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「私の人生で最大の下落相場が5年以内にくる」80歳の世界的投資家ジム・ロジャーズがそう断言するワケ

プレジデントオンライン / 2023年3月3日 8時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/coffeekai

これからの世界経済はどうなっていくのか。世界的投資家の1人、ジム・ロジャーズ氏は「おそらく長期間にわたるブル相場で株価が上昇しすぎたことが要因となり、5年以内に『私の人生で最大のベア相場』が到来するだろう」という――。

※本稿は、ジム・ロジャーズ『捨てられる日本 世界3大投資家が見通す戦慄の未来』(SB新書)の一部を再編集したものです。

■人生最大の下落相場が5年以内にくる

中国がアメリカから覇権国の座を奪うタイミングはいつになるだろうか。

私は、将来的に起こるであろう「わが人生最大のベア相場(資産価格が下落する金融市場のトレンド)」がそのタイミングだと予測している。ベア相場でアメリカ経済が崩壊する様を見て、世界は中国が覇権国になった確証を得るだろう。

私自身、投資家として「ブル相場(資産価格が上昇する金融市場のトレンド)」ではなく、「ベア相場」を追いかけ、そのなかで将来性が感じられるものを買うことをいつも心がけてきた。おそらく5年以内に到来するだろう。

ベア相場は歴史上、何度も起こってきた。これからも必ず起こる。

戦争、疫病、金融引き締め政策、大企業の破綻などがきっかけになることもあるが、基本的には価格が上昇しすぎて、それ以上上がらなくなったタイミングで起こるものだ。将来的に起こる「私の人生で最大のベア相場」は、おそらく長期間にわたるブル相場で株価が上昇しすぎたことが要因となるだろう。

今、世界中の株式市場において、一部ではバブルも発生している。そうしたなか、記録的なインフレを抑制すべく、中央銀行が金融引き締めに動いている。そういう状況では金利が上昇し、ベア相場を誘発しやすい。ベア相場に入ると、景気が後退するリスクが高まる。次のベア相場では、中国の下落がアメリカより遥かに浅くなるだろうと私は見ている。

■米中戦争は起きるのか

ベア市場以外に、中国がアメリカにとって代わる可能性があるのは、米中戦争だ。

アメリカは世界最強の軍隊を有しているので、戦争には勝つかもしれない。しかし、仮にアメリカが勝利をおさめたとしても、その後の繁栄が約束されるわけではない。

前述したように、イギリスも第二次世界大戦で戦勝国になった後に衰退した。アメリカも、こうした危機感を感じているからこそ必死だ。

しばしばアメリカのGAFAとも比較されがちな中国の巨大テック企業、アリババ、ファーウェイ、テンセントなどを輩出してきた中国に対して、アメリカはしばしば政治的手段を講じて市場から追い出そうとしてきた。

たとえば、Appleはアメリカ政府に「ファーウェイはスパイだ」と言って、市場から追い出そうとした。しかし中国に対して、決定的な打撃は与えられていない。

■日本はアメリカに同調する必要はない

もし仮に、「最も手ごわい競争相手」と認めたアメリカが中国の封じ込め策を試みたとしても、日本は無視を決め込むべきだと思う。なぜなら、歴史上このような封じ込め策が成功した例は見られないからだ。アメリカの試みはおそらく失敗するだろう。

かつての覇権国・オランダも、造船技術をオランダから取り入れたイギリスを封じ込めようとしたが失敗に終わり、イギリスがオランダにとって代わった。同様に、イギリスが精密機械のマニュアルなどをアメリカに渡さず、封じ込めを試みたが、結局うまくいかなかった。

日本は、失敗に終わる可能性の高いこの試みに加わらないほうがいい。「われわれは中国と貿易をする必要があるので、封じ込めは策には加担しない」と訴えるべきだ。

■「不要な戦争」に参加してはいけない

ロシアのウクライナ侵攻以降、北朝鮮も韓国や日本、アメリカを意識した攻撃的な姿勢をとり続けている。中国と日本との関係も相変わらずだ。このように日本はロシア、中国、北朝鮮、韓国といった「何をしてくるか予測できない国」に囲まれているが、今後これらの国々と日本との関係性がどうなっていくかは、すべて日本側の出方次第だろう。

たとえば今、台湾をめぐって米中戦争勃発のリスクが高まっているが、日本が戦争に巻き込まれた場合、自衛隊が参戦する可能性は高い。これはどの国にもいえることだが、「不必要な戦争」に参加していいことは絶対にない。たとえ勝っても莫大な資金、専門知識、人命を失う。負けた場合はいうにおよばない。結局のところ、戦争に「真の勝者」は存在しないのだ。

ひび割れた壁に描かれた、星条旗と五星紅旗と台湾の「青天白日旗」
写真=iStock.com/Barks_japan
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Barks_japan

