中央アフリカ共和国:過去最悪レベルの暴力的事態で3万人以上が避難
PR TIMES / 2013年10月17日 16時3分
中央アフリカ共和国(以下、中央アフリカ)北西部で武装勢力と政府軍による武力攻撃と残酷な殺害行為が再燃し、大勢の人が避難している。ウハム州ボサンゴアで3万人余り、その周辺地域で数千人が国内避難民となった。しかし避難した先にも、身を隠す場所、飲用水、食糧、衛生設備は乏しいか、皆無だ。国境なき医師団(MSF)は、民間人、医療スタッフ、人道援助従事者の安全を尊重するようすべての武装勢力に求めるとともに、人道援助の速やかな拡大を呼び掛けている。
<宗教対立が暴力に発展>
MSFが目撃証言を得ている多くの襲撃事件は宗教対立の性格が強い。トラックで避難中に集団からはぐれてしまった8人が武装勢力に処刑された例や、ある村で狙われていた男性2人が殺害され、宗教を同じくする大勢の人の避難を誘発した例もある。
MSFの外科医、エルナ・ライニールセは、「MSFが9月にボサンゴアで治療した人の数は60人以上。主に銃撃や”なた”による負傷で、女性や子どももいました。外科処置の80%以上が暴力被害者でした。私たちも、焼き討ちにあった村や人が殺害されるむごい光景を目にし、衝撃を受けています。避難した人びとには助けが必要です。そして援助団体が傍にいるという安堵感も大事なのです」と話している。
恐怖と暴力がはびこる中、人びとは身を守るため、やぶの中に逃げ込んだり、集団で身を寄せ合ったりしている。ボサンゴアでは、推計2万8000人が、収容人数のはるかに足りないカトリック伝道所に避難。1200人が滞在する病院では、建物の半分が実質的に仮設の避難キャンプとなっている。また、飛行場の滑走路わきに避難した人が1000人、学校に避難した人も400人ほどいる。雨季が続いており、やぶの中に隠れた人びとは、この国の最大の死因であるマラリアへの高い感染リスクにさらされている。
人びとの避難先を調査したMSFの活動責任者エレン・ファン・デル・フェルデンは、「人びとは、風雨をしのぐものも持たず、教会、学校、木陰などあらゆる場所で身をひそめています。過密状態で、調理、食事、就寝、洗濯、排泄まで全部同じ場所でするしかありません。こうした劣悪な環境では、病気が流行するリスクも高いのです。」と訴えている。
<人道援助の拡大と援助スタッフの保護を>
10月に入って以来、暴力行為と激しい武力衝突が報告されているのは北西部のウハム州ブーカとナナ・マンベレ州ガルガ、南西部のロバイエ州ムバイキだ。MSFはブーカでは、9月に自宅を焼き落とされた400世帯の集まる避難所で援助を継続している。現在MSFは、紛争の影響を受けた地域で活動する数少ない援助団体の1つで、外科などの医療、給排水・衛生活動、栄養補助を提供している。MSFの医療施設では、政治・宗教その他に関わらず、医療上のニーズにもとづいて治療を行っているが、援助の大幅な拡大が急務となっている。
同地では、民間人に加え、医療スタッフ、人道援助従事者も危険にさらされている。MSFも保健職員1人の殺害と、人道援助スタッフに対する暴力行為を複数回目撃した。
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注:中央アフリカが数十年にわたり苦しんできた政争・軍事紛争は現在、慢性的な人道・医療危機の状態に陥っている。2013年3月のクーデターで状況はさらに悪化。クーデターを主導した反政府同盟「セレカ」が事実上の新政府となった。本稿でいう“政府軍”はセレカないし元セレカやセレカ派の武装勢力を指す。9月上旬以降は、武装勢力・政府軍間の攻防と激しい武力衝突が国内の複数の場所で起きている。
この紛争で深刻化した医療ニーズは、状況の比較的安定した地域でも増大している。保健医療の人材が不足し、首都以外では公立の医療施設もわずかだ。必須医薬品の枯渇が頻発、大勢の人は治療費を支払えずにいる。そのため、多くの国民が最低限の医療さえ受けられず、死亡率も緊急事態を示す水準を上回っている。不安定な現状が長引けば、もとより苦難の多い人びとの医療を受ける機会は著しく減少するとみられる。
MSFは1996年から同国で活動。現在、通常のプログラム6件を、パウア、カルノー、ゼミオ、ボギラ、バタンガフォ、カボ・ンデレで展開する一方、先ごろ、ボサンゴア、ブリア、ブーカ、ガジで緊急援助活動を開始した。2012年末現在、同国では1300人のMSFスタッフが活動している。
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