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「立場が違う社員3人」と毎日会話しているか…「アイデアのセンスがいい」と褒められる人がやっている習慣

プレジデントオンライン / 2024年11月29日 18時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/John Wildgoose

いいアイデアを出すコツはあるか。電通のマーケター、佐藤真木さんと阿佐見綾香さんは「センスの問題のように思われるが、そうではない。企画を考えるプロたちにコツを聞いた結果、ある1つの“型”があることが分かった」という――。

※本稿は、佐藤真木・阿佐見綾香『センスのよい考えには、「型」がある』(サンマーク出版)の一部を再編集したものです。

■「センスのいいひとが思いつくもの」という誤解

まず「インサイト(※)の見つけ方」について話をするとき、必ず多くの人から言われることがあります。それは「インサイトって、センスの良い人だけが、瞬間的に思いつくものなんじゃないの?」ということです。つまり、属人的なスキルであって、センスのない人がいくら考えても、優れたインサイトなんて見つけられないのではないか? という懸念です。

筆者註※インサイトは「人を動かす隠れた本音」

確かに、インサイトを見つけるのにある種のセンスや向き不向きがないと言えば嘘になりますし、センスの良い人はいるにはいます。ただ、センスの良い人と言っても、筆者の個人的な実感値としては、プロのマーケターでも数パーセントいるかどうかでしょう。

よく、プロ野球選手は、打率2割だと平凡以下の選手、打率3割を超えると名選手と言われます。プロのマーケターが優れたインサイトを発見できる確率もおおよそ、このレベルの確率です。その中でも、名選手であった長嶋茂雄監督は、「ボールがスッときたら、ガーンと打てばいい」というような非常に感覚的な言葉で指導をしていたと言われます。優れたインサイトを見つけられるかどうかは、そのようなセンスや感覚に非常に近いかもしれません。

■「型」を使えばだれにでもできる

ただ、バッティングにも、センスの有無にかかわらず、誰もがある程度打てるようになるための、基本的な型というものがあります。そして、インサイトの見つけ方においても、実は誰もが再現できる型があるのです。

本書では、インサイトを見つけるプロであり、業界内で実績を出すマーケターたちに詳細なインタビューを行なうことで、インサイトの見つけ方の「方法論」を作りあげました。このような「型」を使えば、センスの有無にかかわらず、誰もがインサイトを見つけられるようになります。それをこれから、みなさんにご紹介します。

さて、その「型」を作りあげるにあたり、マーケターなどのインサイト探索のプロたちに「インサイトをどのように見つけているか?」という質問をしたところ、次のような様々な回答をもらいました。

■プロに共通していた思考「5つのパターン」

○ 「なぜ? なぜ?」とひたすら自分の中で考える
○ 観察やクチコミから「小さなリアリティ」を見つける
○ 経験に基づいて、仮説を立てたり想像したりする
○ 内省したり、人と対話したりする
○ 自分自身の生活者実感。もしくは、他人にリアルで話を聞きまくる
○ 生活者を観察して、行動の矛盾や普遍的な欲求を見つける
○ フィールドワークとヒアリング
○ すべてを疑って、直観を働かせる
○ なるべく立場の違う人を選んで、3人以上にインタビューする
○ 常識をインプットした上で、自分の目で世界を捉え直す
○ 商品・サービスから離れて、人間の日々の思考や行動から考える
○ 当たり前を疑う目線を持つ
○ 課題をズラす。違和感を探す
○ 主観と客観を行ったり来たりの壁打ち
○ 問い→洞察→抽象化
○ 心の動きの観察。日常の違和感の観察

以上のプロたちの「インサイトの見つけ方」には、思考プロセスでの共通点が見られます。

共通するワードは、観察、疑い、違和感、内省、常識、当たり前、対話、経験、実感、直観、リアリティ、仮説、といった言葉たちです。これらをまとめると、図表1のような「5つの思考」のグループに分けられます。

【図表】インサイトを見つける「5つの思考」
出典=『センスのよい考えには、「型」がある』

■大事なのは「思考の順番」

またインタビューを経て、もう1つわかったことがあります。会議で見るような良いアイデアは、非常に鮮やかで、あたかも最初からそのカタチであったようにも見えますが、実はまったくそうではありません。

