高齢者に「スマホの使い方」を説明する姿を見れば一発でわかる…本当に仕事のデキる人が使うシンプル話法
プレジデントオンライン / 2024年11月23日 15時15分
※本稿は、鶴野充茂『上手に「説明できる人」と「できない人」の習慣』(明日香出版社)の一部を再編集したものです。
■求められている以上のことを一度に説明しがち
できない人はたくさん伝えようとする。
高齢者にスマートフォンの説明をした経験はあるでしょうか?
「使い方がよくわからない」と言われたとしましょう。
「そんなに難しくないし、一気に説明したほうがいいだろう」
そう思い、一つひとつ噛み砕いて教えていきましたが、「やっぱりよくわからない」と言われて、途中で説明するのが面倒になった人もいるのではないでしょうか?
これは、説明下手な人の例であり、そしてスマホを普通に使いこなしている人たちによくあるパターンだと思います。
なぜ「通じない」のでしょうか?
多くの人が頭ではわかっていることと思います。「求められている以上のことを一度に説明しているから」です。
一方、説明が上手な人は、先に困っていることを具体的に聞きます。
もし、この質問に対し、「メッセージの送り方がわからない」と返ってきたら、それだけをまず説明します。そして相手が使えるようになれば、ひとまずそれで解決です。お互いにハッピーなのです。
■最初に質問し、相手の求める情報を探り出す
これについては、逆の立場になれば、いろいろと見えてくるかと思います。
たとえば、初めて訪れたレストランでメニューを開いたら、なじみのない料理が並んでいたとします。「どれがどんな料理か」もわからないので、店員に聞いてみたところ、こんな説明をされたらどう思いますか?
×「このコック・オ・ヴァンはフランス・ブルゴーニュ地方の伝統料理で、鴨肉を赤ワインで煮込んだ料理です。この料理を食べるときにはこの料理の煮込みで使ったワインと同じワインを飲むというルールがあります。カスレは……。フリカッセは……。スープドポワソンは……」
「一つひとつを細かく教えてもらっても、覚えきれないよ……」と多くの人は困るはずです。途中で「よくわからないから、もう何でもいいや」と聞くのをあきらめたくなるのではないでしょうか?
一度に覚えられる情報の量には限りがあります。説明する側の人も逆の立場になれば、必要以上の情報を前にして「やっぱりわからない」となりうるのです。
では、この場合、説明が上手な人はどんな説明をするのでしょうか。
おそらく、説明する前にこんな質問をするでしょう。
お客さんの返答によって、オススメする料理を絞り、一つひとつを簡潔に説明して、お客さんに料理を自分で選んでもらうという方法をとります。このようなやりとりをすることで、お客さんが食べたい料理を選ぶことができるのです。
相手はすべての情報を知りたいわけではありません。
説明上手な人は、とにかく相手が求めている情報は何かを探っていきます。
■「丁寧に説明をする」ほど聞き手は疲れやすい
できない人は丁寧に説明したい。
新しく社員が入ってきてあなたの後輩になったとき、職場の大事なルールをどのように伝えますか?
新入社員に早く職場に慣れてもらいたく思い、このように丁寧に説明しなければならないという一種の使命感を持っている人もいます。その気持ちもわかりますが、本当に相手が理解し、記憶できる情報なのでしょうか。
おそらく顔には出さずに聞いてくれるでしょうが、「知りたいのはそこではない」と思っているかもしれません。
説明が下手な人は、情報を一つひとつ丁寧に網羅的に説明しようとします。結果的に情報量が多くなり、聞き手を疲れさせ、聞く気を失わせてしまいます。
実は、「丁寧に説明をする」ことが必ずしも正解ではないのです。
説明が上手な人は、丁寧に説明をしようということにこだわりません。
丁寧に一つひとつ説明するのではなく、相手が知るべきことや知りたいことを厳選して説明しようと考えます。
■「相手が知らなくては困るもの」に絞ることが大原則
たとえば、先ほどの例で言いますと、こんな感じです。
おそらく、新入社員はこの職場で働く上でまず「最も重要なルール」を知りたいと思っているはずです。
会社には会社ならではのルールが存在しています。その中に、「知っておかないといけないこと」と「必要なときに聞けば良いこと」があります。
何度も聞かれると説明する側も大変なので、なるべく効率よく伝えておきたい気持ちもありますが、一つひとつ順に覚えていけば良いルールは、最優先の情報ではないととらえておくことです。
あくまで、説明は「相手が知らなくては困るもの」に絞ることが原則です。
ただ、重要なことは伝えたものの、それ以外に相手が本当に知りたいことは別にあるかもしれません。
「何か他に聞きたいことはありますか?」
聞き漏れがないか、一度確認してみてもいいでしょう。
人によって関心ごとは異なります。
思いもよらぬことを聞かれるかもしれませんが、相手の疑問に答えると、すっきりしてもらえるでしょう。
多くの人が「できるだけ多くの情報を、丁寧に」説明しようとしてしまいますが、必ずしもそれが最適ではないということを、まずは知りましょう。
■その場の思いつきで話すと「伝えることで精一杯」
できない人は思いつく順に話す。
×「初めての北海道に行ってきましたよ。紹介してもらったラーメンのお店、おいしかった。サイコーでした。しかし北海道はでかいですね。運転が大変でした。いやーでもまた行きたいです。」
こういう流れで話す人、いますよね。
このように、頭に浮かんだことをそのまま話して、会話がすぐに終わってしまうことはありますか?
