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3位は余貴美子、2位は北香那、1位は…国内ドラマ「2023年俳優ランキング」女性部門ベスト10

プレジデントオンライン / 2023年12月28日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/ADragan

2023年に日本国内で放送・配信されたドラマで、評価するべき俳優はだれか。ドラマ偏愛コラムニストの吉田潮さんが作成した「2023年俳優ランキング」を紹介する。第2回は女性部門ベスト10――。(第2回/全3回)

■前半は面白かった「どうする家康」

超主観&偏向的「ベスト俳優ランキング2023」、女性部門をお届け。

男性部門同様に採点したが、同点が7人もいて順位づけがより難しかった。しかもNHKの「大奥」はSeason1・2と放送され、徳川家の女たちが入れ替わり立ち代わり、主要人物が数話で交代する斬新なスタイル。女優陣の気迫が凝縮されたヤマ場の連続に、つい「大奥贔屓」が発生したので、別枠でまとめることにした。よしなに。

10位 伊東蒼 42点

一晩走り抜けた快挙とその後の悲劇に感涙

前半は面白かったNHK大河ドラマ「どうする家康」。やっぱり忘れられなかったのが、お市の方の女中・阿月を演じた蒼だ。

不遇で孤独な女子・阿月が一晩走り抜けて絶命したのは、なにもお市の方への忠誠心だけではなく、女子でも重要任務をはたせるというプライドだ。綺麗な着物も自ら裂いて、血だらけの足に巻き付けて走った蒼。今しかできない大役を見事に果たした。

もっと観たいと思っていたところに「やさしい猫」(NHK)。スリランカ人と恋に落ちた母(優香)、しかし彼は婚姻届提出直前で入国管理局に収容される。彼の在留特別許可を勝ち取るために、母と娘(蒼)で尽力する物語。蒼の比類なき素朴さが120%いかされたので、満足。

■改めて泣き顔が絶品

9位 尾野真千子 42点

絶望を抱え、誰にも知らせず一人旅をする

「グレースの履歴」(NHK BS)、「すべて忘れてしまうから」(テレ東)がうっかり共通。どっちもある種の絶望と希望を胸に、一人旅すんだよ真千子が。改めて泣き顔が絶品と痛感。

「グレース~」では海外で事故に遭って亡くなるが、その前に実は生前整理をしていた皮肉。妊活で受診したはずが白血病を宣告され、ひとりで治療に挑んだ背景も。内向的で交友関係の薄い夫の行く末を案じ、ある奇策を思いつく。

「すべて~」は祖母の遺産を相続して失踪する役だ。大人の事情が大渋滞する2作品で、悲しみと対峙(たいじ)する場面で魅了した(私を)。

テレビ東京公式サイトより
テレビ東京公式サイトより
8位 趣里 42点

♪バドジズデジドダーで観客も視聴者も私も虜に

一度聴いたら1週間は脳内がバドジズデジドダーに占領され、耳から離れない。異様に長いまつげに真っ赤な口紅の趣里が脚を180度上にあげて踊りまくっている映像も頭から離れない。朝ドラ「ブギウギ」の話だ。

華やかさのみならず。出自が明らかになったときの深い悲嘆、弟が戦死したときの空元気など、ぐっと涙をこらえる表情も秀逸。ハイレベルな喜劇と悲劇を要求される大阪局朝ドラにて、すでに合格点だ。

また「東京貧困女子。」(WOWOW)では貧困の手前にいるシングルマザーを演じた。パワフル&リアリティーの二刀流、向かうところ敵なしである。

■この女優なら韓国ドラマに勝てる

7位 板谷由夏 42点

復讐モノに必須の「怒りと悲しみのハイブリッド」

「離婚しようよ」(Netflix)では、ふがいない依頼人(松坂桃李)を切れ味鋭い苦言諫言で支える弁護士役。苦労と努力の人だからこその厳しさ、緑色がよく似合う美しさ、コメディにおけるテンポ、三つ揃いの適役だ。

一方「ブラックファミリア」(日テレ)では娘の転落死の真相を突きとめるべく、一家総出で綿密な計画を練って復讐に挑む母の役。復讐モノといえば、韓国ドラマの女優陣と展開のすさまじさには勝てないと思っていたが、板谷は勝てる。

第9話で、怒りと悲しみと恨みと虚脱感が一気に襲ってきたときの表情と声音に女優の格を感じた。結末が予想外だったこと、板谷の最後の不穏な表情も含めて高く評価しておきたい。

