訪問先で「天気の話」をする人は仕事ができない…リクルート全国1位営業が使う「ビジネス雑談」のルール
プレジデントオンライン / 2024年4月8日 8時15分
※本稿は、渡瀬謙『一生使える「雑談」の技術』(大和出版)の一部を再編集したものです。
■「天気の話」では会話が続かない
雑談で最初に何をするかというと、まずは「話のきっかけづくり」ですよね。
お互いに黙っていても会話は始まらないので、こちらから何かしらのアクションをしていくことになります。
そして、この話のきっかけとなる話題にいつも困るのが、かつての私も含めた雑談が苦手な人の特徴でもあります。
そんなこともあって、私はたくさんの雑談本を読みました。
その中でよく書かれていたのは、「天気の話をするといい」というもの。
たしかに簡単にできますし、話題としてもお手ごろ感があります。
上司に雑談の進め方を相談したときも同じことを言われていたので、私もそのとおりにやってみました。
【相手】「そうですね」
【私】「………」
いつもここで止まってしまいました。
その後が続かなくて、すぐに沈黙になってしまうのです。
結局は何も言わないときと変わらずに、気まずい空気のままで仕事の話に入っていました。
もちろん、その後も会話が続く人もいるのでしょうが、少なくとも雑談が苦手な私には、うまく使えない話題でした。
「天気の話って、そんなにおススメなのかなあ」と疑問に思っていました。
■有効なのは、異常気象の場合のみ
たしかに天気の話題は、すぐに使えるという点では便利です。
ただ、そのラクな話題に頼るクセがついてしまうのが、とても危険なのです。
まず、天気の話というのは、それほどの話題性はありません。
相手もふだんから天気に関心をもっているかというと、多くは無関心なまま日々を過ごしています。
そんな話を振っても、長く続く会話に発展しないことが多いのです。
また、相手が朝からエアコンのきいた室内にいたら、
「今日は暑いですねー」
と言っても、たいした反応は望めません。
天気の話題で有効なのは、異常気象の場合のみです。
台風やゲリラ豪雨などの突発的な天気は、それだけ関心度が高いので話題として使えます。
それ以外は使わないと決めておいたほうがいいでしょう。
繰り返しになりますが、問題なのは「とりあえず天気の話をすればいいや」と思っていたら、他の話題を探そうとはしなくなる可能性が高くなる点です。
その一方で、まわりを観察したり、きちんと準備をしていれば、もっと最初から打ち解けられるような効果的な話題を使えるかもしれません。
これが営業や大事な打ち合わせなどの場面だとしたら、最初の雑談で失敗するのは大きな損失です。
そのためにも、相手が興味をもってどんどんしゃべりたくなるような話題を見つける意識をもつようにしてください。
その場しのぎやあいさつがわりというだけなら、天気の話でもいいでしょう。
でも、コミュニケーションをよくするために雑談をしたいのなら、その後の効果までを念頭に入れて最初の話題を見つけることをおススメします。
■雑談の基本は「相手が知っている話題」
雑談の話題は何が適しているのでしょうか?
パッと思いつくのは旬の話題や芸能人のゴシップ話などですが、相手によっては使いづらいこともありますよね。
ふだんからそのような話をしている仲ならいいのですが、初対面の相手や目上の人、仕事関係の人などには適さない話題です。とはいえ、相手に合わせた話題を多数ストックしておくのは難しいですし、もともと興味のないことだとしたら、調べたり覚えたりするのも苦労します。私もそんなことはおススメしません。
話題の選び方のコツは、自分ではなく相手が話しやすい話題を探すことです。
もっと言うと、相手の興味・関心が高い話題ほど有効になります。
逆の立場で考えてみてください。
あなたが全然知らないうえに興味もない話題をもち出されて、相手が楽しそうにしゃべっているのをただ聞いているだけの状態ってどうでしょう? 苦痛ですよね。
そして、そんな話ばかりしてくる相手に対して、あまりいい印象はもたないことでしょう。
その意味でも、少なくとも「相手が知っている話題を選ぶ」のが雑談の基本です。
ただ、ここで1つ疑問が浮かぶかもしれません。
それは、相手のことをよく知らない場合は、相手が知っている話題などわかるはずがないというもの。当然です。人の頭の中など見えるはずがありませんからね。
そこで私の結論は、「相手の身近なものを話題にする」というものです。
身近なものなら知っている可能性が高いので、それを話題にすれば話してくれる可能性も高くなるというわけです。そうすれば、少なくともこちらだけがしゃべって相手が黙っているという状態は避けられます。次項で具体的に見ていきましょう。
■大切な案件ほど、最初の雑談が重要
営業や打ち合わせなど、仕事で相手先に訪問するときがあります。
それが大切な案件であるほど、最初の雑談は重要です。
ここで好印象を与えることができたら仕事の話もスムーズにいくことでしょう。
では、そのためにはどんな話題が適しているのか?
