そろそろ株価が下がる可能性が高い…お金のプロ直伝「投資初心者が今すぐすべき"暗黒の5年"への準備」【2024上半期BEST5】
プレジデントオンライン / 2024年9月23日 16時15分
■気になったら負け
2024年1月から新NISA制度が開始されました。この機会に投資を始めた人、これから始めようと思っている人も多いのではないでしょうか。そんな投資初心者や未経験者の方々に、心に留めておいてほしいことが3つあります。
第一は、つみたて投資の場合は「気になったら負け」だということです。こうした投資は、毎月無理のない額を複利で長期間運用して初めて力を発揮するもの。最初に積み立て投資の設定をしたら後は30年忘れておきましょう、というのが僕の考えです。
なので、まずは30年忘れておける環境をつくることが大事です。投資を始めるとどうしても株の値動きが気になって、チェックするたびに資産が増えた減ったと一喜一憂しがちですが、これでは投資がストレスになってしまい長く続けられません。
■家計簿アプリに連携しないほうがいい
多くの人にとっては、日々の株価を気にするのは楽しいことではないでしょうし、資産が増えるならともかく減っていくのを見たら「やめようかな」という気にもなってしまいます。だったら見ないで済む、気にしないで済む環境をつくったほうがいいと思います。
たとえば、今は投資用の口座を家計簿アプリと連携させることもできますが、初心者にはおすすめできません。確かに家計簿アプリで収支を見える化することは大事なことです。でも、長期で考えるべき投資において日々の増減を気にするのはメンタル的にもよくないし、時間ももったいないですよね。
また、投資に使うお金は住宅ローンや子どもの教育費などとは完全に分けるべきです。こうしたものに投資のリターンを当てにしてはいけません。我が家でも、投資に回すお金と家や子どものためのお金は完全に別枠にしていて、本当になくなってもいいと思える分だけを投資に回しています。
■「暗黒の5年」をどう乗り切るか
投資をしていると、株価が低迷する「暗黒の5年」ともいうべき時期がどこかでやってきます。近い将来必ず必要になるお金を投資で得るつもりでいたら、暗黒の5年を乗り越えることはできず、「やめようかな」どころではなく「やめなくてはいけない」状況になってしまうでしょう。
つみたて投資は老後資産と考えて、毎月出ていっても気にならない程度の額で続けることが大事。そんな余分なお金はないよという場合は、無理に新NISAを始める必要はないと思います。無理して始めてもストレスがたまるばかりで、結局は続きませんから。
僕は「新NISAが始まったから投資を始めたほうがいいですよ」という気はまったくありません。これを機に投資を始めたくて、かつ家計的にも可能なのであれば新NISAを使わない手はないですよというスタンスです。皆がやっているから、話題になっているからと無理に始めるぐらいなら、むしろやらないほうがいいと思っています。
■一気にドーンかコツコツ積み立てか
また、元本が大きいほうが複利の効果も大きくなるからと、口座開設時やボーナス時にドーンと大金を入れる人がいますが、投資初心者の場合はこれもやめたほうがいい。なぜなら、これだと「タイミングのリスク」を負うことになるからです。
大金を入れたタイミングで株価が下がり始めて、その後しばらく下がり続けるという可能性もあるわけです。そうすると、たいていの人は「失敗した!」とガックリしてしまいますよね。そこまで大きく下がらなかったとしても、投資初心者の人は大金を入れたらその後の値動きが気になって仕方ないでしょう。
僕は、元本を一気に大きくするかコツコツ増やしていくかはどちらでもいい、その人の好み次第だと思っていますが、投資を始めたばかりの人には後者をお薦めしたいですね。
日本人はまだ投資=ギャンブルという意識が根強いこともあり、ドーンと突っ込んで失敗すると「やっぱり投資は危ない」と思ってやめてしまいがちです。そうならないためにも、初心者の人はやはりコツコツと積み立てていったほうがいいと思います。
■つみたて投資で負けるパターンの典型例
第二は、新NISAに限らずあらゆる投資は「負けたときにやめたら負け」だということ。当たり前だといわれそうですが、これをやってしまう人は意外と多いんです。特につみたて投資で負けるパターンというのは明確で、5年ぐらいダラダラと株価が上がり続けていたところに大きな下落局面が来て、動転してやめてしまうというもの。
それまで資産が順調に増え続けて楽しい思いをしていただけに、少し値下がりしただけで大ダメージを受けたような気になってしまうんですね。心理的にも、人は1万円を拾ったうれしさよりも1万円をなくしたつらさのほうが大きく感じるといわれています。それもわかりますが、でも負けた時点でやめたら当然ながらそのゲームは負けのまま終わります。
先ほど言った通り、長期で投資を続けていれば必ずどこかで暗黒の5年がやってきます。そんなときも、せっかく始めた積み立てはやめないほうがいい。長期投資は「資産を増やす」というオフェンス面だけでなく、「資産を守る」というディフェンス面でも効果を発揮するからです。
