グローバルビジネス学会の「国際経済連携協定研究会」が「TPP交渉に関する緊急提言」を発表
PR TIMES / 2013年12月3日 19時29分
世界経済の発展に寄与する人材の育成を目的とする学術団体グローバルビジネス学会の常設研究会である「国際経済連携協定研究会」(別称:TPP研究会、座長:近藤剛 伊藤忠商事理事)は「TPP交渉に関する緊急提言」を発表しました。
12月7日よりシンガポールで開催される環太平洋連携協定(TPP)交渉を進める12カ国の閣僚会合を控え、今後の日本の方向性を決める重要な局面に差し掛かっていることを鑑み、「国際経済連携協定研究会」での議論を踏まえ「TPP交渉に関する緊急提言」(次ページ)を発表することに至りました。当研究会では、これをもとに政府、関係省庁に働きかけを行ってまいります。
なお今回の緊急提言は4つの項目にまとめられていますが、第1項と4項については、TPPに対する日本の取り組み姿勢について。第2項は、自らの市場の大胆な開放と、グローバル規模での競争力強化のためのマーケティング、情報発信の必要性、そして消費者目線に立った負担軽減や構造改革推進の必要性。とりわけこれからの成長産業として期待が大きい農業分野の構造改革への早急な取り組みについて示されています。また第3項では、最大のステークホルダーである国民に対する説明責任を果たすべきとし、不正確な情報やうわさに基づく不安や誤解が国民の中にあってはならないとし、守秘義務の制約があるにせよ、国民のコンセンサス作りのための必要な検討材料の提供に対する工夫と努力を求めています。
「国際経済連携協定研究会」は、今後、京都大学で来春開催されるグローバルビジネス学会の第2回全国大会での学術発表、そしてTPPに関して同研究会の研究成果をまとめた新書の出版(来年5月予定)を予定しており、今後も引き続き各方面への働きかけを続けてまいります。
*このリリースは、外務省、経産省、農林水産省の各記者クラブに配布しております。
■グローバルビジネス学会(Society of Global Business)の概要
グローバルビジネス学会(理事長・小林潔司 京都大学経営管理大学院教授、会長・大竹美喜アメリカンファミリー生命保険会社創業者兼最高顧問)は、グローバルビジネスに関する研究発表、知見や知識の交換、会員相互および内外の関連学会と連携強化を図ることにより、国内経済の活性化はもとより、世界経済の発展に寄与する人材育成を目的に学術団体として 2012年4月に設立し、活動を行っています。詳しくはホームページ(http://s-gb.net)をご覧ください。
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2013年12月3日
TPP交渉に関する緊急提言
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グローバルビジネス学会「国際経済連携協定研究会」
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2013年10月8日のTPP首脳会合では当初目指していた大筋合意は達成できなかった。しかし、当日発出された首脳声明と閣僚報告にはいくつかの重要な合意が盛り込まれている。われわれはそれらの合意を歓迎し、以下諸点をこれからの交渉に当たって十分に留意されるよう日本政府に要望する。
(1) 上記首脳声明は、交渉の年内妥結を目標としつつ、各国の「発展水準の多様性」を考慮する旨をこれからの交渉指針として打ち出している。これは日米など域内先進国が主としてアジアの途上国に配慮し、一定のセンシティブな分野や品目につき譲歩すべきことを示唆したものである。交渉を加速するためには必要かつ望ましい指針である。
しかし、この指針が国有・国営企業や知的財産分野など途上国にとり必須の国内改革を必要以上に遅らせる根拠や、先進国側の市場開放を先送りするための取引材料として利用されるなど、安易な妥協を誘引する根拠になってはならない。TPPの目的はいずれの国にあっても、国内の既得権益など保護主義勢力を抑え、高いレベルでの市場開放を実現し、共に効率的で強い経済社会を構築することにある。わが国としては、途上国の実情に配慮しつつも、あくまでも規律ある交渉を心がけるべきである。
(2) 他方、わが国としてはTPPをてこに自らの市場を大胆に開放し、競争力を強めるためのマーケティングや情報発信をグローバル・レベルで積極的に行い、消費者の負担軽減を目指すとともに、自らの構造改革をさらに推進させねばならない。特に国民生活に最も関係が深く、これからの成長産業としての期待が大きい農業分野の改革には不退転の決意で取り組むことを求めたい。
(3) 首脳声明は、また、各国における「ステークホルダーとの連携」の重要性を、閣僚報告は「ステークホルダーに対する透明性確保」の重要性を指摘している。これはいずれの交渉参加国にあっても、関連業界との対話はむろん、最大のステークホルダーである国民に対する説明責任を果たすべきことを確認したものに他ならない。不正確な情報やうわさに基づく不安や誤解が国民の中にあってはならない。わが国にあっても、守秘義務の制約があるにせよ、必要な検討材料の提供につき、さらなる工夫と努力を求めたい。
なお、情報開示に際しては、TPP交渉が食の安全などの分野を含め既存のWTO協定のルールに基づいて行われている事実や、わが国がこれまで取り組んできた一連の経済連携協定(EPA)などとの関連、TPPで得られる経済効果など、国民がよりよくTPPにつき理解できるよう、具体的に説明すべきである。
(4) 閣僚報告では、域内の生産・サプライチェーンと域内貿易の促進のため、「単一の関税譲許表」と「共通の原産地ルール」の作成に合意した旨が明らかにされている。国別に交渉・合意された関税率が域内で共通化され、累積ルールを含む原産地規則の一本化がなされれば、域内市場の一体化が大きく前進する。真に実効性のある形でこれらが具体化されるよう、強くこれからの交渉に臨んでいただきたい。
以上
■この提言策定に携わった主要メンバー
座長:
近藤剛(伊藤忠商事理事、元道路公団総裁)
副座長:
ローレンス・グリーンウッド(在日米国商工会議所・日米リージョナルリーダーシップ委員会・共同議長、元米国APEC大使)
副座長:
渡邊頼純(慶応義塾大学教授)
主査:
中野憲一(弁護士;アンダーソン・毛利・友常法律事務所)
幹事:
井之上喬(京都大学経営管理大学院特命教授、井之上パブリックリレーションズ社長)
浅川芳裕(株式会社農業技術通信社顧問)
顧問
林康夫(JETRO顧問、元同理事長)
白井克彦(放送大学学園理事長、前早稲田大学総長)
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