1株からでも買えるので、資金が少なくても可能です。

■今後の全方位計画

昨年始めたのが農業で、果実を育てています。

太陽光発電所のパネルの下部で耕作する、いわゆるソーラーシェアリングです。作物は農協を通じて販売する予定で、もし調子が良ければ拡大したいと思っています。一人で黙々と作業するのは、やってみるとなかなか没頭できて楽しいです。

昨今、都会を離れて里山移住する人を報道などで見かけることが増えましたが、彼らの気持ちもわかるような気がします。

また、仮想通貨のマイニングマシンも増やしました。現在は全般的に低調ですが、いずれ上向くのではないかという期待からです。しかしこれはどうなるかわかりませんので、リスクの取れる範囲内です。

仮想通貨に関連することでは、M2Eアプリ(Move to Earn:動いて仮想通貨を稼ぐアプリ)を複数スマホにインストールし、ランニング時に腕に装着して歩数を稼いでいます。どれも未上場のコインなのでどうなるかはわかりませんが、ポイ活のような感じで増えるのを楽しみにしています。仮に値がつかなくても損失はゼロですし。

いま具体的に動いているのが民泊で、コロナでインバウンドが消滅して撤退が相次ぎましたから、いまなら良い場所を確保できるのではないかと考えてです。

ただし通常の民泊は180日規制があるため、旅館業免許を取ってやる予定です。

現在はまだ海外からの個人旅行は認められていませんが、いずれ解禁されると思いますし、その際にはみなが動くから物件がないかもしれない。今のうちに動いたほうがよいのでは、という判断です。

■6.日々の生活で節約を工夫する

そしてわが家の家計の話。

野菜や魚介は旬のものを中心に購入しています。旬なら大量に収穫・出回るので値段が安いうえ栄養もあるだろうと。最近はレタスが多いです。

肉は私も子どもたちも、牛肉より鶏肉が好きという、財布に優しい嗜好(しこう)です。

ただ、快適性を犠牲にするような節約はしないと決めています。

エアコンのリモコンを操作する人
写真=iStock.com/show999
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/show999

暑いのをガマンしてエアコンをセーブするとか、寒いのをガマンして床暖房を切るとか、お風呂のお湯の量を減らすとかはやらない。快適に過ごすためには費用を惜しまない考えです。

子どもの教育費や家族旅行なども削減対象外です。

教育投資は言うまでもなく、旅行は非日常体験を含む「リアルな経験」を重視しているからです。

■何か必要なものがあるときは必ず100円ショップに寄る

気になるのは家庭の消耗品です。

特にティッシュペーパーやトイレットペーパー、キッチンペーパーなどは値上げが続いています。洗濯洗剤なども今後上がるかもしれません。

そこで重宝するのがイオンの「トップバリュ」や西友の「みなさまのお墨付き」といったPB(プライベートブランド)商品です。

昨今はホームセンターやドラッグストアでも幅広くPB商品が展開されており、家計のコスト削減に役立っています。かさばるものでもほぼ通販で買えます。

私は料理以外の家事全般・消耗品の在庫管理・補充担当なので、つねに価格比較をして買うようにしていますし、何か必要な際はとりあえず100円ショップに寄ってからにしています。意外なものが100円で売ってたりしますから。

■最大のコストアップ要因は妻

衣料品も値上がりするかもしれませんが、私は衣料品はほとんど買わないので影響はなさそうです。

なのに妻が買うので困っています。片付ける習慣がなく化粧品などもすぐ紛失して同じものを何度も買います。

調味料も変わったものを買ってきては使い切れずに消費期限がきて処分することになります。「フタをする」「封をする」「ラップをかける」を面倒がり、すぐにダメになります。冷蔵庫の奥からは腐った食品がたびたび発掘されます。

わが家の最大のコストアップ要因であり、頭が痛いです。

最後に、今回書いた内容は、あくまで私の考えによる個人的な対処法・運用内容のご紹介です。やった方がいいとかやるべきだなどと押し付けるつもりはありません。

数年後あるいは数十年後でもうまくいっているかはわかりませんし、かえって失敗だったという結果になる可能性もあります。

コロナが落ち着いて物流問題が解消されたり、戦後処理が順当に進んで資源価格も元に戻るかもしれません。

当然ではありますが、自分の頭で考え自己責任での判断が必要です。

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午堂 登紀雄(ごどう・ときお)
米国公認会計士
1971年岡山県生まれ。中央大学経済学部卒。大学卒業後、東京都内の会計事務所にて企業の税務・会計支援業務に従事。大手流通企業のマーケティング部門を経て、世界的な戦略系経営コンサルティングファームであるアーサー・D・リトルで経営コンサルタントとして活躍。2006年、株式会社プレミアム・インベストメント&パートナーズを設立。現在は不動産投資コンサルティングを手がけるかたわら、資産運用やビジネススキルに関するセミナー、講演で活躍。『捨てるべき40の「悪い」習慣』『「いい人」をやめれば、人生はうまくいく』(ともに日本実業出版社)など著書多数。「ユアFX」の監修を務める。

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(米国公認会計士 午堂 登紀雄)

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