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ザータリ難民キャンプ設営から5年~ヨルダンにおけるシリア難民の子どもたちの教育事情

PR TIMES / 2017年7月28日 9時29分

今から5年前の2012年7月28日、シリアでの紛争や暴力から逃れてきた難民に対応するため、シリアとの国境から13キロ離れたヨルダン北部に、ザータリ難民キャンプが設営されました。見渡す限り地平線が広がる土地に、わずか9日間で設営されたこの難民キャンプは、シリア難民の大量流入により翌年4月には20万人以上を収容*1するまでに急激に拡大した後、現在は約8万人が住む、世界最大のシリア難民キャンプとなりました。



[画像1: https://prtimes.jp/i/5097/137/resize/d5097-137-660985-0.jpg ]

シリア紛争が始まってから、130万人に上る人々*2が国境を越えてヨルダンに避難したとされています。紛争で破壊された生活と、ひとり親世帯の増加にともない、シリア難民の家庭は往々にして経済的に不安定な状況に陥ります。多くの子どもたちにとって、難民になることは、母国を喪失するだけでなく、新しい生活環境の中で早すぎる結婚や児童労働に追いやられ、教育や機会を喪失することも意味しています。少女たちは、娘が通学途中に性的暴行の被害に遭うのを恐れる親によって家に閉じ込められ、早すぎる結婚をさせられるリスクが高い状態にあります。一方、少年たちは家族を支える責任を負わされ、ヨルダン全土に暮らすシリア難民家庭の約50%*3が、子どもの労働収入に、何らかの形で依存しています。


大量のシリア難民の流入は、受け入れ側のヨルダンの教育システムにも大きな負担をかけています。ヨルダン政府は、状況を打開するために、昨年ロンドンで開催されたシリア支援会合で、2017年9月までに学校に通えていないすべての子どもたちに教育の機会を保障する、と表明し、公立学校に5万人、そして正規の教育へつなぐための補習授業を行うノンフォーマル教育機関に2万5,000人、計7万5,000人分の席を新たに用意しました。さらに、3年以上就学していない子どもの入学を許可しなかったそれまでの方針を撤廃すると同時に、シリア難民の家族が子どもの労働に頼らなくても生計を立てられるように、一部の産業部門で就労許可を与えるなどの措置をとりました。ザータリ難民キャンプ内でも、設営当初は1校しかなかった学校が今では14校に増え、午前と午後の2部制で公教育が提供されています。


しかし、それでも依然として、多くの子どもたち-特に10代の子どもたちは、学校に通えていません。 2016年9月からの新学年度に公教育に新規登録したシリア難民の子どもは2万4,542人*4で、ヨルダン政府が受け入れ準備を進めた5万人の半数以下でした。また、学校に戻った子どもたちからは、1日3時間に凝縮された内容と、さまざまな年齢と学力の生徒たちがいるクラスで、授業に追いつくのが大変だという声が聞かれます。

たとえ、ヨルダンでの公教育へのアクセスが認められても、家計を支える重圧と、長期間学校に通えなかったために生じた勉強の遅れを取り戻すことができずに苦しむ10代のシリア難民の子どもたちは、紛争の影響をもっとも受けていると言えます。


[画像2: https://prtimes.jp/i/5097/137/resize/d5097-137-878206-1.jpg ]

アリさん(仮名、14歳)は、母親と、4人の妹と弟とともに、ザータリ難民キャンプに住んでいます。父親がいなくなってから、アリさんと母親が、生計を立てるために働いています。アリさんは、毎朝4時から近くの畑で果物の収穫の仕事をしているため、学校に通うのが難しいと感じています。「僕は働かなければなりません。他に働ける家族がいたら、僕も学校に通っていたかったけれど、学校に行っても授業がまったく理解できません。分からないところを友達に聞くと、先生に叩かれます。だから、僕はもう学校には行かないと決めましたが、授業を理解できるなら、学校には通うべきです。授業が理解できない子どもたちには、未来はありません」と、アリさんは話します。

こうした子どもは、アリさんひとりだけではありません。2016年12月時点において、ヨルダンで難民登録された学齢期の子どものほぼ半数にあたる約10万7,000人*5が、公教育を受けていませんでした。

