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株価暴落で利益9割飛んだ…1年半で貯金1500万内の1000万をイケイケ投資の58歳会社員が涙目ですがった"神様"

プレジデントオンライン / 2024年8月30日 10時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/loveshiba

投資初心者は、今後も可能性がある大幅な株価下落時にどんな心構えでいたらいいのか。8月5日の株価暴落直後、iDeCoや新NISAなどの投資を始めて間もない「にわか投資家」たちが助けを求めた家計再生コンサルタントのFP横山光昭さんは「絶対してはいけないのは、パニック売り、SNSを見ること、金融機関に相談に行くことだ」という――。

■にわか投資家が陥りがちな4つの穴

「500万円もあった利益が60万円弱まで激減してしまいました。大事な老後資金なのに……どうしたらいいんでしょうか」

8月5日の大暴落直後、私どもの事務所に慌てて駆け込んできたのは、投資歴1年半目の山田昭仁さん(仮名・58歳・会社員)でした。利益500万円が60万円弱へ落ちた瞬間、約9割が消えてしまい、その顔は見るからに狼狽し、目は潤んでいました。

山田さんは昨春、一人息子が独立し、老後に向けて資産を増やすべく、1年半前から日本株を中心にNISA(新NISA)やiDeCoで投資を始めていました。

投資資金は、30年以上コツコツ貯めてきた1500万円の貯金から。最初は月2万円の少額積立でスタートしたものの、成長投資枠で買った日本株や積み立て投資枠のインデックス投信が調子よく増えていくのを見て、「なんだ、投資って案外余裕。もっとリスクをとって投資すれば増えそうだな」と考え、積立投資額を月2万円から3万~4万円へ少しずつ増やし、さらには追加で成長投資枠で個別株へのスポット投資にどんどん投下。気づけばこの1年半で1500万円の貯金のうち1000万円を投資につぎ込み、手持ちのキャッシュを短期間にバーンと投資に移動させたわけです。

ここで、山田さんの例をもとに、投資初心者が取ってしまいがちなNG行為を4点申し上げましょう。

■調子がいいと「長期・つみたて・分散」の原則を忘れてしまう

① 短期間でキャッシュの大半を投資につぎ込む

それまでキャッシュしか持っていなかった人が、老後を目前に新NISAブームに乗って投資を始めた場合、利益がどんどん増えて行くのを見て、気づけば退職金など貯金の大半を投資につぎ込む人もいます。特に上昇しか知らない新NISA後に始めた人は相場の恐ろしさを知らず突っ走ってしまう傾向があるように思います。

② 運用商品がリスクのある個別株や投資商品の投資先が偏っている

投資先も日本株や米国株など投資対象の国や種類に偏りがある場合、リスクが増大します。山田さんもインデックス投信を保有していましたが、全体の割合で見れば少なく。投資商品が投資対象に偏りがありました。

③ リスク許容度を超えて投資している

株価が急落しても慌てず、「そのうち上がるだろう」とドンと構えることができればいいですが、それができないのは、リスク許容度を超えた投資をしている証です。いま一度、リスク許容度を見直すべきです。

④ 「利益でカバーすればよい」と考え、お金を使う

山田さんは、投資以前までの家計は順調だったのに投資実績がよいことで慢心し、家計が緩くなった。例えば、それまで食費は3人家族で6万~7万円に抑えていたのに、最近では8万円前後になる月も多いそう。山田さんのように、投資利益に比例するかのように、食費などが右肩上がりに増えてしまうご家庭も、少なくないのではないでしょうか。

【図表】メタボ家計BEFORE⇒AFTER

「使っても働いて稼いでカバーすればいい」と考える人は多いですが、投資が順調な時期が続くと、「稼ぐ」が「増える」に脳内で変換され、「どうせ“増える”からちょっとくらい使ってもいい」という思考になるのです。利益は必ずしも順調に伸びるとは限らないのに、です。

