「日傘とサングラスで紫外線完全カット」は体に悪い…メジャーリーグ選手を指導する睡眠のプロが断言するワケ
プレジデントオンライン / 2024年11月29日 17時15分
※本稿は、ヒラノマリ『人生を変える睡眠術』(大和出版)の一部を再編集したものです。
■国内出張の新幹線や機内での睡眠は30分にとどめる
国内に頻繁に出張される方もいるでしょう。
朝の出発なら、暗い早朝の時間は別として、タクシーに乗らずに、ちゃんと歩いて朝日を浴びながら目的地に向かうことが大切です。
日を浴びることができないと、睡眠も乱れるので気をつけましょう。
国内でも、冬場だと東京と大阪で日の出が30分くらい異なることがありますし、行く地域によって日の出の時間が異なります。
どんな場所でも、普段と比べて日を浴びるタイミングをできるだけずらさないことが必要になってきます。
早朝や夜遅い時間の移動だと、新幹線や機内でずっと寝ている方もいると思いますが、夜の睡眠のことを考えると、寝る時間は30分までにとどめたいものです。
昼寝の門限が午後3時までだということと同じです。
夜の最終便で帰ってくる場合も、眠くても頑張って起きていてください。
移動中にダラダラ寝ないようにするのが国内出張のポイントです。
盲点は、駅や空港の中では、直接日を浴びるのは難しいため、移動時間が長ければ長いほど日を浴びない状態が続くということです。
■紫外線対策のしすぎは不眠のもと
日を浴びることに関しては、特に女性だと紫外線が気になりますね。
出張では移動も多いですし、日差しの強い時期は日傘やサングラスで防御している女性もいると思いますが、朝だけはそれを少しゆるめましょう。
というのも、紫外線による皮膚へのダメージは、朝よりも夕方のほうが5倍影響があり、日焼けや肌の炎症が起きやすいことが研究でわかっています。
もちろん、日中の一番暑い時間は日傘もサングラスも使ってかまいません。
ですが、ほんの5分か10分でいいので、日傘かサングラス、どちらかだけにしてほしいのです。
以前、女性のボート選手で、眠れなくて悩んでいる方がいて、「もしかしたら……」と思って聞いてみたら、彼女は朝練に行くときも家からずっとサングラスをつけているとのこと。
実は、それが不眠の原因でした。そこで朝はサングラスをとってもらったら、ぐっすり眠れるようになったのです。
■紫外線対策をしながら、ビタミンDの生成を模索する
日を浴びて体内時計を調整するには、目から光を取り入れるのが一番です。
同時に皮膚にも光を当てるといいのですが、紫外線の害も無視できません。
女性は特に、そこで「UVケアをしたい」と考えるわけですが、問題は、「今の女性たちは日焼け止めを使っているために、ビタミンD不足になりがち」と言われていることです。
この解決策のひとつとして、オーストラリアのメーカーが開発した、ビタミンDが肌から生成されるのを阻害しない日焼け止めがあります〔ソーラーD(solarD)・必要な波長を妨げない日焼け止め〕。
私はアスリートにこちらを使うようにすすめ、自分自身も使っています。
ビタミンDは、幸せホルモンとも呼ばれるセロトニンの合成にも深くかかわるため、おかげでメンタルの調子もいい気がします。
ネットで買える製品なので、そうしたものをうまく使って紫外線対策をするのもひとつの方法です。
■「飛行機よりも新幹線を使ったときに疲れる」
「出張に行くと睡眠が乱れがち」という声はよく聞きます。
特に、「飛行機よりも新幹線を使ったときに疲れる」という人が多いようです。
飛行機は離着陸の気圧の変化があるので、自律神経に負担がかかりやすく、新幹線は、トンネルの出入りや、ほかの電車とすれ違うときなどに、急激に気圧が変化するので、やはり自律神経に負担がかかっています。
新幹線の路線にもよります。以前、関西のチームのプロ野球選手が、「遠征のとき、東海道新幹線より山陰新幹線や九州新幹線のほうが疲れるんだ」と言っていました。
アスリートは基本的に敏感なのですが、調べてみたら、実際に山陰や九州の新幹線のほうが、東海道新幹線と比べてトンネルの通過が多いことがわかりました。
走りながらそこを出入りするため、気圧の変化が激しくて疲れるわけです。
雪国を走る新幹線もトンネルが多いので、同じように自律神経に負担がかかりやすいと言えます。
■自律神経に負担をかけないためにできること
対策としては、飛行機用の気圧コントロール式の耳栓があるので、新幹線の中でもそれをつけること。私もいつもつけています。
担当した方の中には、骨伝導のイヤホンと耳栓を一緒につけて、音楽を聴きながら移動している選手もいました。その方は自律神経が弱い傾向にあり、いつほかの電車とすれ違うかもわからないので、乗車中はずっとつけてもらうようにしました。
光の問題もあります。飛行機は夜だと機内が暗くなりますが、新幹線はずっと明るいままですよね。