その理由は、良いアイデアは優れたインサイトに根ざしていることが多いからです。そして、そのインサイトは宝探しのように、いきなり偶然に土の中から発見されるようなものではなく(そのように感じることもありますが)、最初は誰もが見過ごしてしまうような、とても小さな卵のようなものを、少しずつインサイトへと育てていく、といった感覚の作業だからです。

端的に言えば、「気づき」から「インサイト」まで育てていくための、「思考の順番」があるのです。

それをまとめたのが次ページの「出世魚モデル」です。インサイトは、いきなりインサイトとして世に生まれ出るのではなく、いわゆる「出世魚(※1)」のように、段階を経て成長していきます。

※1 出世魚 稚魚から成魚までの成長に伴って、出世するように名前が変わる魚のことを指します。代表的な出世魚の例としては、ブリが挙げられます。成長段階によって「ハマチ(イナダ)」、「メジロ(ワラサ)」などと名前が変わります。

【図表】インサイトの「出世魚モデル」
出典=『センスのよい考えには、「型」がある』

■思考プロセス“5ステップ”

「出世魚モデル」とは、前項の思考プロセスを、次の5つのステップとして定型化して考えていくことで、誰もが持っているモヤモヤした気づきや違和感を「インサイト」へと育てていくことのできる型です。

具体的に言えば、次の5つの思考ステップを経て、「インサイト」が発見されるのです。

STEP1 日常の中の違和感に目を向ける

=直観や観察に基づいて、「気づき/違和感」を持つ(感性力)

STEP2 違和感を抱いたのはどんな常識か?

=日常の暮らしの中の「常識/定説」を改めて明確に把握する(常識把握力)

STEP3 常識の裏には、どんなホンネが隠れているのか?

=当たり前だと思われていることに「疑問/問い」を持つ(問題提起力)

STEP4 隠れたホンネを、自分の納得いく言葉にする

=自分の目で改めて世界を捉え直した「仮説/推論」を立てる(言語化力)

STEP5 自分の言葉を、みんなに信じてもらう

=客観的に誰もがわかるように「確認/検証」する(説得力)

つまり、次のような5つのステップになります。

①日常の中の違和感に目を向け、
②その違和感を抱いたのはどんな常識か? を明らかにし、
③その常識の裏には、どんなホンネが隠れているのか? を探り、
④そこに隠れていたホンネを、自分の納得いく言葉にして、
⑤その自分の言葉を、みんなに信じてもらう

ちょっと面倒にも感じられますが、①から③までは慣れてくるとすぐできるようになります。

ちょっとした“コツ”をおさえるだけ

それぞれ簡単に説明していきましょう。

STEP1 日常の中の違和感に目を向ける
=直観や観察に基づいて、「気づき/違和感」を持つ(感性力)
 自分が常日頃からモヤモヤと感じていた「気づき」や「違和感」を思い出します。
 ここで大事なのは、「探す」のではなく「思い出す」という感覚です。


STEP2 違和感を抱いたのはどんな常識か?
=日常の暮らしの中の「常識/定説」を改めて明確に把握する(常識把握力)
 「気づき」や「違和感」というものは、「これが当たり前だ!」という「常識」や「定説」、いわば「思い込み」に対して抱く「もしかして、ちょっと違うのでは?」という微かな感覚や感情のことです。STEP1で思い出した「気づき」や「違和感」は、一体どんな「常識」や「定説」に対して抱いたものなのか、その「常識」や「定説」を改めて把握して、明確にします。
STEP3 常識の裏には、どんなホンネが隠れているのか?
=当たり前だと思われていることに「疑問/問い」を持つ(問題提起力)
 STEP2で改めて明確にした「常識」や「定説」は、果たして本当にそうなのか?、と根本から「疑問」を持ってみたり、その常識の裏側に本当は何が隠れているのか?、と自分なりの「問い」を立てたりします。日頃から「疑う」クセをつけると、「隠れたホンネ」に気づきやすくなります。
STEP4 隠れたホンネを、自分の納得いく言葉にする
=自分の目で改めて世界を捉え直した「仮説/推論」を立てる(言語化力)
 STEP3で見つけた「隠れたホンネ」だと思えるものを、もっと、正確で精緻な言葉にして、自分なりの「仮説」や「推論」を立てます。生命線は、自分の感覚に「ピタッ」とハマるような心から腑に落ちる「言葉選び」です。
STEP5 自分の言葉を、みんなに信じてもらう
=客観的に誰もがわかるように「確認/検証」する(説得力)
 STEP4での、自分の「主観」だと言われても仕方ない「仮説/推論」を、みんなの「客観」に進化させ、誰もが納得できるものにします。 