■「大奥」のMVPは仲間由紀恵

ちょいと脱線して懸案の「大奥」を。Season1では超絶かっこいい冨永愛、悲劇の暴君・堀田真由、色狂いが妖艶な仲里依紗、神がかったなりきり・三浦透子、そして諸悪の根源・斉藤由貴。

Season2では熱意が報われなかった鈴木杏、存在しちゃいけないレベルのサイコパス・仲間由紀恵、それに翻弄(ほんろう)された安達祐実、知恵で夫を守った蓮佛美沙子、禍々しい屈辱に耐えた愛希れいか、ハンディキャップに苦しんだ岸井ゆきの、志半ばで息絶えた志田彩良。

倉科カナ、貫地谷しほり、松下奈緒、瀧内公美ら、将軍を支える「女の連帯と思慕」にも胸を打たれた。つうことでMVPは仲間に。彼女の長いキャリアで観たことのない強烈な怪物役だったから。

6位 河合優実 42点

不運と不幸に立ち向かう2パターンを異なる温度で体現

「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」(NHK BS)では、いろいろと難儀な家族と暮らす明るい女性を演じた。

父は早逝、母は車椅子、弟はダウン症、祖母は認知症ぎみ。でも不幸ではない。たくさんのギフトを家族からもらっている喜びを全身で表現する天然の明るさに救われた人も多数。ああいえばこういうどころか、100倍面白い返しとオチをつける姿が観ていて心地よかった。

また、宗教2世として育った女性を演じたのが「神の子はつぶやく」(NHK)。救いを求めたのは家族でも宗教でもなく、マゾヒズムの世界という、トリッキーだが深遠なる展開。カルト宗教に純粋培養された女性の苦悩と罪悪感を、繊細に表現した。

■今年の新人賞はモデル出身の21歳

5位 木南晴夏 42点

地味な女の滋味を完璧に醸し出した納得の主演作

「ブラッシュアップライフ」(日テレ)で主人公(安藤サクラ)の友人役を演じ、夏帆とともに女友達のリアルを再現した木南。今年は主演作「セクシー田中さん」(日テレ)が熱かった。

幼少期からいじめられ蔑まれてきた地味な女性が、四十手前でベリーダンスに目覚め、周囲の人々の心の栄養剤となる物語。

ベリーダンスを踊る女性の後ろ姿
写真=iStock.com/Staras
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Staras

地味な女の滋味や悲しみや孤独をここまで醸し出した女優は他にいない(だいたいが地味な女を装っても、自己愛が漏れ出て安っぽいコスプレで終わる)。そもそもの所作や言葉、生活ぶりが美しく丁寧で、偏見をもたない田中さんに、木南は完璧に一体化した。

ちなみに、女性部門の新人賞は生見愛瑠。「教場0」(フジ)でもがっちり心をつかみ、「セクシー田中さん」では等身大の女性を好演。いずれは連ドラ主役級だね。

■北川景子の神髄をWOWOWドラマに見た

4位 北川景子 43点

笑うことを封印した女の凄絶な過去

NHK大河で2役(市、茶々)をこなし、狂気の沙汰もぞんぶんに見せた北川。

「女神の教室」(フジ)では、法曹界を目指す若者に思慮深い授業をおこなう教員役。元裁判官の知性を柔らかな表情で演じた。最大の功績は「落日」(WOWOW)の演技だ。

全4話でほぼ笑わないヒロイン。罪の意識で笑うことを律しているからだ。自分が関与したかもしれない事件を題材に作品を撮る映画監督役だが、それによって「赦し」を得られるか自問自答を繰り返す。無表情で想像以上に多くを語った北川に拍手を。

ベスト3の前に、次点をご紹介。

35点をマークしたのは片山友希。朝ドラの他に「City Lives」(フジ)、「何曜日に生まれたの」(テレ朝)、「Get Ready!」(TBS)、「SHUT UP」(テレ東)などに出演した。やや舌ったらずな話し方でも甘えた感じは一切なく、知的で辛辣(しんらつ)な女友達を好演。ヒロインを支えるバイプレイヤーだ。

33点で並んだのは山田真歩・円井わん・宮澤エマの3人。もうこのあたりは完全に私の好みと作品数によるところが大きい。そろそろベスト3へ。

■毒母をやらせたら日本一

3位 余貴美子 43点

田舎の母、認知症の母、あばずれの母と母役三昧

余貴美子さん
余貴美子さん(画像提供=アルファエージェンシー)