金融庁の調査によると、スタンダードな投資の場合、5年単位で見れば利益が出るケースも元本割れするケースもあるものの、これを20年単位で見ると元本割れしたケースはないことがわかっています。つまり、株価は高くなったり安くなったりはするけれど、20年というスパンで見れば投資をした人全員が得をしているのです。
■そろそろ株価が下がり始める可能性が大きい
ですから、暗黒の5年が来たとしてもそこは我慢です。今年から新NISAを始めた人やこれから始める人は、ここ最近の株価が右肩上がりになっている状況だけを見て、今後も上がり続けていくようなイメージを持っているかもしれません。そうした思い込みはやめて、ちょっとした下落でガックリしないようにしてほしいですね。
現実的には、株価はそろそろ頭打ちして、短期的には下がり始める可能性が高くなっています。でも、開始から株価が5年間下がり続けてしまっても、コツコツとつみたて投資を続けていれば、6年目に株価が上昇すればプラスに転じる可能性は十分にあります。そうなれば下がった分は取り戻せますし、下がっている間に買い続けたことで株価が戻ったときに資産が大きくなっていることに気づくでしょう。この先ちょっとした下落があっても慌ててやめないようにしてほしいと思います。
■投資系インフルエンサーの“極論”を信じてはいけない
第三は「人の意見に左右されてはいけない」です。今はYouTubeやSNSで投資の情報収集をする人も増えていますが、僕の印象ではいわゆる投資系インフルエンサーの言葉を間に受けてしまう人が本当に多いですね。インフルエンサーがいう銘柄をそのまま買うといった投資のやり方はおすすめできません。
ネットでは目立った者勝ちなので、インフルエンサーと呼ばれる人たちは正しくて地味な話よりも人目を引く面白い話をしようとしがちです。新NISAについても、「やらないやつはバカだ」「絶対にやるな」「エヌビディアだけ買っとけばいい」みたいな極論がたくさん出回っています。
でも、インフルエンサーたちはそれが極論だと分かったうえで、PVを伸ばすためにあえて煽るような言い方をしているわけです。実際は未来の話に「絶対」はなくて、どの株が上がるかなんて誰にも断言できないはず。それなのに間に受ける人が多くて驚きます。思考停止して、人のいうままに投資してはダメですよ。
■「限度額を早く埋めろ」の功罪
僕のところにも「新NISAは非課税保有限度額の1800万円をできるだけ早く使い切ったほうがいいんですよね」と相談してきた人がいました。なぜそう思うのか聞いたら、YouTubeで投資系インフルエンサーがそう言っていたからだと。それはそのインフルエンサーの考えであって、大事なのは投資する本人がどう思うかです。自分のお金なんだから自分の頭で考えろと言いたいです。
大金を稼いでいるような個人投資家にとっては1800万円なんて少額ですし、元本が大きいほどリターンも大きくなりますから、当然「限度額はすぐ埋めろ」という結論になるでしょう。でも、そんなに資産はない人がその言葉通りにしたらどうなるか。一部のインフルエンサーの言葉を一般化して、自分に当てはめて考えるなんて危険すぎます。
こうした傾向は若い人に限りません。ある程度年齢を重ねた人はリテラシーが高いのかというと、実際はそうでもないんです。SNSで「この人、インフルエンサーの発言を鵜呑みにしてちょっとやばい感じになってるな」と思ってプロフィールを見にいったら、50代60代だったということも結構あります。
繰り返しになりますが、投資は気になったら負け、負けたときにやめたら負け、そして人の意見に左右されてはいけない。新NISAを始めるなら、この3点を頭に入れたうえで行動してほしいと思います。
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株式会社マネネCEO、経済アナリスト
証券会社や運用会社にてアナリスト、ストラテジストとして日本の中小型株式や新興国経済のリサーチ業務に従事。業務範囲は海外に広がり、インドネシア、台湾などアジア各国にて新規事業の立ち上げや法人設立を経験し、事業責任者やCEOを歴任。その後2018年6月に金融教育ベンチャーの株式会社マネネを設立。現在は経済アナリストとして執筆や講演をしながら、AIベンチャーのCFOも兼任するなど、国内外複数のベンチャー企業の経営にも参画。著書は『スタグフレーションの時代』(宝島社新書)や父・森永卓郎との共著『親子ゼニ問答』(角川新書)、『つみたて投資の教科書』(あさ出版)など多数。
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(株式会社マネネCEO、経済アナリスト 森永 康平 構成=辻村洋子)
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