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青年期のBMIが22kg/平方メートル以上で将来の糖尿病発症リスクが高まる

PR TIMES / 2019年3月19日 15時40分

~ 青年期からの体重コントロールの重要性 ~

順天堂大学大学院医学研究科スポートロジーセンターの染谷由希特任助教、およびスポーツ健康科学部・体力体格累加測定研究グループは、大学卒業生(男性661名、平均55歳)の糖尿病罹患状況と在学時の体格との関連を調査した(観察期間:平均32年)ところ、青年期の体格が正常であっても、体格指数(BMI)*1が22kg/平方メートル以上あると、将来の糖尿病発症リスク*2が高まることを明らかにしました。本研究により、将来の糖尿病の発症には青年期の僅かな体重の増加が影響していることが初めて示され、我が国の予防医学を推進するうえで青年期からの体重コントロールの重要性が示唆されました。本研究は学術誌「PLOS ONE」に掲載されました。



本研究成果のポイント


青年期のBMIが22kg/平方メートル以上あると将来の糖尿病発症リスクが高まる
糖尿病予防には、青年期からの対策(体格管理)が重要
予防医学の推進のためには、適正体重の重要性をより啓発すべき


背景
近年、日本人をはじめとするアジア人の糖尿病患者数の急激な増加が問題となっています。そして、最近の日本人の糖尿病患者の平均BMIは23kg/平方メートル程度であり、肥満とされるBMI25kg/平方メートル以上でなくても、糖尿病を発症しやすいことがわかってきました。欧米諸国では、小児や若年期における肥満が、将来の糖尿病発症リスクを高めていることが報告されていますが、日本人やアジア人における青年期の体格と、将来の糖尿病発症リスクとの関連については明らかになっていませんでした。そこで、私たち研究グループは、青年期の体格とその後の糖尿病発症リスクとの関連を明らかにすることを目的に、大学の卒業生を対象とした追跡調査研究に着手しました。

内容
本研究は、順天堂大学体格体力累加測定研究J-Fit+ Study *3の一環として、体育学部(現スポーツ健康科学部)の卒業生を対象とした調査研究を実施しました。調査研究では、本学卒業生(男性661名、平均55歳)に大学卒業以降に糖尿病の有無および糖尿病と診断された年齢を聴取しました。また、スポーツ健康科学部(旧体育学部)に50年以上にわたり蓄積された体格や体力のデータから、大学在学時のBMIを算出し、大学卒業から糖尿病発症または調査研究までを追跡期間(27–36年) としたヒストリカルコホート研究を実施しました。
大学在学時(平均22歳)のBMIを4つの群(BMI21.0kg/平方メートル未満、21.0-22.0kg/平方メートル、22.0-23.0kg/平方メートル、23.0kg/平方メートル以上)に区分し、各群での糖尿病発症率を比較した結果、BMIが増加するにしたがって発症率が上昇していました(各群4.4%、7.6%、10.5%、11.3%)。また、追跡期間を考慮して検討した結果、糖尿病の発症リスクはBMI22.0-23.0kg/平方メートルから上昇していることが明らかになりました(図)。つまり、青年期である20歳代前半のBMIが22kg/平方メートル以上の場合、将来の糖尿病発症リスクが高くなることを明らかにしました。
以前より、日本人は欧米人と比較して、同じBMIであっても脂肪を皮下脂肪として蓄えられない、脂肪肝になりやすい、などといった脂肪分布の異常やインスリン分泌が低いことが指摘されてきました。これらの背景を踏まえると、青年期のごくわずかなBMI上昇がその後の糖尿病発症と関連すると推測されます。

