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<遺伝子疾患治療にさらなる期待>デュシェンヌ型筋ジストロフィーの最新治療/核酸医薬の可能性について

PR TIMES / 2020年7月6日 10時40分

~アンチセンス核酸医薬品“ビルトラルセン” ~


 日本新薬株式会社(本社:京都市/代表取締役社長:前川重信)は、 2020年3月25日に厚生労働省より製造販売承認された、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(以下、DMD)の新治療薬『ビルトラルセン』のプレスセミナーを、 2020年6月30日(火)13:00よりZOOMにて開催いたしました。

 『ビルトラルセン』は、国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター(以下、NCNP)と日本新薬との共同研究を通して創製された核酸医薬品です。エクソン・スキッピングという作用機序をもつ、国内ではこれまでになかった治療薬で、エクソン53スキッピングに応答するDMD患者さんに対して治療効果が期待できます。

 本セミナーでは、NCNPトランスレーショナル・メディカルセンター長 小牧 宏文 先生とNCNP 神経研究所遺伝子疾患治療研究部長 青木 吉嗣 先生をお招きし、「DMDの診断と治療の最前線」や「ビルトラルセンの作用機序ならびに開発経緯」などについてお話いただきました。 「ビルトラルセンの開発経緯」については、日本新薬創薬研究所長の高垣 和史からもお話しました。



[画像1: https://prtimes.jp/i/61240/1/resize/d61240-1-946384-5.jpg ]




実 施 概 要

【日     時】
2020年6月30日(火)13:00~14:30

【登  壇  者】
NCNP トランスレーショナル・メディカルセンター長 小牧 宏文 先生
NCNP 神経研究所遺伝子疾患治療研究部長 青木 吉嗣 先生
日本新薬 創薬研究所長 高垣 和史
日本新薬 広報部長   巻田 吉彦 (司会)

【内     容】
・エクソン・スキップ薬の作用メカニズム
・ビルトラルセンの開発経緯ならびに製品概要
・デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の診断と治療の最前線


講演内容(要約)

【 デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の診断と治療の最前線 】

[画像2: https://prtimes.jp/i/61240/1/resize/d61240-1-429998-4.jpg ]

国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター
トランスレーショナル・メディカルセンター長
小牧 宏文(こまき ひろふみ)先生 医学博士

小牧先生には、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の診断と治療の最前線について、筋ジストロフィーの歴史を踏まえて解説いただきました。

「筋ジストロフィーは非常に長い歴史があります。難病政策が始まった1972年より前の1960年代に、現在の国立病院機構である国立療養所に筋ジストロフィー病棟が全国27カ所に作られたのがスタートと言っても良いのではないでしょうか。国立療養所の筋ジストロフィー病棟は、医療や教育を受けられなくなった子供たちのための施設として機能し、入院中の療養医療費は国が負担する特別な制度がありました。小学1年生から入所する時代もあったようです。

昔と今を比較すると、昔はDMD患者の寿命は20歳を超えられないことが多かったのに対し、今は30歳を優に超える状態になりました。主な死因についても、昔は呼吸不全だったのに対し現在は心不全に変化。これは明らかに医学の進歩によるものと考えております。筋ジストロフィーは多くの臓器を障害する全身性疾患です。多面的なアプローチができる治療法を提供できるようになったことが、DMD患者の平均寿命が劇的に改善した理由と考えています。診療体制は、患者家族を中心として多職種と連携してチームを組む包括的診療体制をとっています。

重要視している“キーワード”は2つ。『プロアクティブケア(先回りの医療)』と『シェアリング』です。

『プロアクティブケア(先回りの医療)』が重要な理由は、神経系の希少疾病は進行がゆっくりである場合が多いためです。様々な背景を持つ人が連携し、できることを積み重ねていくことが長い目でみた際に大きな力となります。ここで重要になるのは、疾患の経過(自然歴)に関する情報。自然歴を踏まえ定期検査、ケアを積み重ねていく姿勢が大切です。

『シェアリング』が重要な理由は、人一人では筋ジストロフィーは解決できないことから様々な人と力を合わせることが必要なためです。労力・データ・成果、この3つのシェアリングが非常に重要と考えています。

