溶連菌の感染症が増加中!抗菌薬は適切な使用方法を守って

PR TIMES / 2019年6月11日 19時40分

―抗菌薬を正しく服用しないと、本当に必要な時に効果がでない可能性が―

例年5月半ばから6月にかけて流行する 溶連菌*1による咽頭炎。国立感染症研究所の調べによると、今年は特に感染者が増加し、2~3月の溶連菌感染症の患者数は、ここ10年で3番目に多いとしています。*2 子どもの病気として知られる溶連菌ですが、 実は大人にも感染し、典型的な症状が出ることもあります。家族で溶連菌に感染し、初夏のレジャーが台無し…そんな事態にならないように、予防対策と注意事項を国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院、AMR臨床リファレンスセンターの日馬由貴先生に伺いました。



今年は溶連菌が流行っています
細菌やウイルスによる感染症は、不定期に流行がやってきます。どうやら今年は、溶連菌が流行る年にあたっているようです。

「溶連菌」と一般的にいわれる病原菌の正式名称は「A群溶血性連鎖球菌」。溶連菌による病気の中では咽頭炎の頻度が最も高く、咽頭炎の典型的な症状は、のどの痛みと熱です。風邪との違いは、咳や鼻水の症状があまり見られないことで、日馬先生によると、お腹が痛い、気持ちが悪い、頭が痛いなどの症状がいっしょに出ることがあるそうです。しかし、3歳未満のお子さんでは、そのような典型的な症状を示さず、鼻水や鼻づまりが目立つこともあります。

潜伏期間は2~5日で、医療機関の検査で溶連菌と分かれば、10日間の抗菌薬(抗生物質)を服用して治療を行います。

怖いのは、合併症です。発症件数は少ないですが、関節や心臓の弁膜に障害を起こすリウマチ熱、腎臓の機能に障害が起こる急性糸球体腎炎につながることがあります。溶連菌の感染症には、菌そのものが暴れることにより生じる症状と、菌への免疫反応による症状があります。咽頭炎は前者で、リウマチ熱や糸球体腎炎は後者になります。

特に、リウマチ熱は生涯にわたって後遺症を残す可能性もある病気なので、軽く考えずに溶連菌について正しい情報を知ることが大切です。

また、溶連菌によっては筋膜に壊死を起こしたり、毒素性のショック症状を起こして多臓器に障害を与えたりするなど、命にかかわる病気を起こすタイプもあるそうです(劇症型溶連菌感染症と呼ばれています)。子どもがいる家庭では日常的に耳にする細菌ですが、恐ろしい側面もあるようです。
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予防で重要なことは手洗い
溶連菌の感染経路は、風邪やインフルエンザと同じように飛沫感染になります。咳や鼻水が出ないのにどうして? と思われるかもしれませんが、溶連菌はのどのあたりに棲みつく傾向があり、しゃべったり、くしゃみのしぶきに混じったりして飛散します。飛散した菌が手を介してドアノブやおもちゃなどに付着し、それをほかの誰かが触ることで、次の人へと感染していきます。人が集まる場所で感染が起こりやすいため、GWなど長期の休みの間は、感染件数が減少傾向にあります。

予防法は、なんといっても手洗いです。免疫力を高める予防法はさまざまなものがいわれていますが、有効性が証明されているものはありません。外から帰ってきた時や、ごはんを食べる前は、必ずしっかりと手洗いをしましょう。

自己判断は禁物。「のどが痛い」は溶連菌とは限らない
注意したいのは自己判断。「のどが痛い」と子どもが訴えた時に、溶連菌が流行っているからといって、すぐに溶連菌と判断しないようにしましょう。以前、溶連菌にかかった時に処方された薬や、他の子どもに処方された溶連菌の薬が自宅に残っていても、自己判断で与えるのはやめてほしいと日馬先生は注意を促します。

溶連菌を疑ったら、まずは医療機関にかかり検査の必要性の有無を仰ぎましょう。誰でも検査を行えばよいわけではなく、3歳未満なら合併症の心配が少ないため、検査を行わないこともあるようです。

また、悪さをしない溶連菌がのどに潜んでいる子どもが、5人に1人くらいはいるそうです。このような場合、ウイルス性の風邪が原因でのどの痛みが起こっているにもかかわらず、検査をすると溶連菌の反応が出てしまいます。このときには抗菌薬を使う必要はなく、医師の判断に従うことが大切です。

医師の指示に従い、処方された抗菌薬はすべて飲み切る
溶連菌の治療には、主にペニシリン系の抗菌薬を用います。治療のゴールは症状を抑えることだけでなく、合併症の発症を防ぐことです。10日間の抗菌薬(抗生物質)は長いと思われるかもしれません。しかし、 合併症を防ぐためには、途中でやめずに指示された期間、飲み切ることが重要です。ペニシリン系の抗菌薬は広く使われているため、家庭に残っているものがあるかもしれませんが、自己判断で使用しないようにと日馬先生は念を押します。抗菌薬はそれを飲む人に合わせて処方されており、自己判断で飲むと思わぬ副作用の原因となることがあります。もしも、残ってしまった抗菌薬があれば、薬局や医療機関にもっていって処分してもらいましょう。

