1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

「お会いできて幸甚です」は失礼になる…読み手を不快にさせるNG敬語の書き換え方

プレジデントオンライン / 2023年2月25日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/anyaberkut

ビジネスメールの「正しい敬語」とはどんなものか。ライターの藤吉豊さんは「間違った敬語を使っていると、相手を不快にしてしまう恐れがある。尊敬語と謙譲語の使い分けや二重敬語については、間違っている人も多いので注意してほしい」という――。(第1回)

※本稿は、藤吉豊、小川真理子『社会人になったらすぐに読む文章術の本』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

■「おっしゃられる」は間違った敬語

本稿では、読み手を不快にさせる「NGメール」をビジネスシーンにふさわしい「OKメール」に書き換える方法を解説します。現役ビジネスパーソン223名(20~60代)に「メールに関するアンケート」を実施しました。アンケート回答者が実際に受け取った「不快に思ったメール」(固有名詞などは一部改変)を「NGメール」として紹介しています。

「新入社員(または若手社員)から受け取った際に、『思わず注意したくなった』『日本語としてどうなの?』と思ったメール」の回答をもとに、若手社員がやりがちなNG表現をまとめました。

学生時代なら問題がなくても、ビジネスシーンでは、いろいろな世代、立場、状況でやりとりをするもの。「不快にさせるメール」を知り、感じのいいメールを書けるようにしましょう。

×NGメール
資料をご覧になられましたでしょうか?

○OKメール
資料をご覧になりましたか。資料をご確認いただけましたか。

■ダメな理由

・尊敬語は目上の人を敬う表現で、「相手を立てたいとき(相手を自分よりも上にする)」に使います。一方、謙譲語は自分がへりくだる表現で、「自分の立場を下げて相手を立てる」ときに使います。
・「ご覧になられる」は、「見る」の尊敬語「ご覧になる」に、尊敬の意を表す助動詞「れる」が重なった二重敬語です。二重敬語とは、「ひとつの語について敬語を2つ以上組み合わせた敬語」のことで、誤りとされています。

二重敬語の例
×「お(ご)+○○られる」
×お読みになられる→○お読みになる 
×おっしゃられる→○おっしゃる
×お見えになられる→○お見えになる
×お会いになられる→○お会いになる
×「謙譲語+いただきます」
×拝見させていただきます→○拝見します
×うかがわせていただきます→○うかがいます
×お目にかからせていただきます→○お目にかかります

「お召し上がりになる(召し上がる+お~になる)」「おうかがいする(うかがう+お~する)」のように、広く定着している二重敬語もあります。「話し言葉」として使用するのであればさほど違和感を与えませんが、ビジネス文書(書き言葉)においては、避けたほうが無難です。

■「幸甚」を使うべきなのはどんな場面か

×NGメール
こちらだけ先にお願いしてよろしかったでしょうか。

○OKメール
最初に、添付した資料の確認からお願いできますでしょうか。

■ダメな理由

「こちら」が何を示しているのか、「何を」お願いしたいのかがはっきり書かれていません。「よろしかったでしょうか」は、バイト敬語です(後述)。「これ、それ、あれ、どれ」といった指示語(別名こそあど言葉)は、何を指すのかわかりづらく、読み手の負担になる場合が多いです。

×NGメール
○○様にお会いできて、幸甚です。

○OKメール
(1)○○様にお会いできて、とても嬉しく思います。

○OKメール
(2)面会の時間を取っていただき、幸甚です。

■ダメな理由

「幸甚」は、「非常にありがたい」「この上ない幸せである」という感謝を表す表現です。相手が自分のためにしてくれた(これからしてくる)心づかいに対して使う言葉であり、自分の行動には使いません。

■「幸甚」を使うときのポイント

「~ていただき」「~くださいましたら」とセットにすると使いやすい(例:「~ていただき幸甚です」「~くださいましたら幸甚です」)。社外の目上の人に使う(社内では使わない)。親しい人・簡単なお礼には使わない(「この上ない幸せ」という意味があるため多用しない)。

頭を抱える女性
写真=iStock.com/mapo
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/mapo

