説得力がない人は、なぜ説得力がないのか…主張が「腑に落ちる人、落ちない人」の話し方の決定的な違い
プレジデントオンライン / 2024年11月29日 17時15分
※本稿は、石田一洋『あなたの話はきちんと伝わっていますか?』(総合法令出版)の一部を再編集したものです。
■人は理由が腑に落ちないと納得しない
自分の言いたいことを伝えるだけでは、説明として不十分です。
聞き手に納得してもらえなければ、その説明の価値は半減します。
そこで登場するのが、GREAT話法のR(Reason)=理由です。
人が納得するのは、「理由」が腑に落ちたときです。
話の内容がどれだけ素晴らしくても、その理由に納得できなければ行動は起きません。
逆に、もし主張が理不尽だったとしても、理由が納得できれば受け入れてもらえることもあるのです。
例えば、もし私が次のようなことを言ったら、周りの人はどう思うでしょうか?
この発言だけでは、おそらく「気持ち悪い!」と多くの方が感じるはずです。
しかし、その後に理由として次のような話をするとどうでしょう。
このような説明が加わると、主張単体では納得できなかった話でも、少しは続きを聞いてみてもいいかなと思うようになるのではないでしょうか?
会議で自分の意見を通したいときや、誰かに何かをお願いするときなど、自分の考えを受け入れてもらうためには理由の強化が必要です。
■「3つの理由」が納得してもらいやすい
理由は3つ用意できると理想的です。
1つや2つだと、聞き手に反論された場合に、主張を展開することが難しくなります。
しかし、4つや5つと理由の数が多くなると、今度は話が長くなってしまい、主張がぼやけてしまいます。
3つの理由があれば過度に多すぎず、複数の視点から根拠を説明できますので、結果として、聞き手に納得してもらいやすくなります。
例えば、次のような会話があったとします。
彼女「温泉に行きたい」
彼氏「なんで温泉?」
彼女「癒やされるじゃん」
彼氏「だったら滝や高原でもいいんじゃない?自然の景色も癒やされるよ」
このように、理由が1つだけだと、聞き手が別の意見を主張する可能性があります。
では、3つの理由を並べて伝えるとどうなるでしょうか?
この主張に反論しようと思うと、自然の雰囲気に癒やされて、温まりながらゆっくりできて、お風呂上がりに最高の一杯が飲める、別のプランを考えなければならなくなります。
実は、「理由を語ると、聞き手はその理由を踏まえた上で次の話をしなければいけない」という暗黙のルールが生まれます。
これを無視すると、自分勝手な主張を繰り広げているように聞こえるため、理由が強いほうの意見が通りやすくなってしまうのです。
■なぜ主張と理由がズレているケースが頻発するのか
理由を語るときに大切なポイントがあります。
それは、論理的に筋が通っているかどうかです。
先ほどの「週末は温泉に行きたい」という主張の場合は、次のように成立しています。
「雰囲気に癒やされるから」→「温泉に行きたい」
「温まってゆっくりしたいから」→「温泉に行きたい」
「お風呂上がりの一杯を楽しみたいから」→「温泉に行きたい」
では、「テレビで温泉を紹介していたから」という理由だとどうでしょう?
一見成立しているような気もしますが、よく考えると論理が飛躍しています。
これは理由ではなく、きっかけを述べているにすぎません。
つまり、この場合は、場所や雰囲気に魅力を感じた理由などが省略されてしまっています。
「テレビで紹介されていたから」だけでは、本人にしかその理由は分かりません。
このように、主張と理由が飛躍している、あるいはズレているケースというのは少なくありません。
■理由と主張のつながりはこれでチェックできる
ビジネスシーンでありがちなのは、商品紹介における「みなさんに選ばれていますから、いかがですか」という売り文句です。
これも、「みなさんに選ばれている」→「多くの支持が得られていて安心」→「購入して後悔する可能性は低い」という本来の理由が隠れてしまっています。
理由と主張は、相互にどちらから見てもつながる形で伝える必要があります。
「AであるのはBだから」(主張→理由)
例:温泉に行きたいのは、身体を温めて疲れを取りたいから
「BだからAである」(理由→主張)
例:身体を温めて疲れを取りたいから、温泉に行きたい
このように、理由を考えるときは、主張と理由のどちらから考えても意味が分かるような状態になっているかチェックしましょう。
■「権威性」「数字」「比較」で説得力を高める
「理由」を伝えた後は、「事例」で補足をすると効果的です。
事例がなければ、せっかく伝えた理由も机上の空論のように感じられます。
例えば、営業シーンで、
とだけ伝えても、あまり信ぴょう性がありません。
この場合、伝え方を変えて、
というように、具体例を交えながら説明すると、説得力が増します。
事例を作るポイントは、「権威性」や「数字」「比較」の要素を入れることです。
この例の場合は、30%削減という「数字」、大手メーカーという「権威性」の要素を使っています。ほかにも「以前使われていたA社のシステムよりも」など、「比較」の要素を入れてもよいでしょう。
理由は、主張を支える土台です。
事例は、その土台を強固にする柱のような存在です。
これらが抜け落ちると、その説明全体が説得力を欠く話になってしまいます。
必ず意識して伝えるようにしましょう。
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関西テレビ放送アナウンサー
広島県出身、2002年早稲田大学商学部卒業。RKB毎日放送を経て2014年から現職プロ野球日本シリーズや、競馬G1、大阪国際女子マラソンなど全国ネットのスポーツ中継のほか、番組MCやリポーター、ニュース、ラジオパーソナリティ、ナレーション、司会と幅広く担当。アナウンスメントやドキュメンタリー制作のコンテスト優勝、受賞歴多数。第10回全国講師オーディションではグランプリを獲得。学校や企業研修では、「伝わる説明の技術」や「人を動かす伝え方」を中心に、「アサーティブコミュニケーション」「獲れる採用説明会の作り方」などを指導している。
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(関西テレビ放送アナウンサー 石田 一洋)
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