■急落時にやってはいけないこと

さて、話を戻します。山田さんに「どうすればいいんでしょうか」と聞かれた私は、こう話しました。

長く投資を続けていれば、規模の大小はあれ今回のような暴落は起こりうるけれども、その後、利益はいずれプラスに転じるから安心してほしい、と。むしろ、10年、20年の長期スパンで見た場合、今回のような暴落がないと利益は弾みません。株価が落ちているときこそ、安く多く買えるという構図もあります。実際、2008年のリーマンショックでは、一時は買っても下がり、買っても下がりとさすがに不安な日々でしたが、その後、値が戻りました。その上がり方は実にダイナミックで頼もしいもので、胸をなでおろしました。

私自身、20年あまり投資を続けていますが、コロナショックの時、30%強落ちました。それでも、元本と利益でいえば、利益の中での減りにとどまり、「元本割れ」のような痛手は負いませんでした。「長期・つみたて・分散」の原則を守っていれば、相当のことがない限り、元本を割るほど資産が減ることはないんです。

この話をすると、山田さんは少し安心した顔で「初心に戻って積立投資をベースに、個別株は焦って売らず、様子を見ながら判断していけばいいのですね」と一言。

その通り。むしろ焦って売るのは禁物です。改めて、私は山田さんに急落時にやってはいけない「NG行為」を伝えました(利益が一時9割減も、その後、株価が持ち直すとともに、山田さんの投資実績も改善しつつあります)。

1つは慌ててパニック的に売ってしまうこと、2つ目はSNSを見てしまうこと、3つ目は金融機関に相談に行くことです。SNSを見ると、「損失を少しでも減らすために売って損切したほうがいい」とか、「株を割安で買うなら今がチャンスだ」といった極端な意見が目に入り、影響を受けてしまいやすい。

同じく証券会社に相談しても、手元のファンドを売って違うものを買うことを勧められるケースも少なくない。急落している最中の株を買うのは「落ちてくるナイフをつかむ」ようなものだと言われます。うまく柄をつかめないと、刃をつかみ大ケガをしてしまいます。ましてや、動揺しているときは自分ではしっかりしているつもりでも、正確な判断ができないものです。不安を煽る恐れがあるものは一切見ないで、静観したほうがいいのです。

■万一の時に心を鎮めてくれる“お守り”

そうはいっても、不安で仕方ないという人もいるかもしれません。だからこそ、投資をしているときには“お守り”として、当座の生活資金をキャッシュで持っておくことが必要なのです。目安は、生活費の7.5カ月分。

加えて、例えば3年以内に子どもの進学を控えている、住宅を買う、といった予定があるなら、その資金もキャッシュとして銀行口座に入れておいたほうがいいでしょう。手元にキャッシュがないからと投資資金を現金化しようとすると、相場が下がっているときに売らざるをえないこともあり、損するリスクもあるからです。

投資に軸足を乗せすぎた生活をしていると、相場が大きく下がった時に「生活費が足りない!」「○○のお金を払えない!」などと困ることになりかねません。普段からどんな相場になってもいいように、家計を引き締め、投資は「長期・つみたて・分散」というスタンスを守り通したいですね。今回の急落は、投資初心者にとって自分の投資スタイルを見つめ直すいいクスリになったのではないでしょうか。

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横山 光昭(よこやま・みつあき)
家計再生コンサルタント、株式会社マイエフピー代表
お金の使い方そのものを改善する独自の家計再生プログラムで、家計の確実な再生をめざし、個別の相談・指導に高い評価を受けている。これまでの相談件数は2万6000件を突破。書籍・雑誌への執筆、講演も多数。著書は90万部を超える『はじめての人のための3000円投資生活』(アスコム)や『年収200万円からの貯金生活宣言』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)を代表作とし、著作は171冊、累計380万部となる。

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(家計再生コンサルタント、株式会社マイエフピー代表 横山 光昭)

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