「あなたは抜群にいい」と褒めてはいけない…イマドキの若手社員が上司に褒められるほどやる気をなくすわけ
プレジデントオンライン / 2023年12月11日 7時15分
※本稿は、伊藤誠一郎『部下に「困ったら何でも言ってね」はNGです 若手社員は「肯定」と「言語化」で自ら動き出す』(日本実業出版社)の一部を再編集したものです。
■若手社員を「人前でほめる」のはNG
組織の一員として若手社員の貢献度を認め、モチベーションを高めることと同時に、個人として成果を出したときに、しっかりと評価してあげることも大切です。
・自分の力で大きな仕事を勝ち取ってきたとき
・臨機応変な対応でトラブルを回避したとき
などなど、ほめてあげるべきタイミングはけっこうあります。そんなとき、上司は「素晴らしい!」「よく頑張ったじゃないか!」とみんなの前でほめたくなりますが、それをうれしいと思う若手もいれば、少々照れくさい、恥ずかしいと思う若手もいることに注意してください。
しかも、「人前でほめる」という点に関して、最近の若手社員の中には「恥ずかしい」「できればちょっとやめてほしい」と思う人が多い傾向にあります。上司からすると良かれと思ってしたことが、逆に若手にはネガティブな感情を持って受けとめられてしまうのです。ほめられて微妙な表情をしている若手社員に対して、「なぜそう思うのか?」を私なりにこっそりリサーチしてみたところ、次のような言葉が返ってきました。
「自分はそんなたいした人間じゃないのに、すごいと思われたくない」
「これからの仕事も全部同じようにできると期待されて怖い」
ほめた上司側は「まあまあいいじゃないか、ほめてるんだから」と自分のポジティブな気持ちのまま軽く流してしまいそうになりますが、想像以上に「人前であまりほめられたくない」と感じる若手が多いことを認識しておく必要があります。
■自分だけを褒めないで欲しい
ほめられたことをプラスに受けとめて、次なる成長へとつなげていく若手社員もいますが、人によって受けとめ方が大きく二極化してしまうのがやっかいなところです。
実際に若手社員の研修のアンケートで「できればあまりほめないでほしかった」とはっきり書かれていたことがあり、この傾向が強いことを痛感させられました。これには、最近の若手社員特有の強い連帯感があることも影響しています。
たとえ自分が良い結果を出してほめられても、ほかの同期も一緒に良くならないと喜べないというのです。自分1人がトップでゴールするよりも、みんな笑顔で手を取り合ってゴールテープを切ることが心からうれしいと感じるようです。ですから、「君は抜群にいいが、ほかはまだまだだな! もっと頑張ってもらわないと!」というような発言をすると、当の本人は自分がほめられている気がせず、ほかと一緒に否定されている気持ちを抱くことすらあるので注意してください。
上司世代は「連帯感」というと先を行く人が遅れをとった人の手を引いたり、重い荷物の一部を代わりに持ってあげたりしてサポートをするというイメージではないでしょうか。しかし、最近の若手社員の中では、先に行ったり遅れたりせずに、全員が横一線で息を合わせて進むことという解釈で「連帯感」をとらえています。
■「あなたも含めてみんないい」と褒めるべき
そんな「人前でほめられたくない症候群」の若手社員の頑張りを上手にフィードバックする方法が2つあります。
1つ目は、ほかの社員に聞こえないようにこっそりほめることです。そうすると、人から注目を浴びることが苦手な若手もうれしそうな表情を見せることが多いです。ただ、そのときに「さらなる活躍を期待してるよ!」などという言葉をかけると、若手は荷が重くなってしまいます。「この調子で引き続きよろしくね」という程度に留めておくのがちょうどいいです。
2つ目は、ほかの若手社員と共有して還元するという方法です。たとえば、若手の「新しい仕事を1人で完遂できるようになった工夫」や「自分の力で大きな仕事を勝ち取ってきた秘訣(ひけつ)」「臨機応変な対応でトラブル回避につながった言動」を具体的にピックアップして全体で共有することで、みんなの成長に活かすようにするのです。これなら若手は一時的に注目を浴びることにはなりますが、あくまでも全員の飛躍を期待したうえでの扱いになりますから、自分だけが特別な存在という感覚をそれほど抱くことはありません。
若手にとってはチームの一員として工夫や秘訣をたまたま早く見つけただけであって、ほかの人にもその可能性は十分にあるという解釈になります。このように自分の成功がチーム全体での成功に還元されることは、若手の貢献欲を満たすことにもつながります。
つまり、「あなたは抜群にいい」ではなく、「あなたも含めてみんないい」というニュアンスで言えるように、若手社員が全員でゴールテープを切るイメージを持ちながら指導や教育にあたるようにするのです。
■若手はプレゼンが上手い人が多いが…
このような傾向を見てくると、最近の若手社員はさぞかし自己主張や自己発信をする力がないように思えてきますが、実際はそうではないのが面白いところでもあります。それが垣間見える一例として、最近の若手社員は総じてプレゼンが上手だということが挙げられます。
私のプレゼン研修では、メリハリのあるはっきりとしたスピーチで自分の考えを堂々と伝える若手が目立ちます。むしろ上司世代のほうが、ポイントが絞り切れずに情報が多く、いわゆる「結局、何が言いたいのかよくわからないプレゼン」が量産されます。スピーチも不慣れな様子の人が多く、言い間違いや言い直しが頻発することも相まって、不明瞭さに拍車がかかっている光景を目にします。
プレゼン力を見るかぎりでは、完全に若手社員に軍配が上がるのですが、ただ極度に緊張している人が多く、やはり人から注目を浴びることを不得手にしている様子が見てとれます。外から見ると見事に自己主張や自己発信ができているにもかかわらず、内心は張り詰めた緊張感を持っているというのも若手に多い一面です。
ここでも若手社員によるプレゼンの工夫や秘訣が周囲にも還元されることで、「若手社員も含めてみんないい」という新たな組織づくりの風土に結びつけば言うことなしです。
若手の成功はこっそりほめるか、全体に共有して還元する
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若手社員育成専門コンサルタント
株式会社ナレッジステーション代表取締役。若手社員育成研究所代表。総合型選抜指導塾リコット代表。1971年東京都出身。学習院大学法学部法学科卒業後、15年間にわたり医療情報システム、医療コンサルティング分野において提案営業、プロジェクトマネジメントの業務に従事。2009年に独立。著書に、『バスガイド流プレゼン術 天才ジョブズよりも身近な人に学べ』(CCCメディアハウス)、『出世する伝え方 「選ばれる人」のコミュニケーションの極意』(きずな出版)『部下に「困ったら何でも言ってね」はNGです 若手社員は「肯定」と「言語化」で自ら動き出す』(日本実業出版社)がある。
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(若手社員育成専門コンサルタント 伊藤 誠一郎)
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