現時点で筋ジストロフィーに進行を止める方法はなく、厳しい病気である現実に変わりはありません。本人や家族だけでなく、多くの人が関わり労力を分散すること。そして、多部門・多職種が連携することが重要です。繰り返しになりますが、できることを少しずつ積み重ねていくことが必要です。 個々のDMD患者さんから得られる臨床データを集積していくことも大きな力となり得ます。それぞれの病院だけで完結せず、情報をきちんと管理する仕組みを設け、個々の患者さんの意思が尊重されたうえで、データをシェアしていくことが今後、より重要になってきます。 様々な背景を持つ人が筋ジストロフィーなどの希少疾病の治療研究に関わり、その結果を皆で分かち合える仕組みができると良いと思います。

最後に、今進めている仕組みについて紹介いたします。従来の市販後調査では各会社が独自に行っておりました。これには一定の信頼性がありますが、これで有効性を見ることは難しいと考えています。臨床開発が進んできた中で、各会社がそれぞれ別に市販後調査を行うことは効率性という意味でも得策ではありません。そういった背景があり、今後はNCNPがデータを保有し一本のデータベースとして長期で活用できるシステムを立案し、現在ほとんどの準備が整いました。ビルトラルセン以外の新医薬品が承認された際でも、このデータベースで評価することで長期安全性・有効性の評価ができると考えております。」


【 エクソン・スキップ薬の作用メカニズム・ビルトラルセンの開発経緯について 】

[画像3: https://prtimes.jp/i/61240/1/resize/d61240-1-218796-3.jpg ]

国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター 神経研究所遺伝子疾患治療研究部 部長
青木 吉嗣(あおき よしつぐ)先生 医学博士

青木先生からは、エクソンスキップ薬の作用メカニズム・ビルトラルセンの開発経緯について、13年以上にわたって取り組んでいる核酸医薬の研究経過を踏まえて解説いただきました。

「DMDは、1/3500人程度の割合で男児が主に発症する疾患です。これまでに確立された治療法はステロイド剤しかありませんでした。今までアプローチをすることができなかった対象であるホットスポット(エクソン44 - 55)に作用するエクソン・スキップ薬を開発することができれば、DMD患者さんのうち非常に多い割合の方に対して治療をすることができるようになります。そうした理由からホットスポット(エクソン44 -55)にアプローチできる治療法の開発は、日本を含め世界中で行われてきました。

エクソン53に作用する『ビルトラルセン』の開発は2012年から開始しました。私達が治療薬を考える上で最も大切にしていることは、運動機能が回復するかどうか。研究では、患者の運動機能を改善させることができるという仮説のもと治療を安全に行えることを証明してまいりました。

今後は、エクソン・スキップ薬をより多くの患者さんに適用できるようにしていきたいと考えています。エクソン・スキップの作用範囲が拡大したマルチエクソン・スキップは、DMD患者全体の50%に対して治療ができる非常に“夢のある治療”です。

核酸医薬であるビルトラルセンの最大の特徴は安全性が確認されている点にあると考えています。新しい治療法である、ゲノム編集や遺子治療は安全性に関して検討する課題が多く残っています。将来的にゲノム編集や遺伝子治療が応用される場合も核酸医薬品の長所は残ると考えており、複数の治療法を組み合わせることが主流になる時代がくるのではないでしょうか。」


【 ビルトラルセン開発経緯ならびに製品概要について 】

[画像4: https://prtimes.jp/i/61240/1/resize/d61240-1-930392-2.jpg ]

日本新薬株式会社 研究開発本部 創薬研究所長
高垣 和史(たかがき かずちか) 薬学博士

高垣からは『ビルトラルセン』の開発経緯ならびに製品概要について、核酸医薬の可能性を踏まえて解説いたしました。

「日本新薬は、2000年から核酸医薬の研究を開始いたしました。核酸医薬品は、標的遺伝子への正確なターゲティングができることから高い選択性を持ちます。蛋白ではなく遺伝情報を担う核酸へ作用し、これまでの医薬品ではアプローチできなかった標的に作用することが可能です。さらに、開発コストの軽減・新薬開発の効率を向上させることができるのも特徴の一つです。現在行っている開発では、他のエクソンを標的とする薬の開発を進めています。この開発が成功すれば、DMD患者の41%の方を治療することができます。核酸医薬品は、従来アプローチできなかった部分に作用させることが可能なことから、遺伝性疾患へのアプローチとして非常に有力と考えています。『ビルトラルセン』にみられる治療効果をより多くの患者さんに広げるべく、これまで治療法がなかった他の疾患についても開発を進めてまいります。」



デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)/新治療薬『ビルトラルセン』について

DMDは、筋細胞の骨格を支えるジストロフィンというタンパク質の欠損により、筋繊維の変性・壊死を主な病変とする進行性の筋疾患です。筋ジストロフィーにはさまざまな病型がありますが、DMDはそのなかでもいちばん患者数が多く、体の中心に近いところから筋力低下の症状が現れる疾患です。主に男児に発症し、患者さんの数は国内では約5000人と推定されており、その約3分の2は遺伝性で、3分の1が突然変異とされています。

これまでは対症療法として、ステロイド剤の使用以外に確立された治療法はありませんでした。こうした状況のなか、原因遺伝子に着目した『ビルトラルセン』は、DMD患者の筋細胞内にジストロフィンタンパク質を産生させ筋力低下に対して効果が期待できる新しい治療剤です。DMDに関わる医療従事者の方々からは、「疾患の原因に迫る薬剤。これまで治療方法がなかったDMDの治療に突破口を開いた」などの言葉を頂いています。



開発者の思い

DMDの患者さんは、3~5歳頃から運動機能が低下するため、本来であれば「できること」が増えるはずの小学生時代に、「できること」が減っていきます。多くの患者さんが成人になる前には生活に介護が必要となり、人口呼吸器を付けて生活を送るようになる重篤な疾患です。

「ビルトラルセン」は、2009年から開始したNCNPと当社との共同研究により創製された核酸医薬です。「ビルトラルセン」の開発は決して順調に進んだわけではなく、多くの課題がありました。人と動物の遺伝子が異なること、患者数が著しく少ないこと、新しい創薬手段(モダリティ)である核酸医薬を日本で先行して開発することなどです。これらの課題をNCNPの先生方と当社の研究開発スタッフが一つひとつ克服し、新しい道を切り拓くことは、決して容易なことではありませんでした。「ビルトラルセン」の開発に関わった全員の「何としても、この治療薬を患者さんのもとへ届けたい」という強い思いが、最後までやり遂げられた原動力になったと思っています。

「ビルトラルセン」の開発を通じて、「理念をもって方法を探し続ければ必ず道は開ける」ことを学びました。多くの関係者の熱意、葛藤、苦労、努力により、「ビルトラルセン」は新薬として世に出て、DMDの患者さんへの福音となる薬剤として、たくさんの方々の笑顔につながってくれれば本当にうれしく思います。



日本新薬の思い


[画像5: https://prtimes.jp/i/61240/1/resize/d61240-1-347875-0.jpg ]

<日本新薬 東部創薬研究所>

1919年の会社創立以来、日本新薬は「日本人の飲む薬は日本人の手で創りたい」という創業者の決意を受け継ぎ、新たな薬の研究開発に挑み続けてきました。なかでも力を入れているのが、有効な治療法が確立していない疾患の治療薬開発です。

核酸医薬は、疾患の原因遺伝子に直接作用する、次世代型の医薬品として20年以上前から研究をスタートしていました。国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター(NCNP)との共同研究によって、エクソン・スキッピングという核酸医薬ならではの作用メカニズムでデュシェンヌ型筋ジストロフィーの治療薬を創製しました。私たちは常に、医療現場や患者さんの声に耳を傾け治療薬がなくて困っている患者さんやご家族の願いをしっかり受け止め、新たな薬の研究開発に積極的に取り組んでいます。もちろん、それは患者さんの数が少ない希少疾患も例外ではありません。

私たちがやるべきことは、ただひとつ。高品質で特長ある医薬品を創製することです。患者さんやご家族はもちろん、すべての人たちの未来に希望の光を届けたい。その一点を目指して、私たちはこれからも誠意をもってチャレンジし続けます。

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