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牛骨格筋由来CD29陽性細胞による培養肉の肉芽の作成に成功

PR TIMES / 2021年10月1日 17時15分

~ 培養肉の実用化技術の開発へ期待 ~

順天堂大学大学院医学研究科 難病の診断と治療研究センターの奈良岡 佑南 研究員、赤澤 智宏 教授らの研究グループは、家畜(牛)から分離したCD29(Ha2/5)陽性細胞(*1)を筋および脂肪に分化誘導させることで、食肉のもととなる3Dの構造物(Meat Bud)を作成することに成功しました。本研究では、牛骨格筋由来の細胞を入手可能な246種類の抗体を用いて選別し、CD29(Ha2/5)陽性細胞が増殖能と自己凝集能が高いことを明らかにしました。この牛骨格筋由来CD29陽性細胞は、1.スフェロイド(*2)を構築、2.分化誘導させることで筋肉成分と成熟脂肪顆粒を含んだ直径500μmほどの肉芽(Meat Bud)を形成、3. 多数のMeat Budをコラーゲンゲルに埋め込み培養することで、直径1.5cmほどの構造物を形成することに成功しました。本成果は、新たな機能をもつ食品への応用や、人口増加に伴う食糧難に対する培養肉の実用化技術の開発に繋がることが期待されます。本論文はCells誌のオンライン版に公開されました。



本研究成果のポイント


牛骨格筋由来CD29(Ha2/5)陽性細胞は増殖能と自己凝集能が高いことを明らかにした
CD29(Ha2/5)陽性細胞は3次元の構造物(スフェロイド)を形成し、筋肉成分と成熟脂肪顆粒を兼ね備えたMeat Budに分化誘導させる技術を開発
食糧難や栄養機能食品の応用に向けた培養肉の実用化技術の開発に繋がる成果


背景
近年、急激に進む労働人口の減少や地球規模で進む気候変動を背景に、容易に食用肉が入手できる時代に陰りが見えており、動物性タンパク質を取得する手段として培養肉が注目を浴びています。ヒト由来の組織前駆細胞の培養法は、現在治療法が確立されていない病気や怪我を治療するために研究されていますが、組織に存在する前駆細胞は家畜の組織にも存在するため、培養肉という新しい技術に応用することが可能です。研究グループは以前より組織幹細胞の分離と性状解析に取り組んでおり、先行研究ではマウスとヒトの組織に存在する増殖性組織幹細胞を分離する技術を開発しました。そこで今回、幹細胞を用いた培養肉の技術開発を目的に、牛骨格筋由来CD29(Ha2/5)陽性細胞の特性評価と分化誘導について検討しました。

内容
研究グループがフローサイトメーター(*3)を用い、入手可能な246種類の抗体で牛骨格筋由来細胞の選別を行ったところ、CD29 (Ha2/5), CD44, CD344/Frizzled-4 の3抗体で選別した細胞がコロニーを形成することがわかりました。特に、Ha2/5陽性細胞はコロニー形成能が高く幹細胞としての未分化性が維持されていることが確認できました。
次に、1x105個のHa2/5陽性細胞をU底プレートで培養すると、約24時間で自己凝集し、直径500μmほどの3次元の構造物(スフェロイド)が構築されました。このスフェロイドを5日間筋分化誘導した後、2週間、脂肪分化誘導培地とオレイン酸で脂肪分化させると、筋肉成分と成熟脂肪顆粒の両方を含んだ肉芽が形成され、これをMeat Budと名付けました。
さらに、食べるということを見据え、スケールアップのために、このMeat Budをコラーゲンゲルで形成することを試みました。およそ17,000個のMeat BudをpH7.5に調整したコラーゲンゲルで包埋した後に培養すると、3日でMeat Bud同士が融合するとともにゲルが凝集し、10日後にはMeat Budの融合と増殖が進み、均一なMeat Budの形成に成功しました。
この技術では、100gの牛肉から21日で7.75x1013の細胞を得ることができると試算され、サステイナブルな培養肉の開発が可能となります(図1) 。
以上の結果から、牛骨格筋組織由来CD29陽性細胞は、高い増殖能と自己凝集能があることが明らかとなり、これを分化誘導することで肉の芽となるMeat Budを作成する技術の開発に成功しました。
[画像: https://prtimes.jp/i/21495/346/resize/d21495-346-f45059176158bf108110-0.jpg ]

今後の展開
今回の技術が確立されたことによって、筋肉成分や脂肪成分を自在にデザインすることが可能になります。つまり、筋肉成分を多くしたり、いわゆる体に良い油を含んだ Meat Budを作成することができるため、単にステーキなどの食肉用としての培養肉ではなく、疾患を持った患者さんやアスリートのための栄養機能食品としても応用できる可能性があります。現段階では研究室での実験レベルのスケールのため、実用化に向けた大量培養技術を確立することが求められます。

用語解説
*1 CD29陽性細胞: 細胞表面にCD29という抗原を発現している細胞。
*2 スフェロイド:細胞の集合体。互いに接着するだけで3D立体構造を形成している。
*3 フローサイトメーター: 一つ一つの細胞にレーザーを照射して解析することで、細胞の特性を評価する装置。

原著論文
本研究はCells誌のオンライン版で(2021年9月21日付)公開されました。
タイトル: Isolation and Characterization of Tissue Resident CD29-Positive Progenitor Cells in Livestock to Generate a Three-Dimensional Meat Bud.
タイトル(日本語訳): 3次元の肉芽を構築するための家畜組織由来CD29陽性前駆細胞の分離と特性評価
著者: Yuna Naraoka 1, Yo Mabuchi 2, Yosuke Yoneyama 3, Eriko Grace Suto 1, Daisuke Hisamatsu 1, Mami Ikeda 1, Risa Ito 1, Tetsuya Nakamura 4, Takanori Takebe 3,5 and Chihiro Akazawa 1,2
著者(日本語表記): 奈良岡佑南 1、馬渕洋 2、米山鷹介 3、須藤絵里子グレース1,、 久松大介 1、 池田真実 1、 伊東梨紗 1、中村哲也4、 武部貴則3,5、赤澤智宏1,2
著者所属: 1)順天堂大学医学部 難病の診断と治療研究センター、2)東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科分子生命情報解析学、3)東京医科歯科大学統合研究機構先端医歯工学創成研究部門、4)順天堂大学 医学研究科 オルガノイド開発研究講座、5) Division of Gastroenterology, Hepatology and Nutrition, Division of Developmental Biology, and Center for Stem Cell and Organoid Medicine (CuSTOM), Cincinnati Children Hospital Medical Center
DOI: https://doi.org/10.3390/cells10092499

本研究はJST未来社会創造事業(JPMJMI18CB)、公益財団法人 武田科学振興財団、および公益財団法人 上原記念生命科学財団の支援を受け多施設との共同研究の基に実施されました。
なお、本研究をご理解いただきご協力いただいた皆様には深謝いたします。

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