話を聞いている相手からすれば、「喜んでいるようだからよかった」とは思うでしょうが、話をきっかけにして次に展開するには、他の情報が必要なため、質問をしたり、新たな情報提供があるかどうかは、その相手しだいになってしまいます。
また、思いつきで話す人は重要な情報を伝え忘れたり、同じ内容を繰り返したりする可能性が高くなります。
ついこのような話し方をしてしまう人は、単純に準備不足だと思いましょう。
その場で考えながら話すことで、冷静に情報を整理する余裕がなく、伝えることに精一杯で聞き手への配慮にも気が回りません。話は一方通行で、聞き手がどのように反応できるのかに、意識が向かないのです。
■説明上手な人の「事前準備」
説明上手な人は、その場で即興で話すことよりも、説明の準備に時間を使います。
冒頭の例では、このように伝えます。
①行き先 札幌1泊、道東2泊です。
②目的 グルメは大きな目的のひとつで、札幌では紹介してもらったラーメンと寿司、道東は焼肉とインディアンカレーがよかったですね。
③感想 ラーメンは出汁がサイコーでした。
④次の話の投げかけ あんな店、どうやって見付けたんですか?」
では、どのような「事前準備」をすれば良いのでしょうか?
説明上手な人の例をあげながら、解説していきましょう。
まず伝えたい内容を箇条書きにします。
そして重要度順に並べ替えて、主要ポイントにまとめるようにします。
ここでは、テーマが旅行ですから、聞く側としても「行き先」「目的」「感想」は知りたいところですね。テーマに応じて、まず全体像や概要を理解する基本的な情報を伝えたいところです。
また、冒頭で今ここでこの話をする意図などの導入となる情報を示します。
今回は、すでに北海道に行くことを伝えて、札幌のラーメン屋さんを紹介してもらっていた想定になっているので、「行ってきました」が導入になります。
■最後に必ず相手が話せる投げかけをして終わる
次に「どこに」「何をしに」が続きます。旅の感想はいろいろあると思いますが、飲食店を紹介してくれた人に対する感想なら、まずそのお店か食べ物に対する説明に絞って伝えるほうが聞き手も積極的に話を聞きやすいので、それを中心にまず伝えます。
その中で、飲食店を紹介してくれた人なら興味を持つかもしれない道東の焼肉と地元の有名店を次の案内として紹介し、最後に必ず相手が話せる投げかけをして終わっています。
最後に、聞き手の反応を観察し、「伝わったのかどうか」を確認します。この旅の話に限らず、質問してもらいやすいように間を取ったり、ポイントが理解できたかを聞いてみる、という流れを習慣化しておくことも効果的でしょう。
説明をする前に、これを意識して準備しておくだけで、心に余裕ができます。ぜひ取り入れてみてください。
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ビーンスター 代表取締役、広報アドバイザー
社会構想大学院大学客員教授、日本広報学会常任理事。コミュニケーションの専門家として、国内外数百社の経営者や政治家、医師・弁護士など専門家向けに広報アドバイザー、トレーナーとして活動するほか、東京理科大学オープンカレッジなどで説明力や文章力を高める講座を提供するなど広くビジネスパーソンに向けてコミュニケーションを教えてきた。東日本大震災後に国会内に設置された東京電力福島原子力発電所事故調査委員会(国会事故調)でデジタル・コミュニケーションを統括、全国がん登録制度の発足時にはPR責任者を務めるなど、全国規模のコミュニケーションプログラムやPRキャンペーンにも携わる。水循環基本法フォローアップ委員会委員。公益社団法人日本パブリックリレーションズ協会(PRSJ)元理事。筑波大学(心理学)、米コロンビア大学院(国際広報)卒。
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(ビーンスター 代表取締役、広報アドバイザー 鶴野 充茂)
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