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文章が書けないのではなく、書き方の「型」を知らないだけ…偏差値30台の教育困難校で起きた「R80」という奇跡

プレジデントオンライン / 2023年12月10日 10時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/miya227

長文を書くには、どうすればいいのか。茨城県立並木中等教育学校の元校長・中島博司さんは「文章が書けないのは『型」を知らないから。私が考案した『R80』というメソッドを使えば、偏差値30台の教育困難校の生徒でも、すらすらと長文を書けるようになった」という――。

※本稿は、中島博司『R80 自分の考えをパッと80字で論理的に書けるようになるメソッド』(飛鳥新社)の一部を再編集したものです。

■全国1000校に広がった作文メソッド

前回の記事で、東大の合否を分ける力が「論理力」であり、その「論理力」を鍛える文章メソッド「R80」をご紹介しました。

Rとは、リフレクション(振り返り)とリストラクチャー(再構築)の頭文字。80は、80字以内で書くという意味です。

R80のルールは簡単に言うと2つだけ。

①2文構成で80字以内
②2文目の最初に必ず接続詞を使う

このメソッドを使えば、自分の考えを80字で、ものの2分もあれば書けるようになります。しかもわかりやすく。現在では全国推定1000校以上の小中高で実践されています。

R80をやって最初に実感するのは、文章を書くハードルがぐんと下がることでしょう。これなら気軽に、日常的に取り入れられるはずです。

さらにR80に馴染んでいくと、400字、800字、1200字と、長い文章にもどんどん対応できるようになっていきます。

R80を初期に導入した高校の生徒さんからこう言われた時には、私も目からウロコでした。

「400字だってR80を5回ですよね」

こう言えるようになれば、記述問題や小論文だって怖いものなしですよね。

そんなセリフがサラッと出てくるのは進学校の生徒だけだろう、と思いますか?