■「~が」で文を続けない

×NGメール
○○課長、さきほど資料を送っていただいたのですが、今、外回りなので時間がかかるんですが、でも、もう少ししたら終わるかもしれないので、終わったら確認をしようと思いますが、それでよろしいですか。

○OKメール
○○課長、資料を受け取りました。今、外回りをしており、○時には終わる予定です。社に戻り次第、資料を確認します。お待たせしてしまい、申し訳ありません。よろしくお願いします。

■ダメな理由

「伝えたいこと」をすべて1文の中に入れ込んだ結果、「何を、どうしたいのか」「どういう状況なのか」が、わかりにくくなっています。「~が」「~ので」で文を続けないで、伝えたい情報ごとに文を区切ったほうが、正確に伝わります。

×NGメール
聞きたいことがあるのですが、自分はA案よりB案で今回のプロジェクトが進むと思ったのですが、課長がB案についてミーティングをすると言っていたのですが、どっちで進むのかがわからないのですが。

○OKメール
教えていただきたいことがあります。ミーティングでは、プロジェクトのA案とB案、どちらの案について話し合うのでしょうか。

■ダメな理由

「~が」で文を続けているので、主語(誰が、何が)と述語(どうした)の関係がわかりにくくなっています。「~が」は「逆接」(前に述べたことを否定する)のときに使用したほうが伝わりやすいです。「単純な接続」(文と文を単純につなげる)として使用した場合、文意が混乱しやすくなります。

■尊敬語と謙譲語はなにが違うのか

ビジネスパーソンにとって、正しい敬語は、周囲との人間関係を円滑に築くための基本です。敬語を使いこなすと、「お互いに気持ちよく交流できる」というメリットがあります。

敬語の役割
・自分と相手の関係性を明確にする(相手の立場を尊重する)。
・良好な人間関係を築く。
・書き手(話し手)の品位を保つ。
・相手の信頼を得る(好印象を与える)。

敬語は「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」の3つに分類できます(文化庁の「敬語の指針」では5分類ですが、本書ではもっとも一般的な3つの敬語表現を紹介します)。

■尊敬語……「相手」の動作に対して使う。相手を持ち上げる。
・元の言葉に「お(ご)~になる」「~される」「お~くださる」をつける。
例:「ご利用になる(ご利用くださる)」「書かれる」「お送りくださる」
・元の言葉を別の言葉に置き換える。
例:「(相手が)ご覧になる」「(相手が)いらっしゃる」「(相手が)おっしゃる」

■謙譲語……「自分」の状態、動作に対して使う。自分の立場を低くする。
・元の言葉に「お(ご)~する(いたす)」「お(ご)~いただく」を付ける。
例:「お持ちする」「お届けする」「ご相談させていただく」
・元の言葉を別の言葉に置き換える。
例:「(自分が)拝見する」「(自分が)うかがう」「(自分が)申し上げる」

■尊敬語は相手の動作に、謙譲語は自分の動作に使う

■丁寧語……語尾に「です」「ます」「ございます」をつけて、丁寧に表現する。立場の上下に関係なく使える。
例:「伝えます」「資料がございます」

【図表1】敬語の位置関係
敬語の位置関係(出所=『社会人になったらすぐに読む文章術の本』)

例文「×」は、相手に対して謙譲語を使った間違い例です。謙譲語は、自分の行動を相手よりも下の立場として表現します。

×「詳細は担当者にうかがってください」
○「詳細は担当者にお聞きになってください」

×「弊社に参られた際に、ご説明します」
○「弊社にお見えになった際に、ご説明します」

×「資料を拝受してください」
○「資料をお受け取りください」

×「パンフレットは拝見されましたか」
○「パンフレットはご覧になりましたか」

×「Aさんにはもうお目にかかりましたか」
○「Aさんにはもう会われましたか」

×「お菓子をどうぞいただいてください」
○「お菓子をどうぞ召し上がってください」

■バイト敬語は注意する気も失せるレベル

×NGメール
おつかれさまです。ご依頼になられました書類をファイルにしてお送りさせていただきました。

○OKメール
おつかれさまです。ご依頼の書類を添付して送信します。

■ダメな理由

「ご依頼になられました」「お送りさせていただきました」は二重敬語です。

×NGメール
さきほど送りました添付ファイルは、あれでよろしかったでしょうか。

○OKメール
さきほど添付ファイルを送信いたしました。○○○○でよろしいでしょうか。ご確認ください。不備がございましたら、ぜひご指導くださいますよう、お願いいたします。

