絶対にこんな人と一緒に働いてはいけない…人間関係を破壊する人に共通する「4つの毒」【2022上半期BEST5】
プレジデントオンライン / 2022年8月15日 10時15分
※本稿は、松村亜里『誰もが幸せに成長できる 心理的安全性の高め方』(WAVE出版)の一部を再編集したものです。
■母親は「子育てスキル」と「つながり」のどちらを優先すべきか
まずは、心理的安全性を高めるためのベースとなる、一番大切な基本的欲求、〈関係性〉についてお話ししていきましょう。
心理的安全性の定義――たとえ対人的なリスクをとっても、このチームは安全であるという共通の認識を、メンバーが持っていること――を思い返してみても、関係性がその要となっていることがわかりますね。
よい関係性がつくれれば、心理的安全性はグッと高まります。
そこで、いきなりですが、あなたに質問です。
あなたは、お母さんが子育てに関する最強の情報やスキルを持っているのと、質のよいつながりがあるのとでは、どちらが幸せに大きく影響すると思いますか?
「いくら関係性の話をするからって、それはやっぱり情報やスキルでしょう」
という声が聞こえてきそうですね。私も、これは子育てで最初に陥ったワナでした。
実は、答えは「質のよいつながり」。子育ての研究では、いくら多くの情報や最強の子育てスキルを持っていても、1人で頑張っていたのでは、精神的にも肉体的にも限界があることがわかっています。
パートナーや親、友だち、コミュニティのメンバーなどとよいつながりがあって、子育てについて相談し合ったり、助け合ったりできたら、もっと幸せに子育てができるのです。そのくらい、人との関係性は大事なことなのですね。
■母親を亡くした猿の赤ちゃんが求めたもの
「質のよいつながり」と「質のよい情報やスキル」の両方がなければ、人はよい方向へ変化することはできない――これは、私が長年教育現場で心理学を教え、カウンセリングをしてきた中で、行き着いた結論です。
こうしたよい関係性は、幸せだけでなく、挑戦と成長にもつながります。
ここで、それを実証した心理学者ハリー・ハーロウ氏の、母親を亡くした猿の赤ちゃんの実験を紹介しましょう。
この実験では、母親を亡くすと早世してしまう猿の赤ちゃんに、2つのつくり物の猿のお母さん――1つはミルク入り哺乳瓶を持った針金製、もう1つは哺乳瓶を持たないけれど温かい布製のぬいぐるみを与えました。
すると赤ちゃんは、布の母親になつき、1日の大半を檻で一緒に過ごすようになりました。
ここでは、赤ちゃんと布のお母さんのよい関係性が育まれたと言えます。
そこで今度は、針金の母親といるときと、布の母親がいるときの別々に、新しく熊のぬいぐるみを与えました。最初は猿の赤ちゃんは、どちらと一緒にいるときも、熊のぬいぐるみをとても怖がっていました。
ところがしばらくすると、針金の母親といるときは、いつまでも檻の隅にうずくまって怖がっていたのが、布の母親といるときは、初めはお母さんにすがりついていても、少しずつ、熊のぬいぐるみに興味を持って近寄るようになったのです!
■人間が挑戦するには「安全基地」が必要
そして、怖くなると布の母親のところに戻り、また熊のぬいぐるみに近寄って……という行動を繰り返すうちに、最終的に熊のぬいぐるみと遊ぶようになったのですね。
これは、お母さんが「安全基地」になっているからこそ、赤ちゃんは挑戦し、成長できたという証し。
世の中には、子どもの成長を願って、崖から突き落とすくらい厳しく接するといい、という考え方もありますが、それは目的にかなった行動とは言えません。なぜなら、親子のよいつながりが安全基地となるからこそ、人は成長できるのですから。
安全基地は、子どもだけでなく大人にも必要です。私のオンラインサロンでも、最初はサロン内だけで「挑戦できる」と言っていた人たちが、今では外の世界でも挑戦できるようになっています。
みなさんも、何かのコミュニティやチーム、個人同士の関係などをつくるときは、まずは心理的安全性の土台である質のよい関係性をつくっていくことを、最優先に考えてほしいですね。
■関係性がいいと、仕事も楽しくなる
「仕事なんだから、いい関係性なんて、必要ないよ」
企業などの組織では、そう言う人が結構いますね。
「自分がやることさえ、きちんとやっていればいい」
「まずは、作業をどう効率よく進め、どう結果を出せるかが重要だ」ということですよね。そういう傾向は、どこにでもあると思います。
組織に限らず、多くの人が「何かをしよう」というときに、どうしても後まわしにされがちなのが、人との関係性。ここで興味深いデータがあるので、見てみましょう。
これは、アメリカの従業員がどのくらい「働く喜び」を感じているかという研究結果をまとめたものです。
従業員が仕事に対して感じている「楽しさ」、すなわち充実感や就業意欲のことを「ワークエンゲージメント」と呼び、これが高まると、従業員の幸福度=ウェルビーイングも高まることがわかっています。
そこでグラフを見ると、「職場の関係性がよくない人」は、10%しか、「仕事が楽しい」と感じられていないのですね。
一方、「職場の関係性がよい人」は、49%と、ほぼ半数の人たちが仕事を楽しめているのです。この2つの差は、5倍近くあります。
そのくらい、職場の人間関係とワークエンゲージメントは、影響し合っているということです。
組織の従業員に対する取り組みは、時代とともに変わってきました。
もともとは顧客の満足度を上げることが目標で、従業員のことは二の次だったものが、従業員の「働きにくさ」を取り除くことに注目するようになり、それが「働きやすさ」を考える取り組みに変わりました。
■批判、自己弁護…人間関係を壊す「4毒」の正体
では、心理的安全性のある関係性をつくるためにはどうすればいいでしょうか。必要なポイントを押さえていきましょう。