睡眠ホルモンのメラトニンの天敵は照明の光やブルーライトなので、ブルーライトカットメガネをかけることである程度対処できます。
■出張の数日前から時計を現地時間に
ここでは、海外出張する場合、出発前・出張中にどのような工夫をすべきかご紹介しますね。
まず、海外出張に行く数日前から、時計を出張先の現地時間に合わせましょう。
たとえばアメリカに行くなら、腕時計だけは日本時間にしてスマホの時間はアメリカ時間にする。または、逆に腕時計だけアメリカ時間にします。
そうやって、「今、出張先は何時か」を数日前から体にしみ込ませていくのです。「今はランチしていても、あちらは夜なんだ」とか「あちらは深夜の寝静まった時間なんだ」と想像してみる、その感覚が大切です。
時差ボケ対策には、脳もだまさないといけない部分があるので、まず意識の面において、数日前から慣らしていきます。
ここでも体内時計がポイントです。「光で動く体内時計」「食事をとると動く体内時計」「運動すると動く体内時計」があるとお話ししましたが、この3点を意識します。
ブルーライトカットメガネも、現地時間に合わせて着脱します。
ある経営者の方が、夜の飛行機でちょうど現地時間の夕方に当たる時間に出発することになりました。
出発日、空港に行く前は、夜であってもブルーライトカットメガネを使わず、搭乗後、現地時間の夕方6時頃になった時点でメガネをかけてもらうようにしたのです。
このように機内では、寝る時間も現地時間に合わせます。現地が夜なら寝るのがベストです。
どうしても眠れないときは、ブルーライトカットメガネをかけて、できるだけ静かに過ごすようにします。
映画は目からも耳からも情報が入って脳が起きてしまうので、機内では、音楽や、ポッドキャストのラジオだけ聴くのがいいでしょう。
■現地時間の真夜中の機内食は食べずに寝ていたほうがいい
機内食は、基本的には現地時間で考えて、食事をする時間なら食べます。
「日本時間では朝食だけど現地では夕食の時間」という場合もありますが、食事という意味では同じなので、食べても大丈夫です。
もし機内食が出た時間が現地時間の真夜中なら、食べずに寝ていたほうがいいです。
肉と魚なら、魚を選びましょう。
魚には体内時計を整える作用があることがわかっています。ツナならベストですが、どの魚にもDHAやEPAは含まれていることが多いので、ここでは魚の種類にそれほどこだわる必要はありません。
■普段と同じ時間に起きてウォーキング
現地に着いたら、どんなに眠くても、多少睡眠不足になっても、現地の時計でいつもと同じ時間に起きます。
夜中12時に着いて寝るのが午前2時や3時になったとしても、いつも起きる時間が7時なら、とりあえず1回7時に起きます。そして軽く朝の運動をします。
骨格筋や肺の体内時計は、運動しないと動かないと言われているので、ウォーキングをするか、普段走っているならランニングをします。
そのとき、日差しの強い国でもサングラスはしないで、できるだけ日を浴びながらおこないます。
■朝食にツナ、少量でも3食を食べる
到着した翌日の朝食は、体内時計の調整のために、ツナをはじめとする魚が入ったものを食べるのがおすすめです。
海外ではメニューにツナが入っているものが多いので、選びやすいと思います。
時差ボケしているとあまりお腹が空かないこともありますが、少量でもいいので一応3食食べるようにしてください。
日中はできるだけ活動的に過ごし、昼寝はしないように気をつけましょう。
その日の夜は、眠くても9時か10時以降に寝て、翌朝はいつも同じ時間に起きる、もしいつもより早く目覚めてしまったときはそのまま起きるようにします。
このように、出張先・飛行機内・現地で、「光で動く体内時計」「食事をとると動く体内時計」「運動すると動く体内時計」の3つを動かすことがポイントです。
私がサポートしているアスリートやビジネスマンの方たちも、今のところ全員が時差ボケなしで過ごすことができています。
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スリープトレーナー、睡眠健康指導士
自身も不眠症を経験したことから睡眠学に興味を持ち、大学卒業後は大塚家具に入社。一般のお客様からホテル、保養所、大使館などのベッドや寝室全体のコンサルティングを経験する。現在は日本で唯一のアスリート専門の睡眠のパーソナルトレーナー『スリープトレーナー』としてメジャーリーガーの藤浪晋太郎投手、プロ野球選手、Jリーガー、オリンピック選手などに試合時に合わせた睡眠アドバイスから寝具・パジャマ選びまで行っている。
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(スリープトレーナー、睡眠健康指導士 ヒラノマリ)
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