普段見て考えている思考を「表」、いつもと違うことに視点を向けて考えていく思考法を「裏」とすると、次の図表3のようになります。

【図表】「出世魚モデル」と思考の裏表
出典=『センスのよい考えには、「型」がある』

インサイトのプロは、誰もが先ほどのような「共通の5つの思考プロセス」をたどっています。つまり、センスの良い人が「瞬間的にインサイトを見つけている」ように見えるのは、経験や鍛錬を重ねることで、この5つの思考プロセスを頭の中で瞬時に高速で行っている、ということなのです。

■「気づきや違和感が大切だ」では不十分なワケ

ここで、なぜこのモデルで「出世魚」という比喩を使ったか説明させてください。

インサイトを見つけるプロセスでは、今まで一般的に「気づきや違和感が大切だ」「常識を疑うことや、自分独自の問いを持つことが重要だ」「仮説を持って世の中を観察することが肝心だ」などといった似たような言葉で説明されることが多く、その違いが明確にはわかりにくいと感じることもあります。

もちろん、それらは一つも間違いではありません。ただ、これらの似たようで違う言葉や考え方がたくさん出てくることで、少し混乱することもあるかもしれません。

佐藤真木・阿佐見綾香『センスのよい考えには、「型」がある』(サンマーク出版)
佐藤真木・阿佐見綾香『センスのよい考えには、「型」がある』(サンマーク出版)

そこで、本書では、これらの数多くの言葉は「すべて、最終的には『インサイト』へと成長する思考プロセスの途中段階の名前である」というスタンスをとることにしました。つまり、インサイト探索の中で出てくる数多くの言葉は、まるで「出世魚」のように「同じ種類の生き物だが、成長段階によって単に名前が違うだけ」なのです。

あなたの「気づき」や「違和感」、「疑問」「問い」「仮説」などは、まるで「出世魚」のように、最終的に「インサイト」という成魚へと成長する途中段階の一時的な「名前」として出てくるものです。異なる名前に惑わされずに、安心してインサイトを見つける作業を進めてください。

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佐藤 真木(さとう・まき)
電通 シニア・マーケティング・ディレクター
慶應義塾大学経済学部卒業。2004年、電通に入社後、主にマーケティングやブランディング、戦略立案に従事。大手クライアントから官公庁、地方自治体、スタートアップまで、100社以上のキャンペーン設計、広報戦略、新商品開発、新規事業戦略、ビジネスデザイン、企業ブランディング、地域ブランディング、アート思考研修などの企画、実施、ディレクションを行う。共著に『場所のブランド論』(中央経済社)、『センスのよい考えには、「型」がある』(サンマーク出版)、教育講座の執筆協力に『想像力を武器にする「アート思考」入門』(PHP研究所)がある。

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阿佐見 綾香(あさみ・あやか)
電通 マーケティング・コンサルタント
埼玉県さいたま市浦和出身。早稲田大学卒業後、2009年、電通に入社。以来、マーケティング・コンサルタントとして、数多くの企業のマーケティング、経営戦略、事業・商品開発、リサーチ、企画プランニングに従事。担当した業種は化粧品・アパレル・家庭用品・食品・飲料・自動車・レジャー・家電など。大手企業だけでなく、ベンチャー・中小企業も担当するなど、幅広い業種・規模の企業を手掛ける。著書に、累計2万部越えのベストセラーとなった『電通現役戦略プランナーの ヒットをつくる「調べ方」の教科書 あなたの商品がもっと売れるマーケティングリサーチ術』(PHP研究所)、共著に、『センスのよい考えには、「型」がある』(サンマーク出版)がある。

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(電通 シニア・マーケティング・ディレクター 佐藤 真木、電通 マーケティング・コンサルタント 阿佐見 綾香)

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