「スーパーで」「母親を見かけて」「肩を叩いた」…そんな他愛のない話を一気に笑いに変換する"必殺の一言"
プレジデントオンライン / 2024年12月13日 15時15分
※本稿は、野口敏『どんな人とも楽しく会話が続く話し方のルール』(三笠書房)の一部を再編集したものです。
■人が笑う会話3つの要素
テレビではお笑いの人たちが大人気。その影響でしょうか、私の教室に通う生徒の多くが「最後は笑いがとれるくらいまで話し上手になりたい」と訴えます。
多くの人の憧れともいえる「笑い」も、コミュニケーションブリッジの話し方を使えば、割と簡単に手に入ります。
人はどんな会話で笑うのか。それには次のような要素があります。
①聞き手にありありと「映像」を描かせる話術
②その先の展開を聞き手に予想させる「間」
③悪い方向、あり得ない方向に予想を覆すオチ
この三つの流れを使って、聞き手に意図して先を想像させ、それを悪い方向に外すと、張りつめた緊張の糸が一気にはじけます。それが笑いとなって爆発します。
むずかしそうに見えますか。しかし例を見れば、一目瞭然です。
まずは簡単な会話例から入りましょう。あなたも聞き手になったつもりで、次の話を頭の中で映像にして、相づちを軽く打ちながら読んでみてください。
■予想を覆されると、人はついつい笑ってしまう
【話し手】桜の木の下でね
【聞き手】うん
【話し手】宴会している男の人たちがいたんだけど
【聞き手】うん
【話し手】まだ桜は咲いていないのにね
【聞き手】えっ! そうなの?
「まだ桜も咲いてないのに桜の木の下で宴会をしている人がいた」と、一気に言ってしまわないのがコツ。
話しはじめは一コマ一コマ、映像を部分ごとに伝える感覚で話します。
はじめに「桜の木」を聞き手に思い浮かべてもらい、次に「宴会をしている人たち」を思い浮かべてもらうのです。
こうすることで聞き手は、聞いていないことも推測して映像を思い浮かべはじめます。おそらく、桜の花がちらほら咲きはじめているような光景を思い浮かべるでしょう。
しかし、読み返してもらえばわかりますが、話し手は「桜が咲いている」とは一言もいっていません。しかし聞き手は常識としてそんな光景を思い浮かべてしまう。そこがポイントです。
あえてそのように予測させておいて、最後の一言です。
「まだ桜は咲いていないのにね」
聞き手が思い描く映像は一瞬で、「まだ開花していない桜の木の下で宴会をする男たち」に切り替わるでしょう。
「意味あるの?」という気持ちが湧き上がり、それが笑いに変わるのです。
このように、ちょっとした伝え方の妙で笑いは起こせるのです。
■映像を一つずつ足していく意識で話す
もう一つ、少し長めのお話をしてみましょう。先ほどと同じように話を頭の中で映像にして、相づちを打ちながら読んでみてください。
【話し手】スーパーでね
【聞き手】うん
【話し手】母親を見かけてさ
【聞き手】へえ
【話し手】後ろから近寄って、肩を叩いたら
【聞き手】うん
【話し手】その人が振り返ったんだけど
【聞き手】うん
【話し手】知らないおじさんだったんだ
【聞き手】ええっ!
【話し手】パンチパーマの
【聞き手】おじさん⁉
【話し手】うちの母親、男みたいなんだよね
【聞き手】そうなの⁉
【話し手】口の周りにヒゲも生えているし
【聞き手】わはは
こちらも話しはじめは映像を一コマ一コマ思い浮かばせるために、「スーパーで」「母親を見かけて」「肩を叩いた」と、言葉を短く伝えています。
映像を一つずつ足していく、というふうに意識すると、どこで言葉を区切るといいかもわかってくるでしょう。
■予想が次々と裏切られる面白さ
映像の種を与えられた聞き手は、スーパーの店内を歩く中年ぐらいのご婦人の後ろ姿を想像し、頭の中でポンッとその肩を叩いたことでしょう。相づちでそれを確認したうえで、会話をさらに進めましょう。
「その人が振り返ったんだけど」
この話の展開なら、誰もが「きっと人違いだな。振り返った人が知らないおばさんで、ばつが悪かったという話かな?」というストーリーを予想します。
そこで聞き手は、知らないおばさんがこちらを振り向く映像を描きつつ、話の続きを待っています。
そこへやってくるのは、まったく予想していない展開です。
「知らないおじさんだったんだ」
え、「おじさん」? 聞き手は慌てて、映像の中のおばさんをおじさんに切り替えます。そのチグハグさがおかしくて、笑いになるのです。
さらに追い打ちをかけるのが、「パンチパーマ」「うちの母親、男みたい」「口の周りにヒゲ」という言葉。
聞き手がそれまで思い描いていた「話し手の母親」に似つかわしい常識的なおばさん像は、どんどん覆されていきます。
いかにも「おじさん」というパーツが一つずつ浮かび、次々と映像が差し替えられていくわけです。
ちなみに、「口の周りにヒゲも生えているし」で狙い通りの笑いがとれたら、そのあとは言葉を区切らなくても大丈夫。あくまで笑いをとりたい大事なところだけ、コミュニケーションブリッジの話し方を使えばいいのです。
■笑いのセンスを高めるお笑い番組の見方
これまで笑いとは無縁だった人にとって、はじめから笑いをとりにいくような話術はむずかしいものです。
しかし、言葉を短く区切って、間をとり、聞き手の相づちを待って次の言葉を伝えるというコミュニケーションブリッジの話し方なら、できるのではないでしょうか。
言葉の区切り方、間のとり方などから練習をはじめてみましょう。そのうち、思ってもいないところで笑いがとれるようになることでしょう。
この話し方に慣れていない人は違和感を持つかもしれません。しかし本当に話がうまい人は、言葉を短く区切って、間をとり、相手をよく見て相づちを待ち、ゆっくり話を前に進めます。
テレビで人気のお笑い芸人を観察すれば、実はこのテクニックを用いていることがわかるはずです。それを意識しつつお笑い番組を見れば、笑いのセンスも高まるでしょう。
笑いはまさに想像力からの贈り物。一つのイメージを相手に想像させ、それをオチで覆す。予想が覆ることで笑いが起こり、その驚きがまた脳に新鮮さを感じさせるのです。これは大きなリラックス効果をもたらします。
さらにお互いが同じ映像の中で遊び、一緒に笑うと、映像と気持ちを共有することになります。この二つの共有から、大きな親しみが生まれます。
だから面白い人は、一緒にいて居心地がいいのでしょう。
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グッドコミュニケーション代表取締役
TALK&トーク話し方教室主宰。著書に、90万部超のベストセラー『誰とでも15分以上会話がとぎれない!話し方』シリーズほか、『誰とでもスッとうちとけて話せる!雑談ルール50』など。
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(グッドコミュニケーション代表取締役 野口 敏)
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