■ダメな理由

このメールの受信者は、次のように不快感を口にしています。「『あれ』『よろしかった』は、目上に対する言葉として不適切ですし、それ以前に語彙(ごい)力のなさに驚きます。注意する気も失せるレベルです」。「よろしかったでしょうか」は、いわゆる「バイト敬語」です。間違った敬語とは言い切れませんが、違和感を覚える人もいます。「相手にこれから確認をするとき」に過去形を使うのは不自然です。

「あれで」が何を指しているのか、不明瞭です。「これ、それ、あれ、どれ」といった指示語は、短い言葉で対象を示す便利な言葉です。しかし、「何を指しているのかがあいまいになり、正確に伝わらない」ことも考えられます。指示語を具体的な言葉に置き換えたほうが、誤解なく伝わります。

■「○○のほう」「になります」は不自然な敬語

「バイト敬語」は、敬語を使い慣れていない学生が使う「なんとなく丁寧に聞こえるけれど、違和感のある敬語表現」です。

×「こちらが提案書になります」
○「こちらが提案書です」「こちらが提案書でございます」
→「~になる」は、変化を表す言葉です。「何かが提案書に変化する」わけではないので、不要です。

×「こちらの提案書でよろしかったでしょうか」
○「こちらの提案書でよろしいでしょうか」
→「よろしかった」は、過去の出来事などを確認する際に用います。「これから」確認をお願いするので、不自然です。

×「提案書のほうを作成いたしました」
○「提案書を作成いたしました」
→「○○のほう」は、主に方向を示すときに使う言葉です。

藤吉豊、小川真理子『社会人になったらすぐに読む文章術の本』(KADOKAWA)
藤吉豊、小川真理子『社会人になったらすぐに読む文章術の本』(KADOKAWA)

×「1万円からお預かりいたします」
○「1万円、お預かりいたします」
→「から」は『○○から××まで』といったように、範囲の起点を示すときに使います。

×「○○は本日ご出張に行かせていただいております」
○「○○は本日出張のため、終日不在でございます」
→出張は取引先やお客様から許可をいただくものではありません(「いただく」は「もらう」の謙譲語)。また、社内の人の出張に「ご」をつけるのは間違いです。

「よろしかったでしょうか」などの「バイト敬語」は間違った敬語とは言い切れませんが、違和感を覚える人もいます。取引先や上司に対して使うと悪い印象を持たれてしまうこともあるので、しっかりと理解して正しい敬語を使うよう心がけましょう。

----------

藤吉 豊(ふじよし・ゆたか)
ライター、文道 代表
有志4名による編集ユニット「クロロス」のメンバー。日本映画ペンクラブ会員。編集プロダクションにて、企業PR誌や一般誌、書籍の編集・ライティングに従事。編集プロダクション退社後、出版社にて自動車専門誌2誌の編集長を歴任。2001年からフリーランスとなり、雑誌、PR誌の制作や、ビジネス書籍の企画・執筆・編集に携わる。著書に『「文章術のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた。』、『「話し方のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた。』、『「勉強法のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた。』(いずれも日経BP)、『文章力が、最強の武器である。』(SBクリエイティブ)がある。

----------

----------

小川 真理子(おがわ・まりこ)
ライター、文道 取締役
有志4名による編集ユニット「クロロス」のメンバー。日本映画ペンクラブ会員。日本女子大学文学部(現人間社会学部)教育学科卒業。編集プロダクションにて、雑誌や企業PR誌、書籍の編集・ライティングに従事。その後、フリーランスとして、企業のウェブサイトのコンテンツ制作にも関わる。著書に『「文章術のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた。』、『「話し方のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた。』、『「勉強法のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた。』(いずれも日経BP)がある。

----------

(ライター、文道 代表 藤吉 豊、ライター、文道 取締役 小川 真理子)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください