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「毎朝のパン」をやめるだけで胃もたれ、イライラが解消…体調不良で悩む人がまずやるべきこと

プレジデントオンライン / 2022年8月11日 10時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/TATSUSHI TAKADA

朝食にパンを食べる人は多い。10万人の胃腸を診た消化器専門医の福島正嗣・医師は「日本人の約5割が毎朝食べているパンは、じつは消化が悪い。朝食べると血糖値の急上昇や自律神経のバランスが乱れるだけでなく、昼も夜も炭水化物が欲しくなる『炭水化物の連鎖』が止まらなくなる」という――。

※本稿は、福島正嗣『朝食にパンを食べるな』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

■毎朝のパンは肥満や糖尿病にもつながる

パンは消化がいい食べ物と思っている人もいるようですが、そもそもパンは、胃腸にとっては消化の悪い食べ物です。

パンは手軽に食べられて腹持ちがいいのですが、腹持ちがいいということは胃での滞留時間が長いということなので、ほかの食品と比べても消化に悪いのです。

また、パンの主原料である小麦に含まれているグルテンは、消化酵素では分解されにくいため、十分に消化されないまま小腸の粘膜に吸収されてしまいます。その未消化物が小腸の粘膜を傷つけ、腹痛やアレルギーの原因にもなります。

そのほか、小麦を高熱処理してつくられるパンを食べ続けると、肥満や高血圧、糖尿病、動脈硬化、心筋梗塞、脳梗塞、がんなどの発症や悪化にもつながります。

このように、パンが体に悪い理由はいくつもあるのですが、それではなぜ朝に食べるのがよくないのでしょうか?

消化器専門医としてこれまでに延べ10万人の胃腸を診てきた臨床経験をもとに、毎朝のパンがあなたの健康を奪う3つの理由を解説します。

■①朝のパンは血糖値を急上昇させる

パンを朝に食べるとよくない最大の理由は、血糖値への影響です。

ご飯やパンといった糖質が多い炭水化物を摂ると、血糖値が上昇することは広く知られています。この特性から、「朝は血糖値が下がっているから、脳を覚醒させるために炭水化物を積極的に摂取すべき」というスローガンもあります。

しかし、そもそも朝は血糖値を上昇させるコルチゾールやアドレナリンといったホルモンが普段より多く分泌されています。そのため、昼に糖質を摂取するよりも、朝に摂ったときのほうが血糖値はより上昇しやすいのです。

朝の血糖値が高い現象は「暁(あかつき)現象」として糖尿病の患者にはよく知られています。

就寝時より起床時のほうが血糖値が低いのが通常なのに(就寝中は食事をしないため)、朝の血糖値は就寝時より20~30mg/dl高い場合もあります。

一般の人でも、朝食のほうが昼食よりも血糖値が上がりやすいことが、時間栄養学の分野でも報告されています。

そもそも小麦粉には糖質が多く含まれています。糖質は穀類やいも類、砂糖などに多く含まれる栄養素で、炭水化物のうち体内に取り入れられエネルギー源になります。100グラムあたりの糖質量を見ると、ご飯は35.6グラムなのに対し、食パンは42.2グラムで、ご飯よりもパンのほうが糖質が多いのです。

つまり、血糖値が上がりやすい朝にパンを食べると、血糖値はさらに上昇しやすいのです。とくに、食後1~2時間のうちに血糖値が急激に上昇、下降する状態を「血糖値スパイク」といいます。

こうした血糖値の乱高下は血管にダメージを与え、動脈硬化や心筋梗塞、脳卒中につながると考えられています。

血糖値の上昇を予防するために、食後の運動や繊維質の多い食事を摂ることがすすめられていますが、私からすると、そもそも朝食はそこまでして食べなければいけない食習慣なのかが疑問です。

■②炭水化物の無限サイクルに陥る

朝のパンを控えたほうがいいのは、朝食だけの問題ではなく、それ以降の食事にも影響を与えてしまうという理由もあります。

血糖値が上がったあとは、インスリンが分泌され血糖値が下がるのですが、血糖値スパイクのあとは必要以上に血糖値が下がる場合が多く、これを「機能性低血糖症」と呼びます。

低血糖気味になると、「血糖値が下がった」という情報が脳に伝達され、自然と糖質を含む食べ物が欲しくなります。そのため朝食がパンの場合、昼はうどん、夜はパスタなど炭水化物の連鎖になってしまう可能性が高いのです。

事実、私自身もそうでした。この機能性低血糖症を起こすと朝食を食べたにも関わらず2時間後に空腹を感じてしまい、朝食が十分に消化されていない状況で次の食事を摂ることになり、消化管に大きな負担をかけます。

近年は、朝の低糖質、高脂肪食が適切な満腹感につながり、1日を通じて血糖値のコントロールに役立つという研究結果も報告されています。

つまり、朝は食べない、もしくは炭水化物以外の食事、たとえば卵料理など血糖値スパイクを起こさない食事を摂ると、その後も必然的に血糖値を上げにくいメニューを選ぶようになるわけです。