■戦争に巻き込まれないために

「自ら戦争を起こすことをしない」としている日本は、地政学的なリスクはあるにせよ、「中立的立場」をとり、他国同士が戦争に突入しても参戦しない道を選ぶこともできるはずだ。

そのやり方が奏功している国も存在する。永世中立国・スイスが典型例だ。スイスは稀にしか戦争に参加しないが、その方針によって平和を持続できている。日本が参考にできる点は多いはずだ。

日本が戦争に巻き込まれることを回避するためには、「わが国は中立的な立場である。憲法上、戦争参加が禁じられており、軍隊も存在しない」と表明することだ。

しかし、日本の政治家にその考え方はない。彼らは決まって、「皆が戦うのであれば、われわれも戦わなければいけない」と言う。

現状のやり方を変えなければ、関係の深い国が戦争を始めた場合、たとえ自国が攻撃を受けていなくても戦争に巻き込まれることは避けられない。日本と同様、アメリカと同盟を結んでいる韓国も同じ課題に直面している。

現在、韓国には約3万人のアメリカ軍が常駐しているが、もし米中間で台湾有事が勃発すれば、瞬く間に韓国は戦争に参加させられることになる。その戦争は韓国を破滅に導くだろう。日本も韓国も、米中戦争に参加するメリットは存在しない。

日本、中国、アメリカ、イギリス、EUのそれぞれの国旗がそれぞれの方向を指している道標
写真=iStock.com/narvikk
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/narvikk

アメリカの国民は、「仮にアメリカが中国と戦争を始めても勝てない」と感じているのに、無理やり戦争に参加させられた日本が「勝つ」ことはないだろう。

それに、ただでさえ日本社会では人口減が進んでいるのに、戦争で次世代の若者たちが亡くなるなんてとんでもない話だ。そして戦争では借金が増え、すでに債務超過状態にある日本は壊滅的な打撃を受けるだろう。

■すでに米中戦争は始まっている

とはいえ、米中戦争に歯止めをかけることは難しい。歴史上、最盛期を過ぎた覇権国と次期覇権国が対峙(たいじ)した場合、非常に高い確率で戦争が勃発するからだ。アメリカのグレアム・アリソン氏は、このことを「トゥキディデスの罠」と言った。

この言葉は、新興勢力が台頭し既存勢力の不安が増すとしばしば戦争が起こるということを意味しており、ペロポネソス戦争を引き起こしたのは新興国アテネに対するスパルタの恐怖心であった、という古代ギリシャの歴史家トゥキディデスの分析に由来している。

往々にして、戦争はささいな理由から始まるが、すでに米中間には敵対意識が芽生えている。だから、すでに米中戦争は始まっているといっても過言ではない。

■アメリカの勝算は低い

実際のところ、米中の関係は年々悪化している。ワシントンは何度も中国に対して侮辱的な態度を取ってきた。

ジム・ロジャーズ『捨てられる日本 世界3大投資家が見通す戦慄の未来』(SB新書)
ジム・ロジャーズ『捨てられる日本 世界3大投資家が見通す戦慄の未来』(SB新書)

台湾をめぐって米中戦争が勃発した場合、おおかたの予想通りアメリカの勝算は低いだろう。地図を見れば中国の優位性が一目瞭然だ。本土から遠く離れたアジアでは、アメリカが対中国の戦争に勝つことは難しい。しかしそれでもアメリカは戦争をしたがるだろう。

アメリカは、1776年に独立してからというもの、今まで一時期を除いて常に戦争に参加していた。戦争というのは第二次世界大戦のような世界規模のものばかりとは限らない。かつてはアメリカ先住民と頻繁に戦っていたし、第二次世界大戦以降も朝鮮戦争やベトナム戦争、湾岸戦争やアフガニスタン紛争のほか、中東やアフリカでの紛争に頻繁に兵士を送り込んでいる。むしろアメリカは、戦争することを好んでいるようにすら感じられる。

■密やかに外交を続ける日本

アメリカは中国のみならず、ロシアに対しても非常に厳しい態度をとっているが、日本はロシアや中国とも密やかに外交を続けている。たとえば、サハリン2などの事業も継続させており、多くの日本企業はロシアにとどまっている。誤解を恐れずにいえば、私はロシアや中国と外交関係を続けている日本を称賛する。

なぜなら、どのような状況にあっても――たとえ、それが罵り合いであっても――対話を続けていればお互いの意見を伝え合うことができる。両者の間で全く会話がなければ、問題は悪化していく一方だ。

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ジム・ロジャーズ(じむ・ろじゃーず)
投資家
米国アラバマ州生まれ。クォンタムファンドで4000%を超えるリターンを出し、37歳で引退後、世界を旅して回る。『大転換の時代』(プレジデント社)、『世界大異変』(東洋経済新報社)など著書多数。現在、シンガポール在住。

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(投資家 ジム・ロジャーズ)

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