世界初、ドロップレット内部の微生物を検出、分取可能な技術を開発しました
PR TIMES / 2024年9月26日 13時15分
バイオものづくりを支える微生物資源探索を加速
NEDOの委託事業である「カーボンリサイクル実現を加速するバイオ由来製品生産技術の開発事業(バイオものづくりプロジェクト)」(以下、本事業)において、NEDOは国立研究開発法人産業技術総合研究所(以下、産総研)および株式会社オンチップ・バイオテクノロジーズと共同で、微生物の膜成分を蛍光で染色することでWater-in-oil ドロップレット(以下、ドロップレット)内部の微生物を検出し、分取可能な技術(以下、本技術)を世界で初めて開発しました。本技術に使用する検出試薬はオンチップ・バイオテクノロジーズが製品化し、10月1日から販売されます。
本技術は、環境中に存在する多種多様な微生物を、ドロップレットを用いて100万検体レベルでスクリーニングするミリオンスクリーニングのための基盤技術です。今回、大腸菌を使用した実証試験により、微生物が含まれているドロップレットをマイクロ流路内で明確に識別、分取可能であることを確認しました。
今後、本技術の活用事例、応用範囲の拡大や有用なアプリケーションの開発に加え、技術のさらなる強化・改良に取り組みます。また、バイオものづくりを目指す企業などの本技術を活用した微生物スクリーニングに関する要望に対し、伴走しつつ課題解決を目指します。これにより、バイオによるものづくりを加速化させ、バイオエコノミー社会の実現に貢献します。
なお、本技術の成果の一部を、2024年10月9日から11日までパシフィコ横浜で開催される「BioJapan2024」のNEDOブースに展示します。
[画像1: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/135644/115/135644-115-8d4f1e9991bd31b260aa5365612a3503-974x281.png?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
図1 バイオものづくりにおける本技術の位置付け
1.背景
バイオものづくりの分野では、微生物などを対象として、ものづくりの生産プロセスとして適用できるように高度に最適化された細胞「スマートセル」の作製が期待されています。しかし、より高度な産業用スマートセル開発にはそのパーツとなる宿主細胞や遺伝子資源(微生物資源)の数が十分ではなく、多様化・拡充が望まれています。その要求に応えるため、微生物資源探索の高速化が可能なドロップレットを用いたミリオンスクリーニングが注目されています。ミリオンスクリーニングには、微生物の増殖や目的生産物をドロップレットの中で検出し分取する技術の開発が必要です。
このような背景の下、NEDOは2020年度から本事業※1でミリオンスクリーニングのための基盤技術の開発とその実証に取り組んでいます。その一環として、産総研およびオンチップ・バイオテクノロジーズと共同で、ドロップレットの中で微生物増殖を検出し分取する技術開発に取り組んでいます。
2.今回の成果
(1)膜染色試薬を用いたドロップレット内微生物の増殖を検出する技術の開発
ミリオンスクリーニングでは、微生物を直径数十μmのドロップレット内で液体培養した後、蛍光・散乱光などの検出に基づき微生物が内部で増殖した陽性ドロップレットの選択的分取を行います。ドロップレット内微生物の増殖を検出するには、これまでは細胞の自家蛍光を検出する、あるいは細胞外分泌物と反応する試薬を使用して検出する方法がとられてきました。自家蛍光の検出は感度が低いことが課題であり、細胞外分泌物と反応する試薬を用いる手法では、環境中から混入した細胞外物質による偽陽性やバックグラウンドの上昇が問題となっていました。そこで、細胞を生きたまま、高感度に、バックグラウンドの上昇を抑えた検出方法として、微生物の膜を特異的に染色する蛍光試薬を用いた微生物増殖検出方法の開発を行いました。
ドロップレットの中に、膜に局在した場合に蛍光強度が増大する膜染色色素と微生物を共存させることで、微生物増殖に従ってドロップレットが強い蛍光を発し、特異的に検出することに成功しました(図2)
[画像2: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/135644/115/135644-115-e11a0843b52afaa350ed4ccbcb8f6fed-1453x522.png?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
図2 膜染色試薬(緑色)と大腸菌を封入し一晩培養したドロップレット(30 µm)の顕微鏡画像
(左:暗視野顕微鏡像 右:蛍光顕微鏡像) スケールバー:100 µm
(2)ミリオンスクリーニングプラットフォームでの実証
今回開発した微生物検出技術の有用性を検証するため、大腸菌を用いて、ミリオンスクリーニングのプラットフォームであるマイクロ流路内での微生物検出と、マイクロ流路内で陽性ドロップレットを分取するドロップレットソーターでの分取を試みました。
膜染色試薬で染色し、一つ一つのドロップレットの蛍光強度をマイクロ流路内で検出評価することで、微生物が入っていないドロップレットと内部で微生物が増殖したドロップレットを明確に識別可能でした(図3)。さらに、90%程度のドロップレットが空で10%程度のドロップレットに微生物が含まれている状況から、本技術を用いることで微生物が含まれているドロップレットが最大で100%の割合になるような分取に成功しました。ミリオンスクリーニングのプラットフォームにおいて、微生物が増殖しているドロップレットを検出し、選択的に分取可能であることが示されました。
これにより、世界で初めてドロップレット内に存在する微生物膜の量(微生物の数)に応じた蛍光検出、分取方法を開発しました※2。
[画像3: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/135644/115/135644-115-b3e95e1e668833fd9ec696da9fa87481-727x353.png?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
図3 膜染色試薬(赤色)と大腸菌を封入し一晩培養したドロップレット(120 µm)のソーティングと分取 スケールバー:100 µm
3.今後の予定
本技術で使用した検出試薬はオンチップ・バイオテクノロジーズが製品化し、10月1日より販売が開始されます。今後、本技術の活用事例、応用範囲の拡大や有用なアプリケーションの開発に加え、技術のさらなる強化・改良に取り組みます。また、バイオものづくりを目指す企業などの本技術を活用したスクリーニングに関する要望に対し、伴走しつつ課題解決を目指します。これにより、バイオによるものづくりを加速化させ、バイオエコノミー社会の実現に貢献します。
なお、本技術の成果の一部を、2024年10月9日から11日までパシフィコ横浜で開催される「BioJapan2024」のNEDOブースに展示します。
【注釈】
※1 本事業
事業名:カーボンリサイクル実現を加速するバイオ由来製品生産技術の開発
事業期間:2020年度~2026年度
事業概要:カーボンリサイクル実現を加速するバイオ由来製品生産技術の開発
https://www.nedo.go.jp/activities/ZZJP_100170.html
※2 知財情報
特開2024-018130 「微生物増殖検出方法、微生物取得方法、微生物増殖検出用キット、微生物取得用キット及び色素の微生物増殖レポーターとしての使用」(公開日 2024年02月08日)
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