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ジーンズを洗濯機で洗ってはいけない…リーバイスCEOが実践する「どうしても洗濯したいとき」の洗い方

プレジデントオンライン / 2023年12月11日 10時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Wachiwit

■ジーンズ愛好家のあいだで続く「洗う・洗わない論争」

日常をファッショナブルに彩るジーンズは、気の置けない友人たちとの外食からアウトドアまで、さまざまなシーンで活躍する心強いアイテムだ。反面、デニムという特殊な素材の特性上、色落ちや形崩れなどの懸念があり、洗濯や乾燥には注意を要する。

そのため、洗うべきか否かで大論争が繰り広げられてきた。熱心なデニムファンからは、ある程度高価なジーンズであれば、はいたあとも決して洗ってはいけない、との意見さえ聞かれる。劣化を避けたい「洗わない派」と、衛生的に楽しみたい「洗う派」の論争は、長い年月をかけて繰り広げられてきた。

リーバイスのチャールズ・バーグCEOは2014年、『フォーチュン』誌のカンファレンスに出席し、ジーンズは洗濯機に入れるべきではないと取れる持論を展開。海外メディアが一斉に報じたことで、洗うべきでないという論調が強まるきっかけとなった。

しかし、バーグ氏は今年10月に米CNBCの番組に出演し、洗ってはいけないとの報道は誤解であると明言。極力洗濯機を使ってはいけないが、代わりにある「特殊な方法」を実践すると、形や色を保ちやすく耐久性も損なわれないのだという。

これに「洗わない派」と「洗う派」の論争が再び盛り上がりを見せた。

■リーバイスCEOは「10年は洗濯していない」と明言

洗わない派のバーグ氏は、どれほどジーンズを洗っていないのだろうか。

2014年のカンファレンスでの発言後、思いがけない大きな反響を受けバーグ氏は、ビジネス向けソーシャルメディアのLinkedInに「汚れたジーンズ宣言」と題する長文を投稿。登壇時に着用していた自身のジーンズに関して、「洗濯機の内側を一度も見たことがない」と発言し、自身のリーバイス・ジーンズを1年以上洗濯していないことを認めた。

バーグ氏のスタンスは、その後も変わっていなかった。2019年にCNNビジネスの番組「マーケット・ナウ」に出演したバーグ氏は、司会のアリソン・コシック氏に対し、登壇時に着用していた愛用のリーバイス501を、かれこれ10年は洗濯していないと明かした。

米CNBCは、意図してジーンズを洗わないデニムファンは多い、と紹介。形や色が保たれ、長く愛用できるメリットを挙げている。バーグ氏も記事のなかで、「真のデニム・ヘッド、すなわちデニムを本当に愛している人たちは、デニムを洗濯機に入れることはないと言うでしょう。私もそうしています」と述べている。

ちなみに、かつては冷凍庫で凍らせてから洗うとバクテリアが死んでニオイがなくなるとの俗説があったが、バーグ氏はCNNの番組中、これには意味がないと否定的な見解を示している。

凍らせる滅菌法については、他の専門家たちも否定的な立場だ。ガーディアン紙によると、この方法の有効性を裏付ける証拠はなく、科学者たちも家庭用冷凍庫では細菌は死滅しないと繰り返し指摘しているという。

リーバイ・ストラウスの社長兼CEOのチャールズ・バーグ氏
写真=AFP/時事通信フォト
2015年11月3日、カリフォルニア州サンフランシスコで開催されたフォーチュン・グローバル・フォーラムで講演するリーバイ・ストラウスの社長兼CEOのチャールズ・バーグ氏 - 写真=AFP/時事通信フォト