「やさしい猫」ではスリランカ人と付き合う娘に反対した田舎の母。「教場0」(フジ)では、染谷将太演じる刑事の実母役で認知症を発症。特にフルスロットルでかましたのは「サンクチュアリ」(Netflix)。

主人公の母親役は、今でも目に浮かぶほどのあばずれっぷりで、戦後まもない頃にタイムトリップしたような感覚へ誘った。金の無心をするわ、植物状態になった夫(きたろう)の病室でタバコ吸うわ愛人の黒人男性とイチャつくわで、なかなかの鬼畜。息子ととっくみあいの喧嘩をするシーンも忘れられない。

映画「吉原炎上」の西川峰子(現・仁支川)と並べて、心の奥底にしまっておきたい。強欲で業が深い、この手の役では他の追随を許さない余貴美子の女優魂に、敬意を払って3位入賞に。

2位 北香那 45点

誤解されがちだが1本の芯が通ったブレない女を好演

北香那さん
北香那さん(画像提供=アルファエージェンシー)

「バイプレイヤーズ」シリーズ(テレ東)で、大杉漣の元マネージャー・ジャスミンを演じて以来、引く手あまた。1話ゲストも多いが、印象に残ったのはNHK「東京の雪男」の主役、「どうする家康」で演じた側室(猪殺しのお葉)だ。

多様性という共通項もあるが、香那が演じる女性の芯の強さは妙に脳裏に焼き付く。「18/40」(TBS)では運送会社の元気女子役で登場。四十のヒロインに恋する男性を好きになり、直球でぶつかって引く潔さ。香那が登場したので観続けたよ。

「たそがれ優作」(BSテレ東)ではうわばみの女記者、「ノンレムの窓・夏」ではスーパーのバイトだが実は切れ者という役。「インフォーマ」(カンテレ)で、愛した男(横浜流星)も慕っていた義兄(淵上泰史)も殺されるという悲劇のシンママキャバ嬢役が、最もしっくりきたかな。

■2023年はマユイヤーでした

1位 松岡茉優 53点

違和感や疑問を口にできる有言実行の女を背負っていく

マックスマーラ「テディ テン パーク」のオープニングイベントに出席した松岡茉優さん(東京都港区の六本木ヒルズアリーナ)=2023年11月1日
写真=時事通信フォト
マックスマーラ「テディ テン パーク」のオープニングイベントに出席した松岡茉優さん(東京都港区の六本木ヒルズアリーナ)=2023年11月1日 - 写真=時事通信フォト

まずは主演作で見せつけた、人としてのまっすぐさ。

「フェンス」(WOWOW)は、日米地位協定が日本国憲法より優先され、米軍基地支持派と反対派で分断されている沖縄が舞台。アジア系の米兵と母の間に生まれた主人公を演じた茉優。キャバクラ潜入取材で腕を上げたライター役で、被害者が泣き寝入りすることの多い米兵の性暴力事件の真相を突きとめるべく駆け回る。

沖縄の憂いと苦悩を描く硬派なドラマだが、何よりも女の矜持が主題で、茉優はそのコンセプトにぴったりの適役だった。

また「最高の教師」(日テレ)では卒業式に何者かに殺された高校教師役。目覚めるとなぜか1年前にタイムスリップ。1周めの人生で見て見ぬふりしたことを悔やみ、生き直しと犯人捜しを同時進行。いじめや格差で殺伐とした生徒たちに、冷静に訴えて猛省を促す姿は令和の名教師。

「ゆりあ先生の赤い糸」(テレ朝)は、脇で見せた蠱惑(こわく)的な魅力が際立った。ヒロインの夫から援助を受けていたシングルマザーだが、打算的で負けず嫌いな面も。

物語に緊張も緩和ももたらす独特の存在感。今年はマユイヤーだったと断言できる。

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吉田 潮(よしだ・うしお)
ライター
1972年生まれ。千葉県船橋市出身。法政大学法学部政治学科卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。医療、健康、下ネタ、テレビ、社会全般など幅広く執筆。2010年4月より『週刊新潮』にて「TVふうーん録」の連載開始。2016年9月より東京新聞の放送芸能欄のコラム「風向計」の連載開始。テレビ「週刊フジテレビ批評」「Live News イット!」(ともにフジテレビ)のコメンテーターもたまに務める。

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(ライター 吉田 潮)

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