この関係性をつくるスキルには、次の2つがあります。
①「マイナス3から0のもの=悪い関係」を予防するもの
②「0からプラス3へ行くもの=よりよい関係」を促進するもの
①の最初のポイントは、人間の関係を壊す「4毒」を減らすこと。4毒とは、
・批判
・侮辱
・自己弁護
・逃避
のことで、まずはマイナス3の悪い関係性をつくらないように、この4つの行動を最小限にする努力をします。そのためにも、これらが起こりにくいガイドラインをつくり、場で共有します。
この4毒をつくらないためのガイドラインは、以下の4つです。
①相手自身を批判せずに、行動に注目する
この批判とは、「あなたは~だ」と、相手の人格・性格・能力を責めること。行動を責める不満とは違います。たとえば、時間に遅れてきた人に、
「なんて無責任なんだ」
と責めるのは批判(非難)ですが、
「時間どおりに始められなかったので、困ります」と行動に言及するのは、不満です。
批判の中でも、とくに気をつけたい言葉は、「いつも~だ」「いつも~してくれない」など。
「いつも」という言葉には「変わらず」という意味が含まれているので、自ずと人格批判になります。
性格や能力はすぐには変えられないため、そこを批判されると、人は無力感や焦燥感に陥りやすく、攻撃されていると感じて防衛的になります。
一方、行動は変えられるので、希望が持てます。相手を責めるのではなく、行動に注目し、やってほしいことを気持ちよくリクエストしていきましょう。
■侮辱の多い関係により、風邪にかかる確率も高くなる
②相手を侮辱せずに、性格の強みに注目する
侮辱とは、「あなたなんかにできない」という、人を見下したような見方や言動を指します。これには、冷笑、皮肉、挑発も含まれます。
心理的安全性のある関係性とは、互いに信頼し合うことなので、侮辱はその真逆ということですね。
余談ではありますが、この侮辱の多い関係にあると、風邪やインフルエンザにかかる確率が高いという研究報告もあり、免疫力まで下げてしまうこともわかっています。
人を侮辱する代わりに、相手の力や性格の強みに注目し、相手の可能性を信じる選択をして、そのためには何が必要かを話し合ってみましょう。
③自分が間違ったときは、自己弁護しないで謝る
自己弁護とは、「私は悪くない。問題はあなたにある」という感覚で、言い訳のこと。ここでの問題点は相手を責めることで、自分が謝る機会がなくなることです。
だから、相手を不快にさせたときは、まずは謝ること。そうすれば、「人は間違ってもいい」という文化がつくられて、心理的安全性が高まります。
④問題から逃避しないで話し合う
この逃避とは、問題について話す機会を避けること。
相手が話してきても無視したり、グループの中で話すことがタブーになっていることがあったりすることです。
問題ときちんと向き合わないために、人間関係の修復が阻まれてしまい、そのせいで、孤独な人を生んでしまうことがあります。だから、大切なことはちゃんと話し合う。勇気がいることだとは思いますが、心理的安全性は、いい人になるためのものではないのです。
お互いの幸せと成長のために、勇気を持って話し合いましょう。
■挑戦を歓迎する――みんなの共通認識を最初につくっておく
以前、私が働くチームに、
「ダメ、ダメ。それはできません」
と、誰かの意見に反対ばかりしたり、人をバンバン批判したりする人がいました。こちらから何度注意しても変わらなかったので、「もう、ミーティングには出ないでください」と、はっきり言ったことがあります。
そうすると、ほかの人たちが意見を言えるようになるのです。辛い決断ですが、これは大切なことです。
だから、集まりの最初に、
「ここでは、こういう場をつくっていきます」
「こういうことを大事にします」
「こういうことはしないでください」
といった「場のガイドライン」を、まずはリーダーが明示して、メンバーとシェアしておくことが大切です。
「みなさんの挑戦を歓迎します!」
といった「共通認識」を、最初につくっておくのです。
職場などでは、いきなりするのは難しくても、たとえばミーティングなどで、話し合う内容を決めたあとに、
「ここでは多様性を尊重します。どんな意見にも、耳を傾けましょう」
「意見は、質より量を歓迎します」
「人の意見は批判しないようにお願いします」といった「ガイドライン」を示しておくといいでしょう。
そうやって大切にしていることを決めて、メンバーそれぞれがその範囲内で、
「私も意見を言っていいんだ」
「批判されないんだ」
と思えることで、心理的安全性は高まります。
あとは、みんなでそれにかなった「安心安全の場」を自然につくっていってくれるものなのです。
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心理学者、ニューヨークライフバランス研究所代表
医学博士・臨床心理士・認定ポジティブ心理学プラクティショナー。母子家庭で育ち中卒で大検をとり、朝晩働いて貯金をしてニューヨーク市立大学入学。首席で卒業後、コロンビア大学大学院修士課程臨床心理学、秋田大学大学院医学系研究科博士課程公衆衛生学修了。ニューヨーク市立大学、国際教養大学でカウンセリングと心理学講義を10年以上担当し、2013年からニューヨークで始めた異文化子育て心理学講座が好評で州各地に拡大。ニューヨークライフバランス研究所を設立してポジティブ心理学を広めている。
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(心理学者、ニューヨークライフバランス研究所代表 松村 亜里)
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