■ニオイや汚れが気になる時は…リーバイスCEOの予想外の回答

リーバイスのCEOがほとんどジーンズを洗濯していないとはいえ、ニオイや汚れは気になることがある。どうしてもジーンズを手入れしたい場合はどうするのか。

今年10月のCNBCの番組でバーグ氏は、まずは部分汚れへの対応を明かした。

「たとえばジーンズにカレーを落としたら、私もケアはします。ただし、その部分だけをピンポイントで洗うんです」

では、何度か着用するうちに全体の汚れが気になったときは、どうするのだろうか。

「汗をかいたりして本当に不快な状態になったら、シャワーで洗います」

番組の司会女性が「シャワーで洗う?」と怪訝な表情を浮かべると、バーグ氏は「ええ」と事もなげに頷く。「シャワーに飛び込んで、濡らしていくんです」

CNBCは、着用したままシャワーを浴びることを意味している、と補足している。記事は次のように続く。「これはすなわち、シャワー中にもジーンズをはきつづけ、身体を洗うのと同じように(ジーンズの上から)石鹸を広げることを意味する」

もっともCNBCは、アメリカの家庭で一般的な習慣とは異なるとも述べており、やや風変わりな選択法ではあるとのスタンスだ。

■ジーンズを着たままシャワーを浴びてみると…

奇妙にも感じられるシャワーでの洗濯だが、予想外に実用的なのかもしれない。実践してみた、というデニムファンたちは、納得の表情だ。

25歳女性のエリカ・カーデナさんと31歳男性のネイサン・カツキさんは、米CBS傘下のニュースメディア「インサイド・エディション」に出演し、ジーンズを着たままシャワーを浴びる様子を実演してみせた。

それぞれシャワーの下に立った2人は、ずっしりと濡れたデニムの上から、両手のひらでソープを染みこませ、デニムの表面を撫でるように洗ってゆく。

洗うのはたやすいが、最大の難所はシャワーの後、濡れて身体に張り付いたジーンズを脱ぐところだ。やや苦労したエリカさんだが、山場を乗り越えればあとは単純だ。通常の手洗いと同様、絞ってから形を整え、室内で自然乾燥させる。

同様にシャワー中に洗濯を済ませたネイサンさんは、「最初は半信半疑だったけれど、実際に洗ってみてきれいになったことが分かりました」と語る。「たぶん、またやると思います」と気に入った様子だ。

デニム
写真=iStock.com/LaylaBird
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/LaylaBird

■リーバイスCEOの「洗ってはいけない」発言の真意

洗濯機を使わないこの方法は、ドラム内で繊維同士が過剰に触れあい、摩耗することを防止する。ジーンズの耐久性にとってプラスになる。もっとも、バーグ氏は、2014年の発言当時、ファンに特定の洗い方を強要する意図はなかったという。

バーグ氏はLinkedInの投稿を通じ、意図を補足している。発言はあくまで「自身の」ジーンズについてだったが、各メディアが「リーバイスCEO、『あなたのジーンズを洗ってはならない』と発言」など曲解した見出しで取り上げたことで、世界的な話題になったという。

また、バーグ氏のねらいは、ジーンズのダメージ防止だけではなかったという。発言の場となった2014年のカンファレンスは、持続可能性をテーマにしていた。その文脈のなかで、1日はくたびに毎回洗うなどあまりに頻繁な洗濯を避けることで、水の使用量を削減できると訴えたかった――とバーグ氏は述べている。

■天日干しや風当てでも「洗濯」になる

かなり極端な“シャワー洗濯術”は、万人に受け入れられないかもしれない。だが、ほかにもジーンズに関しては、長持ちさせるケアの方法が編み出されてきた。

日光による消毒もそのひとつだ。ニュースメディアのインディ100によると、ジーンズを洗わずに手入れできる方法として、リーバイス社が推奨しているという。洗濯するまでもないが、ニオイが気になる場合、外に干しておくだけでもかなり改善するようだ。

専門家たちは、こうしてデニムを日光と暖かい空気にさらすことで、微生物の分解を促進すると説明している。ただし、色落ちを避けたい場合は直射日光を避けるとよいようだ。

バスタブでの手洗いを勧める専門家もいる。ニューヨーク・タイムズ紙の商品レビュー部門であるワイヤーカッターによると、メンズウェアのボノボス社でデザイン担当副社長を務めるヘーゼル・モーリー氏もこの方法を支持している。

新品同様のダークな色合いを維持するために有効なのだという。水を張ったバスタブで、裏返しにして手洗いし、色落ちを避けるために裏返しのまま干すようモーリー氏は勧めている。

