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アレルギー炎症を増悪・遷延化させ、その炎症を全身に拡げるメカニズムの解明

PR TIMES / 2021年2月25日 17時45分

~アレルギー疾患の新規治療法確立への期待~

日本大学医学部アレルギーセンター免疫アレルギー学プロジェクトチーム 岡山吉道アレルギーセンター副センター長、豊島翔太ポストドクトラルフェロー、呼吸器内科の權寧博教授、皮膚科の葉山惟大助教および順天堂大学医学研究科眼科学の松田彰 准教授らの共同研究グループは、ヒトのマスト細胞 (注1)が遊離する細胞外小胞 (注2)中のマイクロRNA 103a-3p (miRNA,注3)が、アレルギー炎症を増悪化し、長引かせている因子であることを発見し、その作用機序を明らかにしました。今後、細胞外小胞中のmiRNA103a-3pを特異的にブロックする方法を開発することができれば、それを応用した新規治療薬の開発が期待されます。
本研究は、日本大学、国立成育医療研究センターおよび順天堂大学の共同研究の成果であり、この研究結果を報告した論文は、2021年1月16日 (米国時間)に米国アレルギー学会誌「The Journal of Allergy and Clinical Immunology」に掲載されました。



本研究成果のポイント


ヒトのマスト細胞が遊離する細胞外小胞中のマイクロRNAが、アレルギー炎症を増悪化し、長引かせている因子であることを発見
miRNA103a-3pを特異的にブロックするアレルギー疾患の新規治療薬の開発に期待


研究内容
マスト細胞は、IgEとアレルゲンによって活性化し、ヒスタミンやサイトカイン (注4)など生理活性物質を遊離します。これらの生理活性物質はマスト細胞の近傍に存在している免疫細胞などに作用し、かゆみの誘発、気管支平滑筋の収縮など、アトピー性皮膚炎や喘息などのアレルギー症状に深く関わります (図1)。
[画像1: https://prtimes.jp/i/21495/264/resize/d21495-264-890956-0.jpg ]

近年、細胞間の相互作用には、細胞が遊離する細胞外小胞と呼ばれる顆粒状の物質が重要であることがわかっていました。細胞外小胞には、タンパク質や核酸などが内包され、受け取った細胞の機能を制御します。がんの発症や転移などに関わることから盛んに研究が行われています。この癌の転移のようにこの細胞外小胞は、遠隔の細胞に情報を伝えることができます。しかし、アレルギー炎症の増悪や遷延化に関わるマスト細胞の細胞外小胞の役割は、これまでに明らかにされていませんでした。
本研究グループは、ヒトマスト細胞を用いて、マスト細胞がアレルゲンで活性化する時に遊離する細胞外小胞中のmiRNAを網羅的に調べたところ、miRNA103a-3pというmiRNAを特異的に遊離していることを見出しました。さらに、そのmiRNA103a-3pがどのようにしてアレルギーに関与するかを調べたところ、2型自然リンパ球 (注5)からのIL-5産生を増強・持続化させることを突き止めました (図2)。
[画像2: https://prtimes.jp/i/21495/264/resize/d21495-264-328546-1.jpg ]

重症および慢性的なアトピー性皮膚炎や喘息患者では、好酸球が増加する好酸球増多症と呼ばれる現象が観察されます。IL-5は、その好酸球増多を惹起するために必須のタンパク質であり、実際に重症喘息患者では、IL-5をブロックする抗体療法を用いると好酸球増多は抑制され、臨床症状の改善が見られます。さらにアトピー性皮膚炎患者の血清中の細胞外小胞内miRNA103a-3pは健常人に比較して有意に増加していることを発見しました。
したがって、ヒトマスト細胞がアレルゲンによって活性化した時に遊離する細胞外小胞に内包されるmiRNA103a-3pは、血中を循環し遠隔に存在する2型自然リンパ球をも活性化しIL-5産生の増強・持続化をもたらし、例えばアトピー性皮膚炎患者の全身の皮膚で好酸球増多が長引くことで、アレルギー炎症を増悪・遷延化させている因子の一つであることを明らかにしました。

今後の展開
本研究成果により、アレルギーを増悪・遷延化させている細胞外小胞中のmiRNA103a-3pを見出すことができました。今後、細胞外小胞中のmiRNA103a-3pを特異的にブロックする方法を開発することができれば、それを応用した新規治療薬の開発が期待されます。

用語解説
(注1) マスト細胞: 免疫細胞の一つで、細胞表面にIgE受容体を発現しているので、IgEとアレルゲンで活性化し、ヒスタミンなどを遊離する。アレルギー炎症の責任細胞として最も重要な細胞である。
(注2) 細胞外小胞: 全ての細胞が遊離する顆粒状の物質 (直径:50 nm – 1000 nm)で、その中にはタンパク質や遺伝子などが含まれている。近年、遠隔の細胞間相互作用をもたらす因子として注目されている。
(注3) マイクロRNA: 20塩基程度の核酸で、遺伝子発現を調整することで、生体の恒常性維持や病気の発症に関わる。
(注4) サイトカイン: 免疫細胞が放出するタンパク質である。炎症の惹起や抑制といった働きを持つ。
(注5) 2型自然リンパ球: 自然免疫系の細胞である2型自然リンパ球はT細胞とは異なり抗原認識機構を介さずに活性化し、多量の2型サイトカインを産生することで寄生虫排除を担う一方、アレルギー病態に深く関与する。

原著論文
本研究はJ Allergy Clin Immunol誌のオンライン版で2021年1月16日付で先行公開されました。
タイトル: miR103a-3p in extracellular vesicles from FcεRI-aggregated human mast cells enhances IL-5 production by group 2 innate lymphoid cells.
タイトル(日本語訳): FcεRIで凝集したヒト肥満細胞の細胞外小胞に含まれるmiR103a-3pは、グループ2の自然リンパ球によるIL-5産生を増強する
著者:Toyoshima S(1), Sakamoto-Sasaki T(1), Kurosawa Y(2), Hayama K(3), Matsuda A(4), Watanabe Y(4), Terui T(3), Gon Y(5), Matsumoto K(6), Okayama Y(7)
著者所属: (1-3,5,7) 日本大学、(4)順天堂大学、(6)国立成育医療研究センター
DOI:10.1016/j.jaci.2021.01.002.

本研究は、文部科学省・私立大学戦略的研究基盤形成支援事業 (岡山吉道、權寧博、照井正、S1511014)、日本学術振興会・若手研究 (豊島翔太、19K17687) 、科研費(岡山吉道、20K08811)および日本大学研究助成金(岡山吉道)の研究成果です。

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