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オープンな量子ソフトウェア・エコシステムの構築に向けたIBMのロードマップ

PR TIMES / 2021年2月8日 18時15分



量子コンピューティング (https://www.ibm.com/quantum-computing/) は、パラダイムシフトの火付け役になろうとしています。自然の物理法則に根ざしたこの新興技術に依存するソフトウェアは、まもなくコンピューティングに革命をもたらす可能性があります。しかし、従来型コンピューティングでは、個別にプログラムされたロジックゲートから今日の高度なクラウドベースのサービスに至るまでに、数十年を要したことには留意する必要があります。そして、従来型コンピューティングにおけるこのような飛躍を、量子コンピューティングではわずか数年で成し遂げることを期待しています。私たちはそこに到達できると考えていますが、この飛躍は当社のみではなしえません。

2020年9月、私たちは1,000量子ビットを超える量子プロセッサーの構築に向けた明確な指針となるハードウェアに関するロードマップ (https://www.ibm.com/blogs/think/jp-ja/ibm-quantum-roadmap/) を発表し、今後予想される課題を明確にし、それらに対する解決策を提案するという、大きな一歩を実現しました。科学者として、このような透明なロードマップを公表することは簡単な決断ではありません。なぜなら、科学者は、計画よりも成果を重要視するからです。しかし、10年以内に、量子コンピューティングが広範な分散型コンピューティング・エコシステムを変革していくための条件を明確にすることは、大変重要な取り組みです。加えて、過去50年の従来型コンピューティングの進化から得られる教訓を取り入れることで、量子システムと従来型システムの統合はさらに加速されるはずです。私たちはオープンソース・コミュニティを構成する世界中の開発者とともに、クラウドネイティブの量子ワークロードを導入することで、障壁となりうるものを取り除き、この新しい技術へのオープンなアクセスを迅速に提供できるようにしていきます。

私たちは、ソフトウェア開発が協調的に行われるのが最善であることを知っています。なぜなら、オープンソースのアプローチは、さまざまな人間のニーズのエコシステムがベストな成果をもたらすという理解に基づいており、量子コンピューティングもその例外ではないからです。私たちは、開発者 (https://www.ibm.com/quantum-computing/developers/) には3つの主要な階層があり、それぞれ自分よりスタックの上位で作業する人たちのための土台を築いてくれることを期待しています。


ハードウェアに一番近いレベルでは、量子カーネルの開発者たちは、タイミングとパルスレベルの制御により高性能量子回路を開発しています。
量子アルゴリズムの開発者は、これらの回路を利用して、現在の従来型コンピューティングによるソリューションよりも優位性のある画期的な量子アルゴリズムを開発しています。
最後に、量子モデルの開発者は、これらのアルゴリズムを実際のユースケースに適用し、化学、物理学、生物学、機械学習、最適化、金融向けの量子モデルを開発しています。


Cambridge Quantum Computing (以下「CQC」) のCEO 兼 創業者であるIlyas Khan氏は、「IBMとCQCは、今後10年間の量子コンピューティングの成長を促進するというミッションのもと、量子機能の面やハイブリッドや量子クラウド・エコシステム全体に対する共同投資の面でも連携しています。CQCは、ハッキング不可能なサイバーセキュリティ・キーをシードするための検証可能な量子エントロピーの生成など、IBM Quantumのプラットフォーム上で革新的なソフトウェアを作成するだけに留まるのではなく、展開までを行い、さらには、QiskitとQASMの発展に協力し、標準ベースの量子コミュニティを成長させ続けることを期待しています。」と述べています。

当社の開発ロードマップは、各開発者が最適な回路、アルゴリズム、モデルを作成するために必要なツールを提供すると同時に、協業の機会を最大限に生み出すものです。私たちは、回路の種類やシステムの容量を増やすことでより多くの回路をより迅速に実行できるようにするとともに、量子開発者が同じ統合されたクラウドベースのフレームワークで円滑に作業できるプラットフォームを開発しています。量子コンポーネントと従来型コンポーネントの両方を備えたワークロードは、元のコンポーネントや統合の性質によって制約されることはなく、また、ハイブリッドクラウドによって、これらのワークロードは現在も、そして将来も、当社のクラウドネイティブ・システムが動作する場所であれば、どこでも実行できるようになります。

