薬剤耐性結核による死亡者数、1年以内に削減を――MSFがWHO総会で請願提出

PR TIMES / 2014年5月20日 9時32分



スイス・ジュネーブで開催中の世界保健機関(WHO)総会で、結核と薬剤耐性結核(DR-TB)の対策に関する20ヵ年計画が採択されるのを前に、国境なき医師団(MSF)は加盟各国政府に対し、DR-TBの検査・治療法を今後12ヵ月間で大幅に改善するよう訴えている。MSFはDR-TB患者とその治療従事者によって作られた請願書「結核マニフェスト」、および世界5万人の支援者からの署名を提出し、DR-TB患者が直面する現状の改善を目指している。

<“ただ死を待つ”人を無くす行動を>

「2035年に向けた結核対策の目標は歓迎しますが、20ヵ年計画は、まともな診断・治療法がないために亡くなっていく人びとの命は救えないのです」MSF必須医薬品キャンペーンのエグゼクティブ・ディレクター、マニカ・バラセガラム医師は訴える。

「計画を採択し、目標達成を約束するのであれば、各国政府は今後12ヵ月間でDR-TBの死亡者数削減に向けて行動する必要があります。少なくともDR-TBと診断されたまま治療を受けられない多くの人びとが、“ただ死を待つ”ことを終わらせなければならないのです」

WHOの2012年の調べでは、多剤耐性結核(MDR-TB)の患者のうち、治療を開始していない人は約1万7000人いる。彼らは苦しみから逃れられず、感染源となったまま、もともと低い生存率をさらに引き下げている。そもそもMDR-TBの患者数というのは、この病気を病む人のごく一部と考えられている。MDR-TBに感染しているとみられる人口のうち約80%は診断が未確定だからだ。

<世界の保健大臣へ>

結核の多剤耐性菌(多くの効果的な抗結核薬に耐性を発現した菌株)を持つ人びとが直面する現実は過酷だ。治療を受けないまま命を落とすか、負担の重い高価な治療を2年にわたって耐えるかだ。しかもその治療も、治癒する可能性は50%程度しかない。

MSFによる今回のWHO総会での請願提出は、超多剤耐性結核(XDR-TB)を克服した元患者であり、結核マニフェストの共著者で、現在は結核関連活動家である南アフリカ出身のフメザ・ティジールに託された。彼女は言う。「3年にわたるXDR-TBとのつらい戦いの間に、この恐ろしい病気で亡くなっていく友達を、誰よりも多く目にしました。私はここジュネーブに、亡くなった人たちを含む、DR-TB感染者全てを代表して来ています。私たちは世界の保健当局に対し行動と説明責任を要求し、より高い生存率の実現を要求します。できることは何でもしてください。私たちは変化が起きるのをただ待っていることはもうできません」


<結核マニフェスト:3つの要求>

結核マニフェストは患者とその治療従事者による次のような3つの要求を明確に掲げている。
(1)DR-TB診断・治療の普及、各国政府によるDR-TB対策の拡大
(2)治療法の向上による治癒率の大幅向上
(3)DR-TB治療の普及を促す資金援助の拡大

DR-TBの治療完了率と生存率の改善のために、各国政府ができること――例えば、患者が受けやすい、短期間の治療法の確立がある。これは出稼ぎなどで移動する人びとにとって特に重要で、WHOの勧告に沿った一部の施設で用いることができる。また、他に治療選択肢がなくなった患者に対し、早急に有望な結核治療薬の「コンパッショネート・ユース(※)」を実行可能にし、製薬会社に対しては、結核のまん延国で新薬や使用目的を変えた結核治療薬を登録するよう促すことができる。さらに、患者宅や地域への治療分散化は待機患者を減らし、不要な入院や長期間の入院を無くし、人びとが治療中も自宅に居られるようにできる。この効果はMSFの経験と他の結果も示している。

※人道的配慮から、生死に関わる病気の患者に対し、販売承認に先立って未認可薬の使用を認める制度

結核治療には、新薬を組み込んだ、短期間で、効果的かつ加療に耐えられ、適切な価格の新しい治療法が切実に必要とされている。そうすることで結核は治癒可能な病気として制御可能となり、人命を奪うにはいたらない病気となる。そのためには、製品価格から研究開発費を切り離す新たな財源と、新たな研究開発モデルの発案・実行が求められている。

●MSFと結核治療
MSFは30年以上結核の治療に従事。近年は活動地においてDR-TBの懸念すべき増加を目にしてきた。MSFは現在、結核治療を行うNGOの中で最大級。毎年約3万人の患者を治療し、うちDR-TB患者は世界21ヵ国で約1800人いる。

●フメザ・ティジールと「結核マニフェスト」
2013年、フメザ・ティジール(23歳)はまだつらい薬剤耐性結核(DR-TB)の治療を受けている最中だった。そしてこの病気の治療法の選択肢のひどさに驚いたフメザと彼女の担当医、ジェニファー・ヒューズは「結核マニフェスト」を作ることを思い立ち、MSFの署名運動として同年の「世界結核デー」に開始された。この公的宣言は全DR-TB感染者とその治療従事者を代表して発表され、DR-TB診断・治療に早急な改善を呼びかけている。MSFが集めた結核マニフェストへの5万を超える署名の中には、800人以上のDR-TB患者と1500人の治療従事者も名を連ねている。

結核マニフェスト・ホームページ: http://www.msf.or.jp/tb2014/

3年間の集中的なXDR-TB治療を経て、フメザはようやく治癒し、人生を立て直せるようになった。しかし、そこにいたるまでには2万錠を超える治療薬を飲み、薬の毒性のおかげで、聴覚を永久に失った。世界中のXDR-TB患者のうち、フメザのように完治した人は13%しかいない。

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