今後の展開
今回の結果により、青年期の僅かなBMIの増加が、将来の糖尿病発症リスクを高めることが示されましたが、青年期のBMIと糖尿病発症との直接的な関連については不明な部分もあり、青年期の体脂肪率や腹囲などの指標を用いて、さらなる検証を進めていく予定です。体重の増加は、糖尿病だけでなく、脂質異常症や心血管疾患など様々な疾患にも結びつくことから、中高年期に限らず、青年期などのより早期から体重管理に気を付けることが必要です。また、ただ体重を減らすのではなく、適切な運動や食事に心がけ、筋肉量を維持することも肝心です。そのためにも、体重の測定だけでなく、身長や体脂肪率も測定するなどして、体格の管理することが重要になります。本成果は、疾病リスクが高まる肥満の基準値がBMI25kg/平方メートル以上とされるなかで、近年、アジア人ではBMI23kg/平方メートル以上で糖尿病になりやすいと報告されていることを支持する重要な結果であり、本邦の予防医学推進のための重要なエビデンスの一つになると考えられます。


[画像: https://prtimes.jp/i/21495/102/resize/d21495-102-175985-0.png ]

図:BMIカテゴリーごとの糖尿病累積罹患率(発症率)
時間の経過に伴う糖尿病発症率は、BMIが22.0-23.0kg/平方メートル(黄)とBMI23.0kg/平方メートル以上(赤)の群で最も上昇し、BMIが21.0kg/平方メートル未満(青)の上昇が最も低い結果であった。青年期の僅かなBMIの増加で糖尿病発症リスクが高まることを明らかにした。また、上記の図より、卒後10年目ごろより、糖尿病発症率に差が出始めていることがわかる。

用語説明
*1 体格指数(BMI)
体格指数は通称BMI(body mass index)といい、その人がどれくらい痩せているか、太っているかを示す指数です。体重(kg)を身長(m)で2回割って算出します。我が国の基準は18.5kg/平方メートル未満を痩せ、18.5~25kg/平方メートルを普通体重、25kg/平方メートル以上を肥満としています。

*2 糖尿病発症リスク
糖尿病になる確率を示す指標です。数値が1より高いほど、糖尿病を発症しやすい状態を示し、数値が1より低いほど、糖尿病を発症しにくい状態を示します。

*3 順天堂大学 体力体格累加測定研究(J-Fit+ Study)
順天堂大学体育学部(現スポーツ健康科学部)にて、1969年より実施されている体力体格累加測定のデータを用いた研究プロジェクトです。データは測定開始時より50年以上にわたり蓄積されており、このデータを用いた4つの研究で成り立っています。本研究は、1.ICT化・データ共有ユニット、2.追跡研究ユニット、3.スポーツ健康科学研究ユニット、4.遺伝学的研究ユニットのうち、2.追跡研究ユニットに分類され、学生時代の体格や体力と、その後の様々な疾病や病態との関連を調査しています。
特設サイト:https://www.juntendo.ac.jp/jfit/ja

原著論文
本論文は学術誌「PLOS ONE」に2019年1月24日付で掲載されました。
タイトル:「A body mass index over 22 kg/square meter at college age is a risk factor for future diabetes in Japanese men」
タイトル(日本語訳): 日本人男性における青年期のBMI22kg/平方メートルは将来の糖尿病発症リスクである
著者: Yuki Someya, Yoshifumi Tamura, Yoshimitsu Kohmura, Kazuhiro Aoki, Sachio Kawai, Hiroyuki Daida, Hisashi Naito
著者(日本語表記): 染谷由希1,2,4、田村好史1,2、河村剛光3、青木和浩3 、河合祥雄4、代田浩之5、内藤久士3,4
著者所属:1順天堂大学大学院医学研究科スポートロジーセンター、2順天堂大学大学院医学研究科代謝内分泌内科学、3順天堂大学スポーツ健康科学部、4順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科、5順天堂大学大学院医学研究科循環器内科学
DOI: 10.1371/journal.pone.0211067.

本研究は、私立大学研究ブランディング事業の一環として、また、順天堂大学体力体格累加測定研究(J-Fit+ Study)、および、文部科学省科学研究費助成事業JSPS科研費(若手研究B) JP17K13229 「青年期の体力と糖尿病発症リスクに関する疫学研究」の支援を受け実施されました。

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