より高速で効率的な計算のために量子システムを再考する
(https://www.ibm.com/blogs/research/2020/12/near-real-time-quantum-compute/)

では、どのようにして計画を立てればよいのでしょうか?
[画像: https://prtimes.jp/i/46783/60/resize/d46783-60-567718-0.jpg ]


カーネル、アルゴリズム、モデル

現在、私たちは、回路APIの開発に注力してきた最下層のコードを書いている量子カーネル開発者向けに、重要なアップデートを行っています。今年、Qiskitランタイムのリリースを予定しています。これは、従来よりもはるかに高速に、より多くの回路を実行できるように容量を拡張した実行環境であり、他のユーザーがサービスとして実行できるように量子プログラムを保存する機能を備えています。Qiskitランタイムは従来の量子ワークロードを再考し、量子ハードウェアの横に配置された従来型ハードウェア上でプログラムをアップロードして実行することで、ユーザーのコンピューターと量子プロセッサー間の通信に起因するレイテンシーを削減します。

Aliro Quantumの創業者 兼 CTOで、ハーバード大学のジョンAポールソン工学部および応用科学部の助教授であるDr. Prineha Narangは、「研究者であり、スタートアップの創業者である私は、研究結果を価値ある製品に変えるという難題について熟知しています。IBM Quantumの開発者ロードマップは、このエコシステムの中で差別化された価値を作り出すという目標を設定し、私の研究室や共同研究者にとって最も関連性が高いものやインパクトが大きいことを達成できるよう、研究テーマや取り組みを整理することに非常に役立ちます」と述べています。

これらの改善により、反復的な回路実行を利用するワークロードが100倍高速化され、現在では数ヶ月かかることもあるジョブを数時間で実行できるようになります。

システムの容量を増やすだけでなく、より多様な回路を実行できるようになることで、ユーザーはこれまでの量子プロセッサーではアクセスできなかった問題に取り組むことが可能になります。最近発表したOpenQASM 3アセンブリ言語のようなソフトウェア・インタフェースの更新と、現在進行中の技術開発により、量子カーネル開発者は、2022年までにダイナミック回路(量子ビットのコヒーレンス時間内で実行する必要がある従来型命令と量子命令の両方が組み込まれている)を実行できるようになります。2023年以降には、大規模な量子ビットファブリックを操作するための回路ライブラリや高度な制御システムが登場し、量子カーネル開発者は、1,000以上の量子ビットを持つハードウェアを最大限に活用できるようになる予定です。

量子アルゴリズムの開発者は、量子カーネルの開発者とは異なる関心事項を持っており、量子回路の画期的なアプリケーションを探索する際には、ジョブを効率的に実行する必要があります。これらのユーザーは、プログラミングをしているハードウェアの複雑さを考えることなく、量子コンピューティングの能力を活用する新しい方法を探索しています。このような開発者向けに、量子回路を効率的に構築・実装するための新しいツールや、自然科学、最適化、機械学習、金融向けのアプリケーション固有のモジュールを改良し、アプリケーションの探索をできる限り容易に行えるよう取り組んでいます。

Unitary Fundの創業者であるWill Zeng氏は、「Unitary Fundは、量子技術のための広範かつオープンで、包括的なエコシステムを構築しています。IBMの支援により、私たちは量子オープンソースプロジェクト、プラットフォーム、コミュニティを支援してきました。そして、IBMの開発者ロードマップが今後も開発者の力となり、量子コンピューティングの採用を促進し続けることを期待しています」と述べています。

2023年までに、私たちは様々な共通の開発フレームワークを使用して、クラウドベースのAPIから呼び出し可能な、これらのドメインに合わせた構築済みランタイムのファミリーを提供することを想定しています。この時点で、量子カーネルやアルゴリズムの開発者が築いた基盤により、モデルやエンタープライズの開発者は、量子物理学について考えることなく、量子コンピューティングモデルを独自に探索できるようになると考えています。開発者は、任意のクラウドネイティブなハイブリッド・ランタイム、言語、共通プログラミング・フレームワークで構築されたシステムを充実させたり、量子コンポーネントを単に任意のビジネス・ワークフローに統合したりすることができます。

