旅行会社の倒産・廃業、8カ月で過去最多を更新 年間200件超のハイペース、コロナ禍で「あきらめ」広がる
PR TIMES / 2021年9月10日 17時45分
海外旅行で倒産・廃業が倍増 先行き悲観から事業を畳む「あきらめ廃業」、今後もさらに増加へ
<ポイント>
旅行会社の倒産や廃業、8カ月間で過去最多を更新 初の年間200件超避けられない情勢に
海外旅行を取り扱う一般旅行会社はコロナ前から倍増 件数最多は旅行代理店の74件
東日本大震災を大幅に下回る旅行会社の景況感、先行き悲観から「あきらめ型」の廃業さらに増加予想
コロナ禍の長期化で観光業界が大きなダメージを受けるなか、旅行会社の市場退出が2021年に入って急増している。帝国データバンクが調査した結果、2021年1-8月までの8カ月間で判明した旅行会社の倒産や廃業が累計136件に達した。コロナ禍初年の2020年通年の件数(129件)を既に超え、過去最多を更新している。このペースが続くと、21年の旅行会社における倒産・廃業累計件数は、平年を大きく上回る初の年間200件超えが避けられない情勢となる。
[画像1: https://prtimes.jp/i/43465/349/resize/d43465-349-85d0a3ebca7c9889379b-2.jpg ]
コロナ禍による観光需要激減という厳しい環境に直面した旅行業界は、昨年に実施された政府による観光需要支援策「Go To トラベル」で需要が一時的に持ち直したほか、金融機関による資金繰り支援策、持続化給付金など一連の手厚い支援を受けてきた。また、コロナ禍による行動制約の緩和を受けた海外では、観光需要が反動で増加している国・地域もあることから国内でも先行き期待感が高く、そのため2020年中の倒産や廃業は増加しながらも比較的抑制されてきた。
しかし、Go To トラベル事業は新型コロナ感染の再拡大もあって早々に停止を余儀なくされたほか、今年も渡航制限や国内の移動自粛が続き、まとまった旅行需要は大きく冷え込んだままとなった。東京オリ・パラの開催で需要が見込めた海外観客の受け入れもできないなど厳しさが続き、大手旅行会社でも大幅な赤字決算、早期退職をはじめ人員整理によるコストカットを余儀なくされるなど、旅行会社におけるコロナ禍のダメージは深刻さを増している。その中で、大手に比べて経営体力に劣る中小旅行会社では、先行きの需要回復への期待感が薄れたことで事業に対する「あきらめ」ムードが広がり、倒産や廃業が増加する要因となった。
海外旅行を取り扱う一般旅行会社はコロナ前から倍増 件数最多は旅行代理店の74件
旅行会社における倒産・廃業の動向は、取り扱う旅行の種類や業態によって差がみられた。件数で最も多いのは「旅行代理店」の74件で、旅行会社の倒産・廃業全体のうち半数を占める。また、コロナ禍の長期化を背景に、コロナ前の3年間平均(2017-19年1-8月の平均)に比べると76%増加、2020年の同期間からも61%増加した。新型コロナウイルスの感染拡大で国内外の旅行手配中止や顧客からのキャンセルが相次ぎ、ツアーパックの販売自粛も余儀なくされた。加えて出張や研修などビジネス利用も激減したことで、薄利ながら安定した販売が可能だった格安航空券などチケット販売も振るわず、売上が急減した。一方で、代理店の多くは店舗による集客を行っていたため、売上急減に家賃や人件費など固定費負担が追い付かず、倒産を余儀なくされたケースが多くみられた。
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コロナ前から最も多く増加したのは、海外旅行のツアー企画や募集が可能な一般旅行会社で、コロナ前平均から122%増と倍増、旅行会社全体の伸び率を大きく上回った。前年からも60%増となり、2021年に入って急増傾向が顕著となっている。コロナ禍以前も、ネット専業の旅行会社(OTA)が台頭するなど経営環境は苦しかったものの、利益率の高い海外旅行需要は総じて堅調だったことに加え、中国などからインバウンド客の取り込みに成功したこともあり業績を伸ばした企業も多い。しかし、昨年以降は海外旅行需要が消失し、Go To トラベルも国内旅行に限定されたことから、海外ツアー専門会社などでは資金繰りが急速に悪化している。また、新型コロナの収束は見込みが立っておらず、海外旅行の制限緩和時期も見通せないことから、経営体力に乏しい中小の総合旅行会社や、海外ツアー専門会社を中心に事業の継続を諦めるケースが増えている。
東日本大震災を大幅に下回る旅行会社の景況感、先行き悲観から「あきらめ型」の廃業さらに増加予想
帝国データバンクがまとめた企業の景気動向を示す景気DIでは、旅行業は緊急事態宣言下の2020年4月に過去最低の0.0を記録した。以降は、Go To トラベル事業の恩恵も追い風に景況感が回復傾向にあったものの、短期間のうちに停止へ追い込まれたことで再び悪化。21年6月時点で8.0にとどまり、大きく落ち込む状態が続いている。
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景気DIの基準値は50で、それより数値が大きければ景況感がよく、逆に小さければ景況感が悪い。全国では、新型コロナの感染拡大、1回目の緊急事態宣言の発出から景況感が大幅に冷え込んだ。その後は感染者の急増が懸念材料になっているものの、製造業や小売業で回復し、景況感は持ち直しつつある。一方で、旅行会社ではリーマン・ショックの影響が広がった2009年8月(17.7)、東日本大震災後の11年4月(14.1)をさらに下回る低水準が1年以上も継続し、回復の糸口も未だにつかめない状態となっている。
旅行会社の今後は、コロナワクチンの接種普及による移動制限の緩和に左右されることとなる。現在も営業を続ける旅行会社では、海外同様に経済活動が正常化することで、これまで抑制されてきた旅行の反動特需を見込み、その間は新たな事業を模索するなどで耐え続ける企業が多い。ただ、帝国データバンクが今年6月に行った調査では、旅行会社約1600社の2020年度業績で9割超が前年から減収を強いられており、旅行需要が激減したまま出口が全く見えず、体力勝負を余儀なくされる極めて厳しい状況が続いている。既に1年以上の忍耐を強いられていることもあり、中小規模の旅行各社で今後の需要回復の希望や実感が持てず、自ら事業をたたむ「あきらめ型」の廃業や倒産の発生ペースはさらに速まる可能性が高い。
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