抗菌薬は、ターゲットの菌だけでなく体にとって良い菌も殺してしまいます。抗菌薬による下痢の症状が多いのは腸内の細菌も殺してしまうためと言われています。日馬先生によると、少し便が緩くなっても、他に症状がなく、便をする回数が増えていなければ、大きな心配はないそうです。慌てて自己判断で内服をやめたりせず、困ったときは医師に相談することが大切です。また、医師に抗菌薬は必要ありません、といわれたら「念のため」などと要求せずに指示に従いましょう。

抗菌薬の過剰な使用、間違った使用によって、薬が効かない薬剤耐性菌が生まれることがわかっています。薬剤耐性という言葉はなじみが薄いかもしれませんが、現在、世界で問題とされています。*3

薬剤耐性菌が広がれば、薬が効かず命を失う日が来てしまうかもしれません。 他人ごとではなく、自分や大切な家族に降りかかるかもしれないのです。感染症を学ぶことをきっかけに、薬剤耐性菌も頭に入れておきたい重要事項です。

*1 http://idsc.tokyo-eiken.go.jp/diseases/group-a/
*2 https://www.niid.go.jp/niid/ja/10/2096-weeklygraph/1646-03strepta.html
https://www.niid.go.jp/niid/ja/data.html
*3 Antimicrobial Resistance: Tackling a crisis for health and wealth of nations, the O’neill Commission, UK, December 2014


忍び寄るAMRの問題
国連が「2050年にはAMRで年1000万人が死亡する事態」と警告

■AMRとは?
AMR (Antimicrobial Resistance)とは薬剤耐性のことです。細菌などの微生物が増えるのを抑えたり壊したりする薬が抗菌薬(抗生物質)ですが、微生物はさまざまな手段を使って薬から逃げ延びようとします。その結果、薬が微生物に対して効かなくなることを「薬剤耐性」といいます。抗菌薬の使用に伴って、抗菌薬の効きにくい薬剤耐性菌が生じることがあり、それらの菌が体内で増殖し、人や動物、 環境を通じて世間に広がります。抗菌薬は効果が高い薬ですが、正しく適切に使用することが大切なのです。

■AMRは世界が抱える大きな問題
国連は、このままでは2050年までにはAMRによって年に1000万人が死亡する事態となり、がんによる死亡者数を超え、08~09年の金融危機に匹敵する破壊的ダメージを受けるおそれがあると警告しました。*

AMRが拡大した原因の1つとして、抗菌薬の不適切な使用があげられます。 本来は治療可能な病気のはずなのに、薬が効かないために人が亡くなっていくのは本当に辛いことです。そうならないために、 ひとりひとりのAMR対策が必要とされています。また、人の健康をだけでなく動物や環境にも目を配って取り組もうという考え方 (ワンヘルス)に基づき、畜産、 水産、 農業などでの抗菌薬の使用も見直されています。

AMR臨床リファレンスセンターは、 厚生労働省の委託事業として、 抗菌薬の適切な使用を医師へ呼びかけるとともに、一般にも抗菌薬との付き合い方を広める取り組みを行っています。

■AMR対策で私たちにできること
私たちにできることは、 抗菌薬の正しい使用と病気の感染を予防することです。風邪やインフルエンザなどウイルス性の疾患には、抗菌薬は効きません。医療機関にかかって薬を出されないと不安になるかもしれませんが、医師が薬はいらないと判断したら、それに従うことがAMR対策になります。そして、抗菌薬を処方されたら、医師の指示に従い飲み切ることが重要です。

抗菌薬の正しい使用とともに、細菌性の病気に感染しないこと、感染させないことが抗菌薬の使用を減らし、 AMR対策になります。

AMR対策
1.感染しない
外から帰ったとき、食事前に しっかり手洗いをするなど、感染しないための予防をしましょう。
また、必要なワクチンを適切な時期にしっかりと打ちましょう。

2.感染させない
子どもが感染症にかかったら治るまで保育園、幼稚園、学校などを休ませましょう。大人がかかった場合にも、無理して職場に出勤すると感染を広げるきっかけになりますので注意しましょう。

3.医療機関にかかり、医師の指示に従う
抗菌薬が必要かな?と思ったら、自己判断で薬を服用せず、医療機関にかかり医師の指示に従いましょう。

AMR対策は未来のことではなく、今の自分にふりかかる身近な問題として、毎日の生活の中で考えていきたいものです。

https://news.un.org/en/story/2019/04/1037471
No Time to Wait: Securing the future from drug-resistant infections
Report to the Secretary-General of the United Nations April 2019

お話しを伺った先生

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日馬 由貴 先生(くさま よしき)

国立国際医療研究センター病院・国際感染症センター/AMR臨床リファレンスセンター
薬剤疫学室室長
【略歴】
2008年 東京慈恵会医科大学 小児科学講座
2013年 富士市立中央病院 小児科
2017年より現職
【専門】
小児科、感染症、感染対策
【資格】
小児科専門医 インフェクションコントロールドクター

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