量子回路は、従来型計算の並行動作により動的にアップグレードされる
https://www.ibm.com/blogs/research/2021/02/quantum-phase-estimation/

IBM Quantum Development Roadmap
https://www.youtube.com/watch?v=bp7UFdtwdTw&feature=emb_logo

フリクションレスな量子開発の未来

2025年以降に目を向けると、フリクションレス(摩擦の無い)な量子コンピューティングという夢が現実のものとなり、ユーザーや開発者にとってハードウェア自体がそれほど関心を引くものにならなくなると考えています。それまでには、量子コンピューティングのあらゆる階層の開発者が、クラウドベースのAPIを備えた当社の先進的なハードウェアに依拠し、ハイパフォーマンス・コンピューティング・リソースとシームレスに連携して全体的な計算の限界を押し広げ、量子コンピューティングを既存の計算パイプラインの自然な構成要素として組み込むことを想定しています。私たちは、2030年までに、企業やユーザーが、おそらく自分たちがそうしていることに気づかないまま、一兆とまではいかないまでも、数十億の量子回路を一日に実行しているようになることを期待しています。

この真のフリクションレスな開発フレームワークに向けた私たちの開発のロードマップが、ユーザー、クライアント、そして量子コンピューティング・コミュニティの皆様に、量子コンピューターで最高の経験を世界中で提供できることを願っています。そして、私たちは、これを単独で実現させるつもりはありません。コミュニティが新しい量子アプリケーションを探索、作成、開発できるよう、オープンソースソフトウェアの継続的なリリースを行い、明日の量子エコシステムを共に構築していきたいと考えています。

Strangeworksの創業者 兼 CEOのwhurley氏は、「IBMは、この透明性の高いロードマップを共有するという独自のアプローチをとっています。スタートアップ、研究者、エンタープライズ開発者のオープンで協調的なエコシステムを育成することは、Strangeworksのミッションの中核をなすものです。私たちは、IBMの量子技術をStrangeworks製品全体に展開することで、ユーザーは現在のハイブリッドクラウドのランタイムを探索し、今後数年以内に1000量子ビット以上の量子プロセッサーを採用できるようになるという見通しに興奮しています」と述べています。

シュツットガルト大学アプリケーションシステムアーキテクチャ研究所のマネージングディレクターFrank Leymann氏は、「シュツットガルト大学アプリケーションシステムアーキテクチャ研究所とIBM Quantumは、アプリケーション開発者やオープンソース・システム開発者向けの強力なツールによって、近い将来に量子支援アプリケーションが構築されるというビジョンを共有しています。このロードマップに具現化されているオープンソース、研究、ビジネス的協業に対するIBMの取り組みは、量子ソフトウェア・エコシステム全体を加速させる取り組みです。特に、量子と従来型のハイブリッドアプリケーションのダイレクトイネーブルメントは、私たちが共有するビジョンの中核です。」と述べています。

私たちのソフトウェア戦略の大部分は、オープンソースツールの使用と開発を継続し、最終的には一部をファーストクラスのクラウドネイティブ・コンポーネントに変換することです。これにより、ユーザーが量子プログラムを安全かつ信頼性の高い方法で実行しながら、私たちのアーキテクチャを活用できるように、量子ソフトウェアをスケーリングし、拡張し続けることができます。また、ユーザーは、当社のソフトウェアスタックの一部のコンポーネントを、好みのクラウドアーキテクチャに直接インストールして使用できるようになります。

このロードマップを展開していくにあたり、皆様からのご意見をお聞かせください。もし、量子の活用をお考えの開発者で、量子コンピューターの未来を形作るためのフィードバックプログラムへの参加に興味がありましたら、こちら (https://www.surveygizmo.com/s3/6166448/8b69005fe00a) からご登録いただけます。

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