いえいえ。

実際にR80を活用したある学校の事例をご紹介しましょう。

■偏差値30台の教育困難校でも導入

偏差値30台でいわゆる「教育困難校」と呼ばれる高校の先生が、R80を知ってすぐ自分の授業で取り入れてくれました。

ただ、勉強で苦労してきた生徒ばかりです。授業の振り返りを80字で書けと言われても、すぐには難しそうですよね。

その先生が素晴らしかったのは、R80の使い方にひと工夫したことです。

まずは教科書を見ながら書いてもいいことにして、それを提出させ、添削するということを繰り返しました。

ノートや教科書で一生懸命勉強する人の手
写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

難易度を下げて場数を踏ませたことで、徐々に教科書を見ないでも振り返りをスラスラ書けるようになっていったといいます。

考案者である私は、進学校ではスムーズに導入できるだろうと踏んでいたのですが、教育困難校で使えるかどうかは未知数だと感じていました。

ですから、教育困難校の先生から報告を受けた当初、正直に言うと、本当にみんなが書けているのかなと思ってしまいました。

その心を見透かされたのか「中島先生、ぜひ見にきてください」と誘われました。

いざ見学させてもらうと、生徒たちは目をキラキラさせながら授業(日本史です)を受けています。

そして最後に「じゃあ、いつものようにR80ね」と先生から言われると、ためらいなく一斉にR80を書き出したのです。

彼らの姿に感動して、思わず胸に込み上げるものがありました。

彼らの日本史の成績はうんと上がりました。

学習の振り返りを続けた効用ですね。でも、それだけではありません。

■就職活動の志望理由書がスラスラ書けた

先生いわく、生徒たちはR80についてこう口々に言うのだそうです。

「自分は文章が書けないと思っていたけど、書けるようになってうれしい!」

この学校の生徒の多くは、進学ではなく就職を希望します。

就職活動では、志望理由書を書かないといけません。

ただ例年の生徒たちは、自分の言葉でうまく書けずに四苦八苦していたといいます。

ところが、R80を続けてきた生徒たちは、400字ほどの志望理由書を上手に書くことができたのです。

前年度までの生徒とのあまりの違いに、学年主任がビックリして「一体なぜこんな文章を書けるんだ⁉」と生徒たちに問いただします。

彼らが理由に挙げたのがR80でした。そのうち1人がこう言ったそうです。

「400字だってR80を5回ですよね」

そう、この言葉は、教育困難校の生徒さんが語ったことだったのです。

私もこの時点(R80を発表した最初の年度でした)では持ち合わせていない視点でした。

R80は80字だけでなく長文を書けるようになるのだと、この生徒さんから教えてもらったのです。

■自信がついて生活態度も激変した

さらに、校長先生から驚くべき話を聞きました。

R80を続けてきた生徒たちは、遅刻や欠席が減ったというのです。

生徒指導の件数は激減したそうです。

もちろん、先生がたの熱心な指導あっての成果です。

それでもR80のおかげだと言ってもらうと、考案者として胸が熱くなりました。

生徒たちは、自分にはできないと思っていた文章を書けるようになって、大きな自信を得ていました。

できなかったことができるようになれば楽しいですし、授業を主体的に受けるようになり、連動して生活態度も変わりました。

こうして「R80で学校改革」とも言うべきことが起こったのです。

■R80でも書けない子の対処法

また、こんな事例もあります。

先ほどの高校とはまた別の、教育困難校の高校の事例です。

この学校でR80を導入した当初、生徒さんの多くが書けないという状況がありました。先に紹介した教育困難校よりも学力的に厳しかったようです。

勉強する女の子
写真=iStock.com/miya227
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/miya227

そこでこの学校の先生が編み出した方法が、1文目を先生が書き、接続詞は「なぜなら」で固定。さらに2文目の末尾も「〜だから」で固定したのです。

つまり、なぜなら〜だからという2文目の30字少々だけを生徒たちが書くところからスタートしたということです。

授業の振り返りで「1文目+なぜなら~だから」の例を挙げてみます。

【図表1】「1文目+なぜなら~だから」の例

生徒が書いたのち、先生は、例文としてこのようなR80を紹介しました。

【図表2】R80の例文

彼らは「1文目+なぜなら〜だから」固定型で練習を重ねることで、R80を書くコツや自信をつかんだようです。

その後、R80でいろんな接続詞を使って80字書けるようになったという報告がありました。

文章に慣れていない子や、年齢の低い子にも参考になりそうな面白い方法ですよね。

ルールがシンプルだから応用がきく。それもR80のよさです。

R80を続ければ、スタート時点の学力に関係なく、どんな子でも成果が出ます。

そのことを教育困難校でのケースから実感していただけたのではないでしょうか。

■文章が書けないのは型を知らないから

R80を使えば、今まで文章を書けなかった人も書けるようになります。

これ、裏を返せば、R80のような文章を書くための「型」を知らなくて書けなかった、ということではないでしょうか。

たとえば作文の課題を出されたとします。原稿用紙を渡されて「はい、400字で自由に書いてね」と言われたら、文章の苦手な子の頭にはまず、指定された400という字数が浮かぶでしょう。

中島博司『R80 自分の考えをパッと80字で論理的に書けるようになるメソッド』(飛鳥新社)
中島博司『R80 自分の考えをパッと80字で論理的に書けるようになるメソッド』(飛鳥新社)

そして、それだけの字数を埋める方法が思いつかず、途方に暮れてしまいます。

そういう子たちが「自分は文章が書けない」と思い込んでいる気がします。

ところが、R80という「型」を知っている子だと、反応が違います。

それこそ「R80を5回」ということが浮かびます。そこから、まずは結論的なR80を書けるかな、といった考えを展開していくことができます。

ルールのないスポーツがないように、文章にも一定のルールがあったほうが、どうプレーすべきかが見えてくるのです。

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中島 博司(なかじま・ひろし)
元茨城県立並木中等教育学校校長
株式会社FCEエデュケーション参与。1959年生まれ。茨城県立土浦第一高等学校、筑波大学人文学類卒業。専門は日本考古学・日本史。茨城県の高校で日本史を教えていた時、オリジナル「スーパー日本史ノート」を開発。それを書籍化した『はじめる日本史 要点&演習』(Z会出版)はロングセラーになっている。校長就任の2015年から「アクティブ・ラーニング」について研究を始め、「R80」「TO学習」「AAL」を考案。全国各地で170回以上研修会講師をつとめている。定年退職後の2020年より、教員研修総合サイト「Find!アクティブラーナー」や振り返り力向上手帳「フォーサイト」に携わるとともに、日本の教育の未来に貢献するために活動している。

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(元茨城県立並木中等教育学校校長 中島 博司)

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