■コツは裏返しと自然乾燥

さほどこだわりが強くないジーンズであれば、利便性を優先して洗濯機を使いたいケースもあるだろう。その場合も裏返しのまま洗濯機に入れ、裏返しのまま干すのが定石だ。裏返しにすることで、ジーンズの外側の繊維を保護することができる。

英エクスプレス紙によると、有力洗剤ブランド「バニッシュ」の専門家は、ダークな風合いを保つうえでも裏返しが有効だとアドバイスしている。色あせのリスクをさらに減らすためには、温水での洗濯は避け、回転が比較的穏やかなモードを使用することを勧めている。

乾燥機はおすすめできないが、ごく短時間ならアリとする考え方もある。ボノボスのモーリー副社長は、ワイヤーカッターに対し、乾燥機が衣類にダメージを与える可能性があると強調している。

そのうえでモーリー氏は、自然乾燥によってジーンズが非常に硬くなってしまった場合、低温に設定した乾燥機に10分間ほど放り込んで柔らかくする手法を披露している。高温では熱で繊維が縮んでしまうため、あくまで低温・短時間がポイントだ。

ジーンズ
写真=iStock.com/dooho_shin
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/dooho_shin

■洗濯で縮んでしまったら…

洗濯後にうっかり縮んでしまっても、まだ救いの手はある。ハウスクリーニング会社「FreshSpaceCleaning.com」のウィル・コッターCOOが米FOXニュースに語ったところによると、ヘアコンディショナーを入れたぬるま湯に浸すと繊維がほぐれやすい。

もっとも、こうしたアドバイスは一般的なジーンズに関するものだ。未洗濯の風合いを楽しむ「生デニム」の場合、とくに繊細であることから、洗濯機は御法度だ。メンズウェア「レフトフィールドNYC」の創業者であるクリスチャン・マッキャン氏は、ワイヤーカッターの取材に応じ、生デニムは少なくとも30回は着用した後、中性洗剤を使い、裏返しのまま手洗いすることを勧めている。

■「洗う・洗わない論争」はジーンズの奥深さを示している

では、洗濯の頻度という面では、正解はあるのだろうか。CNBCはアメリカでは毎回の着用ごとに洗う家庭が多いと述べているが、専門家の多くは、これは洗いすぎだと指摘する。FreshSpaceCleaning.comのウィル・コッターCOOはFOXニュースに対し、見た目がきれいでニオイもなければ、何度も繰り返しはくよう提言している。

デニムは想像以上に繊細だ。洗濯回数を抑える意味で、数十回ははいてから洗うよう指南する専門家もいる。オーストラリアン・フィナンシャル・レビュー紙によると、リーバイスのデザイン・ディレクターであるポール・オニール氏は、ジーンズは「30~50回着用する」たびに常温の水で洗濯するよう勧めている。

もっとも、万人に当てはまるルールは存在しない。デニムに特化した豪ニュースレター「ジーン・オン・ジーンズ」を主催するスタイリストのジーン・ハーマン氏は、オーストラリアン・フィナンシャル・レビュー紙に対し、「私はジーンズを洗います。毎回ではありませんが、小さな子供がいると、食べ物のシミや遊び場の汚れで洗濯が必要になることがよくあります」と述べている。神経質に一般論を追いかける必要はなく、最終的には自分が快適に感じられる頻度で洗濯することが肝要だ。

着用したままシャワーで洗濯したり、外気にさらすだけで“洗濯”としたり、50回はくまで洗わなかったりと、ジーンズとの向き合い方は人それぞれだ。手入れの方法は、カジュアルながら奥深いジーンズの世界を象徴しているのかもしれない。

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青葉 やまと(あおば・やまと)
フリーライター・翻訳者
1982年生まれ。関西学院大学を卒業後、都内IT企業でエンジニアとして活動。6年間の業界経験ののち、2010年から文筆業に転身。技術知識を生かした技術翻訳ほか、IT・国際情勢などニュース記事の執筆を手がける。ウェブサイト『ニューズウィーク日本版』などで執筆中。

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(フリーライター・翻訳者 青葉 やまと)

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