日本国内の大学における情報系学部・学科の実態調査を公表
PR TIMES / 2022年6月8日 14時45分
~情報系学部・学科への進学需要が34%増加しているのに対し、大学の定員数は過去10年間で増加なしという実態が明らかに~
公教育における情報教育の発展を目指す特定非営利活動法人みんなのコード(東京都港区、代表理事:利根川 裕太、以下みんなのコード)は、 Google の協力のもと、日本国内の大学における情報系学部・学科の実態調査を実施し、レポートにまとめて公表しました。なお、この実態調査は学校法人河合塾(以下河合塾)の全統模試受験者の志望校データ(*1)の提供を受けて実施しました。
(*1)全統模試データ:2011・16・21年度に高3・卒生を対象に実施した全統共通テスト模試(旧:全統マーク模試)を利用。受験者数は約40万人(年度により異なる)。
レポートはこちら URL:https://onl.sc/S99SQhQ
[画像1: https://prtimes.jp/i/15742/67/resize/d15742-67-34a8e68b30afdfe4428a-0.jpg ]
調査の背景・概要
学習指導要領の改訂によるプログラミング教育の必修化、大学入試共通テストへの「情報」の新設など、初等中等教育での情報教育の充実が進んでいます。また、情報系学部・学科への大学進学を志望する学生も、この10年間で増加しています。しかし、現状大学の定員は固定化しており、情報系学部・学科志願者の増加に対し、大学の受け皿が不足しているのではないかという懸念が教育現場から寄せられています。この懸念を受け、みんなのコードでは、サンプル調査を実施し、下記2点の仮説について検証しました。
1.情報系学部・学科への進学希望者と、入学者定員数の需給バランスの不均衡が発生しているのではないか
2.女子の情報系学部・学科の志願者・入学者が少なく、ジェンダーギャップが存在するのではないか
河合塾から提供を受けたデータ等を用いてこれらを検証したところ、仮説を支持する結果が得られました。
今回の調査結果について
国公立大学に絞っても、情報系学部・学科の志望者数は2011年の12,652人から21年の16,938人へと34%増加しています。一方、国公立大学前期日程の情報系学部・学科の定員は、2011年の5,087人から21年の5,064人と横ばいであり、その結果、志望倍率は2.49倍から3.34倍へと上昇しており、志望者の増加に対する受入定員数が不足しています。私立大学についても同様の傾向です。
また、情報系以外の理学部、工学部における女子比率は2011年から21年にかけて微増しているのに対して情報系は微減していました。
[画像2: https://prtimes.jp/i/15742/67/resize/d15742-67-476e6b0545bfd4fb42a2-1.jpg ]
今後の課題
調査で示唆された2つの課題のほか、学校現場や産業界からの情報とあわせて見えてきた課題として、以下3点の検討が必要です。
1.地域間格差の把握
都道府県ごとの差異については、今回、国公立大学に焦点を当てて調査を実施しましたが、私立大学も含めた調査によって地域間格差の全容を把握することが必要です。
2.情報教育における高校から大学への接続性の確保
高校段階と大学での情報教育における学習内容の相互理解が必要であり、高校の教員が、生徒の適性や興味関心に応じた適切な進路指導ができるようになり、さらに大学の教員が高等学校「情報I」の学習内容を把握した上でのカリキュラム設計が必要です。
3.大学での教育内容の充実について
情報系の学部・学科の新設はスタートラインであり、重要なのは学生一人ひとりが充実した学びを実現し、社会に出て活躍することです。その為、ジェンダーバランスにも考慮した優秀な教員の確保、卒業後も見据えたカリキュラムの設計等が求められます。
[画像3: https://prtimes.jp/i/15742/67/resize/d15742-67-4cfea603400673e27106-2.jpg ]
教育未来創造会議提言・骨太の方針について
昨日公開された政府の「経済財政運営と改革の基本方針2022」(骨太の方針)(*2)では、「人への投資」を前面に押し出し、「デジタル化に対応したイノベーション人材の育成等、 大学、高等専門学校、専門学校等の社会の変化への対応を加速」「自然科学(理系)分野の学問を専攻する学生の割合についてOECD諸国で最も高い水準である5割程度を目指す」ことなどを掲げています。これは先月、高等教育をはじめとする教育の在り方について議論をする政府の「教育未来創造会議」にて取りまとめられた「我が国の未来をけん引する大学等と社会の在り方について(第一次提言)」(*3)の内容を反映しているものです。政府としてもデジタル人材が不足していること、諸外国と比較して全体的な理工系の入学者の割合が低いことなどに懸念を抱いていることが分かります。
具体的な今後の対策として、デジタル等の成長分野への大学の再編・統合・拡充を促進する仕組みの構築、成長分野における定員増等が挙げられています。今回の調査で明らかになった情報系学部・学科の需給バランスの不均衡を改善するものと期待しています。
(*2)https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/2022/2022_basicpolicies_ja.pdf
(*3)https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/kyouikumirai/pdf/honbun.pdf
本調査にあたり、特定非営利活動法人みんなのコード代表 利根川 裕太のコメント
みんなのコードは、2015年の活動開始以来、小中高でのプログラミングをはじめとする情報教育の支援や、学校に馴染まない子も通いやすいテクノロジーの居場所運営事業を行ってきました。そんな中、子供たちが「プログラミングが楽しい」「デジタルなものづくりをもっとしたい」と思い、情報系の進路を検討しても、他の専攻より倍率が高く、出願していいか悩むといった声が教育現場から聞こえてきていました。
今回、 Google 及び河合塾の協力をいただき実態調査をしたところ、「志望者の大幅な増加に対し定員が全く追いつかず、学びたくても学べない学生が増加している」「志望者の女子比率は悪化している」という結果に衝撃を受けました。
先日公開された「教育未来創造会議」の提言を受け、昨日発表されました「経済財政運営と改革の基本方針2022」(骨太の方針)で大学のデジタル系分野へのシフトが打ち出されていることは、次世代の希望になると感じています。その上で、情報系学部・学科への再編はゴールでなくスタートラインであり、高校段階の教科「情報」との有機的な接続、ジェンダーバランスにも考慮した優秀な教員の確保、地域との連携も含めた卒業後の活躍に繋がるカリキュラムの提供が重要であると考えます。
今回の結果を踏まえ、今後みんなのコードがどのような支援が出来るのか検討して参ります。
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