世界結核デー:多剤耐性結核治療の歴史的好機を逃すな
PR TIMES / 2013年3月19日 19時54分
3月24日の世界結核デーを前に、国境なき医師団(MSF)は、いまこそ多剤耐性結核(MDR-TB)の対策を進めなければ、同結核の感染率を抑え、著しく低い治癒率を向上させる歴史的な好機を見逃すことになるだろうと警鐘を鳴らす。抗結核薬の併用療法の向上や、治療の普及拡大を目的とした研究の促進、MDR-TBに有効な2種類の新薬を、治療の大幅な短期化と改善、毒性の軽減につながるように用いる必要性を訴えている。
また、世界各地のMDR-TB患者と医療スタッフとともに、こうした要求を公式マニフェストとして掲げ、速やかな対応への呼びかけにより多くの人が加わるよう求めている。
マニフェスト「TEST ME, TREAT ME」オフィシャル・ページ(英語)
http://msfaccess.org/TBmanifesto/
マニフェスト日本語訳
http://www.msf.or.jp/files/Image/JP_DR-TB_Manifesto_FINAL.pdf
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「結核に有効な新薬が50年の間待ち望まれてきました。このまたとない歴史的な好機を、見逃すわけにはいきません。MDR-TBの治療法向上は、いくら緊急と言っても言い過ぎでないほどの急務ですが、それに見合う優先度が与えられているようには見えません」スワジランドで活動するMSFの結核医エルキン・チナシロワはそう語る。
現在、世界各地のMSF活動プログラムで診療を受けているMDR-TB患者の数は過去最多となっている。薬剤耐性は、それまでに受けた結核治療を適切に完了できなかったことが原因となるだけでなく、新規に結核と診断された患者の間でも確認されている。これは、MSFの活動地でMDR-TBそれ自体に感染性があるということを明確に示すものだ。
MDR-TB は、治療しなければ致命的な感染症だが、現在の治療法は2年に及び、重い精神疾患、聴力障害、恒常的な吐き気などのひどい副作用を伴い、2年のうち最長8ヵ月間、痛い注射薬を毎日投与される。しかし完治する患者は半数に過ぎない。
今般、結核に関する研究開発が十分に行なわれなかった50年近い年月に終止符が打たれ、新薬「ベダキリン」が先ごろ承認された。もう1つの新薬「デラマニド」も承認を控えている。治療の短期化と効果向上、そして、増え続けるMDR-TB患者治療への導入のため、これら新薬の最大限有効な活用方法を見定める研究も急務となっている。
「2013年で、結核とのつきあいも4年目になります。結核がなければ、大学の4年生だったはずです。2010年6月の治療開始以来、約2万錠の薬を服用し、毎日受けた痛い注射も200本を超えました。薬のせいで、聴力にも障害が残っています。1日2錠の薬を1ヵ月間服用する程度で治るようになってほしいものです」そう話すのは、南アフリカのカエリチャでMSFの超薬剤耐性結核(XDR-TB)治療を受けるフメザ・ティジール(女性、22歳)だ。マニフェストの署名者の1人でもある。
MDR-TB治療を受けることができる人の数は非常に少なく、世界的にも5人に1人の割合だ。これを解消するためには、国際社会からの政治的・経済的な支援の拡大が求められる。
「国際社会の優先案件となるべき結核が、今なおなおざりにされる傾向は見逃すことはできません」MSF必須医薬品キャンペーンのエグゼクティブ・ディレクターで医師のマニカ・バラセガラムは述べている。
世界エイズ・結核・マラリア対策基金(世界基金)は、結核を対象とした国際支援の約90%を担っているが、先ごろ結核対策への充当分を減額した。要となるのは2013年後半の増資会合だが、それに先駆け、各資金援助国・機関は、世界基金が十分な財源を確保し、受益国がMDR-TB対策の強化に必要な支援を受けられるようにしなければならない。よりよい治療法の登場が期待される今、新薬導入後も安定的な対策プログラムを展開するため、当該国は既存のMDR-TBの診断・治療を拡充しておかなければならない。
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薬剤耐性型の結核は、世界の保健医療における顧みられない危機である。世界保健機関(WHO)の推計では、2011年のMDR-TB症例数は63万件。MSFは2001年にMDR-TBの治療提供を開始。2011年は、21ヵ国で合計1300人のMDR-TBを治療している。
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