ヨルダン全土で、ヨルダン人とシリア難民の子どもたちの就学率を向上させるための取り組みが行われていますが、教育の質の向上も課題となっています。2014年度にヨルダンのタウジーヒ試験(大学入試のための一斉試験)を受けた子どもの半数が試験に落ち、ひとりの合格者も出せなかった公立学校が338校*6にも上りました。

セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン事務局長 千賀邦夫は、「ヨルダン政府は、すべての学齢期の子どもたちに教育の機会を与えるという大きなコミットメントを表明し、その約束を果たす努力を続けてきましたが、それでは問題の半分しか解決できません。長期にわたって公教育を受けられなかったシリア難民の子どもたちには、勉強の遅れを取り戻すための支援も必要です。児童労働や早すぎる結婚、偏見や嫌がらせなどの障壁を取り除くための協調した取り組みが求められると同時に、教師への適切な訓練も不可欠です。国際社会は、シリア難民の子どもたちが学校に通うだけでなく、十分に学ぶ機会を得られるよう、ヨルダンのような受け入れ国を支援する約束を守らなければなりません。シリア難民の子どもたちは、紛争が終わったとき、シリアの再建を担うことになるのです」と、訴えます。

セーブ・ザ・チルドレンは、国際社会に対し、ロンドンとブリュッセルでのシリア危機に関する支援会合で合意したコミットメントを継続して履行し、子どもたちが学校に戻れるよう、財源やさまざまな分野において中東各国を支援することを求めます。これには、下記にあげるような専門的かつ財政的支援と投資も含まれます:


子どもたちが適切な水準の教育を受けられるよう、難民の受け入れ国の教師とカウンセラーを養成すること
いじめに対処したり、地域とのつながりを促進 したり、体罰の法的禁止など、子どもが学校で安心・安全に過ごせるより効果的なシステムを導入すること
子どもたちが再び全日制の公教育を受けられるようにするための明確な計画を策定し、それをもとに2部制授業を段階的に廃止していくこと
子どもたちが公教育に戻り、学ぶ準備ができるようになるための道筋として、ノンフォーマル教育により大きな重点を置くこと
教育の質のモニタリングと改善のためのツールとして、学習成果を測定すること



【ヨルダンにおけるセーブ・ザ・チルドレンの教育支援活動】
セーブ・ザ・チルドレンは、ヨルダン全土で、公教育へのアクセスと準備のための学習支援を20万人の子どもたちに届けました。公立学校に入学できない子どもたちには、学校に行けない期間の授業に追いつけるよう、初級・上級の読み書き計算を含む質の高い教育プログラムへのアクセスを提供しています。さらに、ドロップインセンターを運営し、児童労働に従事している子どもたちの把握と、家族と協力して子どもたちが学校に戻るサポートを行ったり、紛争の恐怖と深い悲しみを経験した子どもたちに、教室の中でも外でも健康に学びそして成長できるよう心理的支援を提供するなどしています。
今夏には、現在、あるいは数年にわたって学校に通っていない子どもを特定して学校に戻すことを目的に、国連児童基金(UNICEF)と連携して「学校へ戻ろう(Back to School)」キャンペーンを展開します。

*1国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)
*2 http://www.un.org/youthenvoy/2017/05/ilo-online-learning-programme-introduces-syrian-refugees-workplace-rights-jordan/
*3 http://www.unwomen.org/-/media/headquarters/attachments/sections/library/publications/2013/7/report-web%20pdf.pdf?vs=1458
*4 https://static1.squarespace.com/static/522c2552e4b0d3c39ccd1e00/t/584d2f2c9f7456bbff504f72/1481453408358/JRP+2017-2019+-+Full+Plan+-+Submission+Draft+1+-+PDF.pdf
*5 http://wos-education.org/uploads/reports/170331_Brussels_paper.pdf
*6 http://www.jordantimes.com/news/local/no-student-passed-tawjihi-349-public-private-schools%E2%80%99

<セーブ・ザ・チルドレン概要>
セーブ・ザ・チルドレンは、すべての子どもにとって、生きる、育つ、守られる、参加する、「子どもの権利」が実現されている世界を目指して活動する子ども支援の国際NGOです。1919年に英国で設立され、現在、日本を含む29の国と地域の独立したメンバーが連携し、約120ヶ国で子ども支援活動を展開しています。
http://www.savechildren.or.jp/

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