細胞の活性が加齢で弱まる要因を解明 細胞の活性を司るミトコンドリア「クリステ」を形成させる因子が減少
PR TIMES / 2021年6月10日 15時15分
ポーラ・オルビスグループの研究・開発・生産を担うポーラ化成工業株式会社(本社:神奈川県横浜市、社長:釘丸和也)は、細胞内の “エネルギー工場” であるミトコンドリアの「クリステ」(補足資料1)について研究し、下記の2点を突き止めました。
老化した細胞では、クリステ形成を促進する因子※1の発現が減ってしまう ※1 OPA1と呼ばれる因子
ホップエキスには、クリステ形成を促進する因子の発現を増やす作用がある
クリステは酸素(O2)を利用してエネルギーを生み出す場です。したがって、クリステ形成を促進すると細胞を活性化することができると考えられます。この知見は、2021年3月26~29日にオンラインで開催された日本薬学会第141年会にて発表しました。また、ポーラ・オルビスグループの商品に活用される予定です。
細胞活性の源は、ミトコンドリアの働きの中枢「クリステ」にあり
ミトコンドリアは、O2を使って細胞に必要なエネルギーを作りだす細胞内小器官※2です。そのための場所がミトコンドリアのクリステと呼ばれる構造です。クリステが多いと、生産ラインがたくさんある工場のように、より多くのO2を使い、細胞を活性化できると考えられます(補足資料1)。しかしクリステの状態は年齢により少なくなると考えられています。そこでクリステ形成を促進する因子に着目しました。
※2 細胞の中の特定の機能を持つ構造の総称
細胞老化でクリステ形成促進因子が減少
細胞は分裂できる回数が決まっており、培養細胞を繰り返し分裂させることで老化した状態を再現することができます。老化させた真皮線維芽細胞で、クリステ形成促進因子の発現量を調べたところ、老化していない細胞に比べて減っていることが分かりました(図1)。
[画像1: https://prtimes.jp/i/36737/225/resize/d36737-225-585903-1.jpg ]
クリステ形成を回復させるエキスを発見
減ってしまったクリステ形成促進因子を増やすエキスを探索するため、老化した状態の細胞にさまざまなエキスを添加する実験を行いました。その結果、ホップエキスにクリステ形成促進因子の発現を増やす作用を発見しました(補足資料2)。
電子顕微鏡を用いて実際にクリステを観察したところ、細胞老化により減少していたクリステの構造が、ホップエキスの添加により回復していることが確認できました(図2)。
本研究では、クリステという構造に着目したことで、新たな細胞活性化の手段を見出しました。さらにポーラ化成ではエネルギーの生産ラインにあたるクリステだけでなく、工場にあたるミトコンドリア自体の量を増やすことにも挑戦し、紫茶(ムラサキチャ)のエキスにミトコンドリア生合成を促進する因子の発現を増やす作用を見出しています(補足資料3)。これらを上手に活用することで、より効果的なエイジングケア効果が可能となります。
[画像2: https://prtimes.jp/i/36737/225/resize/d36737-225-628809-5.jpg ]
【補足資料1】 ミトコンドリアとクリステ
ミトコンドリアは酸素(O2)を活用し、細胞内のエネルギーを産生する細胞内小器官(図3)の一つです。ミトコンドリアは内膜と外膜という二重の脂質膜からなり、内膜はO2を使ってエネルギーを作る働きを担います。内膜が折りたたまれた構造はクリステと呼ばれ(図4)、折りたたみ構造を取ることでエネルギーを作る場をたくさん確保していると考えられています。本研究では、クリステの形成を促進することでミトコンドリアの働きを高めようと考えました。
[画像3: https://prtimes.jp/i/36737/225/resize/d36737-225-898556-6.png ]
【補足資料2】 ホップエキスのクリステ形成促進因子の発現を増やす作用
分裂を繰り返し老化した真皮線維芽細胞にホップエキスを添加し、クリステ形成促進因子の発現量に対する作用を確認しました。ホップエキスを添加すると、添加していない場合に比べ、発現が増加することが確認されました(図5)。
[画像4: https://prtimes.jp/i/36737/225/resize/d36737-225-205822-4.jpg ]
【補足資料3】 紫茶エキスのミトコンドリア生合成促進因子の発現を増やす作用
ミトコンドリアはエネルギー産生の工場に当たります。したがって工場自体を増やすことも細胞の活性と高める有効な手段であると考えられます。
分裂を繰り返し老化した真皮線維芽細胞を使い、ミトコンドリア生合成促進因子※3の発現量を増やすエキスを探索したところ、お茶の一種である紫茶(ムラサキチャ)のエキスにその作用を見出しました(図6)。
※3 PGC-1αと呼ばれる因子
[画像5: https://prtimes.jp/i/36737/225/resize/d36737-225-805105-0.jpg ]
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