「糖質が糖質を呼ぶ」という“糖質過多”のサイクルは、糖代謝を理解すれば当たり前なのですが、当の本人は糖質を食べさせられているという認識がないため、気づくのが難しいのかもしれません。

■③自律神経のバランスが乱れる

私たちの体の内臓や血液の流れは、自律神経という末(まっ)梢(しょう)神経でコントロールされています。

この自律神経には、交感神経と副交感神経の二つがあります。交感神経は体が活動的になったときに優位になり、休息時には副交感神経が優位になります。

日中起きているときには交感神経が優位になり、循環血液量も上がり、消化管の働きは抑制されます。夜間は副交感神経が優位になり心拍数も少なくなり、逆に消化管の動きは活発になります。

朝は、副交感神経から交感神経に移行する重要な時間帯です。この時間帯の体調を制することが、1日の体や脳の活動の質を上げるためにも重要なので、自律神経を乱すような行為は控えるべきだと考えます。

自律神経の研究でも、糖が口腔内に到達すると膵臓を支配する交感神経が抑制され、副交感神経が促進されることが指摘されています。

朝の時間帯に水やお茶、コーヒーを摂ったり、軽い運動をすることはおすすめしますが、パンのように胃の中で膨張し滞留時間が長く、しかも血糖値を急上昇させる食べ物を摂ることは、体のバランスを乱す行為にしかなりません。

胃の中で膨張して滞留時間が長い食べ物を朝に摂ると、副交感神経が優位になってしまうため、せっかく朝起きて交感神経に移行したのに、また副交感神経が優位になってしまいます。再び副交感神経が優位になると、仕事でもベストなパフォーマンスを発揮することは難しくなります。

原始時代は日がのぼって明るくなったら起きて、お腹がすいたら狩りに出かけ、夜になったら寝るというシンプルな生活だったため、交感神経と副交感神経の移行もスムーズだったと思います。

しかし、1日8時間働いて、1日3回食事を摂り、日が暮れても電気で明るくして活動を続け、ストレスフルな日々を過ごしている現代では、交感神経と副交感神経の移行はスムーズには行なわれにくいのです。

これを意識して、せめて朝の時間帯ぐらいは、体のバランスを大きく変化させるパンなどの食べ物は口にせず、自律神経を乱さないようにすべきです。

■炭水化物はあなたを「食の奴隷」にする

パンやご飯、麺類など炭水化物を中心とした食事を摂ると、満腹感で満たされるという人は少なくないでしょう。

しかし、炭水化物は胃の満腹感のリミッターを容易に外してしまうため、胃の許容量を超えて食べてしまいます。にもかかわらず、その後は異常な空腹感に襲われ、再び炭水化物を過食してしまったという経験は多くの人にあるでしょう。

つまり、食事を「食べる」というよりも、「食べさせられている」のです。

これはまさに、「食の奴隷化」といっても過言ではありません。

食の奴隷になったときには、すでに胃腸に大きな負担がかかっているだけでなく、さまざまな生活習慣病の発症や悪化につながります。

炭水化物の過剰摂取は、その満足感と引き換えにあなたの体を傷つけ、健康寿命を短くしているのです。

■「毎朝のパン」をやめた患者さんたちは体調が改善

「食の奴隷」になりたくなければ、毎日、炭水化物を大量に食べている人は、すぐにやめるべきです。

しかし、突然「今日から炭水化物を減らしましょう」といわれても、大半の人はこれまでの食習慣から、なかなか抜け出せません。

福島正嗣『朝食にパンを食べるな』(プレジデント社)
福島正嗣『朝食にパンを食べるな』(プレジデント社)

当然、反発する患者さんもいるので、胃腸科医としてどのように提案したら受け入れてもらえるか、考え続けました。

さんざん悩んだ末に、私は炭水化物の無限サイクルから抜け出す最初の一歩として患者さんに、「朝のパンを、やめてみませんか?」と提案しています。

実際に朝のパンをやめた患者さんからは「胃もたれや逆流感、下痢がなくなった」「喘息の発作がなくなった」など、胃腸だけでなく、体の不調が改善されたという声が聞かれます。胃もたれや胃痛、下痢、メタボなどで悩んでいる人は、まずは2週間、炭水化物を減らしてみると、自分の体が変わることを実感できると思います。

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福島 正嗣(ふくしま・まさつぐ)
医療法人社団正令会みらい胃・大腸内視鏡クリニック理事長兼院長
1993年、聖マリアンナ医科大学卒業。東京女子医科大学消化器病センター外科に入局後、主に消化管および肝胆膵の悪性疾患の手術を担当。2017年に内視鏡検査専門のみらい胃・大腸内視鏡クリニックを設立、現在に至る。これまでに消化器外科手術2000件、胃内視鏡検査6万件、大腸内視鏡検査3万件の実績を誇る。40歳から糖質制限を始めて肥満や脂質異常症を克服し、自身の体験もベースに多くの患者さんに薬以外の治療として食事指導を行なって成果を上げている。

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(医療法人社団正令会みらい胃・大腸内視鏡クリニック理事長兼院長 福島 正嗣)

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