次の例を見ながら、一緒に考えてください。
大事な打ち合わせをするために、相手の会社に向かっています。
まだ訪れたことのない駅で降りて、初めて通る道を歩いています。
頭の中は、これからの面談のことでいっぱいです。
相手の会社に近づくほどに緊張も増してきます。
どうですか? こんなシーンを想像するだけで不安な気持ちになってきませんか?
このまま面談に突入してしまったら、たいていはうまくいきません。
■相手先に着くまで「キョロキョロ歩き」がおススメ
では、どうすればいいのか?
こんな場合は、気持ちにゆとりをもって、相手先に着くまで「キョロキョロしながら歩く」ことをおススメします。
初めて降りる駅や、まだ歩いたことのない道というのは知らないことだらけのはず。
旅行で訪れた異国の地だと思って、興味深く観察してみてください。
そのうえで、そこで見つけたネタを話題にすればいいのです。
たとえば、
「この駅、初めて降りましたけど、構内にお店がたくさんありますね」
「駅から歩いてきたんですけど、屋根付きのアーケードがあっていいですね」
「ここに来る途中に行列をつくっているラーメン屋さんがありましたが、有名なお店なんですか?」
という具合に、気づいたことや変わっていることなどを見つけて、最初の雑談のネタとして使いましょう。
相手もよく歩いている道である可能性が高いので、答えやすいはずです。
■雑談上手な先輩が「古い駄菓子屋」に入ったワケ
じつはこの方法、雑談が上手な先輩を見て気づいたものです。
一緒に客先に行くときに、私は緊張しまくっていて、まわりを観察する余裕などなかったのですが、先輩はキョロキョロしながら歩いていました。
すると、「お、懐かしいなあ」と言いながら古い駄菓子屋さんの中に入っていったのです。
私は、そんな緊張感のない先輩にあきれていました。
その後、訪問して先方と名刺交換をしながら、その先輩は、
「ここに来る途中に懐かしい駄菓子屋がありますよね」
といきなり話を振ったのです。
私は、「こんなときに何でそんなことを言い出すんだ」と思いましたが、意外にも、
【先輩】「じつは、さっきちょっと寄ってきました(笑)」
【相手】「わかります。つい寄り道したくなるんですよね(笑)」
こんな感じで話が弾みました。
その先輩は、おそらく無意識のうちにまわりを観察していて、最初の雑談のネタを探していたのです。相手先の近くで見つけたネタが雑談には有効だということを体感としてわかっていたのでしょう。
その日の打ち合わせは終始、和やかにうまくいきました。
私は、「雑談がうまい人というのは、話し方がうまいというよりも、話題のチョイスがうまいのだな」と、そのとき知ったのです。
この本を手にとったあなたは、この先輩のように無意識レベルで雑談ネタを探せるタイプではないでしょう。
でも、同じことを意識して行うことは可能です。
ぜひ、相手が話しやすい話題を積極的に探してみてください。
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ピクトワークス代表
1962年、神奈川県生まれ。小さい頃から極度の人見知りで、小中高校生時代もクラスで一番無口な性格。明治大学卒業後、精密機器メーカーに入社。その後、リクルートに転職。社内でも異色な無口な営業スタイルで入社10カ月目で営業達成率全国トップになる。94年に有限会社ピクトワークスを設立。広告などのクリエイティブ全般に携わる。その後、事業を営業マン教育の分野にシフト。著書に『“内向型”のための「営業の教科書」』(大和出版)、『トップセールスが絶対言わない営業の言葉』『トップセールスが絶対やらない営業の行動習慣』(以上、日本実業出版社)、『「しゃべらない営業」の技術』(PHPビジネス新書)などがある。
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(ピクトワークス代表 渡瀬 謙)
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