「年を重ねるごとに睡眠が浅くなる」真の原因とは…医師が「安易に睡眠薬に頼るな」と警告する理由
プレジデントオンライン / 2024年9月27日 15時15分
※本稿は、高田明和『20歳若返る習慣』(三笠書房)の一部を再編集したものです。
■「眠っているようで起きている」状態の正体
年をとったら、睡眠をどのように考えていくべきなのか? あらためて検証してみましょう。
人は年をとるほどに、睡眠時間が短くなり、眠りが浅くもなっていきます。
誰の眠りにも、ひと晩のうちに、「深い段階」と「浅い段階」があること、そしてその段階は、3段階あることをまず覚えておいてください。
第1段階では、ウトウトした状態です。このとき脳波は、ゆっくりした波形になります。一般的に人が目をつぶり、心を落ち着かせたときに出る脳波を「アルファ波」と呼びますが、睡眠第1段階の脳波は、これよりもゆっくりした波です。
このとき体は眠った状態に陥っていますが、自分がどこにいるかは認識し、「背中に布団が当たっている」といったような自覚はありますので、「眠っているようで起きている」という感じです。よく「金縛り」といわれる状態は、第1段階の睡眠が長く続いてしまっている状態です。
第1段階から脳波がさらにゆっくり遅くなると、人は眠りに入ります。このときが第2段階です。第2段階は完全に眠っている状態であり、自分がどこにいるのか、布団や姿勢の状態などへの意識はありません。しかし眠りはまだ浅いので、電話の音などですぐに目が覚めてしまいます。
■高齢になると深い眠りが難しくなる
第3段階になると、さらに眠りが深くなります。脳波は2段階目よりも、もっとゆっくりになります。この眠りに入ると、ちょっとやそっとの物音では目覚めません。
「目覚ましをかけておいても目が覚めなかった」という、若いころを懐かしく思い出す方もおられるでしょう。高齢になると、この「第3段階の眠り」に到達することが難しくなります。
第1段階と第2段階を行ったり来たりしているので、ちょっとした物音でも、すぐに目が覚めてしまいます。さらには、一度目が覚めてしまうと、そのあと寝つけないこともよくあります。
すると、「健康に影響するのではないか」「このままどんどん体が衰弱するのではないか」と、非常に心配する人がいます。
専門家のなかには、「眠るにも体力が必要で、年をとると体力が落ちるから眠れないのだ」と述べる人がいますが、必ずしもそうとはかぎりません。
では、なぜなのでしょうか?
■浅い眠りが「生き残りに有利」な、もっともな理由
高齢者の眠りが浅くなるのは、実は「自己防衛本能」だという説を唱えている生物学者もいます。
高齢になると瞬発力が衰えて動きも緩慢になるため、急に外敵に襲われるなどして身の危険が迫ったとしても、俊敏に反応してすぐに反撃をしかけたり、速く走って逃げたりすることができません。
人類の歴史を振り返れば、寝ている最中に自然災害や、外敵や野獣の侵入に見舞われる可能性は多かったでしょう。
そんな環境下で、体力が衰えて動きが遅くなっても生き延びられるように、年をとるほどに、ちょっとした物音でも目が覚めるという習性が、自然に発達していったのではないかと推測されています。
もしもこの説が正しいのなら、年をとるにつれて眠りが浅くなるのは、至極自然なことであり、むしろ健康である証拠。心配する必要などまったくない、ということになります。
実際、高齢者の眠りが、「ゆさぶっても起きない」ほど深い場合は、かえって危険です。脳に異常がある疑いや脳梗塞になるリスク、認知症の兆しも考えられます。
■「夜中にトイレで何度も目が覚める」人は……
「夜中に何度も、トイレのために起きてしまう」という方や、「一度起きると、そのあと眠れなくなってしまう」という方も多いと思います。眠れなければ不安だし、翌朝の体調が悪くなったり、疲れやすくなったりしているかもしれません。
睡眠障害と夜間頻尿は、どちらが先でそうなるのか明確ではありませんが、互いに関連し合っているそうです。先に述べたとおり、年をとれば睡眠が浅くなり、何度も起きることで体が覚醒しやすくなります。
すると膀胱の内圧が上昇し、尿意をもよおして、トイレに何度も行きたくなってしまう。そして多くなる夜間頻尿が、ますます睡眠障害をきたす悪循環になります。
ただ、何度もトイレのために起きることが睡眠障害をもたらすかどうかは、個人差があります。夜中に3回以上起きる人でも、その半数の人は「眠れないと悩んでいない」という調査もあります。
ですから安易に睡眠薬に頼るのではなく、まずは寝る1~2時間前から水分の摂取を控え、体が冷えないよう、とくに足を暖かくしましょう。そのほか、ベッドや枕など、快適に眠れる環境を整備して、生活リズムを改善することが重要でしょう。
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浜松医科大学名誉教授 医学博士
1935年、静岡県生まれ。慶應義塾大学医学部卒業、同大学院修了。米国ロズウェルパーク記念研究所、ニューヨーク州立大学助教授、浜松医科大学教授を経て、同大学名誉教授。専門は生理学、血液学、脳科学。また、禅の分野にも造詣が深い。主な著書に『HSPと家族関係 「一人にして!」と叫ぶ心、「一人にしないで!」と叫ぶ心』(廣済堂出版)、『魂をゆさぶる禅の名言』(双葉社)、『自己肯定感をとりもどす!』『敏感すぎて苦しい・HSPがたちまち解決』(ともに三笠書房≪知的生きかた文庫≫)など多数ある。
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(浜松医科大学名誉教授 医学博士 高田 明和)
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